第12回 第7章 慢性頭痛の症状 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

第7章 慢性頭痛の症状

  脳のなかに異常のない一次性頭痛(慢性頭痛)を構成する要因には、これまで述べてきましたように以下の要因があります。

   1.酸化ストレス・炎症を形成する要因
   2.ミトコンドリア・セロトニンの要因
   3.「体の歪み(ストレートネック)」の要因
   4.自然治癒力を低下させる要因
   5.脳過敏を引き起こす要因


 この5つに共通する要因は2のミトコンドリア・セロトニンの要因です。
 慢性頭痛は、ミトコンドリアの機能を悪化させる要因によって、1の酸化ストレス・炎症体質がその根底に形成されます。この体質が根底に存在し、ここに3の「体の歪み(ストレートネック)」すなわち日常的に前屈みの姿勢を強制される生活環境によって、日常的に感じる極く軽度の頭痛を自覚するようになります。これに対して、例えば日常茶飯事に市販の鎮痛薬を頻繁に服用していますと、4の自然治癒力を低下させることになり、頭痛の程度は次第に増強し、頻繁に自覚するように至ります。
 ここに、5の脳過敏を来す要因が追加されることによって、頭痛はさらに増強してくることになります。
 片頭痛では、生まれつきミトコンドリアの働きが悪いため、1~5の要因への影響が大きくなるということです。そして、ミトコンドリアはセロトニン神経系と連動して働いており、生まれつきミトコンドリアの働きの悪さは、片頭痛患者さん個々で異なり様々な程度の差がみられるということです。こうしたことから、基本的には、片頭痛では、脳内セロトニンの低下した状況は、程度の差はあれ共通してみられるということです。
 そして、3の「体の歪み(ストレートネック)」は、慢性頭痛の基本骨格になっており、謂わば緊張型頭痛に重なった形で片頭痛が上に被さっているということです。
 問題は、片頭痛の患者さんによっては、2か3が主な要因になっている2つのタイプに大別されますが、多くの場合は、2のミトコンドリア・セロトニンの要因が主要因になっていますが、なかには3の「体の歪み(ストレートネック)」が主要因になっている場合があるということです。とくに、ムチウチの後に併発した片頭痛の場合です。
 このように、慢性頭痛の程度は、日常的に感じる極く軽度の頭痛から片頭痛のような激しい頭痛まで連続しており、厳密には区別はできないということです。
 ということは、患者さんによっては、私の頭痛は片頭痛なのでしょうか、それとも単なる緊張型頭痛なのでしょうか、とよく質問されますが、私は、日常的な生活を行う上で、支障があれば片頭痛であり、なければ緊張型頭痛と思って下さいとお答えしています。
 ということは、患者さんによっては、ある時は日常生活に殆ど支障はなかったが、ある時は仕事が出来ない程、激しい頭痛を感じることもありうるということです。このように同一の患者さんでも、ある時は日常生活に支障がある程の頭痛を、ある時はまったく支障がなかったりすることもあり得るということです。
 このように厳密には区別することはできません。それは、これまで述べてきたような要因が重なり合った起きてくるからです。
 専門家は、こうした慢性頭痛に対して、「国際頭痛分類 第3版β版」に照らし合わせて、診断しています。「国際頭痛分類 第3版β版」では、片頭痛、緊張型頭痛それぞれが厳密に定義されています。ここではトリプタン製剤の処方に適した頭痛を片頭痛と定義していることを忘れてはなりません。このため、専門家によって片頭痛と診断された患者さんは、極く軽度の頭痛の段階でさえも、トリプタン製剤を服用される人もおられるようです。
 医者は、頭痛が始まった段階で出来るだけ早く服用するように指導されるために、患者さんは酷くならない段階で、トリプタン製剤を服用せざるを得ないからです。
 ここに、トリプタン製剤乱用による薬剤乱用頭痛を防ぐ難しさがあります。
 このように片頭痛か、緊張型頭痛かの区別は極めて困難なことが理解されたことと思います。しかし、現実には、これが区別できなければ安心して生活することはできません。


 こうしたことから、どのように区別すべきかについて、この章では述べていくことにします。そこで、典型的な片頭痛を提示して、これを基にして考えていくことにします。
 多くの片頭痛患者さんは、自分の片頭痛のパターンを記憶されておられるようですが・・・・

