慢性頭痛の発症のしかた  ダイジェスト版 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 それでは、具体的に慢性頭痛はどのようにして発症してくるのでしょうか?


緊張型頭痛と片頭痛は連続したものです

 片頭痛発症の当初は”緊張型頭痛”のような状態から、ある一定期間を経過して片頭痛を発症してきます。子供さんの片頭痛は、大人の片頭痛と異なり、緊張型頭痛のようなパターンを示すことが多く、そして頭が痛む時間も4時間以下であることがほとんどです。
 こうした点は、大人の片頭痛の発症様式を典型的に示しているといえます。
 受診前の発症当初の頭痛が極めて軽いため患者さんには頭痛の意識のないことが多いようです。
 まず、頭痛を引き起こしやすい誘発要因の存在によって頭痛発作を起こしたことがあったかどうかを思い出してみることです。とくに、前屈みの姿勢を長時間とった後には頭痛をよく経験される方々も多いようですが、人混み,疲れのあと,寝過ぎ,映画のあとなどに頭痛を経験したことがなかったかどうか、です。こういった頭痛は、しばらくすれば軽快してしまうために患者さんの記憶に残っていないことがほとんどです。このようなことは、医療機関を受診し、緊張していると医師の前ではこの頭痛を思い出すことは到底不可能なことであるため、受診前にあらかじめ”思い出しておく”ことが大切になってきます。
 そして、この最初に”自覚された頭痛”が”現在の頭痛”に至るまでの経過が重要となります。頭痛が悪化してきた場合は、悪化するまでの間に生活習慣・環境の変化がなかったかどうかを冷静に思い出すことが重要で、ここに”現在の頭痛”の発症要因の鍵が潜んでいます。これが、今後の片頭痛改善・予防の鍵を握ってくることになるからです。


いきなり片頭痛から発症することも


 しかし、なかには、いきなり片頭痛から発症してくる場合もあります。これは重要な点であり、忘れてはなりません。これは「生まれつき存在する”ミトコンドリアの働きの善し悪し”」で、このような発症様式をすることがあるということです。
「生まれつき存在する”ミトコンドリアの働きの善し悪し”」の程度は千差万別であり、これが極端に悪ければ、これと同時に「セロトニン神経の働き」も悪くなり、このために「脳内セロトニンが低下」し、「脳過敏」や「体の歪み」を同時に引き起こしてくるため、片頭痛の発症時期も早くなってきます。こうした方々が、”遺伝的疾患”であるかのごとく思わせる原因でした。このように「ミトコンドリア」「脳内セロトニン」「体の歪み(ストレートネック)の3つが重なり、これに「有害物質の摂取」などの要因が加わることにより、改善に至るまでには相当根気を要することになります。


 それでは、片頭痛はどのようにして発症するのでしょうか????


慢性頭痛は、「生体のリズムの乱れ」を引き起こす”生活習慣”から


 前回も述べましたように、「ホメオスターシスの三角形」を構成する、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系はホルモンと”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めております。この「ホメオスターシスの三角形」を乱す”さまざまな生活習慣の問題点”によって、「ホメオスターシスの三角形」に”歪み”を引き起こしてきます。これらについては前回述べたばかりです。
 さらに、現代社会は、”活性酸素”に満ちあふれた生活環境にあります。これらがすべてミトコンドリアの働きを悪くさせてきます。
 これらが「酸化ストレス・炎症体質(片頭痛体質)」を形成してくることに繋がってきます。こうした背景をもとにミトコンドリアの働きが悪くなると同時にセロトニン神経系の機能が低下しているところに”生活習慣の問題”が加わって「脳内セロトニンの低下」が引き起こされ、この両者によって「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされやすい状況にあります。


慢性頭痛の発症の起点は”前屈みの姿勢”


 日常生活を送る上で、私達は前屈みの姿勢をとる生活環境に置かれています。特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
 さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。 仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。
 こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。
 さらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時はたいていどちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バッグなどはいつも同じ方の肩にかける、重たい物を持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎( 背骨)の歪みが生じてきます。 仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及び、ひいては頸椎にまで及んで、「体の歪み(ストレートネック)」を最終的に引き起こしてきます。
 このようにして「体の歪み(ストレートネック)」が作られてくることになります。


