海馬は繊細な記憶の司令塔・・壊れやすいのが特徴です | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 海馬は非常に高性能で記憶の司令塔とも言える重要な器官ですが、大変繊細で壊れやすい精密機械のような性質を持っています。
  例えば酸素不足で脳がダメージを受けると、最初に海馬あたりから死んでいくといわれています。また、とても強いストレスにさらされたときにも海馬は壊れてしまいます。

 
  今回は、「ストレスの影響」についてです。


ストレスで記憶に障害が起きる

 
 人は、強いストレスを長期に渡って受けると、物覚えが悪くなったり、思い出せなくなったりします。
 ストレスが加わると、副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールというホルモンが分泌されますが、これは、ストレスが加わったときの緊急事態に適応した反応で、血糖値を高め、体にエネルギーを与えてくれます。
  コルチゾールは、人間にとって必要不可欠のホルモンなのですが、ところが、強いストレスが長く続くと、このストレスホルモンであるコルチゾールが大量に分泌され、脳の海馬を萎縮させることが分かってきました。
  私たちがインプットした情報は「短期記憶」として脳の海馬に仮保存されて、その後「長期記憶」に置き換えられます。記憶の中心的役割を果たす海馬ですが、ストレスによってダメージを受けやすい部位なのです。
  脳の海馬というのは、このように記憶にかかわる部分で、アルツハイマー病の場合には、この海馬が萎縮しています。
  人は、短期的にでも過度のストレスが加わると、脳の働きが抑えられます。
  それが長期に渡り、ストレスを強く感じると、物を覚えたり思い出したりする能力が低下し、脳細胞に障害を起こし、本当に認知症を発症させてしまう可能性も出てきます。
 
 ニュースなどでよく耳にするPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですが、PTSDの患者の脳を調べると、海馬が萎縮しています。
  アメリカの戦争帰還兵には、このPTSDの患者が多くいますが、戦争という強いストレスによって海馬が著しく萎縮してしまい記憶喪失を生じる場合もあります。記憶を失うまでいかなくても強いストレスを長く受けたことによって記憶力が低下する現象が起きているのです。耐えることは美徳といわれますが、我慢しつづけてストレスを長期的に受けていると、自分の脳がダメージを受けてしまうかもしれません。


ストレスは脳の前頭前野にダメージを与える

 
 強いストレスは、脳の海馬だけでなく、前頭葉の中の前頭前野の部位にもダメージを与えることが実験によって分かっています。
 前頭前野というのは、おでこの裏側のところの脳の部位で、大脳皮質の約30%を占め、人間の脳の活動の中でも最も高度な働きをつかさどる中枢で、人を人たらしめてる重要な部分です。
 前頭前野は、思考・判断・集中・衝動の抑制などをつかさどる中枢ですが、慢性的にストレスが加えられると、この前頭前野の機能が低下して、思考力・判断力・集中力が低下して感情や衝動の抑制が上手く働かなくなります。
 そして、身の回りで起こるさまざまなことに対して、より強く恐怖を感じるようになり、びくびく、おどおどした行動をするようになります。
 強いストレスを受けることで異常に臆病になったり、人と話せなくなったり、外に出られなくなったりする場合がありますが、それは、ストレスによるこうした脳へのダメージが原因ではないかと考えられています。


  近年、ストレスに関する研究は大いに発展して、ストレスによる刺激が持続すると、海馬や前頭前野だけでなく、さまざまな部位で変化が生じることが分かってきました。脳は、このようにストレスに対しては、もろく弱いものなのです。


