一般開業医からみた慢性頭痛 その1 慢性頭痛の診断 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

一次性頭痛と二次性頭痛を区別する


 頭痛の原因は様々であり、痛みの強さ、痛む部位、持続時間など、症状も人により異なります。中には、生命が脅かされるような危険な頭痛もあり、また治療法も異なってくるので、そのタイプを鑑別することは非常に重要とされています。

 頭痛の分類と診断は、国際頭痛分類第3版 β版に従って行うのが原則とされますが、
以下のようなことを念頭に置いて、大雑把に考えることが一般的と考えております。こうした分類を知っておくことも大切ではありますが、日常診療を行う上では余り適切ではありません。


 頭痛は、脳に異常のない「一次性頭痛」と、脳の疾患に起因する「二次性頭痛」の2つのタイプに分けられます。頭痛患者のおよそ9割は一次性頭痛であり、二次性頭痛は1割程度であるといわれています。しかし、二次性頭痛の原因の中には、くも膜下出血のような「見逃されると死につながる頭痛」が含まれていますので、以下のような二次性頭痛の特徴を念頭に置き、危険な頭痛を察知する必要があります。こうした頭痛は診ればわかるものです。難しく考える必要はないはずです。


二次性頭痛が疑われる症状 としては


 1.突然の頭痛
 2.今まで経験したことがない頭痛
 3.いつもと様子の異なる頭痛
 4.頻度と程度が増していく頭痛
 5.50歳以降に初発の頭痛
 6.神経症状を有する頭痛
 7.がんや免疫不全の病態を有する患者の頭痛
 8.精神症状を有する患者の頭痛
 9.発熱・項部硬直・髄膜刺激症状を有する頭痛


 こうした二次性の頭痛は病歴を確認しさえすれば、簡単に疑われるはずであり、直ちに脳神経外科へお願いして対診を仰ぐ必要があります。


 そして、一般開業医が診る「一次性頭痛」としては、以下の4つに大別されますが


 1.片頭痛
 2.緊張型頭痛
 3.群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛
 4.その他の一次性頭痛


結局、日常生活に支障を来す程のものであるかどうかで考えればすむことです。
 群発頭痛は、特徴的な頭痛ですので、現在では患者さん自身がネットで調べて、自分で疑って受診されるくらい特徴的な頭痛であり、まず間違うことはありません。
 そうなれば、後は、緊張型頭痛か片頭痛か、ということですが、この両者は連続したものですので、要するに、これまで日常生活に支障を来す程の頭痛が過去にあったかどうかで判断すればよいことであり、多くの場合、両者を伴っているはずであり、緊張型頭痛独自、片頭痛独自ということは少ないはずです。少なくとも、緊張型頭痛の状態で患者さん自身が医療機関を受診されることはないと考えるべきです。こうした方々は身近な方が”最近、危険な頭痛を起こされて”心配されて受診されることが多いようです。
 こういったことから、医療機関を受診される慢性頭痛患者さんでは、まず片頭痛を疑って診ればすむということになります。
 目くじらを立てて、敢えて厳密に区別すべきものではありません。

 こうしたことから、二次性頭痛でないことを確認するためには、神経学的検査法を行いさえすれば、容易に診断がつくはずです。これは、医師免許を持つ人間に科せられた責任とされているはずです。安易に画像診断を行うべきではないはずです。
 こうして”二次性頭痛でない”ことを確認した上で、頸椎X線検査を行った上で、ストレートネックの有無を確認すべきです。
 これが、慢性頭痛患者さんを診察する上での、一般開業医の基本原則です。

 ところが、頭痛専門医ですら、神経学的検査法すらすることなく、いきなりCTもしくはMRIといった画像検査をしただけで、頸椎X線検査によって「ストレートネックの有無」を確認すらされない現状があります。
 頸椎X線検査による「ストレートネックの有無」は慢性頭痛の今後の治療方針を決める上で重要な位置を占めています。
 ストレートネックを認め、身内・親戚の方々の中に片頭痛でお悩みの方がいらっしゃれば、受診時に”緊張型頭痛”のような軽度の頭痛であったとしても、将来「片頭痛へ移行」する片頭痛予備軍として、この段階から治療・対策を講ずるべきです。