まず、スタートとなる”緊張型頭痛”の起こり方


 人間の背骨(脊柱)はS状の弯曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨全体にかかることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないように脊柱はS状の弯曲を呈しています。S状の弯曲によって体重の掛かり方を分散させています。ということは頸椎は前に弯曲を示していることになります。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いておれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに過剰な張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。これが、専門家が”とるに足らない頭痛”と言っている緊張型頭痛です。このように頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いている(捻れている)ことが、重要なポイントになってきます。


そして、片頭痛の起こり方は・・


 日常生活を送る際の”何気ない姿勢(とくに前屈みの姿勢)や動作”などが長期間持続することによって「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることになります。そうなってきますと、さらに、緊張型頭痛が増強されることになり、さらに「体の歪み(ストレートネック)」を基盤として片頭痛になる可能性のある方は、生まれつき「ミトコンドリアの働きの悪い」”遺伝素因”があり、頭痛を訴える度にアスピリンを含んだ鎮痛薬を服用し続けたり、ミトコンドリアをさらに弱らせる抗生物質の服用・マグネシウム不足・有害物質の摂取等々の生活習慣等によって、さらに「ミトコンドリアの働きが悪く」なってきます。これとは別に“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれば「脳内セロトニンが低下」することになり、これがさらに増強されてきます。こうした「ミトコンドリアの働きの悪さ」があるところに、さらに「マグネシウム」の不足が持続してきますと、「脳過敏」を引き起こしてきます。そして先ほどのストレートネックが持続すれば、頸部の筋肉が絶えず刺激を受けることになり、この刺激は三叉神経核に絶えず送られることによって、さらに「脳過敏」を増強させます。これに生活習慣の不規則・ストレス・生理周期により「脳内セロトニンの低下」の要因が追加されて、「脳過敏」を増強させ、さらに頭痛の症状を多彩なものとさせます。


 「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓                 ↓
↓      脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓                 ↓
↓      中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓                 ↓
↓         脳の過敏性、頭痛の慢性化

自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頸性神経筋症候群
                               (慢性頭痛)


尾側亜核で三叉神経と頸神経が収束する


 ストレートネックのために、頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経と三叉神経は脳の中で、三叉・頸神経複合体を形成していて、つながっていますので、大後頭神経の刺激は三叉神経にも伝わります。
 このため、「体の歪み(ストレートネック)」が改善されないまま、放置されることにより、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。 このようにして、「脳の過敏性」、「頭痛の慢性化」へと繋がっていくことになります。さらに、「体の歪み(ストレートネック)」は閃輝暗点を引き起こす要因にもなっています。


 片頭痛も緊張型頭痛も共通して「頸部筋肉群の疲労」を基盤として発症すると考えられます。この根拠として、両方の頭痛に共通してストレートネックが認められる点です。
 片頭痛の遺伝素因(ミトコンドリアの活性低下)のない場合は、首の筋肉のこりは、大後頭神経に痛みのみが起きることによって、純然たる「緊張型頭痛」を発症します。
 片頭痛の遺伝素因(ミトコンドリアの活性低下)があれば、片頭痛の場合は、「セロトニン神経」が働きが悪くなって「痛みの感じやすさ」が存在するところに、首の筋肉のこりの刺激が、大後頭神経から三叉神経に絶えず刺激が送られ続けます。このため、「痛みの感じやすさ」がさらに増強され、常時、脳の過敏性が高まった状態が継続していきます。


             ”脳過敏”を引き起こす要因

          1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足
        2.脳内セロトニンの低下
        3.体の歪み(ストレートネック)の長期間の持続