片頭痛の診断基準    

 片頭痛は「国際頭痛分類 第3版β版」によって、その症状の上から厳密に、片頭痛と診断するための基準が定められています。

 頭痛の回数が5回以上というのは、おなじような頭痛が過去に5回以上起きたかどうか、ということです。
 鎮痛薬を飲まないとき、または飲んでも効かないときの痛みの持続時間は、だいたい4時間から 72 時間程度。治ってしまえばケロッとしています。
 痛みの特徴としては、片側性(頭の左右どちらか一方が痛い)、拍動性(心臓の鼓動に合わせてズキズキ痛む)、痛みの程度は中等度から強度(日常生活に支障が出る)、階段を上がったり頭を動かすなどの日常的な動作によって悪化する、などがあります。
 大切なのは、このうちの「2項目以上」に当てはまれば片頭痛と診断することができる、ということです。必ずしも、この特徴が全部当てはまらなければならない、ということではありません。片側性ではなく両側が痛む場合もあり、また拍動性の痛みでないこともあります。
 片頭痛が起きている間は、ひどいときには吐き気があったり、実際に気持ちが悪くて吐いたりします。また光や音に敏感になって、静かな暗いところでじっとしていたい、という症状もあります。
 これが基本的な診断基準です。
 この中で、私が最も重要視するのは、頭が痛いときに仕事や学校、家事など、自分がそのときにしなければならないことを、やむを得ず休むことがあるかどうか、という点です。会社員なら会社を休んでしまう、学生なら学校に行けない、主婦なら例えば掃除や料理の手を止めて座り込んだり横になったりするかどうか。
 これが「イエス」であれば、その患者さんはまず間違いなく緊張型頭痛ではなく片頭痛だと言ってよいと思います。
 また片頭痛は、”遺伝素因”が関与する病気です。片頭痛がある人は、ご両親のどちらか、また両方に片頭痛があります。男親から遺伝することもありますが、女親からの遺伝の方がずっと多く、また片頭痛の患者さんも女性の方が圧倒的に多数です。このことは、これまでも述べたことです。
 頭痛の患者さんに、あなたのお母さんは時々頭が痛いと言って家事を休んで寝ていませんか? と尋ねますと、かなりの割合で「時々、休んでいます」という答えが返ってきます。これもまた片頭痛診断の助けになります。
 この場合、あなたのご両親に片頭痛はありませんか? という尋ねかたをすると、なかなか「あります」という答えは返ってきません。
 昔から頭痛持ちは大勢いますが、それを片頭痛だとは思っていないし、また頭痛が病気であるとは考えていないため、患者として表には出ないことが多いのです。頭痛くらいで医者に行っても仕方がない、鎮痛薬を飲んで静かにしているしかない、と考え、母親がそうしていたから娘も、またその子供も、と延々続いているような気がします。

痛みだけではない片頭痛の症状

 片頭痛の診断は、診断基準に照らして判断すればそれほど難しいものではありませんが注意が必要なのは、痛みだけが片頭痛の症状ではなく、また痛んでいる時だけが片頭痛なのではない、ということです。
 片頭痛の患者さんはよく、痛みがくるのがわかる、と言います。
 背中が凝ってきた、凝りが肩にきた、上に上がってくる、ズキズキする、きた!というように、痛みがくる過程が感じられるのが片頭痛の1つの特徴で、片頭痛の予兆と呼ばれています。所謂、”頭痛信号”です。
 片頭痛の診断基準の中にも、痛みの最中の吐き気や音・光への敏感さなど痛み以外の症状が含まれていますが、片頭痛は頭の痛みだけが症状ではありません。
 何となく痛くなりそうな時期から痛みが引いていく時期に至るまで、予兆期、前兆期、頭痛期、緩解期、回復期という5つの過程があり、特徴的なさまざまな症状が見られることがあります。

1.予兆期

 多くの患者さんが感じる肩や背中、首の凝り、あくびなどの症状は予兆期に現れるものです。予兆期にはこのほか、疲労感や、集中力の低下、精神的な落ち込み、抑うつ感などが見られる場合があり、また人によっては、お腹がすいて過食をしてしまったり、痛みなどの感覚が過敏になったりという症状が出ることもあります。
 予兆は、長い人では2,3日間、続くことがあります。

