頭痛医療の「均てん化」って??? | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

頭痛診療の現場


 現在では、片頭痛は”不思議で・神秘的な”原因不明の頭痛で、遺伝性疾患であるとされます。症状が多様であること、確実な診断マーカーが無いため、あくまで症候学的な臨床診断に頼らざるを得ないこと、また、完全な動物モデルが無いことなどにより、片頭痛は科学的な解明が困難な疾患のひとつとされてきました。


 このように”科学的な解明が困難な病気”には、常に”カリスマ教団”に等しい集団が生まれてくるのは「世の常」です。片頭痛医療の世界でも、カリスマ医師が当然のごとく存在し、悩める患者さんたちは、このようなカリスマ医師(教祖)につどって集まり、信徒として、恭しく”神薬”としての”トリプタン製剤”を処方されている構図が現実に存在します。まさしく”片頭痛医療の世界”はこうした世界でしかありません。
 具体的には、皆さんが「頭痛が改善されない」と思い悩み、ドクター・ショッピングされます。そして、マスコミで超有名な「頭痛外来」を受診されます。こうした所は、少なくとも診察時間は2~3分以内です。ご託宣を仰ぎ、そして、こういう医療機関では「パンフレット」を渡され、その方のこれまでの自慢の「マスコミ」で発表された内容を提示され、祝詞を賜り、トリプタンという神薬を授かることになっているようです。

 もっと酷い医療機関では、「現在、トリプタン製剤という片頭痛の特効薬があるのだから、これさえ服用しておれば、将来「脳過敏症候群」には至ることはないからといって、たちまち”抗てんかん薬”であるデパケンを処方され、このような方針に従わない医師は、”ヤブ医者”と罵倒され・ワメキ散らされるようです。
 このような「頭痛外来」が大半のようで、多忙なためヤムを得ないのかもしれません。


 ところが、これに対して、別の医療機関では、ただ「自分の生活習慣を改めて」工夫して治しましょうと元気づけられます。
 老練な神経内科医の先生方は、患者さんのこれまでの頭痛の経過を丹念にお聞きになられ、これまでの生活習慣・環境の問題点を把握した上で、患者に合わせた「生活指導」の真髄を教授されます。しかし、こうした先生ですら、このような「生活指導」の「あり方」を公開されることはありません。この理由として、「生活指導」は各人・各様であり一律には論じられないということが挙げられるようです。
 ある若い「神経内科医の先生」は、この「セルフケア」を完璧にする限りは9割の方々は改善に導かれると豪語されます。しかし、このような先生は、具体的にどのような指導をされておられるのかが、実際の一般の方々には皆目見当がつきません。こうしたことが「謂わば、客寄せ”パンダ”の役割」として、他の「頭痛外来」との差別化を目論んでいるものと思われます。


 これに対して、これまで、鳥取大学・神経内科の下村登規夫先生は、片頭痛患者には基本的に「ミトコンドリアの機能低下」が存在し、この片頭痛の”環境要因”として、ミトコンドリアと脳内セロトニンの関与を指摘されて来られました。
 こうした研究結果に基づいて、”環境因子”は、”ミトコンドリアと脳内セロトニンに関与したものである”というエビデンスに基づいて、MBT療法という”食生活を中心とする生活習慣を見直すこと”で片頭痛治療を行うことを提唱されていました。
 MBT療法(DASCH diet)では、ミトコンドリア機能を高める目的でビタミンB2を摂取し,マグネシウムを摂取します.さらにラジカルスカベンジャーとしてβカロチン,ビタミンEおよびCなどを摂取します.脳内セロトニンを増加させるため,セロトニンの前駆体となるアミノ酸のトリプトファンを摂取するようにします.具体的な食物としては,ビタミンB2,E,Cなどおよびβカロチンを多く含む緑黄色野菜,果物,海苔,うなぎなど,マグネシウムを多く含む大豆製品,ほうれんそう,柿,魚介類,トリプトファンを多く含む大豆製品,卵(卵黄),脱脂粉乳,牛乳などの乳製品やバナナなどをできるだけ多く摂取するようにします.緑黄色野菜などの量は体重が約60kgの成人で300g/日以上を目標とします.
 このように、これを実施する医師自身が栄養学・運動療法の知識や臨床経験が豊富であって、患者本人の強固な意志が要求されていたため、実際に臨床の現場で行うには一般化されませんでしたが、実施された方々の改善率は9割前後とされていました。