 片頭痛の基本的な病態は「脳過敏」(脳がちょっとしたことで反応しやすくなることです)にあるとされます。

 このように少なくともこうした3つの「脳過敏」を引き起こす要因が次々に追加されることによって、”緊張型頭痛”から”片頭痛”にまで進展していくことになります。だいたいこうした時期は、女性の場合、初潮を迎える13歳頃と一致します。この点に関しては、女性は男性より 約52% 脳内セロトニンを産生する能力が低く、またセロトニンの前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では脳内セロトニン合成が男性の4倍減少する、と言われています。
 女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、月経周期でその分泌量が大きく変わります。
 特にエストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、これに伴って神経伝達物質であるセロトニンも急激に減ります。
 その時に頭の中の血管が拡張することで片頭痛が起こると考えられています。
 このエストロゲンが減少するのが排卵日や生理の初日前後です。つまり排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するためにセロトニンも減少→頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすい、ということです。

 
 以上のように、だいたいこうした時期は、女性の場合、初潮を迎える13歳頃に一致します。こうした年代に女性の場合は、片頭痛を発症してきます。
 そして、発症当初は、発作の程度も頻度も少ないのですが、社会人になれば仕事も事務職が多いことから、前屈みの姿勢を強要され、仕事上のストレスも加わって脳内セロトニンが低下することにより頭痛は次第に増強・増加してきます。さらに、結婚を契機として出産・育児を経験することになり、これまでの生活習慣が一変します。具体的には、睡眠時間が、育児で、充分に確保できなくなることです。片頭痛の場合、睡眠時間が確保できませんと、ミトコンドリアの働きを悪くさせ、ひいてはセロトニン不足に繋がってきます。根底にあるストレートネックは臨床経験から30歳までに改善させませんと、固定化してきます。こうしたことから、概して女性の場合、30歳を超えてきますと、とたんに頭痛の頻度も増え、程度もひどくなってきます。


次々に追加される悪化要因


 このため30~40歳代の苦難の時期を迎えてしまいます。特に女性の場合、家族・夫婦間および職場でのストレスなどの”さまざまなストレス”が加わることにより、「脳内セロトニン」不足が持続することになります。
 こうした時期になると、鎮痛薬やトリプタン製剤の服用も月に10回を超えるようになり、これがさらに「化学的ストレス」となって(見方を変えれば、鎮痛薬やトリプタン製剤も私達の体には異物です。異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程でも、活性酸素が発生して、発作が起こりやすくなります)、ますます「脳内セロトニン」低下を倍増させてきます。これに対して抗てんかん薬(特に、デパケンは注意が必要です)を追加されることにより、一時的には発作回数は軽減されることはありますが、長期間連用しますと今度は「ミトコンドリア」を弱らせる結果となり、さらにトリプタン製剤の服用を減らすことができなくなるといった”泥沼の状態”を引き起こしてきます。まさにエンドレスの状態に至ってしまいます。
 さらに、更年期を過ぎてきますと、若い頃のような血管の”しなやかさが失われ”反応性も乏しくなり、片頭痛本来の拍動性頭痛でなく、緊張型頭痛のような鈍い頭痛に変化してきます。これは、ストレートネックがそのまま持続しているためです。さらにコエンザイムQの低下も関係し、ミトコンドリアの機能低下を招きます。このため、頭痛に加えて、イライラ、不眠、めまいなどの不定愁訴が加わってきます。これが、東京女子医科大学脳神経外科の清水俊彦先生が提唱される「脳過敏症候群」そのものであり、東京脳神経センターの松井孝嘉先生の提唱される「頸性神経筋症候群」に相当します。こうしたことから、うつ状態・めまい・冷え性等々のさまざまな”共存症”を合併することになります。これは「脳内セロトニンの低下」によるもので、こうした時期には同時に、本来は痛くない刺激を痛みと感じる”アロディニア(異痛症)”が出現してくることになります。また、片頭痛発作が天気・低気圧に左右され、寝過ぎで発作が誘発されやすかったりと多彩な症状を呈してくることになります。


 男性の場合は、「体の歪み(ストレートネック)」に加えて、食生活の問題から「ミトコンドリアの働き」が悪くなり、これに生活習慣の不規則や、仕事上のストレスが重なることによって「慢性的な脳内セロトニンの低下」が引き起こされ、市販の鎮痛薬の頻繁な服用は、この両者の機能をさらに悪化させ、片頭痛を発症させることになります。


