第5回 第3章 ミトコンドリアの機能を悪化させる要因 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

第3章 ミトコンドリアの機能を悪化させる要因

 ミトコンドリアの機能を悪化させるものには、以下の要因があります。

1.生活習慣の問題

  睡眠不足・・睡眠の重要性
   運動不足
   食べ過ぎ・過食
  早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌
  薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬

2.食事内容の問題

  マグネシウム不足
  必須脂肪酸の摂取のアンバランス 
  鉄不足
  野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足
  食生活の欧米化・・腸内環境の悪化

3.生活環境の問題

  活性酸素
   有害物質

4.年齢的な問題

    女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下

 

 

以下、順番に述べていくことにします。

1.生活習慣の問題

(1) 睡眠不足・・睡眠の重要性

エネルギーの産生には休息が必要です
 
 ミトコンドリアは体温や生体が活動するエネルギーを生産するにはなくてはならない場所です。
 そして、ミトコンドリアは私達がちゃんと休息をとらないと働けなくなってしまうのです。ですから、ちゃんと睡眠時間を確保することが大切になります。
 新陳代謝は睡眠中に行われます。1晩で1兆個の細胞がリモデリング(新陳代謝)しています。つまり、睡眠をとらないと新陳代謝というプロセスが行われません。

睡眠は脳の疲労を回復する栄養剤

 眠っている間は副交感神経が優位になり、成長ホルモンが最も多く分泌され、細胞の成長や修復を行ったり、脂肪を分解させたり、病気をもたらすウィルスなどの体内への侵入防ぐ免疫力も高めたりします。
 また、睡眠は体ばかりでなく、何よりも脳の疲労を回復させてくれます、長い時間運動を続けていると、筋肉に疲労物質が貯まって、十分な力が発揮できなくなるように、脳でも同様のことが起こります。脳は働く時間と量に比例して、睡眠促進物質プロスタグランディンやサイトカイン、神経ペプチドなどが貯まってきてしまいます。
 睡眠促進物質が増え過ぎると脳が壊れてしまいますので、睡眠促進物質の生産を止め、これを分解するために、脳の働きを止めて眠る必要があるのです。 そのため大脳が疲れてくると自然に眠くなり、眠ることによって脳の疲労を回復して定期的なメンテナンスを行っています。
 嫌なこと、辛いことを眠って忘れると言うように睡眠中には心の修復、記憶(情報)の整理までもが行われています。

睡眠中に分泌されるホルモンの役割

 夜、眠りについてから朝起きて活動を始めるまでに、体の中ではさまざまなホルモンが分泌され、大切な働きをしています。

  ノンレム睡眠中には、新陳代謝を活発にする成長ホルモンや免疫細胞同士の情報伝達の役割をするサイトカインなどが活発に分泌され、病原菌に対する抵抗力が強化されたりします。
 成長ホルモンは22時頃から活発になり2〜3時頃にピークを迎えます。「寝る子は育つというように」、睡眠の深い子供程たくさん分泌され、子供の成長に重要なホルモンですが、大人にとっても体の修復に欠かせません。タンパク質や骨などを合成する働きの促進、疲労回復、リンパ球の働きを活発にさせて傷の修復、お酒を飲んで代謝に使われた肝臓細胞の再生など、細胞を活性化させ、体全体のダメージを回復するホルモンです。
 女性にとってもこの4時間は、お肌のゴールデンタイムと言われ、肌の生まれ変わりが最も活発になり、熟睡によって皮膚の新陳代謝が促進され、肌がみずみずしく、つやつやしていきます。
 レム睡眠中には、生命維持に不可欠なホルモン、コルチゾールが分泌され、睡眠中のエネルギー供給のために脂肪を燃やしたり、肝臓にあるグリコーゲンをブドウ糖に分解して血糖値を高めてすぐに活動できるようにします。
 不規則な就寝時間や浅い睡眠は、成長ホルモンの分泌時間や量を乱し働きを低下させた体温調節ができなくなります。ホルモンや免疫から考えると、遅くても午前0時には入眠するのが望ましいでしょう。

”規則正しい生活”がなぜよいのでしょうか 

 「規則正しい生活」は健康のためにいい、とよく言いますが、実際どんなメリットがあるのでしょうか?

