第7回 第5章 慢性頭痛の発症過程 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

第5章 慢性頭痛の発症過程

 第1章でも述べましたように、慢性頭痛は以下のような段階を踏んで発症してきます。

第1段階 ミトコンドリアの機能低下→「酸化ストレス・炎症体質」の形成
第2段階 姿勢の悪さ
第3段階 ホネオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)
  

 1.自律神経系・・セロトニン神経系→脳内セロトニンの低下
 2.内分泌系・・生理活性物質・・オメガ3とオメガ6のアンバランス
 3.免疫系・・腸内環境の悪化

  
第4段階 「脳過敏」を形成する要因
  

  1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足
 2.脳内セロトニンの低下
 3.体の歪み(ストレートネック)の形成と長期間の持続
  

 そして、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な差異は、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”の有無でしかありません。
 
 このように慢性頭痛の発症の様相を具体的に、分析的に考えてみることにしましょう。

「慢性頭痛」は、どのようにして発症してくるのでしょうか

 前章で述べたようなミトコンドリアの機能を低下させる要因を取り除かなければ、最終的に「酸化ストレス・炎症体質」を形成させ、慢性頭痛を発症させる素地を形成することに繋がってきます。

  まず「慢性頭痛」の起点は、”日常的に感じる極く軽度の頭痛”です。
  「慢性頭痛」発症のスタート(起点)となるのは、私達が”日常的に感じる極く軽度の頭痛”です。この原因は、以下の2つがあります。それは

1.すべての始まりは、うつむき姿勢(前屈みの姿勢)にあります

 現代社会は、活性酸素と有害物質に満ち溢れた生活環境にあります。
 先述のように、こうした背景をもとに、ミトコンドリアの働きが悪くなると同時にセロトニン神経系の機能が低下しています。この両者によって「姿勢の悪さ」を引き起こしやすい生活環境に置かれています。

 私達は、日常生活を送る上で、前屈みの姿勢を強制される生活環境に置かれています。
 特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
 さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。現代社会はスマホ全盛の時代で、歩きスマホをされるご時世です。

 こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。

 ここにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時は大抵どちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たい物を持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎(背骨)の歪みが生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びひいては頸椎にまで及んで、”脊柱の捻れ”を最終的に引き起こしてきます。

 人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨に掛かることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないように脊柱はS状の湾曲を呈しています。S状の湾曲を示すことによって体重の掛かり方を分散させています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加
わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
 これが、日常的に感じる極く軽度の頭痛です。
 日常的に感じる極く軽度の頭痛は、姿勢の悪さに前屈みを強制される生活環境によって引き起こされ、「体の歪み(ストレートネック)」が形成される以前の段階において出現してきています。
 
 このようにして、日常的に感じる極く軽度の頭痛が引き起こされてきます。

2.さらに「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」が関与してきます。

 「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。

1)自律神経の関与

 ストレスは自律神経を乱す根本的な原因になっています。
 最初にも述べましたように、私達はストレスが重なりますと、頭痛を肇としていろいろな体調不良を訴えてきます。
 日常的にストレスの多い忙しい生き方が続いていると、自律神経のなかの交感神経が優位に働くことにより血管は収縮し血流障害(低酸素)と低体温、を招きます。
 ストレスが持続すれば、マグネシウムを枯渇させてくることになり、マグネシウムはマグネシウムは、体中のインスリンの作用を応援する役割を持っていることから不足すれば、高血糖を来すことになります。
 このため、解糖系が働きやすい環境である、「低体温、低酸素、高血糖」の3条件が引き起こされてくることから、ミトコンドリア・エンジンが働かなくなり、慢性頭痛を起こしやすくしてきます。

 自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与しています。
  ”セロトニン神経系”の機能の低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
 慢性的にストレスに晒されることによって、「脳内セロトニン不足」を来すことによって、痛みの制御ができなくなって、頭痛を感じやすくなります。

