片頭痛の”遺伝”は、どのように考えるべきでしょうか? | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 前回は、脳のなかに異常のない「慢性頭痛」とは「健康的な生活」を送ることができないことに根本的な原因があると考えるべきであると述べました。
 その理由として、以下のように述べました。
 

ミトコンドリア、セロトニン神経系の関与


 「健康的な生活を送る」ためには、”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
 すなわち、ミトコンドリアは、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出しています。 エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。
 このため”ミトコンドリア”とは、健康な生活を送るための”基本”ともなるものです。


 そして、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系が「セロトニン神経系」です。このようにエネルギーを常時たくさん使う「セロトニン神経系」は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時に「セロトニン神経系」の働きまで悪くなってきます。

 このように、ミトコンドリアの働きはセロトニン神経系と連動しています。


 「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。
 セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランスを保つ”などの重要な働きをしています。
 こうしたことから、「社会生活を問題なくに送る」ためには、セロトニン神経系は欠かせない重要な働きをしています。


 このように、「健康な生活を送る」ためには、ミトコンドリアが正常に働き、セロトニン神経系がまともに機能していることが不可欠な要素になっています。これが基本となっています。


「ホメオスターシス」の関与


 規則正しい生活とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活という意味で、最も自然で「健康的な生活」と言えます。
 「生体リズム」を無視した不規則な生活を送ると、健康な生活を送ることになり、様々な不調を感じるようになります。
 この「生体のリズム」は「ホメオスターシス」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は先程の「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御・コントロールされています。
 このようにして、生体のリズムは「ホメオスターシス」によって維持されています。
 「ホメオスターシス」の維持には、自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっており、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角形」と呼ばれます。


 「ホメオスターシス」はストレスなどに大きく影響されます。例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。
 さらに、ストレスは、マグネシウムの不足をもたらし、活性酸素を増加させ、ミトコンドリアの機能を悪くさせ、セロトニン神経系の機能を低下させ、「健康的な生活」を送るための根源であるミトコンドリアおよびセロトニン神経系に重大な問題を引き起こすことになります。このため、円滑な社会生活が送れないことになります。

 経験的に、ストレスは慢性頭痛を増悪させる原因と知られていますが、このようにして、「ホメオスターシス」のバランスを乱し、ミトコンドリアの機能を悪くさせ、セロトニン神経系の機能を低下させ、「健康的な生活」を送れないことになります。
 ストレスにより、この「ホメオスターシス」の3つのバランスが崩れてホメオスタシス機能が保てない状態になると、”頭痛”を始めとするいろいろな”体の不調”が現れることになります。
 こうしたことが、ストレスが慢性頭痛を増悪させる理由になっています。


 一方、「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。


 ”セロトニン神経系”の機能低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。

 内分泌ホルモンに相当する”生理活性物質”は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、この摂取バランスがよくないと、局所ホルモンのエイコサノイド・プロスタグランジンのバランスを乱すことになります。必須脂肪酸は生体膜(細胞膜)を構成しており、オメガ3とオメガ6の摂取バランスがよくないと、ミトコンドリアの機能・セロトニン神経系の機能にも影響を及ぼし、結果的に、細胞機能のバランスを欠くことになります。
 とくに必須脂肪酸はミトコンドリアの膜構造を構成していることを忘れてはなりません。

 ”腸内環境”は、欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。
 また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。


 このように、「ホメオスターシス三角」を構成する”この3つ”は、生活習慣とくに食生活・ストレスによって影響を受けています。


 「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの”一角”に問題を生じてくれば、”極く軽度の頭痛”が出現してくることになります。
 そして、これに更に、新たに”別の一角”の要因が加わればさらに頭痛の程度も増強してきます。
 最終的に、この”三角”とも全てに問題が起きることによって「生体のリズムの乱れ・歪み」を来すことに至り、難治の”慢性頭痛”を発症させます。


「体の歪み(ストレートネック)」の関与


 ミトコンドリアは、全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ「抗重力筋群」に多く存在し、ミトコンドリアの働きが悪くなれば当然のこととして「体の歪み(ストレートネック)」引き起こしてきます。
 セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることによって、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉に働きかけていることから、セロトニンが不足してきますと、セロトニン本来の働きである「正しい姿勢の保持」が、困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「ストレートネック」を引き起こします。


 私達の生活環境は活性酸素に満ち溢れており、ここ50年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、脳内セロトニン低下と相まって、体の歪み(ストレートネック)を引き起こしやすい状況にあります。
 すなわち、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関与、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
 こういったことから、現代では、ストレートネックが日常茶飯事にみられるようになってきました。


 私達は、日常生活を送る場面では、日常的に「前屈みの姿勢」を強いられており、このため、当然のこととして、「体の歪み(ストレートネック)」を容易に引き起こしてきます。
 この日常的な「前屈みの姿勢」は”日常的に感じる極く軽度の頭痛”の原因となり「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることによって「緊張型頭痛」となって次第に頭痛が増強してくることになります。
 片頭痛では、生まれつきミトコンドリアの働きが悪いとされ、同時にセロトニン神経系の機能が低下しており、ここに生活習慣の問題が加われば「脳内セロトニンが低下」することになり、緊張型頭痛以上に、「体の歪み(ストレートネック)」が形成されやすくなってくるということです。 


それでは、”片頭痛”をどのように考えるべきでしょうか


 片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪してきます。このように従来から考えられています。


 自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものです。


 ”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態(発作がいつまでも繰り返される)が持続することになります。
 すなわち、脳内セロトニンの低下を引き起こす生活習慣があったり、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスの悪い食生活があったり、腸内環境を悪化させる要因が持続するような生活習慣が継続していることを意味しています。


