片頭痛と食物との関連については古くから議論されています。
その中でも最近よく言われるのが、食品添加物が引き起こす片頭痛についてです。
忙しい毎日の食生活では避けることのできない「食品添加物」です。平均的な日本人の食生活では、1日に10グラム以上、1年間ではなんと4キロ近くもの食品添加物を摂取していると言われています。
まず、代表的なものとしては
<硝酸-亜硝酸化合物による頭痛(食品添加物・汚染水)>
硝酸といえば、火薬を作るときに使われますが、最近は地下水などの汚染で問題になっています。また亜硝酸化合物は、食品添加物に使われていることがあり、注意が必要です。
これらの頭痛は、硝酸-亜硝酸化合物を摂取して1時間以内に両側の前側頭部に生じる拍動性の頭痛で、ニトログリセリン頭痛・ダイナマイト頭痛・ホットドック頭痛などとよばれることもあります。硝酸-亜硝酸化合物による血管拡張作用による頭痛として考えられており、片頭痛や群発性頭痛の患者では、健康人よりこの頭痛を起こしやすいといわれています。
硝酸-亜硝酸化合物は、最終的には一酸化窒素(NO)として作用することがわかっています。
<グルタミン酸ナトリウムによる頭痛(中華料理店症候群)>
グルタミン酸ナトリウムは、有名なところで、味の素やほんだし、だしの素などに使われる化学調味料で、加熱により発ガン物質になると言われ、大分前に問題になっています。 ただ現在でも味の素食品では使われており、また中華料理店では調味料として多く使われ、これにより、めまい、頭痛、自暴自棄などの症状が出るものを「チャイニーズレストラン症候群」と呼んでいます。
国際頭痛学会の分類では、診断基準としてグルタミン酸ナトリウム服用後、1時間以内におこり、以下の6つの症状(①胸部圧迫感 ②顔面の圧迫感・疼痛 ③胸・頸・肩の灼熱感 ④顔面紅潮 ⑤めまい・腹部不快感)のうち少なくとも2つ以上を伴うものをいいます。
中華料理を摂取した後、20~25分後に、①~⑥の症状と拍動性の頭痛を生じるものをチャイニーズレストラン頭痛 chinese restaurant headache と呼んでおり、中華料理に含まれるグルタミン酸ナトリウムが原因になっていると考えられ、一般に3gのグルタミン酸塩を摂取すると約20分後にこれらの症状がおこるとされています。
これは,グルタミン酸の血管収縮作用によると考えられていますので,摂取直後よりは摂取終了後1~2時間でグルタミン酸の血中濃度が減少し始めるころに頭痛が起こることが多いようです.
<アルコールによる頭痛(アルコール)>
国際頭痛学会の分類による診断基準では、アルコール摂取後3時間以内におこるものとされています。アルコール自身は脳血管に直接作用するとは考えられておらず、脳内セロトニンレベルを変化させるため、あるいは脳循環の自動調節能を変化させるため、頭痛が生じるのではないかと言われています。またアルコールに関しては、アルコール摂取をやめて数時間後から始まるズキンズキンとした頭痛があります。身体を動かしたり、咳や頭部を動かした際に増悪し、頭痛以外に悪心・顔面蒼白などの症状を伴います。いわゆる2日酔いですね。
<アステルパーム(清涼飲料水に使われる人工甘味料)>
アスパルテームはL-phenylalanineとL-aspartic acidの2つのアミノ酸から合成させる人工甘味料で、ショ糖の180倍~200倍の甘みがある物質です。この物質は清涼飲料水などに広く使われていますが、アメリカのDisease Control Centerがこの物質を含むものを摂取した後に、様々な訴えを呈した517例の分析を行い、神経系の症状、特に頭痛が多いと報告しています。ただ、その後のSchiffmanらの検討では、アスパルテームを含むものを摂取した後に頭痛を訴えた40人で、プラセボ(偽薬を摂取した群)と比較して、頭痛を生じる率は有為ではなかったため、この物質が本当に頭痛の原因になるかはまだはっきりとはしていません。しかし可能性は軽視できないでしょう。
<フェニルエチルアミン(チョコレート)>
フェニルエチルアミンはチョコレートやカカオなどに含まれており、神経終末からセロトニンやカテコールアミンを放出させる作用を持っています。そのため、monoamine oxidase B(MAO-B)の活性が低い片頭痛患者では、このフェニルエチルアミンの代謝が遅く、この物質を多く含むチョコレートの摂取により、高頻度に頭痛をきたすと考えられています。