2)内分泌系の問題・・生理活性物質の関与

 細胞に物理的な刺激が加わった場合や炎症などはアラキドン酸が遊離するきっかけとなるため、いったんプロスタグランジンが産生され、炎症が起きると、アラキドン酸の遊離が促進され更にプロスタグランジンが産生されるという悪循環が生じることになります。
 炎症の初期にプロスタグランジンの産生をしっかりブロックすることは、痛みを悪化させないための重要なポイントです。

 プロスタグランジンの原料になるのは食物の中に含まれる脂肪です。
 このため、脂肪分の多い食事を摂り過ぎますと、頭痛・痛みそのものが出現しやすくなります。このように”生理活性物質”であるプロスタグランジンが関与して痛みが引き起こされます。
 ”生理活性物質”のひとつの脂肪酸由来物質(エイコサノイド)は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、この摂取バランスがよくないと、局所ホルモンのエイコサノイド・プロスタグランジンのバランスを乱すことになります。

3)腸内環境の悪化 

 実は、便秘が頭痛の原因となることがあるというのを知っていますか。
 便秘が続くと、頭が痛くなったり、お腹が苦しくなったり痛くなったりするだけではなく、肌荒れでニキビや吹出物、口臭がするなど、いろいろな体調不調が起こってきます。

 それは、便が腸内に留まることで腐敗し、有毒なガスを出すことによるものです。便秘している腸内からは、インドール、スカトール、アンモニア、アミンなどといった猛毒物質が発生しており、これらが腸から吸収され血液と一緒にあなたの身体中を巡ります。有毒なガスや腐敗した便は適度な時間に排出されませんと、再吸収といって、有毒なガスや毒素が腸の壁から血液中に取り込まれ、毒素が体に回ってしまうことで、さまざまな不調が起きてきます。
 その症状のひとつに頭痛も挙げられ、便秘が解消すると頭痛が治る人は便秘が原因だったということになります。
 便秘が続くと、体がだるくなるという人も多いのではないでしょうか。
 血液に有毒な物質が混ざって全身を巡ることで、筋肉にも毒素や疲労物質が貯まりやすくなり、体のだるい感じや肩こり、腰痛などを起こすのです。
 ここで忘れてはならないことは、ミトコンドリアは腸内に最も多く生息するもので、便秘によって腸内環境が悪化すれば、ミトコンドリアの機能が悪くなってくることです。


 このように、「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの要因の1つでも問題があれば、”日常的に感じる極く軽度の頭痛”を引き起こしてくることになります。
  これらが、すべて”日常的に感じる極く軽度の頭痛”を引き起こす要因になってきます。また、これらの要因が重なり合って引き起こされてきます。

 ここに、さらに「運動不足」、「栄養のアンバランス」はミトコンドリアの機能を悪化させ、「健康的な生活」を送ることを阻害する要因になってきます。

 
市販の鎮痛薬の弊害
 
 私達は、このような日常的に感じる極く軽度の頭痛に対して、多くの方々は安易に「市販の鎮痛薬」を服用しています。
 
 このような日常的に感じる極く軽度の頭痛に対して、市販の鎮痛薬を服用を繰り返せばどのようになるのでしょうか。

 こうした市販の鎮痛薬すべては、人体にとっては害(有害なもの)になるのです。これらを解毒する際に、活性酸素が発生し、このためにミトコンドリアの働きを悪くさせることによって、頭痛を増強させます。すなわち、市販の鎮痛薬が原因となって「後天性ミトコンドリア病」を作ってくることになります。
 また、これら薬剤はいずれも”化学的ストレス”となって、脳内セロトニンを低下させ、”痛みの閾値”を下げるため痛みを感じやすくさせるために、さらに、頭痛を引き起こしてくることになります。