2.前兆期

 頭痛の起きる直前に特徴的な前兆が現れることがあり、これを前兆期と呼んでいます。
 前兆は患者さんによってある場合とない場合があり、片頭痛の分類でも「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」に分けられています。
 前兆には、視覚性前兆、感覚性前兆、言語性前兆の3種類ありますが、ほとんどが視覚性前兆で、感覚性・言語性前兆はあまりみられません。前兆は、頭痛の始まる前に 10分から 20 分程度続く一過性の症状で、長くても1時間以上続くことはありません。
 視覚性前兆はいわゆる「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれるもので、初めに視野の中心付近にチカチカ光るものが現れます。チカチカするものは次第に右または左の視野に広がっていき、やがてその部分の視力がなくなります(視野欠損)。20 分程度経つと視力が元に戻り、このあと、頭痛が起きます。
 感覚性前兆では、顔面や腕、足などにピリピリ、チクチクした感覚が現れ、また言語性前兆では一時的に言葉が話せなくなる状態になりますが、これらが現れるのは極めて稀です。

3.頭痛期

 頭痛期は、実際に痛みを感じている状態で、痛みの程度も軽度から中等度、重度とさまざまです。この期間には、吐き気や嘔吐、音・光(眩しさ)・臭いなどに対する過敏、食欲の減退などの症状があります。
 鎮痛薬を飲まずにいた場合、あるいは鎮痛薬を飲んでも効き目がなかった場合、頭痛は4時間から 72 時間続きます。

4.寛解期

 頭痛が回復に向かう時期で、少しずつ痛みが引いていきます。この時期、眠気を感じたり、実際寝込んでしまう場合もあります。

5.回復期

 頭痛がなくなった後も、しばらくは疲労感を感じたり食欲が低下するなどの症状が見られることがあります。また精神的にうつ状態になったり、逆に躁状態になったりすることもあります。この症状は半日から3日程度、続くことがあります。

 このような片頭痛の症状は、患者さんによって多く現れる場合、少なく現れる場合、また全くない場合それぞれですが、全体としてこのような経過を辿ることがほとんどです。
 そのため片頭痛の診断には、基本的な診断基準で判断するとともに、痛みの前後の精神的、身体的な状態を含めた包括的な診断を行うことが必要です。
 例えば、片頭痛の予兆期に見られる肩や首の凝りは、緊張型頭痛でも見られます。緊張型頭痛では肩の凝りが原因になって頭痛が起きますが、片頭痛の場合、肩の凝りは頭痛の予兆にすぎません。そのことを把握していないと、「肩が凝って」という患者さんの言葉を聞いただけで、他の診断基準を無視して「これは緊張型頭痛」と間違って診断してしまうことになります。
 片頭痛の患者さんで、診断基準から言えば典型的な片頭痛であり、また経過各期の症状をかなり多く持っているにも関わらず、あるいはさまざまな症状を持っていたが故に、いつまでたっても片頭痛という診断が受けられず、20 年間も苦しむ人もいます。

 このように片頭痛は交響曲・シンホニーのような一連の流れがあるのが特徴です。
 このような症状の流れが、謂わば”不思議で・神秘的な頭痛とされる理由にもなっています。

典型的な片頭痛の症状とは? (寺本純先生による)

1.突然、発作性に頭痛がおこる
2.頭痛が起こる前になんらかの前ぶれがある
3.頭の片側が痛むことが多く、両側が痛む場合でも左右差がある
4.頭痛がピークに達するまでには拍動感のある痛みを感じる
5.頭痛の最中に食欲低下、吐き気、嘔吐をおこすことがある
6.頭痛の最中には、音、光、匂い、振動が嫌になる
7.血管が拡張しやすい状況になると頭痛がおこりやすい
8.遅くとも25 歳までには発症する
9.祖父母、両親、兄弟姉妹にも同じような頭痛がある
10.妊娠中や授乳期には頭痛が軽くなる
11.中年になると頭痛は軽くなるが、頭痛の回数が増えたり時間が延びる
12.60 歳を過ぎると頭痛は軽くなり、70 歳以上ではほぼ消えてしまう