 現在、頭痛診療を行う際には、一般内科医及び脳神経外科医は、「慢性頭痛診療ガイドライン 2013」をその診療の指針とされています。ここでは、頭痛発作時にはトリプタン製剤を、さらに発作回数が多ければ予防薬の処方が推奨され、すべて「薬物療法」が主体となり、古来から行われていた「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、リラックスするように」との、生活指導は全く必要なし、とされています。
 そして、「慢性頭痛診療ガイドライン 2013」には、まったく記載されてはいません。
 このため、脳神経外科医による「頭痛外来」では薬物療法オンリーであり「生活指導」は殆どといってよいくらいに無視され、必要性はないとされています。


 しかし、神経内科医による頭痛外来では、ガイドラインには記載が無いにも関わらず、生活指導の重要性を認識されておられるため”自発的に”「生活指導」が行われます。
 このように、同じ「頭痛外来」と銘打っても、その診療内容は、天と地の差があり、千差万別です。患者さんは、いろいろ受診されればされる程、混乱されます。

 結局のところ、皆さんがドクターショッピングを日本全国を股にかけてされようとも、”標準的な指導”が受けられない現状が存在します。
 すなわち、「真の片頭痛医療の治療体系」が確立されていないがために、このように実際に現実に行われる診療内容に差がみられるため、頭痛医療の”均てん化”が叫ばれていました。


学会の考える”均てん化”とは


 一昨年の日本頭痛学会総会のメイン・テーマは「頭痛診療の均てん化」でした。
 私は、てっきり現在行われている「頭痛外来」の診療内容を一般化し、統一したものとすることを思っていましたが、決してそうではありませんでした。

 2013 年3 月国際頭痛学会主催でHeadache Master School 2013 in Asia が東京で行われました。世界のトップエキスパート14名が来日し、頭痛医学の最新の進歩を参加者一人一人に伝授されました。学会を主導される方々は、これが、日本の頭痛診療・教育のあるべき姿を示すものと盲信され、ここに日本頭痛学会独自のHeadache Master School Japan(HMSJ)が日本の頭痛教育プログラムの中心となり,昨年7月に、まずは竹島多賀夫先生をリーダーとして大阪で開催されることになりました(HMSJ-Osaka)。 同年9月には、寺山靖夫先生のもとで東京でも開催されました。
 そして、平成27年7月26日(日)に、日本頭痛学会の主催で、寺山靖夫(岩手医科大学内科学講座 神経内科・老年科分野)先生を会長として、東京で、「さらなる頭痛医学、頭痛診療のレベルアップおよび専門医の養成」を目的として、Headache Master School Japan2015 (HMSJ 2015) が開かれました。

 学会を主導される方々は、欧米の頭痛診療の基準に「日本の頭痛診療」の精度を平均化させようとするのが最大の目的でした。これを「頭痛診療の均てん化」とされていました。 対象は、これから専門医を目指す方々が中心とされ、専門医は付け足しのようでした。 専門医養成講座というところでしょうか?
 その基本的な考え方は、「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究の”絶対的な基準”とされ、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方が貫かれています。これから逸脱するものは一切排除する考え方が貫かれます。(このことは、昨日も明確にお示し致しました)日本の業績を取り入れることが一切ないのが特徴とされます。
 この点は1999年の「ADITUS Japan」以来、片頭痛研究は日本より欧米の研究が遙かに進んでいるといった考え方から、日本の業績は一切無視した形で、研究は進められてきました。
 HMSJ-Osakaでは、慶応大学医学部関連の先生方が講師となって、それぞれのテーマで Headache Master School 2013 in Asia で講演された先生の考え方に従って講義が進められ、結局、Headache Master School 2013 in Asia の二番煎じというか受け売りに過ぎません。

 このようなことで、「日本の頭痛医療の均てん化」は図れるものなのでしょうか?

 この内容は、昨日まで、詳しく述べた通りで、寸分違うことはありません。
 まさに、「専門医を養成」するだけの目的でしかないように思われません。


 これとは別に、現在の片頭痛研究の方向性は、以下で如実に示されます。


「片頭痛に対する画期的治療法の開発に関する研究: 平成18年度-20年度総合研究報告書 : 厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業、 2009」


