誰が片頭痛を治らなくしたのか その4 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

日本の頭痛研究の歴史


 現在の学会を主導される方々は、先程も述べましたように、1980年代に英国において片頭痛治療薬トリプタン系製剤が開発されて以来、1991年に、全世界で初めて販売されたことに注目されていました。
  欧米でトリプタン製剤が発売後から日本にトリプタン製剤が導入されるまでの10年間の間は、神経学雑誌の話題・トピックスの大半がトリプタン製剤で占められていました。これほど長い期間、日本にトリプタン製剤が認可される日が待ち焦がれていました。
 このように、学会を主導される方々は、常にトリプタン製剤の動向を念頭におき、1962年に発表された米国神経学会の頭痛分類特別委員会の分類、さらにその後,1988年に発表された国際頭痛分類、2003年に、「国際頭痛学会による診断基準を伴う分類」の改訂分類が発表され、こうした「国際頭痛分類」を基本として、1996年に、片頭痛の克服をめざす国際的組織ADITUS が設立されたことを契機に、それまでの1973年の頭痛懇談会、1985年の頭痛研究会、さらにこれを発展させた形で、同年の1996 年に「日本頭痛学会」を設立されました。
 とくに1988年に発表された「国際頭痛分類」を遵守されることになりました。この国際分類は、先述のように1980年代はじめにイギリスで合成されたトリプタンを意識的に評価する目的で作成されたもので、とりもなおさず、欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していたものです。
 現在の学会を主導される先生方は、片頭痛研究は日本より、欧米のほうが遙かに進んでいると考えることから、片頭痛の克服をめざす国際的組織ADITUS(トリプタン製薬メーカーのアストラ・ゼネカ社が設立)から、その情報・知識を取り入れました 。
 このなかで「ADITUS Japan」の活動は見落としてはなりません。トリプタン製剤販売に照準を合わせ、1999年から、トリプタン製剤のひとつである”ゾーミッグ”の製薬会社アストラ・ゼネカ社が率先して、日本全国の脳神経外科・神経内科を中心とした医師への啓蒙活動というよりは宣伝活動を展開し、トリプタン製剤の導入に向けて着々と販売促進の準備を進めていました。


 2000年にやっと、日本に待ち焦がれたトリプタン製剤を導入すると間もなく、電光石火のごとく「慢性頭痛の診療ガイドライン」が作成されました。
 このような欧米崇拝主義の考えから背後に存在する問題点、日本人の特性などを考慮することなく、海外の文献的”エビデンス”にただ追随しているのが実情です。
 こうしたことから、鳥取大学神経内科グループの先生方、下村登規夫先生、松井孝嘉先生の偉大な業績がありながら、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、それまでに欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していた「国際頭痛分類 第2版」を無条件に踏襲した形で「慢性頭痛の診療ガイドライン」が作成されることになりました。


 この「慢性頭痛の診療ガイドライン」は、欧米のトリプタン製薬メーカーとトリプタン御用学者が作成した「国際頭痛分類」という基準を遵守・踏襲した形で作成されたことから、片頭痛治療の世界はトリプタン製剤がすべて(一色)になってしまいました。片頭痛治療薬の第一選択薬として、トリプタン製剤が据えられ、マスコミでは片頭痛の”特効薬”と誇大宣伝が繰り返されました。
 そして、この「慢性頭痛の診療ガイドライン」はトリプタン製薬会社を介して、日本全国津々浦々の医療機関に広く配布されたほど徹底したものでした。
 このようにして製薬メーカーが中心となって徹底した売り込み戦略が開始されました。このため、学会をも巻き込んだ形でガイドラインが作成された点を忘れてはならない点です。いわばこの「慢性頭痛診療のガイドライン」はトリプタン製薬会社が作成したかのような印象がありました。
 これが、今後の片頭痛治療・研究の方向性を決定的に左右した時点でした。


 そして、2005年には、頭痛専門医制度が制定され、頭痛専門医は、日本内科学会,日本小児科学会,日本産科婦人科学会,日本眼科学会,日本耳鼻咽喉科学会,日本脳神経外科学会,日本麻酔科学会,日本救急医学会,日本リハビリテーション医学会および日本精神神経学会.日本神経学会 といった各科が入り乱れた集合体で構成されてきました。
 この目的とするところは、慢性頭痛では、片頭痛が最も大切なものであり、これにはトリプタン製剤という特効薬があることから、この存在を認識させるためのものです。


Headache Master School Japan(HMSJ)


