悪酔い、二日酔いの起こるメカニズム
体内に入ったアルコールは、肝臓で分解されます。まずアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドになります。アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素により、無害な酢酸になり、さらに分解されて二酸化炭素と水に分解されます。
アルコールは、アルコール脱水素酵素以外に、ミクロソームエタノール酸化系酵素の働きでもアセトアルデヒドに変わります。この酵素の働きはアルコール脱水素酵素の1/3~1/4程度ですが、お酒を飲み続けると酵素量が増え、分解能が向上します。
アセトアルデヒドが体内に長く存在すると、さらに副腎からカテコールアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの総称。ストレス時に多量に分泌されるホルモンでもある)が分泌され、交感神経の興奮を引き起こします。
アセトアルデヒドは、飲酒2時間後くらいから増加し、顔の紅潮、頻脈、めまい、頭痛、悪寒、吐き気、嘔吐などの悪酔いと言われる状態を引き起こします。カテコールアミンによる交感神経の興奮、およびアルコールの分解過程で水が使われることや酒の利尿作用等による体内の水分不足は、頭痛、血圧上昇、食欲低下などの二日酔いと言われる状態を引き起こします。
アルコールやアセトアルデヒドの代謝速度は一定なので、それを超えないペース(ほろ酔い程度)でアルコールを摂取し続ければ、悪酔いや二日酔いにならずに済みます。
久里浜医療センター精神科診療部長の木村充先生によれば、”二日酔いのメカニズムは、実はまだ詳しく解明されていません。アセトアルデヒドだけでなく、様々な原因が複雑に関係していると考えられています”。
木村先生によりますと、二日酔いには、(1)アルコールそのものによる影響、(2)アルコールの代謝物、(3)酒の添加物―といった複数の要因が関係しているといいます。
アルコールで崩れる体内のバランス
まず、アルコールそのものが体に及ぼす影響として、最も自覚しやすいのは「トイレが近くなる」ことです。そもそも酒そのものが水分であり、過剰な水分を排出しようとするのは合点がいきます。しかし実は「体内の水分調節をする抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌がアルコールによって抑えられるため、水分が尿として排出されやすい」と木村先生が説明します。「必要以上に尿が排出されることで脱水気味になり、喉が渇いたり、頭痛を引き起こしたりすると考えられています」。
つまりアルコールは水分補給どころか、反対に脱水を誘発しやすいのです。これまで風呂上がりや、スポーツの後、わざわざ水を飲むのを我慢して冷たいビールで喉を潤すことが日常的になっている人はなおさら注意が必要です。
さらに、「アルコールは、免疫反応や炎症反応、生体防御に深く関わる『サイトカイン』を脳の血管周りで増加させます。これが頭痛を起こしやすくする原因の一つ」と木村先生は続ける。サイトカインとは、体内で起こった炎症などのトラブルを細胞同士で知らせ合う物質(微量生理活性タンパク質)のことです。特に片頭痛持ちの人がお酒を飲むと症状が悪化することもあると木村先生は指摘します。
一方、飲酒によってアルコールが胃粘膜を傷つけることも二日酔いの原因になるといいます。胃の内部は通常、細菌やウイルスなど外敵の侵入から身を守る胃酸と、胃酸から胃粘膜を守る胃粘液のバランスが保たれています。しかし、食事を取らず、酒だけを大量に飲み続けたり、ウオツカやウイスキーなど、アルコール濃度の高い酒に胃粘膜がさらされると、胃粘液のバランスが崩れ胃にダメージを与えてしまいます。これが二日酔いの胃の不調に関係しているのです。
アセトアルデヒドはすぐに分解されてしまいます
アルコールの大半は分解酵素が多く存在する肝臓で分解されます。最終的には水と二酸化炭素になります。
次に、「アルコールの代謝物」が及ぼす影響についてです。アルコールすなわちエタノールは、分解されると「アセトアルデヒド」「酢酸」を経て、最終的には水と二酸化炭素になります。二日酔いや悪酔いの原因とされる「アセトアルデヒド」には毒性があり、血中濃度が高くなるとドキドキしたり(頻脈)、皮膚が赤くなる、吐き気を催すなどの症状が現れます。個人差があるものの、アセトアルデヒドの代謝は早く、翌日にはほとんどが分解されてしまいます。