 ベトナム戦争の帰還兵の後遺症は、米国でも話題になりました。
 彼らは、帰国して日常の生活に戻ったあとで、いろいろな後遺症に悩まされているのです。
 自動車の排気音を聞くと、「戦車に襲われる」と叫んで、机の下に隠れる人がいるかと思えば、夜、雷が鳴ると、身の回りにあるものを手当たり次第に窓に向って投げつけて、ガラスをめちゃくちゃに壊す人もいました。
 あるいは、ちょっとした人間関係の苦労に耐えられずに、引きこもりになってしまう人など、症状はいろいろです。
 そこで、米国のエール大学の精神科のブレムナー教授は、三次元MRI(磁気共鳴)を使って、彼らの脳を調べることにしました。
 この機械を使うと、脳のいろいろな部分の大きさが、外側から計測できるのです。
 その結果、これらの帰還兵はみな「海馬」という記憶の入口の部分が小さくなっていることがわかったのです。
 海馬が障害されると、新しいことが覚えられません。記憶の入口と呼ばれるゆえんはここにあります。
 一方、思い出など昔の記憶は、別のところに蓄えられているから忘れないでいるのです。
 検査の結果、ベトナムの帰還兵の中でも、部隊の前線にいた期間が長いほど、海馬の萎縮が激しかったことがわかりました。
 そして海馬の萎縮が著しい人において、いわゆる「トラウマ後ストレス障害(PTSD)」が現われていることがわかったのです。


  そしてこれらの症状の原因は、ストレスの際のコルチゾールにあることがわかってきました。
 私たちがストレスを感じると、視床下部からCRHという放出ホルモンがだされます。
 するとこのCRHは、下垂体に作用して、副腎皮質を刺激するホルモン(ACTH)をださせます。
 このACTHが副腎皮質に作用してコルチゾールをださせるのです。
 ところが、コルチゾールが多くでると、今度はこれが視床下部や下垂体に作用して、CRHやACTHを出さないようにさせます。
 いわゆるフィードバックですが、これによってコルチゾールが出過ぎないような仕組みになっているのです。
 しかし、トラウマを経験した人や、子どもの時に虐待を受けた人、うつ病の素質のある人などは、このフィードバックの仕組みが働きにくくなることがわかりました。


 脳細胞には、コルチゾールと結合する受容体があります。
 しかし、コルチゾールが非常に多くなり、脳細胞にあるほとんどすべての受容体と結合すると、脳細胞は死滅することが知られています。とくに海馬の細胞が死滅します。
  海馬の細胞は、視床下部の機能を調節しているのです。
  ところが、これが多量のコルチゾールで傷害されると、視床下部からCRHの分泌をコントロールすることができなくなります。こうなると、コルチゾールが出っぱなしになります。


ストレスが子どもの脳に与える影響

 
 人は、ストレスが強いときには、ものを覚えたり思い出したりする能力が低下することを見てきましたが、子どもの勉強も、家庭内の不和や、学校での不愉快な出来事が、物覚えを悪くさせている可能性も十分あります。
  人は、幼少時に長期間強いストレスを受けると、成人になってからの記憶力が悪くなります。
 脳の働きには、遺伝的なものもありますが、学習能力の向上のためには、ストレスを避けて脳を大切にすることで、その人が本来持ってる脳の働きを最大限に発揮することができます。我が子の成績を上げたければ、ストレスを与えない環境作りが大切です。

 
心をむしばむストレス うつ病・・その正体とは?

 
 ストレスが引き起こす心の病の代表がうつ病です。大手家電メーカーに勤めていた堀〇祐〇さんは14年前、心が折れました。お客様相談室でトラブルを処理するクレーム対応係として働いていました。時には何時間も罵倒される仕事を4年間続けた頃、うつ病の診断を受けました。ストレスは誰にでもあるものと思って我慢しているうちにどんどん気分が落ち込み、うつ病を発症したのです。
 日々のストレスは一体どのようにして心を蝕み、うつ病を発症させるのでしょうか?

 
  最新研究によってそのメカニズムが明らかになりつつあります。

 
 私たちの周りにある様々なストレスを受けると、脳の中にある恐怖や不安を感じる扁桃体が活動を始めます。すると、脳から体に指令が出されて副腎からストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンは心臓の拍動を速め、血圧を上げるなどストレス反応と呼ばれる様々な反応を体に起こします。このストレスホルモンの中で注目されているのがコルチゾールです。コルチゾールは脳に辿り着き、吸収されますが一定の量を超えて増え続けると脳の一部を破壊することが分かってきたのです。
 アリゾナ州立大学ではストレスに長くさらされると脳がどうなるのかを実験しています。

 
 ネズミを金網に長期間閉じ込めストレスを与えると脳の海馬に変化があらわれました。 海馬は記憶を司り感情にも関わる場所です。変化が起きていたのは海馬を構成する神経細胞でした。脳にあふれたコルチゾールが原因となり海馬の神経細胞が蝕まれ、突起が減少したと考えられます。今、こうした海馬の損傷がうつ病の発症にもつながる可能性が指摘されています。ストレスを受けた時、体が反応しストレスホルモンが分泌されるのは本来私たちの体にそなわっている自然な反応です。それが一体なぜ脳の破壊という異常な事態を引き起こしてしまうのでしょうか?