亜硝酸塩について、追加して述べます。
○主には発色剤として使われています。
タラコやイクラなどの魚卵を綺麗な赤色に発色させたり、ハムやソーセージが黒ずんでしまわないように使われます。
○ワインの酸化防止剤としても使われます。
古代からワインづくりには亜硝酸塩が添加されていました。酸化して品質が落ちるのを防ぐためには欠かせません。
亜硝酸塩は劇薬
亜硝酸塩は青酸カリと同程度の毒性を持っていると言われています。
ワインカーブ見学に行った際に亜硝酸塩の保存庫も案内してもらいましたが、あまりの刺激臭にすぐに飛び出てしまいました。
片頭痛の発生
これほどの毒物の亜硝酸塩ですから、基準値内の微量であっても人体に入るとアレルゲン(アレルギー物質)として働きます。
人間の身体はアレルゲンが入ってくると、それに対する抗体を産生してアレルゲンをやっつけようとします。
その時に放出される炎症物質には血管を拡張させる作用があるので、ズキズキとした片頭痛発作を引き起こすと考えられます。
本来のタラコやイクラはそれほど赤くありません。
ハムやソーセージも多少黒っぽくなるのは自然なことです。
綺麗そうに見える食品ばかりを選んで、自然なものを忘れてしまうと亜硝酸塩が入った食品を選んでしまう可能性もあります。
亜硝酸塩が入ってるかどうかは食品表示を見れば分かりますので、片頭痛持ちの人は注意して購入しましょう。
次に「チラミン」についてです。
チラミンというのは、簡単にいうと食品が古くなってアミノ酸が分解される時に生成される物質です
もっと具体的に言うと、熟成されたものや発酵食品、長期間保存されていた食品に蓄積されてきます。
食べ物に含まれるチラミンは、体内で分解されて別の成分に変化していきます。そして体内に蓄積されたチラミンは、交換神経に働きかけて、血圧上昇、吐き気、頭痛、発汗、動悸、などの原因になります。
そのため医者によってはチラミンの摂取を控えるように指導することもあります。また、血管を拡張させる薬と同時に摂ってしまうと、効きすぎてしまうので注意が必要です。
チラミンが多く含まれる食品としては、チーズ、にしんの塩漬け、醤油やレバー、味噌、ビールやワインなどさまざまです。
特に、発酵が進んだチーズほど(熟成チーズなど)チラミンが多くなるので、チーズをつまみに赤ワインを飲むなんてのは、自ら頭痛を引き起こすようなものですから、気をつけたほうがいいです。
以上、チーズ、ワイン、チョコレートやココアなどは、チラミンやヒスタミンといったひどい頭痛の原因となる炎症性生理活性物質を含んでいます。特に片頭痛の発生原因となるチラミンは、ブルーチーズ、ニシンの塩漬け、味噌、しょう油、納豆、ビール、ヨーグルト、サラミ、ドライソーセージなど、タンパク質を発酵・煉製にした食品などに多く含まれます。片頭痛の人は気をつけてください。
最後は、リンについてです。
リンは、レトルト食品・加工食品に食品添加物として使用され、どちらかというと摂りすぎが問題で、不足する事は余りない、と言われています。
リンはすべての生物に必須のミネラルで、エネルギー代謝や脂質代謝などにおいて重要な役割を担っています。また、カルシウムとともに骨格を形成する働きもあります。リンは多くの食品に含まれているため、調理による損失を考慮しても不足することはありません。むしろ、食品添加物として各種リン酸塩が加工食品に広く添加されていることから、リンの摂取過多が憂慮されています。
リン過剰摂取のリスク
リンは食品添加物として、加工食品に広く用いられているため、過剰摂取に注意する必要があります 。長期にわたってリンを過剰摂取すると、腎機能の低下、副甲状腺機能の亢進、カルシウムの吸収抑制などが起こることが知られています。リンはカルシウム代謝と関係が深く、カルシウムとリンの摂取比は1~2が理想的とされますが、加工食品の利用が多くなった今日の日本では、摂取比が3になることが多いとされています。
カルシウムとのバランス が指摘され、リンの過剰摂取が問題にされる事があります。
カルシウムの吸収率をアップさせるために、カルシウムの摂取量とリンの摂取量が1対1の割合が理想的であるとされています。
食品添加物によるリンの取りすぎに注意!