アセトアルデヒドはアルコールの代謝とは別のところで影響を及ぼす。「体内にアルコールが入ると、肝臓は最優先でアルコールやアセトアルデヒドを分解しようとします。これにより、他の栄養素の代謝が遅れてしまうだけでなく、肝臓の糖新生(グリコーゲンという物質から体を動かすエネルギー源であるブドウ糖を合成すること)も抑制されてしまいます」。
血糖値が上がらない状態(アルコール性低血糖)では、体に力が入らず無気力に陥りやすいと言う。飲んでいる最中から感じる方もいるかも知れないが、やたら空腹感をあおられるのもアルコール性低血糖によるものです。散々飲んだ後、シメにラーメンやお茶漬けといった炭水化物(糖質)が恋しくなるのは、体の正直な声なのです。
“酒の風味や個性”が二日酔いを誘引する
最後に、酒の風味や個性を決めるエステルやメタノールといった不純物について触れておきます。なかでも「メタノールは分解に時間がかかるため、体内に長時間とどまり、疲労感やだるさがいつまでも残るのです」。
ちなみに、不純物の含有量の多さは、ブランデー、赤ワイン、ラム、ウイスキー、白ワイン、ジン、ウオツカ、ビールの順。機会があれば、酒の種類と自分の二日酔いの程度を比べてみるのもよいでしょう。自分の体質と酒との相性が分かればしめたものです。例えば、「赤ワインではひどい二日酔いになるのに、日本酒では翌日に響かない」とか、「ビールならどんなに飲んでも平気なのに、ウイスキーは少量飲んだだけで使い物にならなくなってしまう」など、合う・合わないといった傾向が見えてくるはずです。
冒頭でも記したよう、二日酔いのメカニズムは、厳密にはいまだ謎です。木村先生は「残念ながら、二日酔いの特効薬はありません」と断言します。極論を言えば「飲み過ぎないことが一番」なのでしょうが、理性を保ち続けながら飲むのはたやすいことではありません。今宵(こよい)もひそかに忍び寄る二日酔い。酒飲み達は一刻も早い二日酔いの原因究明を待ち望んでいるに違いありません。
メタノールが二日酔いの原因のこともあります。
メタノールによる二日酔い
ウィスキー、テキーラ、ブランデーなどを飲むといつもとは異なる二日酔いになることがあります。
その二日酔いはもしかしたらメタノールが原因かもしれません。
ここでは二日酔いの原因のうち、特にメタノールを原因とする二日酔いについて、 なぜメタノールは重度の二日酔いの原因となるのか、メタノールの特徴、メタノールを原因とする二日酔い対策について述べておきます。
メタノール含有量と多く含むお酒
ほとんどのお酒は作る過程でメタノールが発生するため、多くのお酒にメタノールが含まれています。
しかし、政府の規制によりその含有量はエタノール100g当たり最大1g以下に規制されています。(※EUを参考。日本も同程度と推測。)
一般的にはアルコール度数の高いお酒ほど多く含まれますが、 テキーラ、ワイン、ブランデーなどには同じ度数でもより多く含まれ、ビールなどは少なくなっています。
これはお酒の原料となる果物により多くのメタノールが含まれることに起因しています。
ワイン(14%)では1000mlあたり0.6~1.4g程度 0~624mg程度、ブランデー(45%)だと1.8~4.5g 103~835mg程度のメタノールが含まれています。
なぜメタノールが二日酔いの原因になるのでしょうか
最も二日酔いしにくいお酒はエタノール100%です。
メタノールは通常のアルコール(=エタノール)と一緒に血液内に吸収されますが、
エタノールと比較すると肝臓での処理に非常に多くの時間を要します。
肝臓はエタノールのアルコール分解を行なっている間はメタノールの分解を後回しにしてしまいます。
その結果、メタノールが最後まで体内に残りいつまでもアルコールが抜けず身体疲労、だるさが残ってしまいます。
また、メタノールは肝臓で分解される時にホルムアルデヒド、ギ酸、二酸化炭素へと分解されます。
これら有害物質はめまい、頭痛、腹痛、吐き気、背中の痛みなどの原因となります。
二日酔いによる頭痛や吐き気に良く効く薬については、頭痛や吐き気をご参照下さい。
メタノールによる二日酔いを防ぐには
メタノールもエタノール同様、薬や栄養素により直接分解することはできません。
しかし、少しでも早く分解する為に避けるべきことや有効な手段が存在します。