 
脳を破壊するストレスホルモン

 
 そもそもストレス反応は太古の昔、私たちの祖先が厳しい自然の中で生き残るために身に着けたものでした。生命の危機に直面した時、心拍数を上げるなどの反応を起こすことで体を動かしやすくします。そして緊急事態が去った後、ストレスホルモンの分泌は止まりました。ところが天敵がいなくなった現代、仕事上の様々なことや人間関係などが天敵に代わって私たちに精神的な負担をかけるようになりました。こうしたたて続けのストレスに私たちの体は休む間もなく反応し続ける状態になっています。太古の昔には想定されていなかったほどの絶え間ないストレスが、コルチゾールの過剰な分泌を引き起こし、脳を破壊していたのです。
 さらに、こうした状況を悪化させるもう一つの仕組みが最新の研究から見えてきました。 それは私たち人類にそなわった記憶力や想像力です。例えば、上司の厳しい叱責など大きなストレスにさらされた場合、上司が目の前からいなくなった後も家で叱られたことを思い出したり、また明日も叱られるかもと想像したり。そのたびに脳はストレスを感じ、ストレス反応を起こします。このように目の前の現実についてではなく過去や未来について考えをめぐらせてしまう状態は「マインド・ワンダリング(こころの迷走)」と呼ばれます。最新研究では、このマインド・ワンダリングが私たちが生活する時間の非常に多くを占めることが分かっています。

 

うつ病の海馬萎縮


  昔は、脳についてのことは、ほとんどわかっていませんでしたが、近年の脳画像解析の進歩により、さまざまな発見がありました。
 
   これまでうつ病は、脳の器質的な異常は無いとされてきましたが、MRIによるうつ病患者の脳の萎縮が多数報告されています。
  この仮説は、脳の中の海馬と言う、主に記憶を司る部位に萎縮が起こることが、うつ病の原因とする説です。海馬萎縮はストレスにより起こると考えられています。
  海馬という記憶や情動をつかさどる脳の部位の萎縮が、うつ病の原因だとする説です。 通常、神経細胞は病気でなくても少しずつ死んで行っていますが、それと同じペースで新しく細胞が作られるので、大きさが保たれるようになっています。
 しかしうつ病の人はそのサイクルに異常があるとする説です。脱毛に似ています。生えるペースと抜けるペースが伴わないといった状況と考えるとわかりやすいと思います。

 
海馬萎縮の原因

 

  人はストレスを受けると、コルチゾールといわれるホルモンが大量に放出されます。コルチゾール自体は本来、人体に必要なホルモンですが、大量に放出されると、海馬の死を促す作用があるのです。そのため、コルチゾールの値が高いほど海馬萎縮を起す傾向があります。
  要するに、ストレスにより、コルチゾールがたくさん作られ、それが脳にダメージを与えるというわけです。

 

  また、脳由来神経栄養因子(BDNF)や、グリア由来神経栄養因子(GDNF)などの神経細胞の成長に必要な栄養因子がうつ病患者では低下するため、うまく神経が新生しないとも言われます。
 

  神経栄養因子の低下は、幼少期に心的外傷体験のある者に、良く見られる傾向と言われており、実際に、幼少期の心的外傷体験のあるうつ病患者と、そうでないうつ病患者の海馬体積を調べたところ、心的外傷体験があるうつ病患者の、左側海馬体積が優位に減少していることがわかり、うつ病になりやすい素因に、幼少期の心的外傷が影響しているとする報告があります。