 このように、予兆期、前兆期、頭痛期、寛解期、回復期の5段階が一連の片頭痛発作になっているのが特徴とされています。


頭痛がおこる前になんらかの前ぶれがあります

 予兆期、前兆期、頭痛期、寛解期、回復期の5段階が一連の片頭痛発作になっていて、片頭痛のほとんどは、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の2種類で占められています。「前兆のある片頭痛」は全体の20 % 弱、「前兆のない片頭痛」は全体の80 %くらいです。
 「前兆のある片頭痛」にはその名の通り前ぶれがあるのですが、この前ぶれは、ほとんどの場合、目の前に星が飛ぶ、ギラギラとまぶしく感じる、目がみえにくくなる、などという視覚の異常です。星のようなものが現れ、それがだんだん広がっていき、やがて消えていく症状は、閃輝暗点と呼ばれ、よく知られた症状です。
 この「前兆のある片頭痛」の前ぶれは、日本人ではほとんどが視覚症状なのですが、欧米人では視覚症状は40 % ほどで、残りは、言葉がうまく出なくなるといった言語障害であったり、体の半身がしびれるといった感覚異常が占めています。
 また、それらが交互に変化しながら現れることも多いようです。
 日本人でも言語障害や半身のしびれが現れる人がいますが、これは非常にまれです。
 「前兆のある片頭痛」の場合には、これらの前ぶれ症状がだんだんと消えていき、それに代わって頭痛が起こってくるというパターンを辿ります。
 これに対して、片頭痛の大半を占める「前兆のない片頭痛」は、その名称からいかにも前ぶれがないように思われますが、じつは違います。
 「前兆のない片頭痛」もほとんどの場合、なんらかの前ぶれがあるのです。 ただ、「前兆のある片頭痛」のようにはっきりした症状ではないために、「前兆のない片頭痛」と命名されているのに過ぎません。
 では、「前兆のない片頭痛」の場合には、どんな前ぶれが出るのでしょうか?
 その症状はさまざまですが、多いものとしては、首すじや肩の張り、生あくび、具体的な症状は出ないが何となく予知感(頭痛がおこりそうな感じ)がある、軽い頭痛がする、といったものです。
 また、それほど多くはないのですが、腹部にも症状が現れる人もいます。膨満感、排便感、吐き気(悪心)逆に食欲亢進など、胃腸の蠕動運動の乱れによる症状が現れます。
 「前兆のない片頭痛」の場合には、「前兆のある片頭痛」のパターンとは異なり、なんらかの前ぶれの症状が続いたまま、頭痛が起こってきます。

 「前兆のある片頭痛」と 「前兆のない片頭痛」の分けて、日本人では「前兆のある片頭痛」として、閃輝暗点と呼ばれる視覚の異常が多いとされ、「前兆のない片頭痛」としては、具体的な症状は出ないが何となく予知感(頭痛がおこりそうな感じ)があるとされています。これは予兆と称されるものです。
 この予兆と呼ばれる症状としては、あくびが出るとか,異常にお腹がすくとか,イライラするとか,眠くなるなどの症状のことをさしています。


 現在、専門家の間では、こうした予兆や前兆がなぜ起きるのか原因が不明とされます。
 前兆に関連して、「大脳皮質拡延性抑制」が提唱されていますが、この「大脳皮質拡延性抑制」を起こす原因が分かっていないとされます。
  発作が鎮まった後も気分の変調があったり,尿量が増加したりするなど全身の症状を伴うことが分かりました。
 そうなると,片頭痛は脳の血管,あるいは脳だけの局所的な疾患ではないのではないかという疑問が持たれています。


1.予兆はどのようにして起きるのでしょうか?

予兆と脳内セロトニンの低下

 片頭痛の患者さんでは、ミトコンドリアの機能が低下していますので、同時にセロトニン神経系の働きが悪くなっています。ですから生活習慣の問題から「脳内セロトニンが低下した状態」が潜在的にあります。
 片頭痛発作時には、”さらに”脳内セロトニンが低下し、これが片頭痛の発作に繋がってきます。 

 脳内セロトニンは、脳内の様々な神経伝達物質に作用して「精神を安定させる」役割を持っており、さらに「満腹感」を感じさせ、食欲を抑制する作用も持っています。このため、強いストレスを感じたりイライラする時に甘いものや肉類などを食べたくなります。これは脳内セロトニンが低下したためです。
 脳内セロトニンは、精神安定作用と食欲コントロール作用を合わせ持っていますので、片頭痛発作前は脳内セロトニンが不足しており「精神的不安定」と「食べたい!」という欲求がよく連動して現れます。
 このため、片頭痛の予兆として、無性に空腹を感じて、甘い物を食べたくなる、イライラするとか,眠くなるなどの症状が起きてきます。
 これは脳内セロトニンの低下によるものです。

