頭痛には、2つの原因があります。
頭痛を引き起こすものには大きく分けて、2つの原因があります。
それは、”脳の中に異常のある頭痛”と原因が”脳のなかに異常のない頭痛”です。
”脳の中に異常のある頭痛”・・二次性頭痛とは
脳の中に異常のある頭痛は、医学用語で「二次性頭痛」と呼ばれています。
この中には、クモ膜下出血や脳腫瘍や脳出血、慢性硬膜下血腫などの命にかかわる頭痛もあります。
このように、脳に異常がないかどうか見極めるために頭部CTもしくはMRIの画像検査が行われます。このようにして、命に関わる頭痛を除外しています。
このような頭痛は、次第に増悪・急激に・もしくは突発的に発症するのが特徴です。
”脳のなかに異常のない頭痛”・・一次性頭痛(慢性頭痛)とは
これに対して、”脳のなかに異常のない頭痛”があります。医学用語では「一次性頭痛」(慢性頭痛)と呼ばれています。
これらは、「国際頭痛分類 第3版β版」の診断基準では、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(ここに群発頭痛が含まれます)、その他の一次性頭痛に分類されています。
これらの慢性頭痛とは、頭痛という自覚症状はありますが、CTやMRIなどの画像検査では異常のないものをさしています。脳のなかには異常はありません。
このように本来”定義”されています。
そして、このような脳のなかに異常のない慢性頭痛の原因は、現在では、すべて一切、原因不明であると考えられています。
慢性頭痛とは・・東洋医学でいう”未病”の段階にある
「体調不良」・・「健康」でも、「病気」でもない・・「未病」
私達は、仕事が忙しかったり、ストレスが重なりますと日常的に「体調不良」を感じます。このような「体調不良」は、具体的には、疲れやすい、胃腸の調子がよくない、身体が冷える、身体がだるい、疲れがとれない、よくめまいを起こす、肩こりが酷い、食欲がない、よく眠れない、頭が重い・頭が痛い、足がつる、耳鳴りがする、夢をよくみる、喉のつかえ、むくみやすい、風邪をひきやすい、顔色が悪い、気分が落ち込む・優れない、活力がでない、元気がでない、何となく調子が悪い、寝起きが悪い、等々の訴えです。
このように頭痛とは、「体調不良」のなかの訴えの一つに過ぎないものです。
「体調不良」とは、病気とは診断されませんが、健康でもない、謂わば、“半健康・半病気”の状態に身体はあるのです。半健康・半病気の状態を、東洋医学では病気になる一歩手前だとして、「未病(みびょう)」と言っています。
絶対的な健康ではなく、私たちの身体のバランスがどこか歪んでいるのです。
これは「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」を意味しています。
このような”未病”とされる病態は、本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから「病気」へと進展するものと東洋医学では考えられています。
このように考えれば、”未病”の段階にある、このような「体調不良」の状態とは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があるということです。
先程の脳のなかに異常のない頭痛、緊張型頭痛・片頭痛・三叉神経・自律神経性頭痛(ここに群発頭痛が含まれます)・その他の一次性頭痛は、頭部のCT・MRIなどの画像検査では何も異常が見当たらず、これはまさに、典型的な”未病”と考えるべき頭痛です。
ということは、”脳のなかに異常のない”「慢性頭痛(一次性頭痛)」は、東洋医学でいう”未病”の段階にあり、すなわち健康と病気の中間に位置しており、この”未病”は本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから諸々の「病気」としての「生活習慣病」・「がん」・「認知症」へと進展するものです。
ということは、慢性頭痛とは”未病”の段階にあり、「健康的な生活」を送ることを阻害する生活習慣に根本的な原因があります。
そして、「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」の程度によって慢性頭痛のなかの”各種の頭痛”、緊張型頭痛・その他の一次性頭痛”が出現し、さらに様々な生活習慣の問題点が加わることによって、”片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(ここに群発頭痛が含まれます)”へと、さらに、難治性の頭痛にまで進展していくことになります。
結局、脳のなかに異常のない頭痛(このなかに片頭痛も含まれますが)、こうした頭痛がするということは、私達が「不健康的な生活」を送っているという警告信号として、頭痛(症状)を発して、私達に知らせてくれます。謂わば、イエローカードなのです。