ストレスに強い人・弱い人の違い、コントロール・アビリティ


 また、ストレスに強い人と弱い人が自ずから存在するようです。
 

 ストレスに強い人には、物事にくよくよしないプラス思考の人が多く、困ったときに助けを求められる仲間がいたり、逆に困っている仲間には進んで手を差し延べたりする人が多いとのことです。そして、仕事以外の趣味や娯楽で結びついた仲間を多く持つ人も、ストレスに強いようです。
 

 意外にも、会社の経営者や社会的地位が高い人にはストレスに強い人が多いそうですが、それは「コントロール・アビリティ」、つまり自分自身をコントロールする力が高いせいであると言われているようです。
 通常、そのような人は責任の重い重要な仕事をしているはずですし、様々なネットワークを持って多くの人間関係を築いているものです。そのため、ストレスは人一倍多いのではないかと考えられますが、自分自身を適確にコントロールできる高い「コントロール・アビリティ」があるからこそ、そのような立場で仕事ができるようになったのではないかと考えられていて、認知症になりにくいというデータもあるそうです。
 
 一方、ストレスに弱い人の中には、生真面目で完璧主義であったり、問題が起きても自分だけで抱え込んでしまったりして、自信がなく自己主張も苦手である人が多いようです。

 

ストレスに強い人弱い人 その原因とは?

 
 その要因の一つとして注目されているのが生まれ育った環境です。
  ハーバード大学では子供の頃に強いストレスを受けた人の脳に、30年後どのような影響があらわれたかを調べました。すると脳の扁桃体に変化が起きていることが分かりました。子どもの頃に受けたストレスが強い程、大人になって扁桃体が大きくなる傾向があることが分かりました。扁桃体が大きくなると、小さなストレスにも反応するようになってしまうと考えられます。

 
 海馬がストレスによりダメージを受ける詳しいメカニズムはまだ解明されていないようですが、脳の中にある神経伝達物質「興奮性アミノ酸(グルタミン酸)」やセロトニンという物質が関与しているのではないかという研究結果がいくつかあるそうです。
 それらの研究はまだ動物実験の段階ですが、興奮性アミノ酸やセロトニンの作用を薬で抑えることにより、海馬のダメージを防ぐことができたそうですから、人間においても治療可能となる日が来れば、アルツハイマー病や認知症の予防にも役に立つことでしょう。

 
体に
及ぼすストレスの影響


(1)ストレスとマグネシウム


 通常、ストレスがかかるとアドレナリンが分泌されます。
 アドレナリンによって心拍数が上がって、血圧上昇、血管収縮、筋肉収縮が起こります。
  こうやって外部からのストレスに身体が対処しようとするわけです。しかし、こういった作用には必ずマグネシウムが必要で、ストレスがかかる状況が続けば、マグネシウム欠乏に陥ります。
 ストレスの研究で有名な、ハンス・セリエによれば、身体の短期的な闘争反応、逃避反応から、慢性的ストレスに移行する際にもマグネシウムが消耗されると言います。
 また副腎(ストレス調整臓器)は、コルチゾールやストレスホルモンであるノルエピネフリンを作り出しますが、ノルエピネフリンはアドレナリンに似た作用を示し、同じくマグネシウム不足を生じさせます。
 またストレスによる副腎の酷使は、マグネシウム不足を生みますが、体内のマグネシウムレベルが低い時にストレスにさらされると、より多くのアドレナリンが放出されてしまうのです。
 アドレナリンは、イライラや怒りっぽさ、短気、感情の爆発などを作り出すので、まさに悪循環の流れが出来上がるわけです。こういった悪循環をストップさせるのには、マグネシウムレベルを回復させることが重要になってきます。
  またストレス反応が続く間は、アドレナリンの放出を促進するのにカルシウムが必要とされますが、元々カルシウムが過剰になっているとアドレナリンが溢れかえってしまいます。しかし十分にマグネシウムがあれば、余剰カルシウムを抑えてくれ、通常レベル以下にしてくれるので、ストレス反応が抑制されます。