 発作が鎮まった後も気分の変調があったりするのは、なお「脳内セロトニンの低下」が残存しているものと思われます。

 これとは別の症状として、片頭痛が起きる前兆として、1週間前や数時間前に、”生あくび”が続けて出ることがあります。
 セロトニンを分泌する縫線核は、呼吸中枢にセロトニンを送って呼吸量を調整しています。縫線核は毛細血管中にセンサーを持っていて、血液中の酸素量などをチェックしているのです。体内の酸素量が不足したときにはセロトニンの分泌量を増やし、呼吸中枢を刺激します。
 したがって、セロトニンが不足すると中枢神経を充分に刺激できなくなります。そうなると酸素不足のままか、より不足した状態におかれることになりますので、それならば酸素をたくさん入れなければと、反応して生あくびが出るのだと考えられています。
 片頭痛発作前には、脳内セロトニンが低下しており、このため片頭痛の予兆として、生あくびが頻発してくる場合があります。

 ただ、片頭痛患者さんすべてにこのような予兆がみられる訳ではありません。 このため、こうした予兆のある場合は、「脳内セロトニンの低下」が著しい状態にあるものと考えるべきです。


2.前兆の「閃輝暗点」はどのように起きるのでしようか

1.マグネシウム欠乏の観点から

 マグネシウム欠乏は、『皮質拡延性抑制』を発生させ、三叉神経刺激へと繋がり、片頭痛を発生させると謂われています。
 米国の研究では、400mgのマグネシウムを毎日補充すれば3~4週間後に片頭痛の頻度が減るという報告もあります。
 マグネシウム欠乏は、細胞の興奮性を増します。その結果、神経の過興奮
不安定が生じ、拡延性抑制を発生させます。片頭痛トリガーが発動します。
 現在、この『皮質拡延性抑制』を抑える治療薬は開発されていませんが、片頭痛患者に非常に効果があり、皮質拡延性抑制を抑制する物質として期待されているのが『マグネシウム』です。

「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、マグネシウム不足が加わると・・

 片頭痛の方は生まれつきミトコンドリアの機能低下が存在します。
 ここにマグネシウムが不足すればどのようになるのでしょうか?

 マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
 細胞膜にはミネラルイオンが通過できる小さな「穴」があり、これを使って必要なミネラルを自在に出入りさせることで細胞内のミネラルイオン濃度の調整しています。ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に調整する作用があります。
 マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。このために、カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こります。このようにして、ミトコンドリア内カルシウムイオン濃度を薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
  細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎますと、ミトコンドリアの調整機能は破壊されてしまいます。
 その結果、調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
  ミトコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が強く関係していて、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症にも非常に大きな原因となります。

 このようになった細胞に、適量のマグネシウムが供給されると、貯まっていたカルシウムイオンなどが排出され、それに続き、水分も排出されます(これは、片頭痛発作後、尿量が増加する原因になっています)が、この水ぶとり状態も限度がありカルシウムイオンがある量を超えると、その細胞は不必要となり見捨てられます。そして、後にはカルシウムイオンなどで一杯になった固まりだけが残されます。これが石灰化した細胞のことです。
 結果的に、この細胞は死滅してしまいます。
 細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出するカルシウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続くことになります。片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内のカルシウム濃度の高まりによっても生じます。
 それはつまり、マグネシウム不足がもたらす結果でもあるのです。
 このようにして、マグネシウムイオンの低下はミトコンドリア内カルシウムイオンとナトリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招きます。このようにして、細胞は興奮しやすくなります。 これが「脳過敏」を引き起こしてきます。このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの代謝異常をきたして、神経細胞を興奮しやすくすることになります。これが『皮質拡延性抑制』を発生させることになります。

 これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。

 片頭痛では、ミトコンドリア機能障害が生まれつき存在するために、ミトコンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。マグネシウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているのです。神経細胞の”興奮性の亢進”はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの機能障害の結果として生じているものです。このようにして、「脳過敏」が形成されることになります。

 片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」ことが強調されていますが、”脳の興奮性の亢進”は、上記のことを示すものです。
 そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化・慢性化させる”元凶”にもなってきます。