ということは、慢性頭痛(片頭痛も含め)は”病気”ではなく、警告症状(イエローカード)なのです。病気ではありません。このように、慢性頭痛は、病気ではないために、便宜的に国際頭痛学会は、「国際頭痛分類 第3版β版」で細かく、症状の上で分類・定義しています。ですから、片頭痛は病気ではありません。誤解しないで下さい。あくまでも、「頭痛」という症状でしかありません。
「健康的な生活を送る」ためには、ミトコンドリア・腸内環境・生理活性物質が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
このなかでもミトコンドリアはその”要(かなめ)”となっています。
自然治癒力とは・・・
片頭痛を考える際に重要なことは、慢性片頭痛に至っていない初期の段階では、発作時にトリプタン製剤を服用しなくても、発作期間中に我慢に我慢して、永くても3日間耐え忍ぶことで、また元通りの健康状態に回復してくることです。群発頭痛でも同様です。
なぜ、酷い発作で苦しめられながらもとの健康状態になってくるのでしょうか。
さらに、この発作の期間も短くて4時間、永くて3日間と「国際頭痛分類 第3版β版」では、定義されていますが、どうしてこのように発作期間に差が診られるのでしょうか。
これは、人間本来に備わっている「自然治癒力」のおかげです。そして、発作期間に差がみられるのは、個々の患者さんによって、あるいは発作時の体調によって、自然治癒力の程度に差異があるためです。これが、片頭痛治療を考える上でヒントになります。
一般的には、片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪してきます。
自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものです。
「ホメオスターシスの三角形」を構成する”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態(発作がいつまでも繰り返される)が持続することになります。
すなわち、脳内セロトニンの低下を引き起こす生活習慣があったり、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスの悪い食生活があったり、腸内環境を悪化させる要因が持続するような生活習慣が継続していることを意味しています。
「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続された状態に、さらに「ミトコンドリアの弱体化」、「脳内セロトニンの枯渇」、生理活性物質の問題(必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスの悪い食生活の常習化)によって「ホメオスターシスの三角形」のバランスが崩壊することによって、さらに「体の歪み(ストレートネック)」等々の慢性化の要因が加わることによって、自然治癒力が失われた状況に至って、2~3割の方々が慢性化に至ってきます。これが慢性片頭痛の本態です。
先述のように慢性頭痛は、そのなかの片頭痛も含めて、東洋医学では未病の段階にあり、「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があるとされ、「健康的な生活」を送るにはミトコンドリアが重要な役割を果たしていると述べました。
それでは、片頭痛はミトコンドリアとどのように関与しているのでしょうか?
1.片頭痛は15億年前の因縁?
1996年に間中信也先生が開設されたネット上に「頭痛」の老舗ともいうべきHP「頭痛大学」があり、この当時から、以下のような記載があったことを忘れてはなりません。
ミトコンドリアは、細胞のエネルギーを産生する「発電所」のはたらきをしています。
それは約15億年前のことでした。当時酸素が嫌いなノンビリやの単細胞生物”A”がおりました。
当時増えつつあった酸素を利用してエネルギッシュな好気性生物”B”もいました。”A”が”B”に提案しました。
「Bさん僕と結婚しよう。僕のウチに住んでいいよ。そのかわり君のエネルギーを僕にわけて頂戴」。
プロポーズが成功して、”A”と”B”の同棲生活が始まったのでした。
片頭痛には、このミトコンドリアが関係しています。
片頭痛では、ミトコンドリアの”酸化燐酸化の障害”があり、これによる代謝の異常が、神経機能障害を引き起こし、それが”脳過敏”を強めて片頭痛発作を発現させます。
ミトコンドリアの代謝機能を是正すれば、片頭痛にならないということになります。
それを裏付けるものとして、ミトコンドリアの働きを助ける物質にビタミンB2があります。実際ビタミンB2をとると片頭痛になりにくいのです。
とすれば、15億年前に細胞AとBが同棲しなければ、片頭痛という病気は生まれなかったかもしれません。
こういったことから、片頭痛は全身的な”ミトコンドリアの機能の低下することによって起きる頭痛”と考えられています。
2.病気の90%は活性酸素が関与