 参考までに、頭痛専門医が金科玉条のものとされる「国際頭痛分類第3β版(ICHD-3β)2013 」をご紹介しておきます。


国際頭痛分類第3版(β版)では、


第1部: 一次性頭痛


1 片頭痛
2 緊張型頭痛(TTH)
3 三叉神経・自律神経性頭痛
4 その他の一次性頭痛

  4.1 一次性咳嗽性頭痛
  4.2 一次性運動時頭痛
  4.3 性行為に伴う一次性頭痛
  4.4 一次性雷鳴頭痛
  4.5 寒冷刺激による頭痛
   4.5.1 外的寒冷刺激による頭痛
   4.5.2 冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛
※ (アイスクリーム頭痛)
  4.6 頭蓋外からの圧力による頭痛
   4.6.1 頭蓋外からの圧迫による頭痛
   4.6.2 頭蓋外からの牽引による頭痛
  4.7 一次性穿刺様頭痛
  4.8 貨幣状頭痛
  4.9 睡眠時頭痛
  4.10 新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)


第2部: 二次性頭痛


  5.  頭頸部外傷・傷害による頭痛
  6.  頭頸部血管障害による頭痛
  7.  非血管性頭蓋内疾患による頭痛
  8.  物質またはその離脱による頭痛
  9.  感染症による頭痛
  10.  ホメオスターシスの障害による頭痛
  11.  頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頭蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛
  12 精神疾患による頭痛


そして、「片頭痛の分類」として、今回の改訂では、以下のように示されます。


1. 片頭痛

 1.1 前兆のない片頭痛
 1.2 前兆のある片頭痛

  1.2.1 典型的前兆を伴う片頭痛
  1.2.1.1 典型的前兆に頭痛を伴うもの
  1.2.1.2 典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの
  1.2.2 脳幹性前兆を伴う片頭痛

  1.2.3 片麻痺性片頭痛

   1.2.3.1 家族性片麻痺性片頭痛(FHM)
   1.2.3.1.1 家族性片麻痺性片頭痛 I 型 (FHM1)
   1.2.3.1.2 家族性片麻痺性片頭痛 II 型 (FHM2)
   1.2.3.1.3 家族性片麻痺性片頭痛 III 型 (FHM3)
   1.2.3.1.4 家族性片麻痺性片頭痛,他の遺伝子座位
   1.2.3.2 孤発性片麻痺性片頭痛

  1.2.4 網膜片頭痛

 1.3 慢性片頭痛

 1.4 片頭痛の合併症

  1.4.1片頭痛発作重積
  1.4.2 遷延性前兆で脳梗塞を伴わないもの
  1.4.3 片頭痛性脳梗塞
  1.4.4 片頭痛前兆により誘発される痙攣発作

 1.5 片頭痛の疑い

  1.5.1 前兆のない片頭痛の疑い
  1.5.2 前兆のある片頭痛の疑い

 1.6 片頭痛に関連する周期性症候群

  1.6.1 再発性消化管障害
  1.6.1.1 周期性嘔吐症候群
  1.6.1.2 腹部片頭痛
  1.6.2 良性発作性めまい
  1.6.3 良性発作性斜頸


頭痛診療のレベル診断


 国際頭痛分類第3版は、階層的な分類 ( hierarchical classification ) が採用されています(グループ → タイプ → サブタイプ → サブフォーム)。通常の一般診療では、1桁(タイプ)または2桁(サブタイプ)までの診断で可能ですが、専門診療、頭痛センター等の診療では3桁(サブフォーム)レベルまでの診断が推奨されています。


 このように、頭痛専門医の間では、「レベル診断」まで求められているにも関わらず、1例、1例、生涯経過を丹念に追いさえすれば、緊張型頭痛から片頭痛へと移行する実態が自ずと明確になるはずでありながら、未だに、片頭痛と緊張型頭痛を明確に”定義したまま”で、連続したものであるというデータを示されることはなく、両者を区別して考えているところに問題を残しています。