2.「体の歪み(ストレートネック)」の観点から

 小橋 雄太さんはブログ「イミグラン錠副作用なしで片頭痛を治しちゃえ」で自らの体験を述べておられ、10年以上、閃輝暗点を伴う片頭痛に悩まされ、「体の歪み」に片頭痛発作の引き金があることに気付いて、当初は整体師さんの指導を受け、この指導を毎日忠実に守り・実行することによって片頭痛・閃輝暗点を一緒に改善されました。これも以前述べたことです。
 このようにカイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々は「体の歪み(ストレートネック)」に対して施術され、閃輝暗点を改善されておられます。
 こうしたことから、カイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々からは、トリプタン製剤やカルシウム拮抗薬「ロメリジン」などの薬物では治るはずはないと唾棄される現実があるようです。

 私は「閃輝暗点」を伴う方々で、頸椎X線検査でストレートネックを呈する方々に対して、ストレートネックを改善させることによって、閃輝暗点がどのようになるのかを検討してきました。
  60歳以上の方で、若い頃、片頭痛の既往のない方で「閃輝暗点」を訴えて来院された方々を15例経験していますが、これらの方々全例にストレートネックを認め、同様に「ストレートネックの改善」のみで、「閃輝暗点」は消失しています。
 これとは別に、若い世代の「閃輝暗点」を伴う片頭痛の場合も、当然「ストレートネック」を伴っておられる方々に「ストレートネックの改善」を行わせますと、前兆である「閃輝暗点」がまず消失してから片頭痛が改善されていくという経過をとっています。

 このような成績をみますと、閃輝暗点出現時の血流低下の状態をSPECTもしくはMRIで確認されますが、これは”閃輝暗点出現時”の”結末”を観察しているに過ぎないと考えるべきもので、あくまでもその引き金となるものは、頸部の異常な筋緊張”「体の歪み(ストレートネック)」”にあるものと考えるのが妥当と思われます。
 しかし、現在では、このような「体の歪み(ストレートネック)」の存在意義そのものを否定されるため、このような考え方に至ることはありません。


3.発作後の”後症状”として”尿量が増加”するのでしょうか

 先述のように、マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
 マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こります。それを薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
  このようになった細胞に、適量のマグネシウムが供給されると、溜まっていたカルシウムイオンなどが排出され、それにつづき、水分も排出されます。

 このように、発作中にマグネシウムがホメオスターシスという生体の恒常性維持機能によってマグネシウムが補充され、発作が治まる段階で、マグネシウムが補填されることによって、薄めるために生じた細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態が改善されることに伴って尿量が増加することになります。


 ところが、患者さんによっては、こうした前兆とか予兆など全くなく片頭痛へと進展される方もおられます。

緊張型頭痛がひどくなると片頭痛になる?

 「日常的に肩こりを自覚していて,疲れたり睡眠不足になると肩から後頭部に重い感じの痛みが上がってきます。後頭部の鈍痛で終わるときもありますが,我慢していると頭仝体がガンガン痛んで吐き気も出現し,ひどいと嘔吐する。 ガンガン痛いときには,家族の話し声もうるさく感じて,静かな部屋で暗くして横になると少し楽になる」といったことはなかったでしょうか。
 ひどい頭痛はおそらく片頭痛と診断して問題はないでしょう。後頭部の鈍痛に関しては、緊張型頭痛と診断される場合が多いと思われます。
 このように緊張型頭痛で始まり、程度が強くなると拍動性の頭痛を伴うものを、オーストリアのランス Lance は緊張・血管性頭痛 tension-vascular headache と命名しました。

片頭痛が緊張型頭痛に化ける? 
 

「20 歳ころから時々片頭痛発作を起こし、結婚後片頭痛発作が頻繁になりましたが、40 歳ころから緊張型頭痛が加わってきて、50 歳を過ぎると寝込むようなひどい頭痛発作は起こらない代わりに、だらだらと重く締め付ける感じの頭痛が続くようになった。」このような経験はありませんか。
 国際頭痛学会分類では、以前のものは片頭痛で、中年以降の頭痛は緊張型頭痛と診断されるでしょう。このようなパターンを片頭痛が加齢とともに変化したということで、米国の Mathewは変容性片頭痛という概念を提唱しています。 ただ国祭頭痛学会分類の範疇としては現在のところ認められていません。  一方、片頭痛の治療に市販の鎮痛薬・トリプタン製剤などを乱用していますと頭痛が発作性の型から、連日性になっていくことがあります。いわゆる薬物乱用による「慢性連日性頭痛」ですが、これも 変容した片頭痛の一種と考えられています。