活性酸素に関しては今から50年以上前に米国の生化学者フリードビッヒ博士によって解明され、その後世界各国で研究が行われてきました。
その結果、人が罹るあらゆる病気に活性酸素が関与していることが明らかになりました。 今や病気の90%は活性酸素が原因だということが判明したのです。それでは残りの10%は何かといいますと、風邪やエイズ、また最近増えてきている結核などの菌が体内に入っておこる病気、コロナすなわち感染症です。
このように、現在では人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、活性酸素が原因と考えられています。
活性酸素とは、ミトコンドリアがエネルギー産生を行う際に、必然的に生み出されてくるものです。
3.従来から、片頭痛は”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると報告されています。
Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol Sciences 134 (1995) 9-14
4.片頭痛を持病として持つ「ミトコンドリア病」という病気があります。
ミトコンドリア病は大きく分けて2種類あります。
「先天性ミトコンドリア病」と「後天性ミトコンドリア病」です。
「先天性ミトコンドリア病」は、極めて稀な病気です。これは、生まれつきミトコンドリアの働きに不具合があります。この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。このことが、「ミトコンドリア病」が片頭痛のモデル疾患とされる理由です。
ところが、「後天性ミトコンドリア病」は、ほとんどの現代病に当てはまります。
水や食生活、放射能汚染や環境汚染、有害物質の蔓延などや酸素不足などを原因として、後天的にミトコンドリアの働きを悪化させて、発症するミトコンドリア病です。
後天性ミトコンドリア病とは、いろいろな”原因”でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、身体が”酸化”していく全身病なのです。
ミトコンドリア機能異常は、ガン・糖尿病・筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン病・アルツハイマー病・心臓病・腎臓病・動脈硬化・神経変性疾患・片頭痛・筋骨格系障害など、様々な病気を引き起こします。
このように、現代病のほとんどが、「後天性ミトコンドリア病」なのです。
これまで述べて来ましたように、全世界では病気の90 %は活性酸素が原因とされ、ほとんどの現代病は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。
活性酸素はミトコンドリアがエネルギー産生を行う際に必然的に生み出されてくるものだからです。
このことを、もう少し詳しく説明することにします。
「ミトコンドリア病」とは?・・片頭痛の”疾患モデル”
ミトコンドリアは全身のひとつひとつの細胞の中にあってエネルギーを産生する働きを持っています。そのミトコンドリアの働きが低下すると、細胞の活動が低下します。
例えば、脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害されます。心臓の細胞であれば、血液を全身に送ることができなくなります。筋肉の細胞なら、運動が障害されたり、疲れやすくなったりします。
ミトコンドリアの働きが低下することが原因である病気を総称して「ミトコンドリア病」と呼んでいます。多くは生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝子の変化を持っている方が発症しますが、先述のように、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアの働きが低下して起きる「後天性ミトコンドリア病」もあります。
この病気の原因は?
ミトコンドリアの働きを低下させる原因として、遺伝子の変化に由来する場合と、薬物などが原因でおきる場合があります。大部分は遺伝子の変化で起きるであろうと考えられていますが、ミトコンドリアの働きに関わるタンパク質は優に1000を超えると推定されており、それらの設計図である遺伝子の変化がすべてミトコンドリア病の原因となる可能性があります。すでに200種類程度の遺伝子の変化がミトコンドリア病に関係することが分かっています。
さらに、これら遺伝子には、細胞の核と呼ばれるところに存在する核DNA(通常のDNAです)に乗っている遺伝子と、ミトコンドリアの中に存在する別のDNA(ミトコンドリアDNAといいます)に乗っている遺伝子があります。
新しいミトコンドリア病の原因が核DNA上の遺伝子から次々と明らかにされています。 また核DNAに比べると短いミトコンドリアDNA上の遺伝子にも、病気に関係する変化が患者さんで見つかっています。