睡眠の質がアップ!します

 規則正しい生活がなぜよいのかといいますと、睡眠の質がアップすることにあります。不規則な生活をしていると体内時計が狂ってしまい、夜きちんと眠くならなかったり、寝ても疲れが取れなかったりということが起こります。
 睡眠時間が十分とれなかったり、睡眠の質が下がってしまったりすると、体にさまざまな不調が起こる可能性があります。逆に言えば睡眠の質がアップすることで不調が改善され、様々なよいことがある!ということになります。

1.痩せる

 睡眠時間が短いと「グレリン」という成分が過剰分泌されてしまうと言われています。グレリンの働きは何と、脂肪を増やすことなのです。寝てないで起きて動いていれば痩せるような気がしてしまいますが、実は正反対なのです。
 また質の良い睡眠をとると「成長ホルモン」がしっかり分泌されます。成長ホルモンは成長期にだけ必要なものではなく、代謝の促進にも関わっています。 つまり、質の良い睡眠を取ると痩せやすい体になるということなのです。

2.肌がきれいになる

 成長ホルモンは、肌の修復にも関係しています。傷ついた細胞を修復したり、肌の生まれ変わり、ターンオーバーのサイクルを正常化したりする働きがありますので美肌効果があるのです。
 寝不足は肌に悪い、というのはなんとなく知っている人が多いと思いますが・・

3.冷え性が改善

 冷え性の原因は、血行不良のほかに、自律神経の乱れやストレスなども影響しています。規則正しい生活を送ることで自然と自律神経の乱れも正常に戻っていきます。
 また、不規則な生活をしていると、心では感じていなくても体はストレスを感じてしまいます。規則正しい生活を送るとストレスも自然に緩和されて冷え性の改善やさまざまな不調の改善にも繋がっていきます。

4.心配事が解消

 規則正しい生活のメリットは、体に関することだけではありません。
 規則正しい生活を続けていくと心配事も解消すると言われているのです。
 心が不安定な人は生活リズムが乱れていることが多いようです。いつも自分なりの一定のペースで生活を送ることで、不安はあまり感じなくなるようです。 うつ病や、心配事が原因で起こると言われている胃潰瘍の治療にも、規則正しい生活は不可欠なのです。当然、慢性頭痛治療でも必須です。

それでは、なぜ十分な睡眠が必要なのでしょうか?

 それは、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアの修復は寝ている間に行われるため、その修復には睡眠が不可欠です。もしその傷が大きければそれだけ長い睡眠が必要になります。
 そうなのです、必要とされる睡眠時間は状況によって大きく変わるのです。 例えば1 日中テレビを見たり本を読んで過ごした日は6 時間の睡眠でいいかもしれませんが、殴り合いのケンカで死にそうになった日は15時間でも足りないかもしれません。
 起きている間の活動で細胞が傷つき、寝ている間にそれを修復します。
 しかし、完全には修復できないと、徐々に傷が蓄積し、それが致命的な状態にまで達したときお迎えが来るわけです。つまり起きている間にできる傷が大きいほど睡眠時間は長くなって寿命は縮むのです。
 それでは傷をつける原因は何でしょうか。それは生活習慣に問題があったり過大なストレスに晒されていることが考えられます。睡眠時間が長いと感じる人は生活習慣に問題がないか、ストレスを貯めていないか、よく考えてみてください。それらを改善することで睡眠時間は縮むかもしれません。
 スポーツをやっている人も多くの酸素を消費するため睡眠時間が長い傾向にあります。
 スポーツマンに早死にする人が多いのもこれと関係があるようです。
 このように、生活習慣に問題があるとか、ストレスを貯めているために、結果的に、睡眠時間が長くなって、早死にするということのようです。

