コエンザイムQ10は抗酸化作用、疲労回復、美容成分として知られる栄養素です。 サプリメントや化粧品の成分として広く利用されています。
もともとはビタミン(=必須栄養素)と考えられていましたが、 体内で他の栄養素から作り出せることから、名称をコエンザイムQ10へと変更しました。
必須栄養素と考えられるほど体内では非常に重要や作用をする栄養素であるものの、 体内での合成量は20代をピークにどんどん低下していきます。
そのため、年齢が上がるほどその量が不足しがちとなり、 コエンザイムQ10の摂取効果が高くなります。
加齢とともに体内の量が減少
健康維持には体内に十分なコエンザイムQ10があることが重要ですが、年齢を重ねるごとに、その量は減っていきます。酸化ストレスの増加などが原因で、体のコエンザイムQ10を作る能力が低下するためです。体の場所によってコエンザイムQ10の量が減少する比率は違いますが、特に皮膚では、70代では20代の約1/3まで減ってしまうという研究結果もあります。
加齢だけでなく、喫煙などの生活習慣、うつ病、心筋症、片頭痛などの病気も体内のコエンザイムQ10を減らす原因として注意が必要です。
コエンザイムQ10が減ることで、体内のエネルギー生産量が減り、細胞の活力がなくなります。つまり、元気や健康を維持する力が失われ、老化が進んだり、病気になりやすくなるのです。
女性の場合は、更年期を迎えると心身ともに不調を感じることが増えてきますが、それは女性ホルモンのエストロゲンだけでなく、コエンザイムQ10も減少しているためと考えられます。
不定愁訴や更年期障害などで悩んでいる人も、コエンザイムQ10を摂取することで、症状を軽くすることができるでしょう。
また、コエンザイムQ10のもうひとつの働きに、抗酸化作用があります。活性酸素は毒物やウイルスなどを分解する酸素ですが、増えすぎると正常な細胞まで傷つけてしまうことが。抗酸化作用により増えすぎた活性酸素を無力化して取り除くことで、細胞が元気でいられます。
還元型と酸化型の違いは?
ところでコエンザイムQ10には、「還元型」と「酸化型」という2つの種類があります。
従来のコエンザイムQ10は酸化型で、コエンザイムQ10の基本構造に酸素がくっついた状態です。酸素と反応して酸化しているので、体の中に入った時に、もともとの形である還元型に変換する必要があるのですが、人によっては加齢などでうまく変換できず、あまり効果が実感できないこともあります。一方で、最近よく見かける還元型というのは、酸化作用を受けていないものです。技術の進歩で、人間の体内にあるコエンザイムQ10と同じ状態に開発されたものが、還元型コエンザイムQ10です。
還元型コエンザイムQ10は、体内での変換過程を経ずにダイレクトにミトコンドリアに作用するため、素早く効きめを感じやすく、人による効果の当たり外れも少ないとか。
コエンザイムQ10は若さと健康のキープに欠かせないだけに、加齢に伴い不足する分を意識的に補うことが大切です。
イワシ、豚肉、オリーブオイル、ブロッコリーなど、コエンザイムQ10を多く含む食品を積極的に食べることです。忙しくてそれができない人は、還元型コエンザイムQ10の含量を強化したゼリーやチョコレートなどの食品やサプリメントがお手軽です。還元型コエンザイムQ10を上手に摂取して、細胞レベルから元気になりましょう。
コエンザイムQ10と片頭痛
コエンザイムQ10の経口摂取により、片頭痛の発生頻度と発生期間の減少に効果がある、との報告があります。
コエンザイムQ10摂取により片頭痛を予防する効果を示唆する学術文献もあります。
それでは、なぜコエンザイムQ10が片頭痛に効果があるのでしょうか?
1.抗酸化作用・活性酸素除去
コエンザイムQ10は抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する効果があります。
活性酸素が身体に悪いのは、細胞を破壊・損傷し、DNAの改ざん、老化など様々な悪影響の原因となるためです。
(※活性酸素の働きは全てが悪い作用ばかりではありません。)
人間にはこの活性酸素を除去するシステムがもともと備わっており、 その一つがコエンザイムQ10です。
その他に、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、αリポ酸などが抗酸化作用のある物質ですが、 これらがお互いに作用しあって活性酸素の除去を行います。
これらの中でコエンザイムQ10はその構造から電子を放棄し、ほぼ完全に脂質の生成を防止し、酸化を阻害します。
また、抗酸化に利用されたビタミンEを修復します。
大きくはこの2つの働きによってコエンザイムQ10が活性酸素の除去に効果があるとされています。
ある研究では、運動前にコエンザイムQ10を摂取したところ、 酸化ストレスマーカー(8-OHdG)の増加を抑える効果があったしています。
2.エネルギーの産生
コエンザイムQ10は人間の活動の元となるエネルギーの産生に寄与します。
TCA回路(クエン酸回路)からエネルギー(ATP)を作り出す最後の栄養素がこのコエンザイムQ10です。
そのため、TCA回路が適正に機能していても、コエンザイムQ10がなければエネルギーが作られません。
しかし、コエンザイムQ10の体内での量は20代をピークにその量は減っていきます。
食事から直接摂取する量そのものが減ること以外に、チロシン、フェニルアラニンなど複数の栄養素を摂取しないと体内で作られないため、バランスの良い食事をしていないと、体内で作られる量も減ってしまいます。
サプリメントとしてコエンザイムQ10を摂取したところ、 疲労感と憂うつ感の低下、活動度の増加が認められたという報告や、 コエンザイムQ10を100mg、10日間摂取したところ、69%で疲労回復の効果を感じられたとする報告もあります。