 ここでは、最近の片頭痛基礎研究領域では,片頭痛の発症機序の考え方に、片頭痛前兆の研究や片頭痛特効薬トリプタンの作用メカニズムなどから、現在では血管の疾患ではなく、大脳の深い部分にある間脳あるいは脳幹と呼ばれる器官の付近に「片頭痛発生器」があると考えられるようになってきています。つまり片頭痛は「中枢神経疾患」であると考えられています。こうしたことから、中枢神経性の要素を考慮することがすでに近年の研究の主流になってきており,片頭痛の予防の考え方も中枢神経の興奮性(脳過敏)の抑制に変化しつつあり,片頭痛の予防薬の開発目標は、皮質拡延性抑制をいかに抑える薬を見つけるかが鍵になっています。そして、今後の新薬の開発に躍起になっている現状が存在します。
 この中枢神経の興奮性(脳過敏)の抑制を目的として、脳過敏症候群なる説も輩出され、専ら「抗てんかん薬のデパケンで治療する」のが原則とされ、これに従わない医師は「ヤブ医者」呼ばわりされている現状があり、デパケン以外の「抗てんかん薬」の新薬が多数検討されるに至り、さらに片頭痛は「進行性疾患」とされるに至っております。
 また、本来、原因不明の「脳のなかには異常のない」頭痛とされていたものが、脳のなかに異常のある「中枢神経疾患」とまで改められてきています。


 これが、学会を主導される方々の基本的な考え方であり、頭痛診療の現場では、「慢性頭痛診療のガイドライン」をその診療指針として、片頭痛にはまずトリプタン製剤が処方されることになり、発作回数が多ければ予防薬を処方するのが原則とされます。
 結局、「慢性頭痛診療のガイドライン」に記載されないことは、行う必要はないとされます。これが、学会を主導される方々の考える「頭痛診療の均てん化」のようです。
 片頭痛は”遺伝的疾患”であり、片頭痛治療の中心はトリプタン製剤にあり、片頭痛の病態はトリプタン製剤の作用機序で説明可能とされ、今後は片頭痛の予防薬の開発目標は、皮質拡延性抑制をいかに抑える薬を開発することに焦点が絞られています。


 先程も述べたように、同じ「頭痛外来」とされていても、診療内容のレベルは全く異なっています。こうした現状があるにもかかわらず、学会を主導される方々は、欧米の頭痛診療の基準に「日本の頭痛診療」の精度を平均化させようと、今後とも毎年、Headache Master School Japanを開催することによって、これが「さらなる頭痛医学、頭痛診療のレベルアップおよび専門医の養成」となるものと思っておられるようです。


 このようなことで、頭痛診療のレベルアップは図られるものなのでしょうか?


 昨日も述べましたように、まず山積みされた「基本的な検討課題」を解決することが先決であるはずです。このようなことをすることなく、「国際頭痛分類第3版 β版」で症候論から、片頭痛を明確に定義することによって”片頭痛と間違いなく診断”して、この片頭痛に対して”トリプタン製剤を確実に処方”させ、さらに複雑になってしまった錯綜とした頭痛には「頭痛ダイアリー」を記録させ、謎解きをされ、専門医としての威厳を保とうとされます。これだけでは、益々、片頭痛を熟成させるだけであり、片頭痛に対して”トリプタン製剤を確実に処方”させる専門医を養成しているだけのことでしかありません。
 このことは、確かに、トリプタン製薬メーカーにとっては願ってもないことです。しかし、専門家のすべきことではないと誰でも理解されるはずです。専門家とは、片頭痛を改善させてナンボのものであり、トリプタンを処方するだけが”取り柄”ではないはずです。
 専門家のすべきことは、山積みされた「基本的な検討課題」を解決することです。


今後、どうすべきでしようか


 本来、片頭痛は”多因子遺伝”として、あくまでも生活習慣病として、以下のように考えることが大切になってきます。


  まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
 さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
 片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
 そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
 その”環境因子”として、以下の6項目があります。

  1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
  2.免疫(腸内環境)の関与
  3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
  4.体の歪み(ストレートネック)の関与
  5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
  6.ミトコンドリアの関与
 
 そして、片頭痛の発症過程が推論・構築を構築すべきです。当面以下のように・・


専門医はいるのでしょうか???


 先程のHeadache Master School Japan でも示されるように、このプログラムの本来の目的は専門医の養成のようです。果たして、現在のような専門医は必要なのでしょうか?
 本来、全く必要はないはずです。必要であるとすれば、脳のなかに原因のある二次性頭痛の場合だけです。とくにクモ膜下出血や脳腫瘍、慢性硬膜下血腫のように手術が必要とされる場合には、脳の専門医である脳神経外科医が当然必要です。
 しかし、「脳のなかに異常のない一次性頭痛(慢性頭痛)」の場合は専門医は必要ではありません。一般内科医で十分です。あえて専門家は必要ではありません。

 これまでも述べていますように、片頭痛の発症様式は以下のようなものです。


  片頭痛はどのようにして発症するのでしょうか????
    