片頭痛と緊張型頭痛の多くは症状は重複  

 このように、片頭痛と緊張型頭痛の症状の多くは重複していて、個々の症状のみで診断することは困難です。たとえば、軽度~重度の頭痛、両側性および片側性の頭痛は両者に認められます。
 また、片頭痛、緊張型頭痛ともに拍動性でないことが多く、さらに、緊張型頭痛の特徴と認識されることの多い「肩こり」も多くの片頭痛で随伴しています。

  片頭痛因子(血管症状)
    
    拍動痛
    片側性
    高度頭痛
    悪心・嘔吐

  緊張型頭痛因子(筋症状)

    締め付け感
    圧迫感・頭重
    後頭部の頭痛
    肩こり


 こうしたことから、これまで以下のように考える研究者もおられます。

 このようなタイプは、「体の歪み(ストレートネック)」を基盤として、起きる頭痛の場合です。緊張型頭痛から片頭痛へと進展して発症してくる方々が、このような経過を辿ることが多いようです。


片頭痛の本質は「エスカレーシヨン」(Cady )

 片頭痛と診断された患者と緊張型頭痛と診断された患者の頭痛は,性状・質の差ではなく,頻度・程度の差であり,その病態は連続した「境界不明瞭な」「連続体」であると考えられています。
 片頭痛患者さんは,頭痛発作が始まったが,それほどひどくならずに済んだという経験をすることがあります。ひどくならない発作は,片頭痛の診断基準を満たさないことが多く,緊張型頭痛と診断せざるを得ませんが,これを上手に説明したものが一次性頭痛(機能性頭痛)一元論です。1回1回の片頭痛発作に注目し,スタートは同しでも、軽く済めば緊張型頭痛,エスカレートしてひどくなれば片頭痛発作になるという考え方です。

 天気に喩えますと、片頭痛は「雨」、緊張型頭痛は「曇り」に相当し、両者には明瞭な差があります。雨は曇り空から降り出します。つまり、緊張型頭痛が先行します。雨の降り方もさまざまであり、片頭痛の臨床症状の”多彩さ”と一致します。

 Cadyは片頭痛と緊張型頭痛は”共通の病態生理”を持つと考えられるとして,一次性頭痛一元説について述べています。
 片頭痛の発生過程は,まず患者の”遺伝素因”にホルモン状況の変化や睡眠時間の変化,アルコール摂取などの”環境因子”が加わることで,片頭痛が起こりやすくなること,すなわち脳の感受性が高まることから始まります。
 次いで,気分や食欲の変調,肩こり,感覚や意識の変化,疲労などの前駆症状があり,症例によっては眼がチカチカするなどの前兆を伴って頭痛が出現します。ここまでが前駆期で,次の頭痛期は一般的に軽度の頭痛で始まり,病状が進行すると中等度〜重度となり,光過敏や音過敏が増強,悪心・嘔吐などを伴って国祭頭痛学会分類診断基準を満たすことになります。そして頭痛が頂点に達すると,中枢性のアロディニア(異痛症)を呈することになります。
 つまり,一次性頭痛一元説では,頭痛が軽度の段階でおさまる場合は緊張型頭痛とみなしています。ひどくなれば片頭痛へ移行するということです。

  先述のように、「体の歪み(ストレートネック)」が中心的な役割を果たしています。


 このように、予兆・前兆の有無から、片頭痛の発症の要因が、2のミトコンドリア・セロトニンの要因なのか、3の「体の歪み(ストレートネック)」の要因が主要因になっているのかを区別し、これを今後の治療に役立てるようにしています。
 前兆がなく、知らぬ間に片頭痛へと移行する場合は、「体の歪み(ストレートネック)」を主要因と考え、予兆があれば ミトコンドリア・セロトニンの要因を考え、こちらへの対策を優先していきます。

 

 ただ、このような考え方は、専門家の方々は、片頭痛をミトコンドリアとの関連から考えず、さらに「体の歪み(ストレートネック)」そのものの存在を否定されるため、予兆や前兆がどうしておきるのかは不明とされ、一律にトリプタン製剤を処方するだけで、根本的な治療に踏み込めません。これが、専門家の行っている治療なのです。如何に、鎮痛目的だけでトリプタン製剤が処方されているのかが理解して頂けたかと思います。

 

 次回からは、治療面に移っていきたいと思います。