なぜ、女性に片頭痛が多いのでしょうか? その5 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

妊娠中は片頭痛にならない?


 妊娠中は多くの人が片頭痛から解放されるようです。
 妊婦の身体は日々変化していくので、片頭痛がなくなっても妊娠中は疲れやすかったり、足がだるくなったり、おなかが張ったり…と妊娠中だからこそ現れる症状もあります。
 なかでも一番つらいのはつわりでしょう。
 妊娠中は減ると言われている片頭痛ですが、つわりも人それぞれ全く症状や程度が違うように、片頭痛も個人差の大きいものです。
 妊娠したら片頭痛を起したという人もいます。
 女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が増えるのは妊娠中期から後期にかけてですから、妊娠初期に片頭痛を発症する人がいてもおかしくはありません。
 あくまでも、妊娠中は片頭痛を「起しにくい」というだけで、全く起こさないというのではないのです。


妊娠中に片頭痛を起したら…


 程度や頻度が軽くなるとは言っても、妊娠中にも片頭痛は起こります。
 しかし妊娠中の片頭痛には困った点があります。
 それは、薬が使いづらいということです。
 妊娠期間によって胎児への影響の度合いは違いますが、特に妊娠初期の2か月目は、胎児の器官形成時期となるため薬は控えておいた方がよいでしょう。
  妊娠後期になると胎児の催奇形性はありませんが、胎児毒性が問題となるので、やはり控えるべきでしょう。
 では、実際に発作が起こってしまったらただ過ぎるまで耐えるしかないのでしょうか?
 医師に指示を仰ぐ必要がありますが、妊婦における片頭痛発作には、カロナール等のアセトアミノフェンなら認められることが多いです。
 医師から許可が出た薬を使い、症状が増悪しないように部屋を暗くして、安静にしましょう。
 また、妊娠期間中だけでなく出産後にも主な片頭痛薬であるイミグラン・ゾーミッグ・マクサルトといったトリプタン製剤は、使用が制限されています。
 使用後は24時間あけて授乳するようにという指導がされており、片頭痛はできるだけ起こさないように予防したいところです。
  特に妊娠中から出産後は身体の変化だけでなく、夜中の授乳等の育児による心身へのストレスも加わるため、規則正しい生活を送り十分な睡眠をとることが難しくなります。
 しかし、一度発作を起してしまうと薬は使いづらいので、家族の協力を得て、できるだけ日常生活にも気を配りたいところです。


産後、授乳中の片頭痛


 出産後は女性ホルモンが急激に減少するため、片頭痛が起こりやすくなります。また、育児のストレスや睡眠不足などが誘因になることもあります。
 授乳中は妊娠時と同様、いきなり薬を飲むのではなく、まずはそれ以外の方法から試してみましょう。それでも我慢できないようであれば、医師から処方してもらった薬を飲んでみてください。
 子育て中は忙しくて受診できず、片頭痛で困っている人は案外多いようです。頭痛持ちの人は赤ちゃんが欲しい・・・と思った時点で病院を受診し、あらかじめその対策を練っておくといいでしょう。


 このように専門家は指摘され、女性のライフステージの合わせた対策を勧めています。


 
経口避妊薬と頭痛


 エストロゲンに関連して、経口避妊薬のピル服用による頭痛があります。
  これは、「国際頭痛分類 第3版 β版」では、「外因性ホルモンによる頭痛」とされ
  
A. CおよびDを満たす頭痛または片頭痛
B. 外因性エストロゲンを3週間以上毎日使用しており、それが中断されたもの
C. 最後にエストロゲンを使用後、5日間以内に頭痛または片頭痛が出現する
D. 頭痛または片頭痛は、3日以内に消失する


 と定義されています。


 経口避妊薬(ピル)を服用した場合、片頭痛が生じやすくなることがあります。
 ピルにはエストロゲンとプロゲステロンが含まれており、21日間服用し、7日間休薬します。片頭痛は血中のエストロゲン量の低下する休薬期間に生じることが多いようです。
 ピルを飲み始めた頃によく起こります。卵胞ホルモンの影響により生じると考えられます。

 特に、ドクンドクンと心臓が脈打つように痛む片頭痛は、卵胞ホルモンの量が減少するときに生じやすく、休薬期間中に生じやすくなります。
 市販されている頭痛薬を飲み、痛みが和らぐようであればそれほど心配することはありません。非常に激しい頭痛は、血栓症の初期症状を疑う必要があります。
 ピル投与中に最も多く認められる副作用が頭痛です。日本頭痛学会によればもともと持っている頭痛が悪化する、新規の頭痛に悩まされるという2つの可能性があります。
 これらの頭痛が起きる背景にはピルの服用によってホルモン分泌が変わったことが主にあります。
 ピルの使用によって前兆のない片頭痛は24.1-34.8%の悪化、前兆のある片頭痛は.6-69.2%の症状の悪化をみるという研究結果もあります。
 一方で、ピルを服用している女性のうち片頭痛の患者は全体の18%という研究結果も出ており、片頭痛持ちでもピルを服用している患者がいることもわかります。
 日本頭痛学会では前兆のある片頭痛を持っている患者に対してピルを服用させるのは禁忌、前兆がない場合でもピルの服用は慎重にすべきと定めています。
 その背景にはピルによって片頭痛が悪化したり、もともとは頭痛がなかった人に頭痛が出てくる可能性があるからです。
 実際にピル投与中の副作用の割合を見てみると頭痛が第1位となることがわかっていますし、ピル使用によって頭痛が悪化したという人は少なくとも18%はいるとのことです。