 ストレス状態にある人の尿に含まれるマグネシウム濃度を測ると通常時に比べてマグネシウムの排泄量が増えています。
 これは、ストレスに対する防衛反応として、ノルアドレナリンというホルモンが分泌されるときにマグネシウムが消耗されたためです。
 強いストレスを感じると体内のマグネシウムがどんどん使われ、益々ストレス状態が悪化するという悪循環に陥ります。


マグネシウムはストレスによって奪われます。


 ストレスにより起こる現象で、例えば甘いものを食べることも体にとってはストレスになります。


甘いもの=ストレス


 ちょっと結びつかないないかもしれませんので、どういうことか説明します。
 まず、甘いものや小麦を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えるためにインシュリンが分泌され、今度は血糖値が大幅に下がります。すると、今度は血糖値を上げるために副腎からアドレナリンが放出されます。人体には低血糖に対し数段階の回避システムが用意されています。
 血糖値が約65-70mg/dLに低下すると、 血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始めます。
 血糖値が約60-65mg/dLに低下すると、 三番目の血糖値を上げるホルモン、成長ホルモンが放出されます。
 最後に血糖値が60mg/dLをきるようになると、 最後の血糖値を上げるホルモン、コルチゾールの分泌が亢進します。
 血糖値を上げるために分泌されるホルモンの順番は、①グルカゴン、アドレナリン②成長ホルモン③コルチゾール です。
 血糖値を上げるためのアドレナリンは、他にも心臓のポンプ機能を速めたり、筋肉を活性化させたりします。アドレナリンは闘争反応、逃避反応を刺激します。
 すると、マグネシウムはアドレナリンによって緊張状態になった筋肉や臓器を弛緩させるために消費されます。
 このため、アドレナリン由来のこういった機能亢進にはすべてマグネシウムが必要になり、消費されます。
 「ストレス⇒アドレナリン放出⇒マグネシウム消費」という流れがあるわけです。
 マグネシウム不足は、ミトコンドリアの働きを悪化させてきます。


(2)ストレスと脳内セロトニン


 ストレスを受けると、脳にある視床下部がそれを感知し、副腎から副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促します。また間脳の橋の青斑核にあるノルアドレナリン神経からはノルアドレナリンが、交換神経末端からはアドレナリンが分泌されます。
 さらに、ストレスが続くと交感神経が過敏となり、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が高まります。
 セロトニンは過剰に分泌されたこれらのホルモンを抑制して、自律神経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌されます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌にブレーキをかけます。
 脳の中で”快・不快”を感じるのは大脳辺縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の中枢である「海馬」や、情動を感じる「扁桃体」があります。扁桃体の刺激は視床下部という場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質が出て自律神経を刺激します。幸せな気分はセロトニンやエンドルフィンが放出され、不快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリンが放出され交感神経の働きを強めます。
 嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。


  このようにして、体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。
  副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまいます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを神経の伝達に使う仕組みになっています)。
  副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増えるのですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことになります。
 このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢性的なセロトニン不足を招きます。
 縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロトニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシナプス接続して、痛みを抑制します。


  以上のことから、慢性的にストレスに晒されることによって、「脳内セロトニン不足」を来すことによって、痛みを制御ができなくなって、痛みを感じやすくなります。さらに、うつ病を引き起こすことになります。


(3)ストレスと活性酸素


ストレスがたまると活性酸素が増える


 活性酸素を増やす要因には、食生活の乱れやタバコや大量の飲酒、過激なスポーツ、紫外線など、さまざまな要因があります。しかしそれだけではなく、ストレスも重要な要因のひとつです。代表的なメカニズムには、次のようなものがあります。


1.ストレスを受けると、ストレスに対抗する「副腎皮質ホルモン」が分泌される。この分泌と分解の過程で、活性酸素が発生します。
 2.ストレスは、「抗酸化ビタミン」ともいわれるビタミンCを大量に消費します。
 3.緊張が続くと血管が収縮し、一時的に血流が阻害されます。その後、血管が拡張したときに、血液が勢いよく流れますと、大量の活性酸素が発生します。
 4.ストレスがあると高血糖になりやすい。この状態も、活性酸素が増える一因となります。