ミトコンドリアDNAはミトコンドリアの中に存在していますが、実は1個のミトコンドリアの中に5~10個くらい入っています。そのようなミトコンドリアはひとつひとつの細胞に数十から数百個あるので、1細胞でみるとミトコンドリアDNAは数千個も存在していることになります。ですので、数千個もあるミトコンドリアDNAのほんの一部が変化しても細胞のはたらきに何も影響しないし病気にもなりません。
ところが、ミトコンドリアDNAの変化で病気になっている人は、通常は変化したミトコンドリアDNAの割合が高いことが知られているのです。
ミトコンドリアDNAは傷つきやすい
細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを塩基置換といいます。
また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。
塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。
ミトコンドリアは酸素を使ってATPを産生します。この際、体内に取り込まれた酸素の数%反応性の高い活性酸素やフリーラジカルになります。すなわち、ミトコンドリアは生体内における主要な活性酸素の産生部位でもあります。
正常な状態でも活性酸素は産生されていますが、電子伝達系や呼吸酵素系の活性が低下すると、電子伝達系から電子が漏れて活性酸素が生じやすくなります。
ミトコンドリアは活性酸素を多く産生するため、ミトコンドリアDNAに突然変異が起こりやすい環境を作り出しています。
しかも、ミトコンドリアDNAは核DNAと比べて修復能力が低いため、ミトコンドリアDNAで突然変異が起こる割合は核DNAの約10倍と考えられています。
このように、ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
このようにして先述のように、傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。このようにして片頭痛という”症状”は発症してきます。
一方、病気の90%は活性酸素が原因だと現在ではいわれています。
母から娘へと片頭痛が遺伝する理由は”ミトコンドリアDNA”にあった!?
母と娘の間で片頭痛が遺伝しやすいのは、ミトコンドリアに関係があります。遺伝にDNAが関係することは誰もが知っていることですが、細胞内のDNAとは別に、ミトコンドリアは独自のDNAを持っており、それが片頭痛の遺伝に関係しているのです。
ヒトの精子には16 個程度のミトコンドリアが存在します。一方の卵子は10 万個といわれています。そして、精子に含まれるミトコンドリアは受精後にすべて死滅してしまいます。父性よりも母性のほうが強いというわけです。
ということは、ミトコンドリアのDNAに関していえば、卵子に含まれるものだけが子供へと受け継がれる。つまり100 %の母性遺伝です。もし母親のミトコンドリアの代謝活性(元気さ)が低ければその影響を当然受けやすくなります。
さらに、男性に比べて女性のほうが脳内セロトニンの合成量がもともと少ないわけですから、片頭痛の症状が発生しやすいのです。母から娘へと片頭痛が遺伝してしまうのには、こういう理由があつたのです。
このように、私達の体を構成する細胞のDNAは両親の遺伝子を受け継ぐのですが、その細胞内に存在するミトコンドリアのDNAは母親の遺伝子だけが引き継がれていくことになります(100 %の母性遺伝)。
そのため、母親のミトコンドリアの数が少なく活性が低くければ、その子にはその性質が引き継がれ易くなります。また、男性に比べ女性の脳内セロトニン合成能力はもともと少ないことなどの理由から、母娘や姉妹に片頭痛持ちであることが多くなります。男性のミトコンドリア活性がその子に引き継がれていくことはありません。
ミトコンドリアの活性が低くなると、細胞が活動するために必要なエネルギー発生量も少なくなります。その結果、器官や組織を構成する個々の細胞のエネルギーの不足が直接的に器官の機能低下を引き起こすことになります。
父親から片頭痛を引き継ぐ場合は、細胞内のDNAから受け継がれたものです。
5.大部分の片頭痛では”多因子遺伝”
これまで述べましたように片頭痛の遺伝にはミトコンドリアDNAが関与しています。
そして、このミトコンドリアDNAは活性酸素で傷つきやすく、いろいろな”原因”でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。このようにして片頭痛という”症状”は発症します。
このことから、大部分の片頭痛では”多因子遺伝”であろうと推測されています。
”多因子遺伝”とは
多因子遺伝の概念(Frants RR,1999)は、以下のように考えられています。
1) 正常では,保護的遺伝子と有害遺伝子のバランスが保たれており疾病が発症しない.
2) 優性遺伝疾患では単一の有害遺伝子により疾患が発症する.