 「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続された状態に、さらに「ミトコンドリアの問題」、「脳内セロトニンの低下」、さらに「体の歪み(ストレートネック)」等々の”脳過敏・慢性化の要因”が持続し・継続して加わることによって、2~3割の方々が慢性化に至ってきます。


 このように片頭痛は”未病”の段階にあり、”日常的に感じる極く軽度の頭痛”を起点として、さらに緊張型頭痛へと、更に様々な生活習慣の問題点が重なることによって、「いろいろな段階の片頭痛」へと進行し、最終的に「慢性片頭痛」という難治な段階に至ることになりますので、常に自分の生活習慣に気を配り、何か上記のような生活習慣の問題があれば、その都度改善に努める必要があります。このように進行性疾患です。


 このように慢性頭痛は生活習慣病、そのものということです。


片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine


     片頭痛
   big(true)migraine
  連続体
緊張型頭痛        
緊張型頭痛
small migraine  
   (脳内セロトニンの関与)


 緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違点は、「ミトコンドリアの働きの悪さ」という”遺伝素因”を持っているかどうかだけの差でしかありません。

 このように、「ホメオスターシスの乱れ」を来す3つの要因のうち、ただ1つの要因の問題から引き起こされる頭痛は、「国際頭痛分類第3版 β版」でも記載されないような”極く軽度の頭痛”が出没するだけのことになります。

 このような”日常的に感じる極く軽度の頭痛”に対して、市販の鎮痛薬を連用すれば、ミトコンドリアの働きを悪化させ、脳内セロトニンの低下を引き起こすことになり、頭痛が次第に増強され、薬剤乱用頭痛を併発させ、さらに遺伝素因があれば片頭痛への移行を加速させます。


緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違


 片頭痛の患者さんでは、緊張型頭痛の場合と異なって、遺伝素因としてミトコンドリアの働きの悪さが存在すると、これまでも再三に渡って述べました。


 しかし、このミトコンドリアの働きの悪さとは一体、何なのでしょうか?


 この「ミトコンドリアの働きの悪さ」は、「ミトコンドリアDNA」によって先祖代々継承されます。


 片頭痛の場合、生まれつきミトコンドリアの働きの悪さが存在すると述べましたが、”ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因”の影響を、とくに受けやすいことになります。このため、こうした要因が加わることによって、”極く軽度の頭痛(緊張型頭痛)”から難治の”慢性頭痛”・片頭痛へと進展していくことになります。
 片頭痛の遺伝に関与するとされている「ミトコンドリアDNA」は、「生活習慣の要因」と「外部の生活環境の要因」によって時々刻々変化していくものです。

  しかし、緊張型頭痛の場合、このような遺伝素因としての”ミトコンドリアの活性低下”が存在しませんので、頭痛の程度は、片頭痛ほどは激しくならないということです。
 ところが、片頭痛のように「ミトコンドリアの活性低下」という遺伝素因がなくても、緊張型頭痛でも、「ミトコンドリアの働きが悪さ」と「脳内セロトニンの低下」を来す生活習慣が継続してくれば、片頭痛とまったく同じような頭痛が引き起こされることになります。そうなれば最終的には緊張型頭痛であれ片頭痛であれ同じような「難治性の慢性頭痛」に移行することになってしまいます。緊張型頭痛でも発症要因そのものは同じです。


 このように生まれつき存在するミトコンドリアの働きの悪さが、ミトコンドリアDNAによって先祖代々継承され、「ミトコンドリアDNA」は、「生活習慣の要因」と「外部の生活環境の要因」によって時々刻々変化していくものです。
 ということは、先祖代々継承される「ミトコンドリアの働きの悪さ」の程度は、生まれた際には、人それぞれであり、一律ではないはずです。そして生後、「生活習慣の要因」と「外部の生活環境の要因」によって時々刻々変化していくものです。
 ということは、生下時の段階で、「ミトコンドリアの働き」が極端に悪ければ、あたかも遺伝したように思えるだけに過ぎないということです。この「ミトコンドリアの働き」の悪さの程度は連続しているものであり、ここからここまでという範囲はないはずです。
 これが、生後、「生活習慣の要因」と「外部の生活環境の要因」によって時々刻々変化していくわけです。この生後にこのような要因の影響の受けやすさの程度は、「ミトコンドリアの働き」の悪さの程度に左右されることになります。


 このように時々刻々と変化していく「ミトコンドリアDNA」を、片頭痛の関連遺伝子として、同定しようと研究されているということになります。このような無駄なことをされていると言わざるを得ません。
 このようなことで果たして「片頭痛の関連遺伝子」は見つかるのでしょうか?


 このように考えるなら、緊張型頭痛も片頭痛も連続したものにすぎないはずであり、そうなれば遺伝とは一体何なんでしょうか?

 結局のところ、こうした生活習慣の要因や外部の環境要因を全く無視することから、単純に”遺伝”のなせるワザとしか考えていないことになります。
 特に、頭痛の専門家には、このような生活習慣の要因や外部の環境要因を考慮することがなかったため、単純に片頭痛は”遺伝的疾患”としか考えていないということです。


 こう考える限り、片頭痛は果たして”遺伝的疾患”なのでしょうか???


 このような論点から「慢性頭痛」は考えるべきです。


   「新・臨床頭痛学」 前編
    
http://taku1902.jp/sub394.pdf

    「新・臨床頭痛学」 後編
    
http://taku1902.jp/sub395.pdf