 嫌なこと、辛いことを眠って忘れると言うように睡眠中には心の修復、記憶(情報)の整理までもが行われています。
 記憶が整理され、定着するのは、深い睡眠中です。このため、睡眠時間を削ってまで、勉強をすることは極めて効率が悪く、学習機能は向上することはありません。寝る子の方が成績のよいことは、海外の最新の睡眠研究で明らかにされています。

 しかし、問題は職業柄夜勤だけの場合です。ガードマン、夜警などの方々は、このような考え方では睡眠がとれません。このため、このような方々の慢性頭痛のコントロールには難渋していることは事実です。こうしたことは、睡眠が十分に確保できないとどのようになるかを証明していると言えます。
 
 経験的に、睡眠時間の問題が解決しなければ、いかなる手段を用いようとも、慢性頭痛を改善させることは不可能と言える程、重要な位置を占めています。

「体内時計」

「生体リズム」とは、脳の視交叉上核にある「体内時計」によって刻まれ、睡眠と覚醒のリズム、体温のリズム、行動のリズム、ホルモン分泌のリズムなどです。そして、「体内時計」は、ミトコンドリアとセロトニンによって制御・コントロールされています。

体内時計とは

 体内時計とは、私たち自身のからだ、臓器や器官がそれぞれもっている時計で、地球の自転(24時間)とは1時間ずれ、体内時計は1日25時間と言われています。この時間を調整し、地球の自転と合わせてくれているのが”朝陽”なのです。ですから、放っておくとリズムが崩れ、生活リズムが乱れていきます。 そのリズムをもとに戻してくれるのが「朝陽」なのです。また、太陽の光は、脳の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニンやメラトニンというホルモンを作ってくれます。
 このふたつのホルモンは、ミトコンドリアの天敵「活性酸素」を除去する働きがあります。メラトニンは睡眠ホルモンとして、セロトニンは心を鍛え、バランスを整えるホルモンとして、有名ですが、この二つとも、ミトコンドリアにとって天敵の活性酸素を除去する働きがあります。 
 活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがありますので、ミトコンドリアだけでなく体にとっても天敵で、慢性頭痛の原因でもあるのです。朝陽を浴びることは、この活性酸素を減らすホルモンを出す効果もあるのです。

 セロトニンは、太陽の出ている日中に分泌されやすく、睡眠中は日が沈んでからは分泌が少なくなります。これはメラトニンの働きと関係していますが、人間が本来持っている生活リズムは『日中に活動し夜は寝る』と言うもので、この原則を守ることがセロトニン神経の活性化に効果的だと言われています。
  このため、早寝早起きの規則的な生活を心がけることが大切になってきます。
 
 セロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンと相対する性質があります。
 セロトニンは脳の覚醒を促し、メラトニンは睡眠に作用します。
 メラトニンが分泌している間はセロトニンの分泌は少なく、逆にセロトニンが多く分泌されている間はメラトニンの分泌は少なくなります。
 太陽の光(のような非常に強い光・明かり)を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、代わりに脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化されるのです。
 昼夜逆転の生活をしていたり、日中部屋の中にばかりいると、セロトニンとメラトニンの分泌のバランスが崩れ、不眠症になったり、慢性頭痛が起きやすくしてしまうのです。
 毎朝日光を浴びる行為は、セロトニンを鍛えるだけで無く、生活リズムを整えることにも繋がります。
 しかし、現代の生活環境は、健康的な生活を崩す要因が多く、24時間営業の飲食店や夜通しの娯楽、コンビニやテレビ・パソコンなどの普及により急激に変化しています。このような変化により、体の生体リズムにも悪影響が及んでいます。
 生体リズムを無視した不規則な生活を送ると、様々な不調を感じるようになります。生体リズム、自律神経、ホルモンはすべて連帯しているため、生体リズムが乱れると自律神経やホルモンバランスにも悪影響が及んでホメオスターシス機能(自然治癒力)を乱すのです。


