緊張型頭痛とは・・専門医の啓蒙書から | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 本年度は、頭痛専門医の先生方によって、以下のような頭痛の一般の啓蒙書が出版されました。


頭痛は消える 200万人の痛みを消した専門医が教える58の習慣
頭痛女子バイブル 痛くなるワケから治し方までまるごと頭痛のこと
頭痛をスッキリ治す本  いちばん多い頭痛=緊張型頭痛のすべて

 
 このなかの最後の「いちばん多い頭痛=緊張型頭痛のすべて・・頭痛をスッキリ治す本」は、頭痛診療とくに片頭痛診療における重鎮とされる寺本純先生が書かれたものです。
 私は、これまで寺本先生の学会報告はもとより、一般啓蒙書はことごとく購入し、すべて拝読させて戴いております。ということで、久々の出版でもあり、これまでの考え方に変化がみられるのかどうかを楽しみに、今回も拝読させて戴きました。

 
 これらの3冊で共通して言えることは、前回でも述べましたように専門家は、国際頭痛分類第3版を頭痛診療および頭痛研究の教義・教典として臨床頭痛学を論じていることです。今回取り上げる「いちばん多い頭痛=緊張型頭痛のすべて・・頭痛をスッキリ治す本」のなかでのテーマである「緊張型頭痛」でも然りでした。
 寺本先生は、これまで一般的な啓蒙書として、片頭痛・群発頭痛について出版され、今回が緊張型頭痛でした。このような脳の中に異常のない慢性頭痛のなかで、緊張型頭痛がどのような位置にあるのかという「総論」がないことです。
 ただ、単に国際頭痛分類第3版で、緊張型頭痛がどのように定義されているのかという観点から述べられているに過ぎませんでした。
 そして、緊張型頭痛には3つのタイプがあるとされます。それは、肩こりタイプとストレスタイプと片頭痛タイプとされ、このタイプに見合った薬剤を服用すべきとされます。
 このように、これまで問題としてきましたように「薬物療法」がすべてです。
 例えば、片頭痛タイプでは、片頭痛の治療と緊張型頭痛の治療の両方を行う必要があり、基本的には両方の治療を同時に進める訳にいかないことから、片頭痛と緊張型頭痛のどちらにまずアプローチすべきかを考えないといけないとされます。
 片頭痛から先に治療を進めるなら、まず片頭痛予防薬の投与を開始します。しかし、このように予防薬を投与しても、すぐには効くことはないはずです。さらに、ある予防薬が効かなければ、また別の予防薬を試すことになります。このようなことを確かめるだけでも少なくとも2,3カ月はかかることになります。
 また、緊張型頭痛から始める場合には、各種の鎮痛薬、抗うつ薬、抗不安薬、筋弛緩薬を使うことになるとされます。
 しかし、このような片頭痛タイプは、もともと片頭痛があったところに、加齢や薬剤の影響によって病像が変わってきて片頭痛に特徴的な症状がはっきりしなくなり、頭痛が毎日続くようになった状態です。このような状態になったところに、仮に片頭痛の治療や緊張型頭痛の治療を別々に行ったからといって、簡単に改善できるものなのでしょうか?
 私には、甚だ疑問に思えることです。このように単純に改善できるのであれば、どなたもボトックス治療などの高額な治療法を希望される方々はいらっしゃらないはずです。
 専門家は、片頭痛であればトリプタン製剤と予防薬を併用すれば、いとも簡単に片頭痛が改善できるとされますが、このような片頭痛タイプとなった緊張型頭痛が改善できるのであれば、頭痛の専門家などは、必要とはされないはずです。にも関わらず、片頭痛と緊張型頭痛の両方を治療することによって改善できるとされます。それも、薬物療法だけで改善可能なように記載されます。果たして、そうなのでしょうか?
 私は専門医ではありませんが、永年頭痛医療に携わっていたズブの素人からみても、本当なのだろうかと疑問を持たざるを得ません。さらに、私にはまだまだ修練が必要のようです。