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12032919047.html


 それも、頭痛を初めて経験した時点で極力早期に医療機関を受診すべきです。
 この段階で、二次性頭痛を除外すればよいだけの話です。何も難しく考える必要はないはずです。ここで一次性頭痛と診断した時点からが重要になるはずです。
 ここで示されるように、片頭痛発作時にはトリプタン製剤か鎮痛薬を使用し、発作回数が多ければ予防薬を使うことになりますが、最初から、トリプタン製剤を処方することはあってはならないことです。まず、すべきことは、体の歪み(ストレートネック)の改善法や後頸部の異常な筋緊張の是正のためのレーザー照射を始めとする理学療法を行う必要があります。これに加えて、食事療法を指導していく必要があります。
 こうした食事療法さらに運動療法を中心とした指導は必須のもので、まず真っ先に行わなくてはなりません。
 このように、脳のなかに異常のない慢性頭痛では、頭痛専門医がみる必要はなく、一般内科医がみるべきものです。

 それも、頭痛を初めて経験した時点で極力早期に医療機関を受診すべきです。早期の段階であれば、素人でも診れ、専門家など必要はありません。
 決して、市販の鎮痛薬で頭痛を誤魔化して、やり過ごすことは絶対にしてはなりません。 といいますのは、このような最初の頭痛の大半は、市販の鎮痛薬を服用すれば、すぐに治まってしまいます。このような頭痛は、日常生活を送る際の”前屈みの姿勢”に関連して起きてくるものです。こうした頭痛に対して市販の鎮痛薬を日常的に服用していますと、こうした薬剤すべては、人体にとっては害(有害なもの)になるのです。これらを解毒する際に、活性酸素が発生し、このためにミトコンドリアの働きを悪くさせます。また、これら薬剤はいずれも”化学的ストレス”となって、脳内セロトニンを低下させ、痛みの閾値を下げるため痛みを感じやすくさせることになります。
 このため、市販の鎮痛薬を初期の頭痛の段階で使うことは厳禁としなくてはなりません。
 すべきことは、肩こりを改善させるために、ストレッチ・体操を指導すべきです。
そして、市販の鎮痛薬を初期の頭痛の段階から使うことは、ミトコンドリアの働きを悪くさせ、脳内セロトニンを低下させ、日常生活を送る際の”前屈みの姿勢”が持続することによって、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてくることに至り、益々、頭痛が増悪してくることになります。このため、これを治めるために”市販の鎮痛薬”の服用回数が増加してくることになります。
 ここに、頭痛を訴える度にアスピリンを含んだ鎮痛薬を服用し続けたり、ミトコンドリアをさらに弱らせる抗生物質の服用・マグネシウム不足・有害物質の摂取等々の生活習慣等によって、さらに「ミトコンドリアの働きが悪く」なって来ます。これとは別に“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれば「脳内セロトニンが低下」することになり、これがさらに増強されてきます。
 このような悪循環を経ることによって、頭痛を慢性化させ、薬剤乱用頭痛に至ります。
 
 そして、家族・親族に片頭痛持ちがおられれば、片頭痛の「遺伝素因」を有することになり、最終的には、片頭痛を発症させてくることになってしまいます。
 このような指導は、頭痛を初めて経験した時点で行う必要があります。ということは、最初に頭痛を経験した段階で、医療機関を受診され、まず、CTなどの画像診断を受け、異常があれば脳の専門家の脳神経外科に紹介してもらい、異常がなければ受診された医療機関で、先程述べたような説明を受けた上で、「自分の頭痛を何が悪くさせるのかを」納得した上で、自分で対処していく必要があります。
 このように早期から対処することによって、薬剤乱用頭痛まで移行することも、片頭痛へ移行することも理論的にはないはずです。
 こうした軽い段階の緊張型頭痛から片頭痛へと進行・移行してくることになり、緊張型頭痛と片頭痛の区別は、日常生活に支障があるかだけのことであり、支障がある段階にいたれば片頭痛であり、支障がなければ緊張型頭痛です。難しく考えないことです。


 このような指導をすべきであるはずでありながら、何故だか頭痛の専門家は声を大にして述べることはありません。このため、テレビでは日常的に「頭痛にハイ〇〇〇」といった宣伝がなされることになっています。
 このため、大半の方々は、頭痛があれば市販の鎮痛薬に気軽に手を出すことが当たり前になっている現実があります。

 これまで述べたような指導および啓蒙活動が当然必要とされます。このような指導・啓蒙活動は学会が主導して行う必要があります。これが現在まったく欠けています。
 このため、薬剤乱用頭痛が日常的に生み出され、さらに片頭痛へ移行していく方々が後を絶たないことになり、さらに複雑化した慢性片頭痛を作り出す原因となっています。