(2) 運動不足

 運動不足になると、細胞内でATPが余ります。すると、ミトコンドリアから電子が漏れ、酸素と反応して活性酸素になります。ATPのニーズが減ることでミトコンドリアの数も減り、オートファジーが衰えて質も悪くなります。 その結果、さらに活性酸素を発生させてミトコンドリアを傷つけるというわ
けです。
 こういったことから、運動不足は、ミトコンドリアにとってよくありません。

(3)  食べ過ぎ・過食

1.糖質の摂り過ぎの問題

 解糖系でATPを作るには、大量の糖質が必要になり、大量の乳酸を排出して身体を酸性に傾けます。ということは、糖質を過剰に摂取すれば、エネルギー産生系は解糖系に傾くことを意味しています。

 糖質の過剰摂取は糖尿病だけではなく、人類の万病のもとです。

50 歳すぎてもいっぱい糖質とってたら危険です 

 ミトコンドリアがはたらく原料は『酸素』。多くの酸素を取り込んでいます。
 
 ところが、50歳過ぎても摂取する糖質が多いと『解糖系』が働いてしまいますので、ミトコンドリアの働きを妨害してしまうことになります!
 妨害するだけでなく、ミトコンドリアが取り込んだいっぱいの酸素が、体に悪い『活性酸素』に変わってしまいます!
 活性酸素は、酸化力が強くさまざまな細胞を酸化させてしまう、悪いやつで、老化やがんに繋がるものです。
 このようなことが無いように、50代以降の人は『ミトコンドリア系エンジン』を活性化させてあげるような、生活態度をしてゆかなくてはなりません。
 一番簡単なのは、炭水化物を控えることです。

  消費されなかった余分な糖は、コラーゲンなどのタンパク質と結びつきAGE(終末糖化産物)という物質に変質してしまいます。このAGEの有害な毒物の蓄積が、ミトコンドリアの機能を悪くする原因になっています。
 このような糖質の過剰摂取は、過食だけでなく、ドカ喰い・早食いによる一過性の高血糖でも起きることを忘れてはならないことです。

 このように、糖質の食べ過ぎはミトコンドリアの働きを悪化させます。

2.脂質の摂りすぎの問題

 食べ物に含まれる脂質は体内で分解され、細胞の中で1g あたり9kcal のエネルギーを産生します。エネルギーは炭水化物やたんぱく質からも作られますが、これらのエネルギー産生量が1g当たり4kcal ということと比べると、脂質はエネルギー効率が高い栄養素といえます。

 体についた脂肪は、そのままでは燃えません。まず、燃えやすい遊離脂肪酸に変化し、血液の中に流れ出します。そして、各細胞内のミトコンドリアへと流れていきます。ミトコンドリアは、エネルギーを生み出す場所です。遊離脂肪酸を燃料としてエネルギーを生み出すのです。こうして、脂肪は燃焼します。
 遊離脂肪酸は”L-カルニチン”CoQ10が不足していては、脂肪はうまく燃焼されません。この2つが不足すれば、脂質は燃焼されないことになります。
 使い切れなかった脂質は他のエネルギー源同様、中性脂肪に変えられ、体脂肪として蓄えられます。そのため脂質をとりすぎると肥満や脂肪肝の原因となり、さらに血液中の中性脂肪やコレステロールが増える脂質異常症や、メタボリックシンドローム、動脈硬化、心筋梗塞や脳梗塞などの原因にもなります。
 血液中に溢れる遊離脂肪酸も直接的に酸化ストレスを増加させる要因になっています。血液中に大量の遊離脂肪酸があると、血液の酸化が亢進します。
  また、脂質が酸化されると細胞が障害されてしまいます。
 細胞を包む膜の活性酸素産生、細胞内のミトコンドリアでの活性酸素産生も促進します。
  また、肥満化した脂肪細胞からは様々な生理活性物質(アディポカイン)や炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)が分泌されます。
 これらの生理活性物質や遊離脂肪酸などが合わさって、身体の「酸化ストレス」を促進する要因となり、全身の障害を招くことになるのです。