3-5)多因子遺伝疾患では3 種類以上の遺伝子において異常があれば発症するが,ひとつの遺伝子異常では発症しない.二つの遺伝子異常があるときには軽症であるか,あるいは無症状である.環境要因がこの表現型を修飾するものと考えられています。
片頭痛は、あたかも「遺伝」しているような「印象」はあります。
しかし、その遺伝の様式は、メンデル型”の”単一遺伝子異常”の優性遺伝でなく、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から受け継がれます。
この”多因子遺伝”とは、複数(3つ以上)の関連遺伝子をもとに、これに環境因子が加わって病気が発症してくるものを言います。
ということは、”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。
これにはミトコンドリアDNA(先述)が関与しています。
片頭痛を生じる単一遺伝子性疾患としては、家族性片麻痺性片頭痛Ⅰ型、家族性片麻痺性片頭痛Ⅱ型、CADASIL、MELAS、Osler-Rendu-Weber症候群がこれまで確認されております。このようなタイプは極めて頻度的に少ないものです。例外的です。
これに対して、大部分の片頭痛では”多因子遺伝”であろうと推測されています。
その可能性のある遺伝子として、これまでセロトニン受容体及びドパミン受容体の遺伝子多型のほか,メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR),アンギオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子多型などが検討されています。しかし、いまだ明確にされていません。
現在、明確にされていないからといって、このような関連遺伝子の探索だけに研究費を無駄に浪費をしてはなりません。
片頭痛が多因子遺伝であるとの根拠として・・
”遺伝素因”が同一であるはずの一卵性双生児の場合、必ずしも2人とも片頭痛を発症することはありません。
すなわち、一卵性双生児で、”遺伝的素因が全く同一である”はずのものが、必ずしも2人とも片頭痛を発症するわけではありません。
これは、何を意味しているのでしょうか? その後の後天的な要素、環境因子等々が関係している証拠ではないでしょうか?
一卵双生児の「片頭痛を発症」していない方に、もう片方の片頭痛を発症している人の「片頭痛の環境因子」を多数負荷すれば、恐らく、頭痛は誘発されるでしょう。
ただ、このような「実験」は人道上、許されることではないため、されていないだけの話です。
単純に言えば、一卵性双生児の子供の2人の学業成績が全く同じ成績かどうかをみれば理路整然としているはずです。2人とも必ずしも成績優秀とは限りません・・・
もう一つ興味ある事実があります。それは、東京女子医科大学の清水俊彦先生が「頭痛女子のトリセツ」(マガジンハウス)の中で、以下のような興味深い記述をされています。
もともと母親が頭痛持ちだったのですが、本人は今まで全く頭痛というものを経験したことがなかったある女性がおられました。
嫁いだ先では、旦那さんを含めて、おじいちゃん、おばあちゃん・・家族みんなひどい頭痛持ちの家系でした。ところが頭痛の経験のなかった彼女が、嫁いだ途端にひどい頭痛に悩まされるようになり、私のところへ来たのです。
話を聞いてみると、嫁姑の争いもなく生活環境的にはストレスも全くなく、特に問題はありませんでした。もしかして「片頭痛は伝染する病気なの?」といった疑問も湧いてきます。
が、実はそうではありません。さらに話を聞いてみると、この嫁いだ先の食生活に問題があることが分かりました。ほぼ毎日、洋食の連続。彼女は、もともと母親と同じ片頭痛を起こすかもしれない”遺伝素因”を持っていました。そこへ、血管拡張物質を多く含んだ毎日の食事が刺激となり、ついに脳の血管が耐えきれず、片頭痛を発症してしまったというわけです。
片頭痛のあなたの御兄弟・姉妹すべての方が片頭痛を発症しているのでしょうか?
