第8回 第6章 自然治癒力 その1 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

第6章 自然治癒力

  片頭痛を考える際に重要なことは、慢性片頭痛に至っていない初期の段階では、発作時にトリプタン製剤を服用しなくても、発作期間中に我慢に我慢して、永くても3日間耐え忍ぶことで、また元通りの健康状態に回復してくることです。
 なぜ、酷い発作で苦しめられながらもとの健康状態になってくるのでしょうか。
 さらに、この発作の期間も短くて4時間、永くて3日間と「国際頭痛分類 第3版β版」では、定義されていますが、どうしてこのように発作期間に差が診られるのでしょうか。
 これは、人間本来に備わっている「自然治癒力」のおかげです。そして、発作期間に差が診られるのは、個々の患者さんによって、あるいは発作時の体調によって、自然治癒力の程度に差異があるためです。これが、片頭痛治療を考える上でヒントになります。

 片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪してきます。
 自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものです。
 ”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態(発作がいつまでも繰り返される)が持続することになります。
 すなわち、脳内セロトニンの低下を引き起こす生活習慣があったり、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスの悪い食生活があったり、腸内環境を悪化させる要因が持続するような生活習慣が継続していることを意味しています。
 「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続された状態に、さらに「ミトコンドリアの弱体化」、「脳内セロトニンの枯渇」、生理活性物質の問題(必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスの悪い食生活の常習化)によって「ホメオスターシスの三角形」のバランスが崩壊することによって、さらに「体の歪み(ストレートネック)」等々の慢性化の要因が加わることによって、自然治癒力が失われた状況に至って、2~3割の方々が慢性化に至ってきます。これが慢性片頭痛の本態です。

 私達の身体は私達の『自然治癒力』でしか治りません。

 19世紀の半ばまで、西洋では5つの医療流派が共存していました。
 それは以下のようなものです。

  1. 自然療法(ナチュロパシー):食事療法を中心とする。
   自然に近づくほど病気は治るという真理に基づく 

 2.心理療法(サイコセラピー):心を癒やすことで病気を改善していく、   暗示、瞑想、呼吸、イメージ療法など。

 3.整体療法(オステオパシー):体の歪みを正して、病気を治す。
   整体、指圧、マッサージ、カイロプラクテイックス等。

 4.同種療法(ホメオパシー):自然治癒力を活かす。
   草根木皮や薬石などで治癒を促進する。西洋の漢方と言える。

 5.薬物療法(アロパシー):薬物(毒)に対する生体反射を利用する。
   本来の治癒反応である「症状」を抑える対処療法(逆症療法)である。


 伝統医療のなかの1~4は、自然治癒力を基本とした医療です。
 5の薬物療法だけが自然治癒力を阻害する療法です。
 現代医学は、薬物療法が主流とされ、1~4は、自然治癒力を根本とした医療は代替医療と蔑まれ、すべてまやかしとされています。これが現代社会では通念とされています。これは、現代社会は製薬業界に支配されているため、このようになっているだけのことです。製薬業界の利潤追求が優先され、私達の健康は二の次に考えられているために、このようになっています。

 古代ギリシアの医聖・ヒポクラテスは「人間は生まれながらに体内に100人の名医をもっている」と言いました。
 この100人の名医とは、自然治癒力のことです。

 つまり、人間だけではなく生命体にはすべて自らの身体を治す力が備わっています。あらゆる生命は、自らを「正常な状態」に近付ける能力を備えています。これをホメオスターシス(生体恒常性維持機能)換言すれば「自然治癒力」と呼びます。

 単細胞から多細胞の高等動物まで、すべての生命体に、この機能は備わっています。ところが、なんと近代医学では、このホメオスターシスを、まったく考えていません。それどころか自然治癒力の存在すら、医学生に教えないのです。ですから医者は、この生命の根本原理すら知りません。
 生命の真理にまったく無知な方々が、患者の生命を預かっています。“彼らら”に、病気が治せるわけがありません。そして近代医療を支配してきた薬物療法は、この自然治癒力を妨害・阻止する作用しかありません。

 大学医学部等の医学教育では、この自然治癒力を教える講座は1時間もありません。
 ということは自然治癒力をまったく考えることはありません。
 これまで「頭痛治療」では、頭痛があれば、まず市販の鎮痛薬を、これでダメなら病院での鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)、これで効かなければエルゴタミン製剤を、これでも効かなければトリプタン製剤が勧められてきました。 そして、最後の”砦”とされるトリプタン製剤は片頭痛の”特効薬”とされてきました。これは日本の頭痛の専門家が考えていることです。
 このように段階的に、”鎮痛薬”の服用が推奨されてきました。
 すなわち、慢性頭痛治療の場面では、各種の諸々の薬剤によって、ただ単に”頭痛という痛み”を鎮めることしか考えず、痛みさえとれれば、これで万事OK!「よし」、”一件落着”と安易に・短絡的に考えられてきました。
 辛い片頭痛という頭痛発作がトリプタン製剤を服用することによって緩和さえすれば、これで「片頭痛が治ってしまった」かのごとく思われてきました。