 このようにミトコンドリアと脳内セロトニンの2つのが関与して、市販の鎮痛薬によって、「薬物乱用頭痛」を引き起こし、かえって頭痛を酷くさせる原因になってきますので注意が必要です。
 こういったことから、頭痛治療は、”薬剤乱用頭痛との戦い”といっても過言ではありません。このような”頭痛薬によって頭痛が引き起こされてくる”というジレンマがあることを知っておく必要があります。
 このため、「日常的に感じる極く軽度の頭痛」に対して、日常的にテレビで宣伝される通りに、市販の鎮痛薬を服用し、これまで述べてきましたような慢性頭痛の要因を念頭に置くことなく、お茶を濁しておれば、必然的に、頭痛は着実に増悪の”みちすじ”を辿ることになります。
 ここに、ご家族に片頭痛持ちの方がいらっしゃれば、着実に「片頭痛」へと移行していくことになってしまいます。

第4段階の「脳過敏」を形成する要因が追加されてきます。

 ここに、以下のような「脳過敏」「頭痛の慢性化」を引き起こす要因が追加されることによって、日常的に感じる極く軽度の頭痛が”難治性の慢性頭痛”へと進んでいくことになります。
 このようにして、片頭痛の特徴ある頭痛へと変貌していくことになります。

     1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足
     2.脳内セロトニンの低下
     3.体の歪み(ストレートネック)の長期間の持続



 1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足

 第3章で述べましたように、マグネシウム不足はミトコンドリアの機能を悪化させる要因になります。
 ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足が加われば、脳過敏を来すことの詳細は第3章で述べたことです。 
  さらに追加すれば、1995 年に行われた研究では、マグネシウム不足が脳に強度の興奮をもたらし、逆にマグネシウムが興奮を落ち着かせることがわかっています。13 人の女性が初めの3ヶ月、1日に115 ミリグラムのマグネシウム(一日の推奨量の30%にしかならない量)を摂取しました。その結果、脳波検査では強度の興奮性があることがわかり、その後の3ヶ月は、1日に315 ミリグラムを摂りました(推奨量の360 ミリグラムに近い数値)。そうしたところ、これだけの量の変化でもたった6週間後には脳波検査において、脳機能に大きな改善がみられ、興奮性が低下を見せたのです。
(Think Health chirotic.exblog.jp  https://chirotic.exblog.jp/21664875/  から引用)

 このように、ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足が加わることによって、益々、ミトコンドリアの機能低下が増強し、脳過敏を引き起こすことになります。


2.脳内セロトニンの低下

 片頭痛の方は生まれつきミトコンドリアの機能低下が存在します。
 私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、ミトコンドリアでエネルギー産生が十分に行われないために、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。

 ここに、”セロトニン神経系”の機能の低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
 特に、慢性的にストレスに晒されることによって、「脳内セロトニンの枯渇」を来すことによって、痛みの制御ができなくなって、痛みを感じやすくなります。
 脳内セロトニンの低下は、「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強く現れ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずかな刺激にも敏感に反応してしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになります。
 これが、「脳過敏」・慢性化の3大原因のひとつになっています。

 「脳内セロトニンの低下」により脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛みと感じるアロディニア(異痛症)があります。

 片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快、髪を結んでいるのがつらい、くしやブラシが痛くて使えないといったものがありますが、これらは頭部アロディニアと呼ばれています。
 さらに脳が過敏になると、頭部だけではなく、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快になることもあり、これらは頭蓋外アロディニアに分類されます。

 慢性片頭痛ではアロディニア症の程度が強いといったデータは既に報告されており、アロディニア症が片頭痛慢性化の重要な予知因子と考えられています。
 このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため”痛みを抑制する事が出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということを意味しています。


3.体の歪み(ストレートネック)の長期間の持続

 私達は、日常生活を送る上で、前屈みの姿勢を強制される生活環境に置かれています。
 このような前屈みや俯き姿勢が長期間継続すれば、「体の歪み(ストレートネック)」を最終的に引き起こしてきます。