根底にはストレートネックが存在します


 このように、慢性頭痛発症の根底には、まず、体の歪み(ストレートネック)が存在します。このストレートネックは早い人では子供の頃から既に存在します。遅い場合は、前屈みの姿勢を強いられる作業環境に置かれ続けた場合、ストレートネックは後天的にも形成されてくることになります。こうした方々は、片頭痛の発症時期は当然遅くなってきます。30歳以降に発症してくることも多いように思われます。
 また、ムチウチの事故に遭遇しますと、その後、ストレートネックが形成・増悪してきて、このために緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛のいずれの形でも頭痛が引き起こされてきます。しかし、国際分類では、ムチウチ後7日までに頭痛などの症状が出現しませんとムチウチとの関連性は否定されます。しかし、現実には、ムチウチ後、かなり時間が経過してからムチウチと同じ症状が出現してくることは日常茶飯事ですが、この点は、国際分類では頭痛と頸椎病変に関する取り決めが極めてあいまいな形になっています。こういう点から、ムチウチからストレートネックが形成されてくるという松井孝嘉先生のご指摘を頭痛専門医は全く受け入れることなく、片頭痛の”慢性化の治療不可能な要因”として”頭部外傷・頸部外傷”を挙げています。


 また、群発頭痛の場合、最初は片頭痛のようなパターンをとりながら、ある時期から群発頭痛へ移行したり、片頭痛と群発頭痛との間を行ったり来たりする場合も経験します。 群発頭痛は「体内時計」の乱れによって起きてくることが従来から指摘されています。 体内時計は、ミトコンドリア、セロトニンによって制御されています。
 こうして考えれば、緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛の慢性頭痛は、一連のものと考えなくてはなりません。


根本的に存在する要因


 このように慢性頭痛の発症には、「ホメオスターシスの乱れ」「体の歪み(ストレートネック)」「ミトコンドリア」「セロトニン」の4つの要因が関与しています。根本原因は、「ミトコンドリアの働きの悪さ」にあり、この4つがお互いに、密接に関与し・影響しあっています。決して、この4つが独立して存在するわけではなく、相互に関係しあっています。
 この4つが片頭痛の”環境因子”となっていて、これらの関与の仕方の比重は各人・各様であり、どの要因のスペクトラムが色濃く関与しているかの違いと思われます。

 こうした観点から予防・治療の対策を考えなくてはなりません。そして、根底には前述の「酸化ストレス・炎症体質」が潜在的に形成されていることから、このような体質にならないよう配慮するとともに、これを改善しませんと慢性頭痛の根治には至らないということです。
 このような基盤をもとにして、過剰に産生された活性酸素が誘因(引き金・・トリガー)となって、容易に、「片頭痛」発作が引き起こされてきます。
 この際トリガーとなる活性酸素の”量”によって、片頭痛発作の程度が決まってきます。


片頭痛の本質は「エスカレーシヨン」


 慢性頭痛患者の症候・因子を調査した複数の研究では,片頭痛と診断された患者と緊張型頭痛と診断された患者の頭痛は,性状・質の差ではなく,頻度・程度の差であり,その病態は連続した「境界不明瞭な」「連続体」であると考えられています。
 片頭痛患者さんは,頭痛発作が始まったが,それほどひどくならずに済んだという経験をすることがあります。ひどくならない発作は,片頭痛の診断基準を満たさないことが多く,緊張型頭痛と診断せざるを得ませんが,これを上手に説明したものが一次性頭痛(機能性頭痛)一元論です。1回1回の片頭痛発作に注目し,スタートは同しでも、軽く済めば緊張型頭痛,エスカレートしてひどくなれば片頭痛発作になるという考え方です。
 片頭痛患者の多くは,10~20代という人生の早い時期に頭痛発作が起こるようになり,その後数年から数十年にわたり頭痛発作が繰り返されますが,この「頭痛持ち人生」の間に頭痛発作の頻度や程度は変化します。
 片頭痛患者さんでは,若い時期は発作頻度が少ないが重篤な発作が起こり,年齢が上がるとともに頭痛発作の頻度は増えるが程度は軽くなるというパターンをとることが多いようです。加齢とともに片頭痛らしさが減り,緊張型頭痛のような頭痛発作が多くなってくる,いわば「頭痛持ち人生」の間に片頭痛と緊張型頭痛が連続しているような状態です。 このような片頭痛は変容性片頭痛と呼ばれ,国際頭痛分類とは別の概念ですが,日常の臨床では広く認められます。
 天気にたとえますと、片頭痛は「雨」、緊張型頭痛は「曇り」に相当し、両者には明瞭な差があります。雨は曇り空から降り出します。つまり、緊張型頭痛が先行します。雨の降り方がさまざまであるように、片頭痛の臨床症状の”多彩さ”と一致します。