 このホメオスターシス機能は人が病気になったり、怪我をした時にも発揮されます。それは、ちょうど振り子が引力で引かれて、正常の位置に戻ろうとする働きと同じです。この時、真下に引力として働くのが自然治癒力です。
 風邪を引いた時を考えると、「病気」が風邪なら、発熱、咳、下痢などは「症状」つまり治癒反応です。
 発熱は体温を上げてウイルスなど病原体を殺すためです。更に、免疫力を上げるためです。咳、鼻水、下痢は病原体の毒素を体外に排泄するためです。
 これら「症状」の治癒反応のお陰で「病気」の風邪は、治っていくのです。
 ところが、西洋医学はこの各々「症状」を「病気」と勘違いする重大ミスを犯しています。そして、発熱には「解熱剤」、咳には「鎮咳剤」、下痢には「下痢止め」の薬物を投与します。まさに、対症療法の滑稽さです。「病気」が治ろうとする「命の振り子」を逆向きに押し返す。ですから逆症療法とも呼ばれます。
 治癒反応を薬で止められた「振り子」は、傾いたまま固定されます。
 すると「病気」も固定され、慢性化し、悪化していきます。現代医学が慢性疾患に無力で、悪化させるのみなのは、この致命的過ちの結果です。 

                      
 現代頭痛医療の考えていることは、頭痛を鎮痛薬で緩和させているだけのことです。
 片頭痛の場合、トリプタン製剤を片頭痛の特効薬といった誇大広告をし、あたかもこれさえ服用すれば、片頭痛があたかも治ってしまうように専門家は述べてきました。
 その結果として、慢性片頭痛を蔓延させてきました。このことだけでも、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬ではないことは明白でありながら、未だに片頭痛の特効薬と主張されます。もしそうであれば、片頭痛発作は繰り返し・繰り返し起こるはずはありません。

 第1章でも述べましたように、慢性頭痛とは”未病”の段階にあり、「健康的な生活」を送ることを阻害する生活習慣に根本的な原因があります。
 そして、「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」によって慢性頭痛という「症状」が出現し、さらに様々な生活習慣の問題点が加わることによって、難治性の頭痛という「病気」にまで進展していくことになります。

 以上のように、現代医学はもとより、とくに現代頭痛医学では、未病とか自然治癒力といった概念がまったく存在しないため、脳のなかに異常のない慢性頭痛が位置している”未病”の領域が「ブラックボックス」となっています。まさに、暗黒の世界(宙に浮いた形)になっています。
 従来から、現実に片頭痛は、片頭痛という病気(疾患単位)なのか疑問に思われる存在で、病理解剖学的な所見がある訳でなく、幻のような存在でしかありませんでした。
 こうしたことから、「国際頭痛分類 第3版β版」で、個々の慢性頭痛を症状の上で、厳密に定義して区別・分類しているに過ぎないということです。
 このように、片頭痛は疾患単位ではなく、あくまでも症状に過ぎないものです。
 このような”未病”の段階(自然治癒力の低下した状態)に、トリプタン製剤といった強力な鎮痛薬を発作時に毎回、服用し続けることは自然治癒力を低下させるだけのことであり、ひたすら慢性片頭痛への道を歩ませているということです。極めて残念なことに、日本の頭痛の専門家は誰一人として気がつく人はおられないようです。

自然治癒力を構成する3つの柱

 自然治癒力を構成する3つの柱として、自律神経系、内分泌系、免疫系があります。
 自律神経系には、セロトニン神経系が、内分泌系として、生理活性物質が、免疫系には、腸内環境が関与しています。
 セロトニン神経系はミトコンドリアと連動し、自律神経を調節しています。
 生理活性物質のエイコサノイド は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、必須脂肪酸は生体膜(細胞膜)を構成しており、ミトコンドリアの機能を左右します。
 腸内には、ミトコンドリアが最も多く存在し、腸内環境の悪化はダイレクトにミトコンドリアの働きを悪化させることになります。

 この章では、自然治癒力の柱となる、セロトニン神経系、生理活性物質、腸内環境について、述べることにします。