 このように前屈みや俯き姿勢が長期間継続すれば、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてきます。このため、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。
 「体の歪み(ストレートネック)」が持続すれば、頸部の筋肉が絶えず刺激を受けることになり、この刺激は三叉神経核に絶えず送られることによって、さらに「脳過敏」を増強させます。


  「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
   ↓           ↓
   ↓    脊髄を介して三叉神経脊髄路核
    ↓           ↓
   ↓     中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
   ↓           ↓
    ↓     
脳の過敏性、頭痛の慢性化
   ↓
  自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頸性神経筋症候群
                              
   (慢性頭痛)



 さらに、慢性頭痛は「体の歪み(ストレートネック)」基盤として発症してくるため、さまざまな「自律神経失調症状」が引き起こされ、頭痛発作が「天気」によって左右されてくることになります。
 その代表的なものは、「気象の変化、低気圧」によって頭痛が出現したり不定愁訴が増悪し、あたかも「天気予報士」のように天候を言い当てる方々もおられ、”気象病”の代表的疾患とされるほどです。

 小橋 雄太さんはブログ「イミグラン錠副作用なしで片頭痛を治しちゃえ」で自らの体験を述べておられ、10年以上、閃輝暗点を伴う片頭痛に悩まされ、「体の歪み」に片頭痛発作の引き金があることに気付いて、当初は整体師さんの指導を受け、この指導を毎日忠実に守り・実行することによって片頭痛・閃輝暗点を改善されました。
  「閃輝暗点」も脳過敏のひとつと思われます。

 そして、いつまでも「体の歪み(ストレートネック)」が改善・是正されなければ、これが慢性頭痛とくに片頭痛の慢性化を引き起こしてくることになります。


その他の慢性化を引き起こす要因

 ミトコンドリアの機能を低下させる諸々の要因を取り除かない生活を送ることによって、「酸化ストレス・炎症体質」が形成されてきます。
 ミトコンドリアの機能が低下すれば、ミトコンドリアが「ホメオスターシスを制御」していることから、「自然治癒力」が低下することになります。
 このようにして、「ホメオスターシスの歪み」・「自然治癒力」が低下が引き起こされてきます。
 このように、ミトコンドリアの働きを悪く」させる要因を是正・改善しませんと「酸化ストレス・炎症体質」を基盤として、ここに「ホメオスターシスの歪み(自然治癒力の低下)」が引き起こされることによって、この段階から、片頭痛発作が”出没する”ことになります。
 「治癒反応」である「頭痛(片頭痛)」を一般の鎮痛薬やトリプタン製剤で「ホメオスターシス(自然治癒力)」を一方的に抑え込むことによって、「治癒反応」が停止・固定され、その結果 片頭痛は慢性化し、悪化してきます。

 さらに、ここにホメオスターシスの三角を構成する3つの要素、「自律神経を整えること」、「生理活性物質のバランスをとること」、「腸内環境を整えること」すべてに問題が生じてくれば、「ホメオスターシスの三角」が崩壊し、自然治癒力は破綻してしまうことになり、ここで初めて「病気」としての慢性頭痛(慢性緊張型頭痛・慢性片頭痛)に至り、慢性化することになります。
 このように進展・慢性片頭痛へと移行してきます。


 現実に、片頭痛全体の3割の方々は片頭痛を慢性化させ、苦渋を強いられています。この点は、極めて重要なことで、忘れてはならないことです。

 このように、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛、片頭痛では、未だ自然治癒力の低下状態(ホメオスターシス三角の歪み)の段階・すなわち”未病”の段階にあり、単なる「症状」でしかなく、「病気」に至る途中の段階にあり、ここに諸々の生活習慣の問題が加わることによって、初めて「病気」としての「慢性緊張型頭痛」・「慢性片頭痛」へと進展していくものです。

 そして、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な差異は、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”の有無でしかありません。