 体の中で消費されずに貯まった脂肪分は、プロスタグランジンの原料になります。体の中には脂肪分が余っていますから、プロスタグランジンも多く作られてしまいます。
 緊急時に細胞が脂質を分解して、私たちの体を守る物質を作ってくれます。
 例えば、私たちの体に病原菌などが感染してしまったとき、病原菌が感染した周囲の細胞からプロスタグランジンやロイコトリエンという物質が、細胞膜の脂質から作られます。プロスタグランジンやロイコトリエンは、病原菌を退治してくれる白血球という細胞を病原菌が感染した部位に集める役割を持ちます。
 しかし、これらの「生理活性物質」は発熱や痛みを生じさせたりしてしまうことがあります。
 このように「生理活性物質」は相反する作用を持っています。
  女性の場合、そのため、多く作られたプロスタグランジンは、生理のときに必要以上に出過ぎて、子宮内膜に収縮しなさいと命令をたくさん送ってしまい、生理痛が酷くなってしまうのです。ですから女性の場合、脂肪分の多い食事にならないように調整すると、生理痛・頭痛を和らげることに繋がります。
  このように相反する作用を持っている「生理活性物質」の摂取アンバランスは、「酸化ストレス・炎症体質」を作る基になっています。

3.タンパク質の摂り過ぎの問題

 欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。高タンパク・高脂肪・低食物繊維の欧米型食事は、腸内環境にとって最大の敵と言えます。
 ミトコンドリアが最も多く存在するのが「腸」です。ですから、腸内環境が悪化すれば、ミトコンドリアの働きは悪化することになります。

 以上のように食べ過ぎ・過食はミトコンドリアの機能低下をもたらします。


(4) 早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌 
 
 早食い・ドカ喰いをすれば、急激に血糖値が上がり過ぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが過剰に分泌されることになります。
 インスリンの過剰分泌を起こすとマグネシウム不足を起こす原因となります。マグネシウムは、体中のインスリンの作用を応援する役割を持っています。
 マグネシウムが不足すれば、インスリンの働きが悪くなり、「高血糖」を来します。このため、ミトコンドリアの機能を低下させ、「酸化ストレス・炎症体質」を形成してくることになります。

(5) 薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬

 ミトコンドリアは細菌的な性質を有していることから、他の細菌類と同じように抗生物質により殺傷される可能性が高いのです。細菌に近い生物であったミトコンドリアにも少なからずダメージを与えます。特に片頭痛の素因のある人は、ミトコンドリアの数がもともと少なく、またミトコンドリアの働きが悪いために、その影響を受けやすいのです。
 こういったことから、意味のない風邪での抗生物質の服用には注意が必要です。
 また、牛肉、豚肉、鶏肉など、大量生産される畜産食品や養殖魚には抗生物質を含むエサを用いて飼育されたものが多く、それらを通して抗生物質が摂取されることになりますので、これらの食品の摂り過ぎには注意が必要です。
 また、アスピリン(アセチルサルチル酸)は、肝臓で代謝されてサルチル酸という強い酸に分解されます。サルチル酸は、ミトコンドリアが代謝物を取り入れる小さな穴を破壊します。その結果、ミトコンドリアはエネルギー代謝ができなくなり、最終的に死滅してしまいます。頭痛薬や風邪薬の安易な服薬は、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせます。こういったことから、緊張型頭痛の状態で、アスピリンを含んだ鎮痛薬を頻繁に服用していますと、片頭痛への移行を早めることになります。片頭痛の段階での服用は、その鎮痛効果を悪くさせ、結果的に効かなくなります。

 また、予防薬として使われる抗てんかん薬のデパケンにもミトコンドリア毒性があり、要注意です。長期間にわたる服用では、結局何をしているのか分からなくなります。専門医のなかには、小児の片頭痛にまでデパケンを処方される先生がいますが、このような時期から服用することは考えものです。

 病気を治すために飲む薬(市販の鎮痛薬や病院で処方される薬剤などすべてです)これらのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異物と理解してしまいます。
 そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程で、活性酸素が発生してしまうのです。このため、過剰に服用した鎮痛薬は異物そのものであり、これを解毒するために過剰に活性酸素が発生することによって”ミトコンドリアを弱らせる”ことになります。