 頭痛が起こり始めた時、この頭痛がどこへ行くかはミステリーなのです。緊張型頭痛で終わるのか、緊張型頭痛経由片頭痛なのか、片頭痛直行なのか。これは患者さんにも分かりませんし、医者にはもっとわかりません。(引き金がどの程度重なるかで左右されます。)
 頭痛体操やストレッチ、階段の上り下りをしてみても見極めがつかない場合は、飲み慣れた使いやすい鎮痛剤を飲んで戴いて、30 分後に頭痛が悪化してくるようならトリプタン系薬剤を飲んで下さい。また、朝から痛い場合は片頭痛と考えられますし、ご自分の経験上、片頭痛だとわかる場合には、最初からトリプタン製剤を服用して下さい。
このように、実際に頭痛が起きた場合、今回はどちらの頭痛なのかを、その都度、自分で判断する必要があります。ここが実際の対処の仕方の難しい点です。


 以上のように、緊張型頭痛も片頭痛も明確には、現実に区別できないということがお分かり頂けたかと思います。その理由は、緊張型頭痛も片頭痛も共通して、頸椎レントゲン検査で、ストレートネックが高頻度に認められます。このため、このように臨床症状には、重複するものが多いということです。
 多くの片頭痛の方々は、「典型的な片頭痛」の経過を示し、「予兆期」に”生あくび”が出たり肩が異常に凝ってきたりというように”頭痛信号”を自覚されておられるようです。 こうしたことから、自分の「片頭痛の経過」を、あらかじめ把握しておくことが大切になってきます。そして、間違いなく「片頭痛の発作」であると判断できれば、即座に「トリプタン製剤」を服用することです。こうして、発作に対処しましょう。このように対処しておいてから、改めて予防・改善のための工夫をしていく必要があります。


 このように慢性頭痛発症の起点は体の歪み(ストレートネック)にあります。これにその後の生活習慣の問題から、ミトコンドリアおよびセロトニン神経系の機能低下を来すことにより、脳内セロトニンの低下、さらに「酸化ストレス・炎症体質」を形成し、さらに、「ミトコンドリアの働きの悪さにマグネシウム不足」、「脳内セロトニンの低下」、「体の歪み(ストレートネック)の長期間の持続」の3つの要因が「脳過敏」を増強させることによって、緊張型頭痛から片頭痛へと移行してくることになります。


 こうしたことから、ご家族・親戚に片頭痛の方がいらっしゃれば、「片頭痛予備軍」と考えて、緊張型頭痛の段階から、生活習慣の問題点を是正することによって、片頭痛への移行を阻止することが重要です。
 このため、初期の段階である緊張型頭痛の時点で、市販の鎮痛薬を頻回に服用することは言語道断で、ミトコンドリアの働きを減弱させ、脳内セロトニンを低下させることによって、片頭痛への移行を加速させることになります。


 そして、最も問題とすべきことは、現在の頭痛専門医は、慢性頭痛の根幹となる「体の歪み(ストレートネック)」の存在を全く無視されることです。これが慢性頭痛さらに片頭痛を治らなくしている根本的な原因と考えなくてはなりません。