 2013年3月には、国際頭痛学会主催でHeadache Master School 2013 in Asia が東京で行われ、世界のトップエキスパート14名(Burstein, Charles, Diener, Dodick, Ferrari, Goadsby, Gobel, Guidetti, MacGregor, Purdy, Schoenen, Schoonman, Rapoport, Zagami)が来日し、頭痛医学の最新の進歩を参加者一人一人に伝授されました。
 学会を主導される方々が、この世界のトップエキスパートとされる先生方は、いずれも”トリプタン御用学者”と称される先生方です。
 学会を主導される方々は、これが日本の頭痛診療・教育のあるべき姿を示すものと盲信され、平成25年、学会独自のHeadache Master School Japan(HMSJ)が「日本の頭痛教育プログラム」の中心として継承されることになりました。
 そして一昨年はHeadache Master School Japan(HMSJ)2015です。昨年7月26日には、東京で開催されました。
 このように、毎年、Headache Master School Japan(HMSJ)が開催されています。平成28年は盛岡と大阪で2回にわたって行われました。
 このように欧米の学者の考え方・研究業績を最優先する考え方は、Headache Master School 2013 in Asia から、Headache Master School Japan(HMSJ)へと引き継がれています。
 以後、Headache Master School Japan(HMSJ)は、毎年、学会が主催して行われ、「国際頭痛分類 第3版β版」が徹底して教え込まれ、これが頭痛診療および頭痛研究の”絶対的な基準”とされています。
 一般の開業医が片頭痛にトリプタン製剤を処方しないことから、頭痛専門医の量産を図ります。これは、頭痛専門医に、片頭痛にトリプタン製剤を処方させるのが目的です。


「国際頭痛分類 第3版β版」の弊害


 学会を主導される方々が「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究において絶対的な基準と考えることに問題があると考えなくてはなりません。「国際頭痛分類 第3版β版」は、あくまでも頭痛の診断基準でしかないはずです。
 慢性頭痛には、「国際頭痛分類 第3版β版」では、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(ここに群発頭痛が含まれます)、その他の一次性頭痛の4つが大きく大別されていますが、これまで専門家は、このように4つに大別された頭痛群をさらに、個々の頭痛を別個に独立させて研究すべきとされてきました。このように、脳のなかに異常のない慢性頭痛とは一体何なのかといった”総論・総説”がなく(謂わば、禅問答のようなものです)、このなかで、個々の4つのグループの頭痛がどのような位置にあるのかという論点から考えることはありません。
 片頭痛は、これまでの説明では極めて多くの要因から発症してきていることが理解されたはずです。ところが、専門家は、「国際頭痛分類第3版 β版」を基に、あくまでも症状の上から片頭痛と診断された”片頭痛群”という集合体を一括して臨床研究されてきました。このような多面的・流動的な面を持つ片頭痛を一括してコーホート研究という疫学的手法で解析されていることから、科学的根拠の得られる成績は極めて少ないことになります。
 このようなことは、片頭痛だけに限らず緊張型頭痛でもいえることです。 このような成績は「慢性頭痛診療のガイドライン」のなかに示される文献集でも明確に示されていることです。
 こうしたことから、臨床研究の方法論に問題があると言わざるを得ません。
  「国際頭痛分類 第3版β版」という限られた枠内だけで考えることでは自ずと限界があり、これから離れて頭痛研究は行わなくてはなりません。
 このようなことは、「国際頭痛分類」そのものがどのような経緯で作成されたのかを考えてみれば明らかなはずでありながら、これが”世界で最も権威ある”国際頭痛学会が作成されたものであるといって”水戸黄門の印籠”のごとく振りかざして、「頭が高い」と単純に頭痛研究者を服従させようとすることに根本的に問題があると考えなくてはなりません。
 このことは、私達、一般の慢性頭痛で苦しむ方々にも言えることです。無知な私達はただ信ずるしかないのですから・・いや信じ込まされてきました。


 これまで学会を主導される方々は、生まれて初めて経験する極く軽い頭痛から緊張型頭痛まで、これらはまさに取るに足らない頭痛として完全に無視され、このような頭痛に対する「市販の鎮痛薬」の服用を野放しにしたことによって、ミトコンドリアの働きを悪くさせ、さらに「脳内セロトニン」の低下を引き起こさせる結果となり、これに様々な生活習慣の問題が加わることによって、緊張型頭痛から片頭痛へと移行させることになりました。
 このように片頭痛の起点ともなるはずの極く軽い頭痛から緊張型頭痛までも無視することによって、慢性頭痛の発症の起点を曖昧なものとさせてきました。
 このようにして、慢性頭痛の発症の起点を見失わせることにより、片頭痛を醸成・熟成させてきた根源と考えるべきものです。
 さらに、慢性頭痛では、片頭痛が最も大切なものであり、これにはトリプタン製剤という特効薬があることから、この存在を認識させる目的で、頭痛専門医は、日本内科学会,日本小児科学会,日本産科婦人科学会,日本眼科学会,日本耳鼻咽喉科学会,日本脳神経外科学会,日本麻酔科学会,日本救急医学会,日本リハビリテーション医学会および日本精神神経学会.日本神経学会 といった各科が入り乱れた集合体で構成されてきたということです。
 そして、脳のなかに異常のない一次性頭痛(慢性頭痛)を、訳の分からない脳神経外科医が知ったかぶりをして、二次的頭痛の観点から、突飛な論説が次々に出されたということに過ぎないということです。
 結局、専門医とは、片頭痛にトリプタン製剤を確実に処方する存在に過ぎないということです。