 次に、肩こりタイプの緊張型頭痛については、肩こりの正体は「頭頸部ジストニア」であるとされます。その理由として、以下のように述べています。


 肩こりの場合には「筋肉の収縮がずっと続いている」からだと考えられ、「筋肉の収縮がずっと続いている」ということは、筋肉に対して絶えず「収縮せよ」という命令が出されている、と解釈すべきとされます。スポーツや重労働といった肉体ストレスを受けると、脳の辺縁系という場所が、大脳基底核を通して常に筋肉を収縮させる命令を出すことになり、それが神経を通って筋肉に伝わっていることなのです。
 自分の意志とは別に、脳からの命令によって勝手に筋肉が収縮することを「不随意運動」 といい、そのひとつがジストニアです。
  こういったことから、肩こりは、「頭頸部ジストニア」であると言われます。
 「姿勢の異常・首が曲がっていること」は緊張型頭痛の原因ではなく、結果とされます。
 それは、筋肉の緊張度に左右差があるために、結果的に「首が曲がっている」のであるとされます。
  要するところ、「体の歪み(ストレートネック)」は、筋肉の緊張度に左右差があるために、結果的に首が曲がっているためとされます。
 こうしたことから、「体の歪み(ストレートネック)」は緊張型頭痛の原因とはならず、結果であるとされます。
  果たして、このような解釈でよいのでしょうか?


 北見公一先生は慢性片頭痛の患者さんに,傍脊柱筋(脊柱起立筋,姿勢筋)の筋筋膜痛症候群が多く合併することを見出しました。また片頭痛に限らず,頭痛が慢性化する場合に中枢性痛覚過敏(central sensitization)という現象が関係していることが知られています。 これは末梢からの痛み情報が時間的・空間的に多く中枢に伝わると,次第に痛みの閾値が低下し,わずかな痛覚情報にも反応する過敏さが出現することを言います。中枢性痛覚過敏になるとわずかな圧迫や熱・冷感を痛みとして感じるようになるとされます。


 人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨全体にかかることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないように脊柱はS状の湾曲を呈しています。S状の湾曲を示すことによって体重の掛かり方を分散させています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
 この「左右いずれかに傾いて(捻れて)」いることによって、筋肉の緊張度に左右差がある、ことになってきます。
 日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛は、「体の歪み(ストレートネック)」が形成される以前の段階において出現してきています。
 「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることになれば、絶えず、頸椎を始めとして脊柱を取り巻く筋肉群・傍脊柱筋(脊柱起立筋,姿勢筋)が常に刺激されることによって、頭痛を引き起こしてくることになります。
 これが、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛です。


 このように、国際頭痛分類第3版でいう稀発反復性緊張型頭痛→頻発反復性緊張型頭痛→慢性緊張型頭痛へと移行していくと考えられます。


 このように、寺本先生は以前は直頸椎と頭痛の関与を示唆されておられましたが、現在では「頭頸部ジストニア」によるものとされ、「体の歪み(ストレートネック)」は原因ではなく、結果だとされ、他の専門家と同様、まったく否定されます。
 このことに関しては、以前にも記事に致しました。


  頸部ジストニアと体の歪み(ストレートネック)をどのように考えるべきか
    
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11944921314.html

 
   ストレスタイプの緊張型頭痛に関しては、以下のように考えるべきです。


  Lipton RB 、Spierings ELHによれば、片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraineとされ


      片頭痛
    big(true)migraine
   連続体
 緊張型頭痛
        緊張型頭痛
 small migraine     (脳内セロトニンの関与)
 

 ということは、片頭痛での緊張型頭痛はsmall migraine で、本格的な片頭痛はbig(true ) migraine で、これが連続しているということです。
 緊張型頭痛はこれとは別に、独立して、存在するということです。
 この差異は、「片頭痛素因」の有無で決まるとされています。
  この片頭痛の遺伝素因とはミトコンドリアの活性低下を指しています。
 このように、緊張型頭痛には2つのタイプのものがあるということです。


  さらに、このような日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛を起こす原因は、2つあります。


(1)「ホメオスターシスの乱れ」が原因になります


 経験的に、ストレスは慢性頭痛を増悪させる原因と知られています。
 そして、このストレスが、「ホメオスターシス」を乱す根源になります。
 さらに、ストレスは、マグネシウムの不足をもたらし、活性酸素を増加させ、ミトコンドリアの機能を悪くさせ、セロトニン神経系の機能を低下させ、「健康的な生活」を送るための根源に問題を引き起こすことになります。


 「ホメオスターシスの三角形」を構成する、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系はホルモンと”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めております。この「ホメオスターシスの三角形」を乱す”さまざまな生活習慣の問題点”によって、「ホメオスターシスの三角形」に”歪み”を引き起こしてきます。
 このために、頭痛を肇として、さまざまな体調不良の訴えが出現してきます。