 片頭痛の患者さんでは、緊張型頭痛の場合と異なって、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しますので、ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因の影響を、とくに受けやすいことになります。
 このため、片頭痛では、緊張型頭痛に比べて、比較にならない程、頭痛の程度が極端に酷くなってきます。
 ところが緊張型頭痛の場合でも、片頭痛のように遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しなくても、生活習慣の問題によってミトコンドリアの働きが極端に悪くなり、さらに「脳内セロトニンが枯渇」してくれば、片頭痛と同様の難治性の頭痛(慢性緊張型頭痛)を引き起こしてくることになります。

 これを図表で表せば、以下のようにイメージされます。

 片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine
  
             慢性片頭痛  ・・・・  
 慢性緊張型頭痛
     片頭痛                     頻発反復性緊張型頭痛
    big(true)migraine             稀発反復性緊張型頭痛
    連続体                            ↑↑                           

緊張型頭痛 ・・・・          日常的に感じる極く軽度の頭痛
   small migraine                  


 ということは、片頭痛での緊張型頭痛はsmall migraine で、本格的な片頭痛はbig true migraine で、これが連続しているということです。
 緊張型頭痛はこれとは別に、独立して、存在するということです。
 この差異は、片頭痛素因の有無で決まります。
  このように緊張型頭痛も片頭痛も連続した一連の頭痛であるということで、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違点は、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因の有無でしかありません。


 このように、慢性頭痛発症の要因には、

   1.ミトコンドリア
   2.セロトニン神経系
   3.「体の歪み(ストレートネック)」
  

 この3つが関与しています。この3つの要因はすべて、ミトコンドリアに関連したものであり、独立したものではありません。
 慢性頭痛発症には、すべて、ミトコンドリアが中心的な・根源的な役割を果たしていることになります。
 ミトコンドリアの働きが悪くなれば、当然、同時にセロトニン神経系の機能も低下することになり、この両者によって「姿勢の悪さ」から「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされてきます。
 このように、慢性頭痛発症の要因(病態)は緊張型頭痛と片頭痛では共通しています。

 片頭痛では、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”があるために、この要因をモロに・ダイレクトに受けるということです。
 このため片頭痛では頭痛の程度が極めて激しくなります。
 これら3つの要因の影響の受け方の差異は、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”の有無でしかありません。

 問題は、このように遺伝素因として受け継がれた「ミトコンドリアの活性低下」の程度は患者さん個々では、全てが一律ではありません。 

 人により千差万別であり、極端に低下しておれば、小児期から片頭痛を発症してくることになります。
 それ程でもなければ、生後、ミトコンドリアの機能を悪化させる要因が加わって、傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下することによって、片頭痛を発症することになります。
 このため、当然のこととして、発症時期も遅くなります。
 女性の場合、生まれつきセロトニンの産生能力が男性よりは悪いため、生理が始まる初潮の時期に発症することが多くなります。
 男性では、このような生理がありませんので、脳内セロトニンを低下させる要因(例えば、ストレス)が加わって、発症してくるため、20歳前後と多少遅くなってきます。

 また、地域によっては環境汚染の問題が関与することによって、有害物質の影響を受け方の多寡によって、発症のスピードが異なってくることになります。
 さらに、地域別に、片頭痛患者の人口比を調べたところ、近畿地方(石川、富山などを含む)5.8% 全国平均 9.5% 東北地方や九州地方 10%以上といった具合で、近畿地方は明らかに片頭痛が少ないことが報告されています。
 この理由は、日本人には縄文人と弥生人の2つのDNAが存在します。
 現代においては75%以上の人が縄文と弥生の混血といわれています。純粋な弥生人は20%、純粋な縄文人も5%ほど生き残っているようです。
 時代が進むにつれて、いずれは純血の人達もいなくなると思われます。
 かつて、日本の大陸には縄文人しか住んでいませんでした。およそ1万2千年ほど縄文人が暮らした後に、弥生時代(今から約2000年~2400年前)を迎え、朝鮮半島や中国から弥生人が渡来しました。