食品添加物には種類がありますが、リンを含む食品添加物にリン酸塩が挙げられます。
ソーセージやハム、缶詰、調味料、インスタントラーメンなどに多く含まれ、「リン酸Na」と表示されています。
食品の形状や保水性を維持するために使用される結着剤として使用されている場合が多いです。
リンの過剰摂取チェック!
•スナック菓子をよく食べる
•甘いものをよく食べる
•インスタント・レトルト食品をよく食べる
•外食やファーストフードによく行く
•野菜が苦手だ
•牛乳が苦手だ
•魚が苦手だ
上記の項目に一つでも当てはまる人は、リンの摂取のしかたを改める必要があるかもしれません。
生活が不規則な人や運動する機会の少ない人は、特に注意が必要です。
マグネシウムは、体内でリンと結合し、リン酸マグネシウムとして骨や歯の構成成分となるとともに、その強度を増す役割があります。体内のマグネシウムが不足すると、カルシウムの時と同様に、骨に蓄えられているマグネシウムが使用されます。しかし、骨にあるマグネシウムが血液中に流出する際は、骨にあるカルシウムも一緒に流出してしまうため、結果として骨が弱くなります。また、カルシウムやリンを多く摂取しすぎると、マグネシウムの吸収が阻害されることも知られています。また、リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害します。そのため、カルシウム、マグネシウム、リンはバランスよく摂ることが大切になるのです。
カルシウムとリンは1:1の割合で摂るのが良いとされており、リンがカルシウムの2倍を超えないようにすることが理想とされています。カルシウムとマグネシウムは1.5~2:1の割合で摂取するのが理想とされています。リンやマグネシウムを多く摂取した場合はカルシウムもしっかり摂取することが必要なのです。
リン酸はマグネシウムの尿中排泄を促すため、リン酸が含まれた食材や飲料水(炭酸飲料水にはリン酸が含まれていることが多い)を避けることが大事です。
食品によって変化しますが、カルシウムの吸収率自体が高くない(牛乳で50%程で、それ以外ではさらに低くなります)ことから考えても、リンの過剰摂取がカルシウム不足に益々拍車をかけてしまうというので注意が必要です。
しかし、リンの過剰摂取に対抗するためにカルシウムだけを多めに摂取すると、今度はカルシウムとマグネシウムのミネラルバランスが崩れ、その結果マグネシウムの不足へと繋がりますので、この点への配慮も必要となります。
「ミネラルバランス」とは各種ミネラルの適正な摂取量を比率で表したもので、ミネラルバランスの良い状態を維持していくことが、私たちの健康な生活を確保するうえで大切になります。
ミネラルの摂取量は多すぎても、また逆に少なすぎても好ましくありません。多すぎれば「過剰症」が、少なすぎれば「欠乏症」が懸念されます。また、ミネラル同士の間には「拮抗作用」を有する組み合わせがあり、一方のミネラル単体での多量摂取が他方のミネラルの吸収や生理作用を阻害してしまうということが知られています。
したがって、人体に必須なミネラルをバランスよく摂取することが、健康の維持・増進のために必要となります。
ミネラルバランスの崩れた状態が、即様々な症状を引き起こすとは限りませんが、長期的・慢性的にそのような状態が継続すれば、何らかの兆候が生体に現れてくる可能性が高くなるといえるでしょう。
以下に、健康の維持・増進に好ましい(各種ミネラルがそれぞれ、体内で有用な作用を発揮する)とされるミネラルバランスの幾つかを記載しておきます。
●カルシウム:リン ⇒ 1:1~1:2
●カルシウム:マグネシウム ⇒ 2:1 ~3:1
●カルシウム:リン:マグネシウム ⇒ 2:2:1