1)自律神経の関与


 自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与しています。
 自律神経を司っている部分は視床下部といい、人の感情や活力を操っています。ストレスを感じるのもこの部分で、心臓をドキドキさせたり緊張させたりする働きも自律神経が担います。
 緊張は血管を収縮させて、筋肉を固くします。これは敵から身を守り戦おうとする働きです。
 ストレスは脳への刺激を通して自律神経に作用し、体に不快症状を引き起こします。
 自律神経は、戦いと安らぎという二つの役割のものがありますが、ストレスを受けると戦うためのものが優位になります。
 こうなることで、体の緊張は高まり、血行が悪くなります。
 頭痛も、緊張した筋肉と血行不良のダブルの効果で頭の血流が滞ることで起こりやすくなります。


 また、”セロトニン神経系”の機能低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
 セロトニン神経は、痛みの感覚を抑制する役割を担っています。
 セロトニン神経が弱まると、些細なことで体の痛みを感じるようになります。脳内セロトニンが低下すれば、頭痛が出現しやすくなってきます。


2)生理活性物質の関与


 ”生理活性物質”のひとつのエイコサノイドは、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、この摂取バランスがよくないと、局所ホルモンのエイコサノイド・プロスタグランジンのバランスを乱すことになります。


 細胞に物理的な刺激が加わった場合や炎症などはアラキドン酸が遊離するきっかけとなるため、いったんプロスタグランジンが産生され、炎症が起きると、アラキドン酸の遊離が促進され更にプロスタグランジンが産生されるという悪循環が生じることになります。
 炎症の初期にプロスタグランジンの産生をしっかりブロックすることは、痛みを悪化させないための重要なポイントです。
 プロスタグランジンの原料になるのは食物の中に含まれる脂肪です。
 このため、脂肪分の多い食事を摂りすぎますと、頭痛・痛みそのものが出現しやすくなります。


3)腸内環境の悪化


 実は、便秘が頭痛の原因となることがあるというのを知っていますか。
 便秘が慢性化すると、それが原因で頭痛が起こる場合があります。
 便秘が続くと、お腹が苦しくなったり痛くなったりするだけではなく、肌荒れでニキビや吹出物、口臭がくさいなど、いろいろな体の不調が起こってきます。
 それは、便が腸内に留まることで腐敗し、有毒なガスを出すことによるものです。
 便秘している腸内からは、インドール、スカトール、アンモニア、アミンなどといった猛毒物質が発生しており、これらが腸から吸収され血液と一緒にあなたの身体中を巡ります。有毒なガスや腐敗した便は適度な時間に排出されないと、再吸収といって、有毒なガスや毒素が腸の壁から血液中に取り込まれ、毒素が体にまわってしまうことで、さまざまな不調が起きると考えられています。
 その症状のひとつに頭痛も挙げられ、便秘が解消すると頭痛が治る人は便秘が原因だったということになります。
 便秘が続くと、体がだるくなるという人も多いのではないでしょうか。
 血液に有毒な物質が混ざって全身を巡ることで、筋肉にも毒素や疲労物質が溜まりやすくなり、体のだるい感じや肩こり、腰痛などを起こすのです。
 この筋肉の緊張によって緊張性頭痛を起こすと考えられます。


 このような3つの要因の1つでも問題があれば、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛を引き起こしてくることになります。


(2)前屈みの姿勢を強制される生活環境


 さらに、現代社会は、”活性酸素”に満ちあふれた生活環境にあります。
 これらがすべてミトコンドリアの働きを悪くさせてきます。このような外部の生活環境の要因があります。これらが「酸化ストレス・炎症体質(片頭痛体質)」を形成してくることに繋がってきます。
 こうした背景をもとにミトコンドリアの働きが悪くなると同時にセロトニン神経系の機能が低下しているところに”生活習慣の問題”が加わって「脳内セロトニンの低下」が引き起こされ、この両者によって「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされやすい状況を作ってくることになります。
 これが、慢性頭痛発症の起点(スタート)となる”日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛”を発症させる原因にもになってきます。


 私達は、日常生活を送る上で、私達は前屈みの姿勢をとる生活環境に置かれています。特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
 さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。現代社会はスマホ全盛の時代で、歩きスマホをされるご時世です。


 こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。


 ここにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時はたいていどちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たいモノを持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎( 背骨)の歪みが生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びひいては頸椎にまで及んで、”脊柱の捻れ”を最終的に引き起こしてきます。
 このようにして、体の歪み(ストレートネック)が形成されてきます。ここで注意すべきことは、脊柱自体が捻れていることで、このために、左右のアンバランスが引き起こされているということです。このことによって、脊柱を取り巻く筋肉群・傍脊柱筋(脊柱起立筋,姿勢筋)が絶えず刺激され、持続的に収縮していることです。これを増悪させるのは、立位そのものであり、特に前屈みの姿勢が関係することになります。