  このようなことから、近畿地区では、ミトコンドリアDNAの活性低下が、他の地域ほど悪くないことが予測され、片頭痛の発症様式が緩慢になっているものと思われます。

 以上のように、ミトコンドリアDNAの活性低下の程度は、個々の患者さんによって異なっています。さらに地域によっても異なっています。
 さらに、ここに環境汚染の問題も関与してくることになります。

 このようにして、緊張型頭痛から片頭痛へと移行するスピードには差違が認められることになり、全ての患者さんで一律ではないということです。
 都市部では、今回述べたような悠長な発症の仕方はしないということです。

 今回は、理解しやすいように、”分析的”に述べたに過ぎません。
 誤解のないようにして下さい。

 参考までに、以下のような見方もあるようです。

弥生人とアルコール

 元々日本に住んでいた縄文人は、アルコールに強い遺伝子をもっていましたが、渡来した弥生人は何らかの突然変異によってALDH酵素遺伝子が欠落しました。
 つまり、この弥生人のALDH酵素遺伝子を強く受け継いだ人がお酒の弱い体質になったということです。渡来系弥生人は大陸の文化や稲作をもたらしながら、日本の南北に拡がって行きます。
 つまり、下戸遺伝子は弥生人ゆずりということです
 弥生人は、渡来後に日本に広がりましたが、アルコール耐性も弥生人の分布に多少の誤差はあるものの比例しています。
 これを、先程の片頭痛の地域差の分布図と比較すれば、興味あるものと思われます。

 縄文人と弥生人とは、顎と歯に全く逆の特徴を持っていて、弥生人特有の広い顎と縄文人特有の小さい歯の遺伝子が混ざり合ったケースから、すきっ歯が多い人種となったと、ある歯科医は述べています。
 歯とは直接関係のない体調の不調、たとえば片頭痛が続くとか、肩こりがひどいというようなことが、お口の中の問題で起こることがあります。これらを不定愁訴といいます。
 歯科領域の場合、不定愁訴が起こる多くの原因は、咬み合わせの悪さです。
 咬み合わせを治していく、整えていくことで、身体の不調も解消されていくケースが多いと述べておられるようです。
  
 縄文人の祖先は狩猟採集を生業とし、弥生人の祖先は農耕生活を営んできました。こうした生活形態の違いが、現代では性格の違いとして受け継がれている、とする向きもあるようです。
 特に、食生活の上で、縄文人は肉食が主であり、弥生人は雑穀を主食としていたと思われます。ここが、片頭痛の発症率と関連しているものと思われます。
  
 近畿地方は他の地域に比べて片頭痛が少ない
 
 冒頭で述べましたように、近畿地区では、他の地域に比べて片頭痛が少ないことは、北里大学時代の学会の理事長の成績から明らかにされています。

 こうした「近畿地区では、他の地域に比べて片頭痛が少ない」ということは、他地域の方々よりは、ミトコンドリアDNAの”傷害の程度が軽い”ことを意味しています。
 このため、ミトコンドリアの働きを悪くさせる要因の影響の程度および速度が他の地域よりは軽いということです。すなわち、発症様式が”より緩慢”になっていることを意味しています。
 こうしたことから、日常的に感じる極く軽度の頭痛から片頭痛への移行する様相を、慢性頭痛発症の初期の段階から詳細かつ綿密に腰を据えて病歴聴取を行うことによって明確にされることになります。
 さらに「国際頭痛分類 第3版β版」に基づいた「慢性頭痛」そのものの「レベル診断」を行い、これを各患者さん毎に、経過を追ってつなぎ合わせれば、日常的に感じる極く軽度の頭痛から片頭痛への移行する様相は明らかにされてきます。

 このようなことから、私は慢性頭痛の発症様式を考察しています。