肝臓の代謝を高める
メタノールもエタノール同様、肝臓で分解されます。
メタノールはエタノールの分解後に分解が始まることから、できるだけ肝臓の代謝を高め、より早く分解してしまうことで二日酔いの期間を短くすることができます。
低カロリー飲料、アスパルテームを避ける
二日酔いの水分補給とダイエットを同時にするため、アスパルテーム入りのダイエット飲料で補おうとするかもしれません。
しかし、人工甘味料アスパルテームは体内でメタノールに変換されるため、より肝臓の負担を高め治療を遅らせてしまいます。
できれば通常のミネラルウォーターや肝臓の代謝を高め二日酔いの症状を和らげる酸素入りミネラルウォーターを飲むのが効果的です。
果物、野菜、フルーツジュースを避ける
二日酔いにフレッシュジュースは非常に有効ですが、メタノールによる二日酔いの場合は逆効果になります。
理由は果実には微量なメタノールが含まれているからです。
できれば通常のミネラルウォーターやスポーツドリンクで水分補給を行うのが良いでしょう。
メタノール入りのお酒を避ける
どのようなお酒にも微量のメタノールは含まれていますが、より含有量の少ないものを飲むように心がけましょう。
メタノールは果実の発酵過程で多く生じる物質のため、果実系のお酒であるワインやブランデーを避けるだけでもメタノールが原因の二日酔いになりにくくなります。
病院へ
どうしてもしんどい時は病院へ行くのも効果的です。
二日酔いであることを伝えると点滴やメタノール特有の治療をしてくれることがあります。
病院では症状により無理に吐かせてくれたり、エタノール入り点滴をしてくれるなど、メタノール特有の治療方法があります。
二日酔い時で起こるのは頭痛などの症状だけでは無く知能が下がる?!
最近イギリスの中西部に位置するキール大学が発表した研究によると、二日酔いが起こると頭痛やその他の二日酔いの典型的な症状とともに、ワーキングメモリーまたは作業記憶と呼ばれる脳の働きが鈍る事が分かったそうです。
この作業記憶は特にIQテスト等の試験や事務手続きなどを行う上で必要不可欠な情報処理能力に大きく関わり、実際この実験で20代の被験者の情報処理に掛かる時間が40代レベルに落ち、ミスも3割増ししたそうです。
要するに、二日酔い時には私達の脳が脅かされているとも言えるのです。
私達の脳に悪い影響を与える犯人はアルコールの原料エタノールが体内で分解される事で出来る有害物質アセトアルデヒド。そのアセトアルデヒド等の有害物質が体内で作りだされ、頭痛などの症状を引き起こすのは‘コンジナー’と呼ばれるお酒を醸造する際に生じる物質が主な原因だそうです。
未成年の飲酒を取り締まる本当の理由
ですから、未成年に飲酒を禁止する本当の理由というのは、彼らの将来を左右する発達中の脳を飲酒による二日酔いから守るのが主な目的なのかもしれません。
しかも、飲酒と判断力や知能の高さの関係も叫ばれていて、スコットランドの長期間に渡る調査によれば、子供の頃のIQレベルと中年になった時のお酒の習慣には密接な係わりが有る事が分かったそうです。
比較的IQレベルが高い人達というのは二日酔いの経験をするとその後は飲む量や回数を控えるなどの対応が見られるのに対し、IQレベルが低かった人ほどいつまでも二日酔いになるまで飲み続けている傾向が高かったそうです。
確かに、親の経済状態や知能レベル、そして親の飲酒パターン等も子供のお酒を飲む習慣に大きく関わってくるようですが、この調査結果からも、判断力の未熟な未成年には体への悪影響と共に彼らの将来の為にも飲酒を取り締まる必要が有るのです。
二日酔いにならない為には…
年齢を重ねるとやはり身体の機能も衰え、二日酔いにもなり易くなるのが常識なのですが、二日酔いになる確率が高いのはどうしても若い20代が多い様です。
これは30歳ぐらいになると経験上から自分の飲める量を知っている為、「ココまで!」という判断が出来るのに対し、20代は健康に任せ、無茶な飲み方をする傾向にあるからなのです。
でも、「量を抑えたつもりなのに二日酔いになった!」という人もいるかと思いますが、これは飲む前の体調に大きく関わってきます。
例えば、アルコールを飲み始める前に既に睡眠不足だったり、脱水症状気味などと体調が万全でないのに飲んでしまうとそんなに飲んだつもりも無いのに酷い二日酔いになるなどの可能性も高くなります。
ですから、飲む約束のある前は充分な睡眠と水分を取るように心がけましょう。