 このように、慢性頭痛を引き起こす原因として、以下の3つがあります。
 

   1.「ホメオスターシスの乱れ」
   2.「体の歪み(ストレートネック)」
   3.ミトコンドリア、セロトニン神経系


  ミトコンドリアは、セロトニン神経系と連動して作用し、「健康的な生活」の”鍵”を握っており、さらに生体の恒常性の維持機構(ホメオスターシス)を制御し、「体の歪み(ストレートネック)」形成にも関与しています。


 以上のように慢性頭痛の原因とされる3つの要因はすべて、ミトコンドリアと関与しています。
 こういったことから、生命の根源ともなるべき役割を果たす”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となっていることから、脳のなかに異常のない「慢性頭痛」とは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があると考える所以(理由)があります。


 こういったことから、慢性頭痛のなかの緊張型頭痛と片頭痛は別々に論ずるべきではなく、一連の連続したものと捉えるべきであり、ということは 片頭痛での緊張型頭痛はsmall migraine で、本格的な片頭痛はbig(true ) migraine で、これが連続しているということです。
 緊張型頭痛はこれとは別に、独立して、存在するということです。
 このように、緊張型頭痛は”ミトコンドリアの活性低下”という「遺伝素因」の有無によって、2種類の緊張型頭痛が存在するということです。
 このため、ご家族に遺伝素因というか、”頭痛持ち”の有無によって、発症当初からの対処方法が全く異なっているということです。
 ということは、ご家族に頭痛持ちがいらっしゃれば、片頭痛として発症当初から対処すべきであり、片頭痛タイプの緊張型頭痛まで移行させてはならないということです。
 これが最も重要なことです。


 詳細は、以下をご覧下さい。


  片頭痛治療のてびき 前編
    
http://taku1902.jp/sub510.pdf


  慢性頭痛 治療の考え方・進め方 後編
    
http://taku1902.jp/sub511.pdf


  このうち前編の第5章以降をご覧下さい。


  このように、ストレスタイプの緊張型頭痛は、抗うつ薬を単純に服用するだけでは、一時的な効果しか得られず、根本的に改善させるためには「脳内セロトニン」を如何にして増やすかの工夫をしなくてはなりません。
 肩こりタイプの緊張型頭痛に対しては、すでに東京脳神経センターの松井孝嘉先生が「頸性神経筋症候群」の観点から首疲労を改善させることによって、完治することが証明されています。単純に、薬物療法では完治することはありません。
 そして、片頭痛タイプの緊張型頭痛に至れば、如何なる薬物療法を行おうとも、経験的に改善は不可能と考えるべきであり、このようなタイプの緊張型頭痛までに移行させないことが医師としての努めであるはずです。
 これまで、専門家にはこのような観点で対処することなく、トリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者の作成した国際頭痛分類第3版を頭痛診療および頭痛研究の教義・教典として臨床頭痛学・とくに片頭痛を論じてきたことによって、ただひたすらに片頭痛を醸成・熟成させてきたということです。
 このことを私達は肝に銘じておくことが重要になってきます。


 こうしたことから、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛に対して、安易に市販の鎮痛薬を服用して、これが効くからといって安閑としていてはならないということです。
 ご家族のなかに”隠れ片頭痛持ち”の方が、おられないとも限らないからです。

 
 以上、緊張型頭痛だけに関しても、専門家とズブの素人では、見解の相違が存在することが理解されたと思っております。

 このように、緊張型頭痛は慢性頭痛のなかでも最も重要なものであり、これに対する対処如何によって、頭痛を慢性化させ、片頭痛の遺伝素因があれば、片頭痛に移行させることになります。このため、安易に市販の鎮痛薬でお茶を濁すことなく、先述のような緊張型頭痛を引き起こしてくる要因は、日常生活のなかに存在しないかどうかを、頭痛が起きるたびに点検・確認することによって、これを改善・是正することが大切です。
 市販の鎮痛薬が効いたからといって、決して安閑としてはならないということです。
 そうされませんと、いずれツケが回ってきて、後悔することになります。
 専門家は、なぜだかこのようなことを私達には忠告されることはないようです。
 そうなれば、専門家の役割とは、一体、何なのでしょうか?