 以上のように、長期間にわたる薬剤の服用は、その種類は問わず要注意ということです。


2.食事内容の問題

(1)マグネシウム不足

 インスリンの作用を応援する「マグネシウム」

 マグネシウムは、体中のインスリンの作用を応援する役割を持っています。
 つまりインスリンの感受性を正常に保つように働きます。
 人が食物を摂取すると腸からエネルギー源であるブドウ糖が吸収され、ブドウ糖は血液中に入ります。インスリンが細胞に働きかけてブドウ糖が細胞に取り込まれると、血液中のブドウ糖濃度が低くなります。
 マグネシウムは、細胞がブドウ糖を取り込む際の酵素チロシンキナーゼの働きをよくします。インスリンが細胞に働きかけ、ブドウ糖が細胞に入りやすくなります。その結果、血糖値が下がります。
 
 このために、日常的にマグネシウムの摂取量が不足すると脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの分泌量が低下します。
 アディポネクチンの不足は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満)を招きます。
 また、インスリンの機能が低下し、糖質と脂質の代謝が悪くなるため血糖値が上昇し、「高血糖」を引き起こすことになります。

 また、細胞は常にカリウムやカルシウム、ナトリウムを出し入れしていますが、マグネシウムは、出し入れするポンプの働きを滑らかにする作用があります。このポンプが活発になるとエネルギーが消費されるので、ブドウ糖の消費にも繋がります。
 マグネシウムは細胞レベルの運動を活発にしてくれるのです。
 マグネシウムは血管の働きにも作用しています。
 マグネシウムが不足すると血管が収縮してしまい(「低体温」、「低酸素」を招来します)、血圧が上がるのです。マグネシウム不足は交感神経の緊張状態を作るので、神経という面からも高血圧に繋がってしまいます。

 このようにマグネシウム不足は「低体温」、「低酸素」「高血糖」を招き、エネルギー産生を解糖系に傾けることになり、ミトコンドリア系が働かなくなります。


「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、マグネシウム不足が加わると・・

 片頭痛の方は生まれつきミトコンドリアの機能低下が存在します。
 ここにマグネシウムが不足すればどのようになるのでしょうか?

 マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
 細胞膜にはミネラルイオンが通過できる小さな「穴」があり、これを使って必要なミネラルを自在に出入りさせることで細胞内のミネラルイオン濃度の調整しています。ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に調整する作用があります。
 マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。このために、カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こります。このようにして、ミトコンドリア内カルシウムイオン濃度を薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
  細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎますと、ミトコンドリアの調整機能は破壊されてしまいます。
 その結果、調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
  ミトコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が強く関係していて、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症にも非常に大きな原因となります。
  このようになった細胞に、適量のマグネシウムが供給されると、貯まっていたカルシウムイオンなどが排出され、それに続き、水分も排出されますが、この水ぶとり状態も限度がありカルシウムイオンがある量を超えると、その細胞は不必要となり見捨てられます。そして、後にはカルシウムイオンなどで一杯になった固まりだけが残されます。これが石灰化した細胞のことです。結果的に、この細胞は死滅してしまいます。
 細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出するカルシウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続くことになります。片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内のカルシウム濃度の高まりによっても生じます。
 それはつまり、マグネシウム不足がもたらす結果でもあるのです。
 このようにして、マグネシウムイオンの低下はミトコンドリア内カルシウムイオンとナトリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招きます。このようにして、細胞は興奮しやすくなります。 これが「脳過敏」を引き起こしてきます。このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの代謝異常をきたして、神経細胞を興奮しやすくすることになります。これが『皮質拡延性抑制』を発生させることになります。
 これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。