また、直前に出来る事もあります。まずは空腹の状態でお酒を飲まない事。まずは、胃を満たしてからお酒を飲むようにしましょう。更に、お酒を飲みながら水を飲むのも効果的で、脱水症状を防ぐとともにお酒の量も軽減する事が出来ます。
そして、飲むお酒も色の薄い「白ワイン」や「日本酒」等がお勧めです。というのも、色の濃い赤ワイン、ブランデーやウイスキーは先ほど二日酔いの主犯格と紹介した‘コンジナー’がより多く含まれているので避けた方が無難なようです。
また、飲んだ後に「濃い目のコーヒーを飲むと翌朝楽になる」と実しやかに常識とされている事も有りますが、これは避けた方が良いでしょう。
ただでさえ、大量のお酒で胃が疲れているところへカフェインを摂取すると、胃痛、下痢などの症状を起こす事も珍しくなく、下痢を起こすと脱水症状を更に悪化させる事にもなります。
先ごろ、全米頭痛財団(National Headache Foundation/NHF)は、「二日酔いの頭痛を解消する最も効果的な方法は、はちみつを摂取することである」とする研究報告を発表しました。同研究の責任者であるMerle Diamond博士は、「はちみつには、果物の大半には含まれない果糖の一種が含まれます。その果糖がアルコールの分解を促進し、頭痛を軽減させる」と科学的に検証しました。
同報告は、「お酒を飲む前あるいは飲んだ後、はちみつ入りのビスケットやパンを少し口にするだけでも効果がある」と紹介しています。このほか、熱いお茶にはちみつとレモンを混ぜた“はちみつレモンティー”も酔い覚ましにおすすめしています。
また、はちみつには睡眠効果があり、早い眠りを誘うだけでなく、翌日には頭痛もないといいます。一方で、同報告は飲み過ぎる人たちに「お酒をほどよく控え、速いペースで飲まないこと。空腹時に飲まないこと。過度の飲酒による日常性の頭痛は、薬物療法が必要になる」と注意を促しています。
アルコールと活性酸素の関係
活性酸素は万病のもと
お酒に限らず、炭酸飲料などからでも活性酸素は発生します。
しかしお酒が発生させる活性酸素は他の飲み物より多くなってしまします。
お酒やアルコールなどを摂取すると胃や腸などでは吸収されず肝臓に送られます。
アルコールは肝臓で分解されますが、この分解の時に活性酸素が発生するのです。
発生した活性酸素は肝臓から全身へと運ばれますが、まずは肝臓が、アルコールによって発生した活性酸素の被害を真っ先に受けることになります。
肝臓では、アルコールは異物として、「チトクロムP450」という酵素により解毒されます。その時、多量の活性酸素が発生するのです。
つまり、アルコールの飲みすぎは、単なる二日酔い、頭が痛くなるだけでなく、肝臓で発生した活性酸素により、細胞を傷つけ、死滅させ、体内のあらゆる臓器を痛めることになるということを意味しています。
活性酸素とは大気に含まれる酸素分子が反応性の高い物質に変化したものです。
一酸化炭素や二酸化炭素、オゾンなども活性酸素なのです。
生物は生命維持活動に必要なエネルギーを得る為に絶えず酸素を消費しています。
酸素は消費される際に、反応性が高い活性酸素に変換され消費されるのです。
しかし発生した活性酸素は様々な物質に対して非特異的な反応をしてしまう為、細胞そのものに損傷を与えてしまう為、とても有害なものだとされています。
細胞内で消費しきれなかった活性酸素は、癌や生活習慣病などの様々な病気の原因にもなってしまうのです。
普通に生活していても発生する活性酸素がお酒を飲むとさらに大量に発生してしまうのです。
お酒を毎日のように飲んでしまうと通常より活性酸素の発生量が増えてしまいます。
若いうちは抗酸化酵素などが十分に働いてくれるので人体への被害は問題ないのですが歳をとり体力が衰えてくるとこの抗酸化酵素が十分な働きをしてくれなくなります。
そこへ飲酒などで摂取したアルコールにより大量に発生した活性酸素がやってくるのです。
活性酸素は健康だった細胞などにも影響をあたえたりします。また細胞そのものを死滅させてしまうので様々な臓器などへ悪影響をもたらしてしまいます。
「動脈硬化」「心筋梗塞」「脳梗塞」などの引き金になりかねないのが「活性酸素」なのです。
そのような活性酸素を大量に発生させないように、体の事を気遣ってお酒を飲みましょう。
