(7)それぞれの拠り所
専門家の拠り所とするもの
現在の学会を主導される方々は、1980年代に英国において片頭痛治療薬トリプタン系製剤が開発されて以来、1991年に、全世界で初めて販売されたことに注目されていました。
この発売後から日本にトリプタン製剤が導入されるまでの10年間の間は、神経学雑誌の話題・トピックスの大半がトリプタン製剤で占められていました。これほど長い期間、日本にトリプタン製剤が認可される日が待ち焦がれていました。このように、常にトリプタン製剤の動向を念頭におき、1962年に発表された米国神経学会の頭痛分類特別委員会の分類、さらにその後,1988年に発表された国際頭痛分類、2003年に、「国際頭痛学会による診断基準を伴う分類」の改訂分類が発表され、こうした「国際頭痛分類」を基本として、1996年に、片頭痛の克服をめざす国際的組織ADITUS が設立されたことを契機に、それまでの1973年の頭痛懇談会、1985年の頭痛研究会、さらにこれを発展させた形で、同年の1996 年に「日本頭痛学会」を設立されました。
とくに1988年に発表された「国際頭痛分類」を遵守されることになりました。この国際分類は、1980年代はじめにイギリスで合成されたトリプタンを意識的に評価する目的で作成されたもので、とりもなおさず、欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していたものです。現在の学会を主導される先生方は、片頭痛研究は日本より、欧米のほうが遙かに進んでいると考えることから、片頭痛の克服をめざす国際的組織ADITUS(トリプタン製薬メーカーのアストラ・ゼネカ社が設立)から、その情報・知識を取り入れました。
このなかで「ADITUS Japan」の活動は見落としてはなりません。トリプタン製剤販売に照準を合わせ、1999年から、トリプタン製剤のひとつである”ゾーミッグ”の製薬会社アストラ・ゼネカ社が率先して、日本全国の脳神経外科・神経内科を中心とした医師への啓蒙活動というよりは宣伝活動を展開し、トリプタン製剤の導入に向けて着々と販売促進の準備を進めていました。
2000年にやっと、日本に待ち焦がれたトリプタン製剤を導入すると間もなく、電光石火のごとく「慢性頭痛の診療ガイドライン」が作成されました。
このような欧米崇拝主義の考えから背後に存在する問題点、日本人の特性などを考慮することなく、海外の文献的”エビデンス”にただ追随しているのが実情です。こうしたことから、鳥取大学神経内科グループの先生方、下村登規夫先生、松井孝嘉先生の偉大な業績がありながら、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、それまでに欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していた「国際頭痛分類 第2版」を無条件に踏襲した形で「慢性頭痛の診療ガイドライン」が作成されることになりました。
この「慢性頭痛の診療ガイドライン」は、欧米のトリプタン製薬メーカーとトリプタン御用学者が作成した「国際頭痛分類」という基準を遵守・踏襲した形で作成されたことから、片頭痛治療の世界はトリプタン製剤がすべて(一色)になってしまいました。片頭痛治療薬の第一選択薬として、トリプタン製剤が据えられ、マスコミでは片頭痛の”特効薬”と誇大宣伝が繰り返されました。
そして、この「慢性頭痛の診療ガイドライン」はトリプタン製薬会社を介して、日本全国津々浦々の医療機関に広く配布されたほど徹底したものでした。
このようにして製薬メーカーが中心となって徹底した売り込み戦略が開始されました。このため、学会をも巻き込んだ形でガイドラインが作成された点を忘れてはならない点です。いわばこの「慢性頭痛診療のガイドライン」はトリプタン製薬会社が作成したかのような印象がありました。
これが、今後の片頭痛治療・研究の方向性を決定的に左右した時点でした。
そして、2005年には、頭痛専門医制度が制定され、頭痛専門医は、日本内科学会,日本小児科学会,日本産科婦人科学会,日本眼科学会,日本耳鼻咽喉科学会,日本脳神経外科学会,日本麻酔科学会,日本救急医学会,日本リハビリテーション医学会および日本精神神経学会.日本神経学会 といった各科が入り乱れた集合体で構成されてきました。
この目的とするところは、慢性頭痛では、片頭痛が最も大切なものであり、これにはトリプタン製剤という特効薬があることから、この存在を認識させるためのものです。
Headache Master School Japan(HMSJ)
2013年3月には、国際頭痛学会主催でHeadache Master School 2013 in Asia が東京で行われ、世界のトップエキスパート14名(Burstein, Charles, Diener, Dodick, Ferrari, Goadsby, Gobel, Guidetti, MacGregor, Purdy, Schoenen, Schoonman, Rapoport, Zagami)が来日し、頭痛医学の最新の進歩を参加者一人一人に伝授されました。
学会を主導される方々が、この世界のトップエキスパートとされる先生方は、いずれも”トリプタン御用学者”と称される先生方です。
学会を主導される方々は、これが日本の頭痛診療・教育のあるべき姿を示すものと盲信され、平成25年、学会独自のHeadache Master School Japan(HMSJ)が「日本の頭痛教育プログラム」の中心として継承されることになりました。
そして一昨年はHeadache Master School Japan(HMSJ)2015です。これは一昨年7月26日東京で開催されました。
このように、毎年、Headache Master School Japan(HMSJ)が開催されています。本年度は盛岡と大阪で2回にわたって行われました。
このように欧米の学者の考え方・研究業績を最優先する考え方は、Headache Master School 2013 in Asia から、Headache Master School Japan(HMSJ)へと引き継がれています。以後、Headache Master School Japan(HMSJ)は、毎年、学会が主催して行われ、「国際頭痛分類 第3版β版」が徹底して教え込まれ、これが頭痛診療および頭痛研究の”絶対的な基準”とされています。