恐らく、あなただけか、もしくは片頭痛でない方もおられるのが大半です。
同じ家族でありながら、あなただけが片頭痛を発症したということは、片頭痛をお持ちでない他のご兄弟姉妹との”生活習慣・環境の相違がどこかにある”と考えなくてはなりません。
もし、あなたの御兄弟・姉妹すべての方が片頭痛を発症しているのであれば、極めて特殊なケースと考えるべきです。あなたの家族全体の食生活・食習慣・住環境に問題があるものと推測されます。ここを糸口に解決策を模索します。
”多因子遺伝”をする生活習慣病
このような”多因子遺伝”をする病気としては、身近なものとして、生活習慣病であるⅡ型糖尿病があります。
Ⅱ型糖尿病は、糖尿病になりやすい素質(遺伝素因)をもっている人に、”環境因子”として、食べ過ぎや運動不足による肥満、アルコール、精神的ストレス、年をとること、その他多種多様の要因が加わって発症します。
こうしたことから、糖尿病の治療方針として、この環境因子の是正に努めるべく「食事療法」と「運動療法」がまず行われ、これに「薬物療法」が追加されます。
本態性高血圧の場合は、遺伝的体質的素因に加え、食塩摂取量、肥満、寒冷、ストレスなどの環境因子が加わり発症すると考えられています。
このように生活習慣病すべては、”多因子遺伝”と考えられています。
その他、”多因子”神経疾患として、特発性(真性)てんかん、孤発性パーキンソン病、多系統萎縮症、片頭痛、多発性硬化症が挙げられています。
分子化学療法研究所の後藤日出夫先生によれば、片頭痛の遺伝的因子としては、核遺伝子(DNA)のミトコンドリアへの影響も否定できませんが、ミトコンドリアのDNA活性が主と考えられます。
ミトコンドリアのDNAの遺伝子は母親の遺伝子だけが引き継がれ、女性は男性に比べセロトニンの合成能力が低いため、母と娘の間で遺伝しやすい、これが「単一遺伝子異常」を除く、唯一の遺伝的な要因だと考えられます。
それも、ミトコンドリアのどの部分のDNAがどうだから、どうなるといった類のものではなく、人にも背が高い人、低い人、肥えた人、痩せた人があるように、ミトコンドリアにも元気なもの、元気の無いものがいて、元気のいい母ミトコンドリアからは元気のいいミトコンドリアが生まれやすく、元気の無い母ミトコンドリアからは元気の無いミトコンドリアが生まれやすい程度のことです。ミトコンドリアは今の環境に満足してしまえば数を増やすことも元気に働くこともしない怠け者ですので、何らかの刺激で慌てさせるとその数や活性を増す生き物と考えられます。
ということは、少々元気の無いミトコンドリアであっても鍛えればそこそこ強くなるし、殺してしまえば(アスピリンなど)どうしようもなくなってしまうということです。
片頭痛の方はもともと活性の低いミトコンドリアを引き継いでいるわけですので、直ぐに活性を高めるということは困難だと思いますが、少なくとも殺すことを止め、元気を取り戻す刺激を与えれば、片頭痛の原因とならない程度には回復できるものと考えています。
先述の可能性のある遺伝子としての、ドーパミン受容体、セロトニン受容体の遺伝子多型、メチレンテトラヒドロ葉酸酵素、アンギオテンシン変換酵素遺伝子多型などについては、代謝異常であろうと思われます。
ドーパミン受容体やセロトニン受容体についても、さまざまなホルモンのバランスで受容体の活性は異なりますし、そこに活性酸素(電磁波、化学物質などの刺激による)が加わることや、さまざまな生理活性物質の影響を受けて、受容体の活性は異なると考えています。
当然、代謝の一種と考えると酵素、補酵素、ビタミン類、ミネラル類などの因子も考えねばなりません。
結論として、「片頭痛は決して遺伝だけにより起きる病気ではなく、生活習慣の乱れによって惹起される病気であり、生活習慣を正すことにより治る病気である」と述べておられます。
さらに、後藤日出夫先生は、片頭痛の大半は、その遺伝素因である「ミトコンドリア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を形成することにより引き起こされる生活習慣病とされると述べておられます。
そして、片頭痛の”環境因子”として「ミトコンドリアを弱らせる”環境因子”」「脳内セロトニンを低下させる”環境因子”」「体の歪み(ストレートネック)を引き起こす”環境因子”」の3つがあります。これらの”環境因子”の関わり方は人それぞれです。
片頭痛という頭痛は、皆さんのこれまでの生活習慣とくに食生活・姿勢等の問題が原因となり、謂わば、あなたの”生きざま”すべてが関与して起きてくるものです。
これらは、いずれも日常生活を送る上で、”何気なく無意識に”行ってきた「食事・姿勢・体の使い方」が原因となっていることを意味しています。このために、あたかも”遺伝的疾患”であると誤解された理由でもあります。とくに食習慣の関与が大きいのが特徴です。
これまで”片頭痛の多因子遺伝”については、鳥取大学神経内科の古和久典先生がまず最初に提唱され、東京女子医科大学脳神経センター・神経内科の橋本しおり、岩田誠先生(日本内科学会雑誌 第90巻 第4号)らが、”片頭痛の多因子遺伝”を支持されておられるようです。