アルコールが代謝されてできるアセトアルデヒドがタンパク質を修飾してタンパク質分解系を活性化するのが仕組みの一つではないかと考えて、調べてもらったことがありますが、結論を出すまでにはいたりませんでした。アセトアルデヒドはDNAを修飾し発がんリスクを高めると言われていますから、"百薬の長"の仕組みではないかもしれません。 Wangらは、その仕組みにかかわるかもしれない実験結果を報告しています(Wang et al. Free Radical Biol Med 43: 1048-1060, 2007)。
彼らはスナネズミの脳の虚血再還流傷害モデルを使って、アルコール摂取の影響を調べています。スナネズミは頸部の血管を縛って一時的に脳への血流を止めた後、再開すると神経細胞死が起こるので脳梗塞の病態モデルに使われています。この場合、あらかじめネズミにアルコールを摂取させておくと脳細胞の酸化傷害が軽減しました。このとき活性酸素を産生するNADPH酸化酵素反応の阻害剤を与えておくとこの軽減作用が減弱したというのです。これはアルコール摂取によってこの酵素を介して産生された活性酸素が虚血再還流傷害を抑えることに役立っていたことを示唆しています。適度なアルコールが"百薬の長"である仕組みの一つかもしれません。興味深いのは、ここでも活性酸素が有益な働きをしているようだ、ということです。
もちろんアルコール摂取は種々の生体反応を起こしますし、よく知られているように運動の場合と同様に過度は有害ですから、"ほどほど"が大切であることは言うまでもありません。徒然草にも『、・・・萬の病は酒よりこそ起れ』とあります。ともあれ、アルコールもホルミシス作用をもつ物質の一つといえるでしょう。
Sanoはアルデヒド、とりわけ過酸化脂質に由来する高反応性のアルデヒド、4-ヒドロキシノネナール (4-hydroxy-2-nonenal, 4-HNE) 、が酸化ストレスに対する心筋保護作用もつと興味深い報告をしています (M Sano: Cardiacprotection by hormetic response to aldehyde Circ J 74: 74: 1787-1793, 2010)。 4-HNEはタンパク質や核酸を修飾して有害とされていますから、適度な産生が心筋梗塞を予防する効果があるとなるとアルデヒドにもホルミシス作用があることになります。
片頭痛とアルコール
片頭痛は血管の拡張によって起こるという説が一般的です。
アルコールを飲むと血管が拡張しますから、当然片頭痛が起きます。
こういったことから多くの片頭痛患者では、アルコールが片頭痛の引き金(トリガー)になっているようです。
患者さんによっては、赤ワインでは頭痛が誘発されるけれども、白ワインでは大丈夫の方もおられるようで、すべてのアルコールがダメというわけではないようです。
また、アルコールの飲みすぎによって多量の活性酸素が発生することも関与しているものと思われます。
アルコールのなかでも赤ワインが誘発・増悪因子として有名であり,痛みに関連するヒスタミンや血管拡張作用の関のあるポリフェノールの関与も報告されています.
赤ワインで片頭痛が誘発されると認識している片頭痛患者と,認識していない患者での,片頭痛誘発に関する調査では,認識がある群でのみ片頭痛発作が誘発されました.
この結果は,赤ワインが絶対的な片頭痛発作の誘発因子なのではなく,個々において誘発因子が異なる可能性を示唆しています.
群発頭痛とアルコール
群発頭痛が起きている1~2か月の間は、アルコールを飲むと必ず頭痛が起きます。しかし、アルコールが群発頭痛の直接の原因ではありません。群発頭痛は、血管が拡張して起こると考えられていますが、アルコールで血管が拡がる程度では、群発頭痛は起こらないからです。
アルコールで血管が拡がると、その拡張を元に戻そうとして、ノルアドレナリンやセロトニンなど、血管を収縮させる物質がたくさん出てきます。これらの物質は、人間の体を活発にする交感神経系の物質です。交感神経系の物質がたくさん出てしまうと、それらの物質が足りなくなって、今度は逆に、体の活性化を鎮めようとする副交感神経系の方が優位に立つようになります。そのような副交感神経系が優位にある状況が1時間ぐらい続くと、血管を拡張させます。どうやらこのときの血管の拡張で、頭痛が起こるようなのです。
ですから、お酒をのんですぐに群発頭痛が起こることはほとんどありません。飲酒後だいたい40分から1時間後のお酒が少し醒めたころに群発頭痛はおこります。