  イヤな仕事や勉強、人間関係などのストレスも、体内で活性酸素がドッと増えます。よく、ストレスから胃潰瘍、十二指腸潰瘍になった、とききますがこれも活性酸素が犯人です。ストレスにより血管が強く収縮し血流障害がおき、虚血状態に陥った後、血流が再開する時大量の活性酸素がドッと洪水のように発生するのです。
  ストレスホルモンの一種であるコルチゾールが免疫機能の重要な役割をになうNK細胞の機能を停止させ、生成時に活性酸素も発生させます。


 ストレスが体にダメージを与える理由は、体内のあらゆる栄養素が消耗し、瞬間的に血管が収縮して血行が悪くなります。この血流が再開されるときにドッと大量の活性酸素が発生するのです。
 体内のあらゆる栄養素が血液中に動員され、筋肉や副腎といったストレスとの闘いで活躍する組織に優先的に送られるのです。その一方、そのほかの組織は逆に栄養を絞りとられる結果となります。ストレスに対処するのに直接関係しない臓器(消化器や皮膚など)に送られる血液量が最小限に絞られます。
 ストレスが解消されると、これらの臓器にも血液が戻ってきます。このときにも、活性酸素が大量に発生すると考えられています。現在のように繰り返しじわじわとストレスが続く状況では、体にとって大きな負担となります。例えば、ストレスがかかると心拍数や血圧が上がるのは、身に迫る危険に対抗するために自律神経により様々な臓器が調整された結果です。身に迫る危険に対抗するための、体の仕組みになっています。


  もう少し詳しく説明しますと、精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離脂肪酸が生成されるようになります。
 本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げたりする時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと考えられます。
  通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足分を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用されます。
 しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となります。ストレスから開放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を高めるだけの結果となってしまうのです。
 その結果、血小板に直接作用して血小板の凝集を促進することや脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
 活性酸素はミトコンドリアDNAを傷つける最大の要因になっています。 


ストレス対策はどのようにすればよいのでしょうか


 現代社会ではストレスは避けて通れません。しかし、その過剰な蓄積は、胃潰瘍、高血圧など身体への影響だけではなく、鬱(うつ)など心への影響、さらに”海馬を傷つける”ことが心配されます。
 これにどう対応すればよいのでしょうか。ストレス回避が不可能だとすれば選択肢は2つしかありません。ストレスを解消するか、ストレス耐性を持つことです。
 ストレスに強い心と体を作るために非常に重要な神経があります。脳内のセロトニン神経です。この神経がストレス耐性を高めるカギを握っています。


セロトニン神経の強化でストレス耐性は高まる


 150 億もあると言われている脳の神経細胞の中で、セロトニン神経はわずか数万個しかありません。にもかかわらず、脳全体に情報を発信しているという点で非常に珍しい神経なのです
 ストレス耐性を高めるためには、セロトニン神経を強化することが大切になります。
 「セロトニン神経を活性化するためには、「セロトニン生活」を着実に行うことです。
  そして、有酸素運動を行うことによって、ストレス解消を行うことも大切です。


「セロトニン神経の活性化」の原則


(1.)早寝早起きの規則的な生活を心がける


 セロトニンは、太陽の出ている日中に分泌されやすく、睡眠中は日が沈んでからは分泌が少なくなります。これはメラトニンの働きと関係していますが、人間が本来持っている生活リズムは『日中に活動し夜は寝る』と言うもので、この原則を守ることがセロトニン神経の活性化に効果的だと言われています。


(2.)太陽の光を浴びる


 セロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンと相対する性質があります。
 セロトニンは脳の覚醒を促し、メラトニンは睡眠に作用します。
 メラトニンが分泌している間はセロトニンの分泌は少なく、逆にセロトニンが多く分泌されている間はメラトニンの分泌は少なくなります。
 太陽の光(のような非常に強い光・明かり)を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、代わりに脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化されるのです。
  昼夜逆転の生活をしていたり、日中部屋の中にばかりいると、セロトニンとメラトニンの分泌のバランスが崩れ、不眠症になったり、片頭痛が起きやすくしてしまうのです。
  毎朝日光を浴びる行為は、セロトニンを鍛えるだけで無く、生活リズムを整えることにもつながります。
  できれば、紫外線が強くなる前の時間帯、日の出から8時までの間が良いでしょう。
  時間は5分~15分ほどで構いません。両手を広げ、全身で朝陽を浴びてみましょう。
  外に出るのが苦手な方は、カーテンを開け、部屋の中でも構いません。
 全身に光を浴びることを意識し、できれば「気持ちいい~」と言葉に出してみましょう。
そもそも地球上のほとんどの生物は太陽のエネルギーなくては生きていけません。