6.1990年代に鳥取大学医学部・神経内科の下村登規夫先生は以下のような DASCH diet を提唱されておられました。そして、これが片頭痛の食事療法の基本とされていました。
片頭痛患者においてミトコンドリア機能の低下,脳内マグネシウムの低下とマグネシウムの発作抑制作用,脳内セロトニン減少の可能性,血小板内ラジカルスカベンジャー(SOD)の低下などの臨床的根拠(エビデンス)があることから、頭痛に関してはdietary approach to stop chronic headache (DASCH )と呼ぶ,食生活を中心とする生活習慣を見直すことで片頭痛治療を提唱されました.(MBT療法とも言われていました)
DASCH diet では上述のエビデンスに基づいてミトコンドリア機能を高める目的でビタミンB2を摂取し,マグネシウムを摂取します.さらにラジカルスカベンジャーとしてβカロチン,ビタミンEおよびCなどを摂取します.脳内セロトニンを増加させるため,セロトニンの前駆体となるアミノ酸のトリプトファンを摂取するように指導します.具体的な食物としては,ビタミンB2,E,Cなどおよびβカロチンを多く含む緑黄色野菜,果物,海苔,うなぎなど,マグネシウムを多く含む大豆製品,ほうれんそう,柿,魚介類,トリプトファンを多く含む大豆製品,卵(卵黄),脱脂粉乳,牛乳などの乳製品やバナナなどをできるだけ多く摂取するよう指導する.緑黄色野菜などの量は体重が約60kgの成人で300g/日以上を目標とします.
これらを行うことで、およそ9割の片頭痛が改善するとされています。ただし、最低でも3ヶ月、なるべく半年以上続けることが大切とされていました。
これにより、次第に頭痛発作の回数が少なくなるなどの改善が見られると述べていました。
以上から、慢性頭痛、とくに片頭痛とミトコンドリアの関与は明らかです。
慢性頭痛は”未病”の段階にある
日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛、片頭痛では、未だ自然治癒力の低下状態(ホメオスターシス三角の歪み)の段階・すなわち”未病”の段階にあり、単なる「症状」でしかなく、「病気」に至る途中の段階にあり、ここに諸々の生活習慣の問題が加わることによって、初めて「病気」としての「生活習慣病」・「がん」「認知症」へと進展していくものです。
そして、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な差異は、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”の有無でしかありません。
片頭痛の患者さんでは、緊張型頭痛の場合と異なって、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しますので、ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因の影響を、とくに受けやすいことになります。
このため、片頭痛では、緊張型頭痛に比べて、比較にならない程、頭痛の程度が極端に酷くなってきます。
ところが緊張型頭痛の場合でも、片頭痛のように遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しなくても、生活習慣の問題によってミトコンドリアの働きが極端に悪くなり、さらに「脳内セロトニンが枯渇」してくれば、片頭痛と同様の難治性の頭痛(慢性緊張型頭痛)を引き起こしてくることになります。
これを図表で表せば、以下のようにイメージされます。
片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine
慢性片頭痛 ・・・・ 慢性緊張型頭痛
片頭痛 頻発反復性緊張型頭痛
big(true)migraine 稀発反復性緊張型頭痛
連続体 ↑↑
緊張型頭痛 ・・・・ 日常的に感じる極く軽度の頭痛
small migraine
ということは、片頭痛での緊張型頭痛はsmall migraine で、本格的な片頭痛はbig true migraine で、これが連続しているということです。
緊張型頭痛はこれとは別に、独立して、存在するということです。
この差異は、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因の有無で決まります。
このように緊張型頭痛も片頭痛も連続した一連の頭痛であるということで、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違点は、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因の有無でしかありません。
以上のように、脳のなかに異常のない慢性頭痛とは、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、その他の一次性頭痛、これらを別個に個別に捉えることなく、すべてを一連の頭痛として、それもミトコンドリアの観点から考えることが重要になってきます。このような考え方で慢性頭痛の研究を進めるべきと考えます。
それでは、どのように考えるべきなのでしょうか?