 片頭痛では、ミトコンドリア機能障害が生まれつき存在するために、ミトコンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。マグネシウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているのです。神経細胞の”興奮性の亢進”はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの機能障害の結果として生じているものです。このようにして、「脳過敏」が形成されることになります。
 片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」ことが強調されていますが 、”脳の興奮性の亢進”は、上記のことを示すものです。
  そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。


(2)必須脂肪酸の摂取のアンバランス 

  体内に吸収された脂肪酸は、酵素を触媒として次のように変換していきます。
 体内での脂肪酸の変換には「飽和脂肪酸系列」「リノール酸系列」「アルファ・リノレン酸系列」の3つがあります。そして重要なことは、これら3つの系列の脂肪酸は「体内で相互変換しない」ということです。つまり、どれだけ大量の飽和脂肪酸を摂っても、ガンマ・リノレン酸に変わることはありません。 またリノール酸が、EPAやDHAに変わることもありません。

 脂質は細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造を構成します 
 細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造には食べた脂肪酸がそのまま使われますので、どのような種類の脂肪酸を含む脂質を食べたかにより、膜構造の状態が大きく異なり、ミトコンドリアの働きが左右されます。
 このようなことから、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスが悪くなれば、ミトコンドリアの働きを悪化させることに繋がります。

 このように「体の脂肪酸バランス」は、食べ物として摂った脂肪酸によって決まってしまいます。すべての細胞の脂肪酸の状態が、摂取した脂肪酸によってストレートに決定してしまうのです。


(3)鉄不足

  電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須です。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
 このように、鉄分の不足は、ミトコンドリアのエネルギー代謝がスムーズに行かなくなります。その結果、機能低下を招くことになります。

3.生活環境の問題

(1)活性酸素

 ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。そして、このミトコンドリアDNAは、核内DNAより10倍傷つきやすいとされています。これは前章で述べたことです。

野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足  

 私達の身の回りのは活性酸素が満ち溢れています。このような活性酸素の毒消しをするのが、フリーラジカルスカベンジャーです。私達の体には活性酸素を取り除く手段として、「抗酸化物質」が備わっています。
 このなかで、スーパー・オキサイド・ディスムターゼ SODの産出能力は25歳から下降しはじめ、40歳を過ぎて急速に低下することが分かってきました。コエンザイムQも同様に40歳を境に減少してきます。

 この生体に備わった「抗酸化物質」の減少を補う目的で抗酸化食品を意識して摂取しなくてはなりません。抗酸化食品は活性酸素を除去します。
 こうしたことから、抗酸化物質の摂取不足はミトコンドリアの働きを悪化させることになります。

(2)有害物質  

 有害物質が体内に多く残っていますと、全身の細胞の代謝が低下します。中でもエネルギー代謝に働く細胞内のミトコンドリアが有害物質の害を受けることによって「酸化ストレス・炎症体質」を形成させてきます。有害物質ゼロが理想です。

デトックス(解毒)および解毒代謝能力を向上させるために

 私達は知らず知らずに、有害物質を摂取しています。このため日頃からこれを排泄させるためにデトックスを心がけることが大切になってきます。
 デトックスを怠れば、ミトコンドリアの機能を低下させ、「酸化ストレス・炎症体質」を形成することになってきます。

4.年齢的な問題

 女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下

  閉経が起こる前後の5年間、年齢的には45歳ぐらいから55歳ぐらいまでを更年期から、女性ホルモンの分泌が低下してきます。
 女性ホルモン自身が活性酸素を減らすわけではありませんが、女性ホルモンは、活性酸素を減らす酵素を増やす働きがあります。
   さらに、エストロジェンにはもうひとつの働き・役割として、ミトコンドリアを増やす機構があります。
 エストロジェンはミトコンドリアに直接働きかけてミトコンドリアを増やしてくれます。
 このようにして、更年期以降はミトコンドリアの働きは低下してきます。


 以上のようにさまざまな生活環境および生活習慣によって、ミトコンドリアの機能は低下してきます。
  これを、是正・改善しておきませんと「酸化ストレス・炎症体質」を形成してくることになります。
 そして、これが慢性頭痛を引き起こす基盤になってきます。