 この自然の恵みを全身に浴びることで、ミトコンドリアの遺伝子のスイッチがオンになると同時に、脳の中では、視交叉上核というところが反応し、体内時計がリセットされます
 体内時計とは、私たち自身のからだ、臓器や器官がそれぞれもっている時計で、地球の自転(24時間)とは1時間ずれ、体内時計は1日25時間といわれています。この時間を調整し、地球の自転とあわせてくれているのが朝陽なのです。ですから、放っておくとリズムが崩れ、生活リズムが乱れていきます。そのリズムをもとに戻してくれるのが「朝陽」なのです。また、太陽の光は、脳の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニンやメラトニンというホルモンをつくってくれます
 このふたつのホルモンは、ミトコンドリアの天敵「活性酸素」を除去する働きがあります。メラトニンは睡眠ホルモンとして、セロトニンは心を鍛え、バランスを整えるホルモンとして、有名ですが、この二つとも、ミトコンドリアにとって天敵の活性酸素を除去する働きがあります。
  活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがあるので、ミトコンドリアだけでなくからだにとっても天敵で、片頭痛の原因でもあるのです。朝陽を浴びることは、この活性酸素を減らすホルモンをだす効果もあるのです。


(3.)リズミカルな運動をする


 スクワットや階段の昇り降りなど、一定のリズムを刻む運動を反復して行うとセロトニン神経が活性化されるとされています。
  先日国民栄誉賞を受賞された、女優の森光子さんも70歳から体力維持の目的でスクワットを始めて、これまでずっと継続して来たそうです。
  89歳でも舞台に立ち続ける彼女の元気の源も、このリズミカルな運動にあるといえるでしょう。現在はなくなられてしまいましたが・・
 同様に活発な活動をされている黒柳徹子さんもスクワットを毎日しているのも知られています。
 スクワットに限らず、『ウォーキング』や『深呼吸/腹式呼吸』、最近人気の『フラダンス』など、リズムの良い運動を継続して続けていくことが、セロトニン神経の活性化に役立つとされています。
 また、こういった運動を5分以上行うとさらに効果的であると言われています。
  リズム運動とは、一定のリズムで筋肉の緊張と弛緩を繰り返す運度であり、この条件を満たしていれば、何でもいいのです。ウォーキング、ジョギング、自転車、ダンスなどです。一番簡単なのは、ウォーキングです。歩くとき心がけることは、できるだけリズミカルに体を動かすことです。リズムに乗って軽快に歩くと、セロトニンの分泌が盛んになってくるのです。
 しかし、ウォーキングで気をつけるべきことは、ダイエットを目的とした運動とはぜんぜん違うということです。ダイエットを目的とする運動は、いかにエネルギーを消費して脂肪を燃焼させるかに重点が置かれますが、セロトニン神経を鍛えるのはそんなに激しい運動でなくてよいのです。
 一番ベストなのは、朝晴れている日は外に出て適当に歩くことです。
なぜなら、太陽の光を浴びながら、リズム運動ができるからです。


