本年度、上半期の当ブログの主なテーマは、以下のように示される”脳のなかに異常のない慢性頭痛”である「頭痛持ちの頭痛」からスタートしました。
そして、専門家の慢性頭痛とくに片頭痛に関する考え方にも言及しました。
脳のなかに異常のない慢性頭痛である「頭痛持ちの頭痛」は、たかが頭痛として軽く扱われてきました。
ところが、片頭痛のときに起こる脳の変化(閃輝暗点)が、PET、MRI(BOLD法)といった脳の新しい方法で、脳の病気が画像として確認され、群発頭痛の発作時には、視床下部が異常に活性化する事がPET、MRIなどの新しい測定法で発見されたことから、頭痛持ちの頭痛といわれるもののなかに「頭痛そのものが脳の病気」であることがわかってきたとされています。
「片頭痛はもともとある遺伝的な体質が原因なので、完全に治すわけにはいかないのですが、片頭痛を軽くする薬や、予防する薬は新しく開発されていますので、片頭痛は上手にコントロールできます」と専門家は申されます。
そして、このような慢性頭痛をどのように考えるべきかについて述べてきました。
さらに、現在では、「脳過敏症候群」という新しい病気が注目されはじめています。
このような考え方の是非について私見を述べました。
このようなことに対して私の考え方を述べている最中に6月中旬に、32歳の読者の方から頭痛相談をされ、この方自身が「片頭痛改善サイト」をネット上に運営されることを希望されておられたようでした。この当時は、この相談された真意が計りかねました。
この方は、緊張型頭痛と片頭痛は明確に区別できるものであり、緊張型頭痛なら緊張型頭痛への対処法を、また片頭痛なら片頭痛の発作時に適切な対処の仕方をネット上で明らかにすべきであり、こういった点から私のブログのあり方そのものが適切ではない、とのご指摘をお受け致しました。これが何を意味していたのかが理解できませんでした。
ところが、本日、外来に56歳の片頭痛患者さんが来院されました。この患者さんは、20歳過ぎから、肩こりが酷くなると頭痛を訴えておられ、当時は頭痛のあるたびに市販の鎮痛薬を服用されておられたとのことでした。
ところが、3年前から頭痛が増悪してきたため、脳神経外科のクリニックを受診されました。この脳神経外科のクリニックの院長は、以前、総合病院の脳神経外科の部長をされ、当時から私も手術の必要な頭痛患者さんはすべてお願いしていた先生で、ここ紀南地区では、私が最も信頼している脳神経外科医です。
この脳神経外科のクリニックを受診され、CTの画像検査もこれまで2回撮影され、肩こりによる頭痛、緊張型頭痛と診断され、筋弛緩薬、抗不安薬の処方を3年間服用され、頭痛が出れば鎮痛薬を服用されておられたとのことでした。途中から、ストレスから不眠もあり、睡眠薬も併用されておられたとのことでした。
ところが、本年6月になって以降、頭痛の程度も増悪され、起こり始めは異様に肩こりが出現するとともに吐き気を伴うともに頭痛が増強し、2,3日間は寝込まなくてはならず、さらにこれまでは日中しか起きなかったものが夜間、明け方にかけて頭痛が出現し、このため眠りを妨げられるようになったため、本日来院されました。
本人の当医院を受診された最大の理由は、もっと有効な鎮痛薬を処方してもらうことでした。
私は、本人には、当初は緊張型頭痛であったものが、これが片頭痛へと移行したものであり、頸椎X線検査でみられた「体の歪み(ストレートネック)」から、当初は緊張型頭痛であったものが、さらに片頭痛へと進展したものであると、図示して説明することで理解されたようでした。
そこで、根本的に治すためには、「体の歪み(ストレートネック)」を是正することであり、このための「体の歪み(ストレートネック)」を改善・是正させる方法を時間をかけて説明しました。そして、最低でも、「首反らしの姿勢」を日頃から行い、毎日、「背骨伸ばしのストレッチ」を1回3分間毎日行うように指導しました。
ところが、この方は、こうした面倒くさいことは希望しておられないようでした。
本人の求められているのは、2,3日間寝込む程の頭痛を改善させる「おくすり」を希望されておられるようでした。
このため、現在、片頭痛発作時には、トリプタン製剤という片頭痛発作時のメカニズムに直接作用する「おくすり」があり、これを服用する方法があり、トリプタン製剤の作用機序について改めて説明するとともに、服用方法について詳しく説明したところ、目を輝かせて、遠方から来た甲斐があったと述懐されていました。
恐らく、この方は、「体の歪み(ストレートネック)」を改善・是正させることなく、トリプタン製剤の魔力に魅入られて、先々、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を併発させてくるであろうと暗澹たる気持ちにさせられました。
先程の32歳の読者の方も同様であり、片頭痛発作時に有効な対処方法だけを望まれ、片頭痛を根本的に治すことなどは眼中にないようです。
このように、片頭痛患者さんの本当に求めておられるのは、発作時に辛い頭痛をたちまち軽減・緩和させることしか求めておられないことが痛感させられました。
すなわち、根本的に治すことなどは眼中にはなく、日常的に感じる何でもない頭痛も片頭痛も同じように同等の頭痛でしかないと思っておられるようでした。
こうした片頭痛患者の心の隙をつくのが、トリプタン製剤であり、こうした発作時に辛い頭痛をたちまち軽減・緩和させることで、患者さんから名医・カリスマ医師として持て囃され、専門医がこれを「片頭痛が治る」と宣われる根源のようです。
しかし、長期的にみる限りは、トリプタン製剤はあくまでも一時凌ぎにすぎないはずのものです。これが片頭痛を慢性化させていく根源にもなっているはずです。
本日の患者さんにも、このような事実をお話して、釘を刺したつもりですが、このようなことをどこまで聞いていたかは定かではありません。少なくとも、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を併発させないことを祈るしかないようです。
このように、この患者さんが50歳を超えていることから、恐らく死ぬまでトリプタン製剤のお世話になる運命にあるのではないかと、罪悪感に苛まれた次第でした。
こうしてみる限り、片頭痛患者さんの求めている医療とは、たちまちの頭痛を軽減・緩和させることしかないように思われ、これが緊張型頭痛から片頭痛へと進展させる根本的な原因になっています。
片頭痛に至れば、トリプタン中毒になるまで放置される運命にあるようです。
これをうまく悪用したのが現在の片頭痛医療であり、さらに片頭痛予防薬が延々と追加されることによって、現在の「頭痛外来」が成り立ち、運営できるようです。
こうしたことを踏まえて、今後の本年度の下半期のブログのテーマは、「片頭痛の正しい知識」を徹底させることにしました。
私のブログは難解であるとの悪評があるようですので、今後は、だれにでも理解されやすいようにザックバランに記述していく予定です。
もう難しい記述は、上半期で語り尽くしたはずですので、これをやさしく翻訳して、書き直していくことにします。内容自体は寸分異なることはありません。悪しからず・・
私事ですが、平成19年5月に肺炎で入院して、現在では右肺は全面癒着しており、さらにCOPD・肺気腫が増悪し、肺機能の低下がかなり進行しており、いつ命を落としても不思議ではない状況にあり、後残された寿命にも限りがあることから、「片頭痛が後天性ミトコンドリア病である」ことを後世に伝えていくことが使命と思っております。