 ピルによって変わってしまったホルモンバランスで頭痛を引き起こしているとき、数か月すると新しいホルモンバランスに身体が適応して頭痛が治まることがあります。
 まずは頭痛があっても1-2か月様子を見るという方が多いので症状を見ながら適宜休んだりして様子を観察してください。


 服用初期にみられる副作用はなぜ起きるのでしょうか?
 

 私たち成人女性の体の中では、さまざまなホルモンが作用しています。中でも、卵胞ホルモンと黄体ホルモンは、性周期を作り出すもとになるホルモンです。体内の卵胞ホルモン量や黄体ホルモン量の変動は、きわめて大きなものです。また、個人差も大きいのです。つまり、体内の自然のホルモン環境は一人一人違うし、いつも違うということができます。体内のホルモン環境が一人一人違うことは、月経量に個人差があることからもわかります。経血量が多い人もいれば、少ない人もいますね。体内のホルモン環境がいつでも変化していることは、周期的な気分や体調の変調から感じることのできる方も多いでしょう。

 ピル服用中のホルモン環境は、どのように変わるのでしょう?自然のホルモン環境と較べると、大きな周期的変化はなくなります。一定のホルモン水準が維持されることになるわけです。ピルによって作り出される一定のホルモン水準、これに対する体の受け止め方には、個人差があります。ピルによって作られるホルモン環境を、自然なホルモン環境と変わらない、と感じる方もいます。一方、ピルによって作られるホルモン環境に対して、体が違和感を感じる方もいます。この違和感が、副作用となって現れてくるのです。
 ピルの服用により、ホルモン環境の大きな周期的変化はなくなります。しかし、それまで小さかったホルモン環境の日変化は、かえって大きくなります。ピルの服用では、ホルモンの補給は1日に1度です。吸収・代謝が日々繰り返される中で、これまで経験しなかった小刻みなホルモン環境の変化を経験することになります。このことも、副作用を感じる原因となります。
 ピルを服用することは、ユニフォームを着ることと似ています。自分で選んだ服ではありませんから、最初は違和感を感じることもあるでしょう。でも、着慣れてくれば、ユニフォームにもいいところはあります。一方、私服は個性を引き出してくれます。でも、毎日着替える洋服の中には、自分でも嫌になるものもあるでしょう。
 自然のホルモン環境は、いつでも誰にでも快適かといえば、そうではありません。ピルのホルモン環境には、最初は違和感があってもほとんどの方が慣れていききます。


脳梗塞の危険があります


 片頭痛でピルを飲んではいけない、と言われる理由はピルによって頭痛が悪化する可能性が指摘されているというほかに、脳梗塞の危険があるという理由も存在します。
 最近、片頭痛の人は、一般人と比べて脳梗塞を起こしやすいことが分かってきました。片頭痛の発作を起こすたび、脳血管の内皮細胞に損傷を起こし、繰り返す頭痛で血管ダメージが蓄積し、脳梗塞を引き起こすのです。発症倍率は、単純な片頭痛がある方で2倍、キラキラした光が見える片頭痛の方で6倍、片頭痛がありタバコを吸うと10倍、片頭痛があり低用量ピルを飲むと2倍、片頭痛がありタバコを吸い、低用量ピルを飲むとなんと34倍です。
  このため、日本頭痛学会では前兆のある片頭痛を持っている患者に対してピルを服用させるのは禁忌、前兆がない場合でもピルの服用は慎重にすべきと定めています。
 その背景にはピルによって片頭痛が悪化したり、もともとは頭痛がなかった人に頭痛が出てくる可能性があるからです。

 

 

 以上のように、女性の片頭痛は出産という大きな人生のイベントがあります。お産を契機に、極端に、片頭痛が悪化させてくる場合が多いのは事実です。その理由は、育児に際して睡眠時間が十分に確保できないことです。睡眠不足は直ちに、ミトコンドリアの働きを悪くさせます。それは、日中に傷ついたミトコンドアリアが睡眠中に修復されるからで、睡眠がとれなければミトコンドリアの修復が行われず、悪化する一方になるからです。
 こうしたことから、結婚までには、片頭痛を改善させておく必要があります。


 現在は、片頭痛は治る時代になってきました。
 私は、未婚で将来結婚を考える以前の段階で、片頭痛を治しておくべきと指導するように努めております。
  こうしたことから、片頭痛が発症した当初から治療を進めるべきであり、遅れれば、それだけ悪化要因が追加されることになり、改善に時間を要することになります。