(4.)食事をする際に、よく噛む


 食事の際は必ず物を噛みますね。
 このものを噛む動作(咀嚼) も、一定のリズムを伴った運動であるといえます。
 上述のリズミカルな運動と同じく、セロトニンの活性化に役立ちます。
 「運動はちょっと苦手・・・。」と、考えられている方でも、食事は必ず取るでしょうから、食事の際によく噛んで食べることを心がけてみてはいかがでしょうか。
 『ものをよく噛む』と言うことは、栄養の効果的な摂取や、消化を助けることにもつながりますし、あごの筋肉の維持など、セロトニンの活性化以外にも様々なメリットがありますし、どなたでも簡単に試せる方法です。
  なぜ、唾液=つばを出すのがいいのかというと、唾液には、アミラーゼと言う酵素が入っていて、食べたものを消化することを助けてくれるほか、成長ホルモンも含まれていま
 す。この成長ホルモンは、傷ついた細胞を修復したり、新陳代謝を促し老化防止するなどミトコンドリアを守ってくれる要素があるからです。
  すなわち、唾液の量が多いと、それだけミトコンドリアが守られ、数が減るのを防いでくれると言うことです。また、味蕾の感覚を鋭敏にするとも言われています。
  成人が一日に出す唾液量は、0.5?から1.5?といわれています。
  平均値だけ見ても一リットルもの開きがあるのです。
  この量を増やすだけで、あなたのミトコンドリアは守られ、若さを保つアンチエイジングの効果もあります。

 
 (5.)グルーミングという「人とのふれあい」


 グルーミングは、仕事を終えた後の「オフの時のセロトニン活性」という意味で、太陽の光とリズム運動とは少し異なります。グルーミングは、「猿の毛づくろい」としてよく知られていますが、その理由は動物行動学においては、はっきりしています。動物行動学では、グルーミングは「ノミ取りの行為だけではなく、群れ社会のなかで発生するストレスに対して、緩和を試みている行為」として認識されつつあります。
 それを人間社会にたとえますと「人と人とが近い距離でふれあうこと」が原則になります。具体的には、「仕事後の赤ちょうちん」「おしゃべりをしながらの井戸端会議」「家族で食事をする」、またそれに近い行為で「お風呂屋さんで一緒にお風呂に入る」というのもあります。これらの行為の結果として、何になるかといいますと「疲れが取れてストレス緩和になる」のです。
 仲間と一杯やるというのもグルーミングですし、女性のよくやっている井戸端会議もグルーミングの一種なのです。全員が同じ場所にいて、同じ空気を吸いながら、打ち解けて会話を交わす──これがグルーミングなのです。
 親子や恋人同士のスキンシップ、家族や友人とのおしゃべり、マッサージ、髪をすく、撫でる、などの触れ合いがグルーミングとされ、これらのスキンシップや人との触れ合いがセロトニンの活性化とストレス耐性の向上に効果があるとされています。
 家族や恋人、ペットとのスキンシップも、セロトニンの分泌を増加させます。メールや電話ではなく、実際に顔を合わせ、表情や仕草を間近に感じながら、笑ったりすれば、きっとセロトニンがたくさん分泌されます。


セロトニンとオキシトシン


 セロトニンが快適な生活を送るために必要なことは上述の通りですが、近年、オキシトシンという神経伝達物質も注目されています。
 オキシトシンは愛情ホルモンまたは幸福ホルモンを呼ばれており、この物質が十分に分泌されていると、心が満たされ幸せな気分になります。
 哺乳類だけが持っている物質と言われています。
 特に、女性が出産する時に、陣痛を促進させるためにも分泌されます。母乳の分泌も促進します。子供に愛情を抱き育むためには欠かせないホルモンです。
もちろん、母親以外の女性や男性にも分泌されます。
 家族愛、夫婦愛、親子愛、カップル間の愛情など、心の中で愛情を十分に感じていると、オキシトシンは分泌されます。オキシトシンを活性化するには、愛情を育む、人に親切にする、感情を率直に表す、などが効果的です。
 セロトニンに加えオキシトシンも強化して幸福感を高め、充実した生活を送りましょう。


 以上が、セロトニン神経の活性化の原則です。


  ミトコンドリアの働きの悪い方々は、同時にセロトニン神経の働きが悪くなっております。さらに、ストレスに晒されますとさらに悪化してきます。これに対して、"ストレス耐性の体つくり"が必要になってきます。このため「セロトニン神経」をいかに鍛えていくことが課題になってきます。
  セロトニンを増やすには、食事から行う方法もありますが、ここでは省略します。
      https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12169932231.html


 以上のようにして、ストレス対策を行うことによって、海馬の萎縮を防ぐ必要があり、これが認知症予防につながっていきます。