 このような「薬剤乱用頭痛」や「複雑化した慢性片頭痛」は、現在では専門医しか診れないことになります。ここに専門医の”存在意義”があるようです。
 しかし、先程述べたような基本的なことを学会が率先して声高に啓蒙活動を行いさえすれば、片頭痛まで移行させることもなく、ましてやさらに複雑化した慢性片頭痛を作り出すこともなくなるはずです。これまで学会が行ってきた啓蒙活動は、トリプタン製剤の啓蒙活動に過ぎなかったことを反省しなくてはならないはずです。


 ところが、専門医は、独特な「問診表」を駆使され、「国際頭痛分類 第3版β版」に従って診断を下し、「頭痛ダイアリー」で 「複雑化した頭痛」の謎解きをされ、トリプタン製剤を中心とした薬物療法に終始することになり、このことで専門医としての威厳が保たれることになり、さらにトリプタン製薬メーカーおよび一般の市販の鎮痛薬の製薬メーカーが潤うことになり、お互いが”万々歳”という結論に至るということのようです。


 本来、緊張型頭痛も片頭痛も連続した一連のもののはずです。そして、片頭痛の大半は”多因子遺伝”によって先祖代々受け継がれ、これに環境因子が次々と追加されることによって片頭痛へと発症してくるのものはずです。
 専門家は、意地でもこのような観点から、片頭痛を考えることはないようです。このため、緊張型頭痛から容易に片頭痛へと移行させ、さらに片頭痛を熟成させ、みずから自分で自分の首を絞めているようです。というか、これを目的にでもされているのでしょうか。


 以上、慢性頭痛がどのようなものであり、片頭痛が緊張型頭痛の段階からどのように移行していくのか、という啓蒙活動が当然必要とされることは、皆さんはお分かり頂けたかと思います。

 これまで専門家の頭痛の啓蒙活動の過去を振り返ってみれば、現状が容易に理解されることになり、なぜ、このようになっているのかも聡明な方々には納得されるはずです。

 学会を主導される方々は、決してこれまで述べてきたような”頭痛の出現の初期段階からどのように対処すべきか”といった啓蒙活動を一般の方々にはされることはありません。突き詰めれば、トリプタン製薬メーカーおよび一般の市販の鎮痛薬の製薬メーカーが潤うことのお手伝いをしていることになります。こんなことでよいのでしょうか?
 これまで、学会を主導される方々は、ただ単に”片頭痛の方々のなかに、いまだトリプタン製剤の恩恵に浴していない方々が多いといった論法でしか、頭痛の啓蒙活動を行うことはありませんでした。患者団体も然りです。こうしたことは猛省すべきであり、今後は、頭痛初期の段階からどのように対処すべきか、そうすることによってどのようにして片頭痛を予防すべきなのかといった啓蒙活動に方向転換しなくてはならないはずです。

 このような対策を地道に行えば、ややこしい慢性頭痛に至ることもなく、群発頭痛の発症まで予防可能となる時代が到来し、専門医など必要なくなる日も近いのではないでしょうか。このような視点から考えていく必要があります。

 こうしたことから、「国際頭痛分類 第3版β版」を使う必要もなくなるはずです。

 専門家のすべきことは、片頭痛を熟成させてはならないということです。そのために、何を、どのようにすべきかを理論的に考えれば判断できるはずです。

 いつまで、「国際頭痛分類 第3版β版」に拘れば気が済むのでしょうか???

 こうしたことから、まず行うべきは、昨日お示し致しました「山積された課題」を解決するしかないはずです。このことが解決されない限りは、「さらなる頭痛医学、頭痛診療のレベルアップ」も何もないことになってしまいます。
 このなかでも、最優先課題は片頭痛が”多因子遺伝”であるかどうかを確認することです。これ抜きに慢性頭痛を論じることは、まさに詭弁を弄するだけのことです。


 これを明らかにして初めて「頭痛をサイエンス」として”科学”することになるはずです。そうすることによって、Headache Master School Japan の意味合いが明確になります。
 すなわち、Headache Master School Japan をいくら行って専門医を養成したからといって、専門医に対して、「片頭痛患者にトリプタン製剤を処方させる」だけのことでしかなく、「学会自体の本質を晒け出す」だけのことでしかありません。


 片頭痛が”多因子遺伝”であると仮定して、頭痛診療が進められる限り、先程述べましたように、専門医自体の必要はなくなるはずです。


 こうした予測がある段階において「頭痛診療の均てん化」という観点が、どこに向けられるべきかと考えれば、答えは明白なはずですが、一向にこうしたことには、学会を主導される方々にはないようです。どうしてこのように考えないのか推測すれば、何を目的としているかは自ずと答えはでてくるはずです。