一般の開業医が片頭痛にトリプタン製剤を処方しないことから、頭痛専門医の量産を図ります。これは、頭痛専門医に、片頭痛にトリプタン製剤を処方させるのが目的です。
現在の頭痛医療の問題点
学会を主導される方々は、国際頭痛学会が作成した世界的に権威あるものとされる「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究の”絶対的な基準”とし、トリプタン製剤が片頭痛という辛い頭痛を劇的に緩和されたことから、片頭痛研究はトリプタン製剤の作用機序の観点から進められ、片頭痛の病態・発生機序(おこり方)はすべて、トリプタン製剤の効き方から説明されてきました。
世界的に権威あるとされる「国際頭痛分類第3版 β版」は、トリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものです。このため、片頭痛はすべてトリプタン製剤との関連からしか考えることはありません。
こうしたことから、片頭痛はいつまでも原因不明の”不思議で・神秘的な””遺伝的疾患”のままであり続けることになっています。
少なくとも、頭痛という生身の人間が感じる訴えを論ずる自然科学の分野で、「国際頭痛分類 第3版β版」という人為的な基準を頭痛研究の”絶対的な基準”とする「不条理さ」を何ら感じない専門家がすべてであることが問題とされなくてはなりません。
以上のように、専門家は、「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および頭痛研究の絶対的な基準とされ、この基準に従わない考え方は論外とされます。
ド素人の拠り所は・・
これまで、専門家とド素人の見解の相違 その3 でも述べました。
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12223938217.html
その要点は、東洋医学的見地から、片頭痛を含めて慢性頭痛すべてを”未病”と考えています。脳のなかに異常のない慢性頭痛(一次性頭痛)は、東洋医学でいう”未病”の段階にあり、すなわち健康と病気の中間に位置しており、この”未病”は本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから病気へと進展するものです。
このような意味合いから、”未病”の段階にある、慢性頭痛とは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があります。
「健康的な生活を送る」ためには、”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
そして、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
このように、ミトコンドリアは、セロトニン神経系と連動して作用し、「健康的な生活」の”鍵”を握っており、さらに生体の恒常性の維持機構(ホメオスターシス)を制御し、「体の歪み(ストレートネック)」形成にも関与しています。
病気の90%は活性酸素が関与・・後天性ミトコンドリア病
現在、人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与しているといわれ、さらに、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。
ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に必然的に生み出されるのが活性酸素です。
そして、片頭痛は”後天性ミトコンドリア病”と考えるべきものです。
すなわち、片頭痛は”ミトコンドリアの活性低下”という「遺伝素因」をもとに、生まれてから諸々のミトコンドリアの働きを悪くする要因が追加されることによって、さらにミトコンドリアの機能を低下させることによって起きてくる頭痛です。この”ミトコンドリアの活性低下”はミトコンドリアDNAによって先祖代々継承され、生活環境および生活習慣により悪化してきます。
すなわち、生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食に、睡眠不足や運動不足や不規則な生活などの生活習慣が加わって、ミトコンドリアの機能は低下してきます。
このようなミトコンドリアの機能を低下させる要因を取り除かない生活を送ることによって、「酸化ストレス・炎症体質」が形成されてきます。
ここに「脳過敏」を来す要因が次々と追加されることによって、日常的に感じる極く軽度の頭痛を出発点として、緊張型頭痛から、片頭痛へと進展していくものです。
最も、卑近な例を挙げれば、日常的に感じる極く軽度の頭痛に対して、市販の鎮痛薬を繰り返して服用することによって、ミトコンドリアの機能を低下させ、さらに脳内セロトニンを低下させることによって薬剤乱用頭痛を併発させてくることになります。市販の鎮痛薬という”薬剤”が原因となった後天性ミトコンドリア病を作る典型例を示していることになります。
ここにミトコンドリアの活性低下という遺伝素因があれば、当然のこととして片頭痛を発症してくるということです。
このように、片頭痛は”後天性ミトコンドリア病”と考えるべきものです。
こうした考え方では、「国際頭痛分類 第3版β版」をまったく度外視した考え方ということになります。
専門家は、西洋医学の立場から考えることから、病気か健康かの二者択一しかありません。
トリプタン製剤の服用によって、片頭痛患者さんの生活の質 QOLを高めることを目的として、病気として扱われることになっただけのことであり、行っていることはあくまでも対症療法にすぎないもので、片頭痛そのものを根治させるものではありません。 このことが最も大切なことです。
片頭痛を”未病”と捉え、生活習慣の問題点から引き起こされた頭痛であるということを念頭において根治させるべく、生活習慣の問題点を改善・是正させることが重要になってきます。