片頭痛という頭痛は、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因をもとに、「健康的な生活」を阻害するような生活習慣を送ることによって、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛から進展してきた頭痛と考えるべきもので、謂わば「生活習慣病」のようなものです。先述のように”多因子遺伝”的疾患と考えなくてはなりません。”疾患”ではないのですが・・・”症候群(症状群)”です。
このような”多因子遺伝”をするものには生活習慣病である糖尿病、高血圧があります。
このような生活習慣病は、発症前の生活習慣の問題点が永年積み重なって発症してくるものです。ですからこうした生活習慣の問題点を改善・是正することによって糖尿病、高血圧といった疾患そのものの発症を予防していくのが原則です。
こういったことから、片頭痛も糖尿病や高血圧症のような生活習慣病と同様に、片頭痛がどのような生活習慣の問題点から発症してくるのか、といった観点から考え、どのようにすれば、片頭痛そのものを発症させずに済むのかを考えなくてはなりません。
このような知識を身につけることで、一端、片頭痛を発症した場合でも、これまでの自分の生活習慣を冷静に見つめ直すこと(内省すること)によって、問題点を炙り出し、これを是正・改善させることによって、片頭痛が改善されてくるということに他なりません。
このようなことは、片頭痛を発症させた時点で、できるだけ早期に着手することが極めて重要になります。このような対策が遅れれば・遅れるだけ、改善までの”道のり”が遠のくばかりになってしまいます。それは次から次に問題点が追加されてくるからです。
片頭痛発作時には、トリプタン製剤を服用せざるを得ませんので、発作が治まった時点で、先程の「生活習慣の問題点」を改善・是正させる必要があるということです。
このように鎮痛と平行して行う必要があります。ですから、このように対処しながら、発作が起きるということは、なお改善出来ていない生活習慣の問題点が残されていることを意味しています。これを幾度か繰り返すことによって、片頭痛を治していくということです。
こうしたことを行うためには、片頭痛がどのようにして発症し、どのような要因が関与しているのかを明確にさせておく必要があります。
「片頭痛って治るの!?」は、このようなことを明確にさせる目的で作成されています。
ですから、日頃から疑問になることを即座に解決できる「治療指針」が必要とされる所以です。
同じ生活習慣病であるⅡ型糖尿病では、治療指針として、「糖尿病治療のてびき」「食品交換表」があります。片頭痛でもこうした「治療指針」が求められています。
これまで、片頭痛を根治させようとされた方々で、誰一人として治らなかったひとはいなかったことを忘れてはなりません。
これまで、どれだけ多くの方々が血の滲むような努力と工夫をもとに片頭痛を克服してこられたのか、こうした先達の体験を忘れてはなりません。
そして、巷では、こうした体験に基づいて「片頭痛改善マニュアル」が極めて多く販売されていることを忘れてはなりません。
「片頭痛って治るの!?」は、こうした方々の体験・考え方をすべて包括した形で、構築したものです。
「健康的な生活を送る」ためには、
慢性頭痛とは”未病”の段階にあり、「健康的な生活」を送ることを阻害する生活習慣に根本的な原因があります。
「健康的な生活を送る」ためには、ミトコンドリア・腸内環境・生理活性物質が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
「姿勢の悪さ」は、胸郭を大きく開いての深呼吸ができなくなり、「健康的な生活を送る」上に、さまざまな悪影響を及ぼします。
さらに「運動不足」、「栄養のアンバランス」は「健康的な生活」を送ることを阻害する要因になってきます。
そこで、「片頭痛って治るの!?」では、まず第2章として、以下の項目について述べることにします。
(1) ミトコンドリア
(2) セロトニン神経系
(3) 生理活性物質
(4) 腸内環境
(5) 姿勢の問題
(6) 運動と栄養
そして章変えて、ミトコンドリアの機能を悪化させる要因とその対策について述べることにします。
この2つの章が、片頭痛という”症状”を引き起こさないための”鍵”となり、「片頭痛って治るの!?」での最も大切な部分に相当します。
ここでコマーシャルです。
頭痛が気になったら・・
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