頭痛研究者は、片頭痛という病気は、死に至ることもない機能性頭痛であるがために、その原因を把握できないため、あくまでも「国際頭痛分類 第3版 β版」という症状からのみ捉えて、極めていい加減な説明をされ、いまだに「不思議で・神秘的な病気」とされます。私は、こういった論理に真っ向から異を唱えて、これまでOCNのブログ人で主張を繰り返して参りました。今朝方、こうした以前のブログの記事を全て移動させましたが、移動を終えて気がついたことがありました。それは、私の主張を、優先させたために、これを裏付ける”基本的な考え方”が存在しませんでした。
このため、”何が基本的な考えなのか”を明確にする必要があります。このための記事が今回のものです。
ミトコンドリアの機能障害により引き起こされる「ミトコンドリア病」という病気があ
ります。このミトコンドリア病のほとんどの患者さんには、片頭痛が存在します。
そして、この「ミトコンドリア病」は片頭痛の”モデル疾患”とされるものです。
こうしたことから、最初に「ミトコンドリア病」について概略を説明します。
ミトコンドリア病とはどういう病気?
ミトコンドリアは全身のひとつひとつの細胞の中にあってエネルギーを産生する働きを持っています。そのミトコンドリアの働きが低下すると、細胞の活動が低下します。例え
ば、脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害されま
す。心臓の細胞であれば、血液を全身に送ることができなくなります。筋肉の細胞なら、
運動が障害されたり、疲れやすくなったりします。
ミトコンドリアの働きが低下することが原因である病気を総称してミトコンドリア病と
呼んでいます。多くは生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝
子の変化を持っている方が発症しますが、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアの働
きが低下して起きるミトコンドリア病もあります。
この病気の原因は?
ミトコンドリアの働きを低下させる原因として、遺伝子の変化に由来する場合と、薬物
などが原因でおきる場合があります。大部分は遺伝子の変化でおきるであろうと考えられ
ていますが、ミトコンドリアのはたらきに関わるタンパク質は優に1000 を超えると推定されており、それらの設計図である遺伝子の変化がすべてミトコンドリア病の原因となる可能性があります。すでに200 種類程度の遺伝子の変化がミトコンドリア病に関係することがわかっています。
さらに、これら遺伝子には、細胞の核と呼ばれるところに存在する核DNA(通常のDNA
です)に乗っている遺伝子と、ミトコンドリアの中に存在する別のDNA(ミトコンドリア
DNA といいます)に乗っている遺伝子があります。新しいミトコンドリア病の原因が核DNA 上の遺伝子から次々と明らかにされています。また核DNA に比べると短いミトコン
ドリアDNA 上の遺伝子にも、病気に関係する変化が患者さんで見つかっています。
ミトコンドリアDNA はミトコンドリアの中に存在していますが、実は1 個のミトコンドリアの中に5 ~10 個くらい入っています。そのようなミトコンドリアはひとつひとつの細胞に数十から数百個あるので、1 細胞でみるとミトコンドリアDNA は数千個も存在していることになります。ですので、数千個もあるミトコンドリアDNA のほんの一部が変化しても細胞のはたらきに何も影響しないし病気にもなりません。ミトコンドリアDNA の変化で病気になっている人は、通常は変化したミトコンドリアDNA の割合が高いことが知られているのです。
この病気は遺伝するのか?
核DNA 上の遺伝子の変化でおきる病気の場合は、いろいろな確率で親から子に伝わる
可能性があります。しかし遺伝子の変化は生殖細胞(精子や卵)で突然起きることがあっ
て、その場合は変化を持っている子しか発症しません。
一方、ミトコンドリアDNA の変化で起きる病気の場合は少し複雑です。ミトコンドリアDNA はすべて母から伝わります。受精の時に、母由来の卵の中にはたくさんのミトコンドリア(ミトコンドリアDNA)が詰まっていますが、父由来の精子のミトコンドリアは卵に入っていきません。もし入ったとしても父由来のミトコンドリアは消滅するということがわかっています。つまり受精卵の中のミトコンドリアDNA はすべて母由来になり、もし卵の中に変化したミトコンドリアDNA があればそれが子に伝わることになります。 これを母系遺伝と言います。ただし、変化したミトコンドリアの比率が細胞の中で高くならないと病気にはなりませんので、母が病気だから子も同じ病気になるとは限らず、逆に母は変化したミトコンドリアDNA の比率が低くても、子が発症する場合があることになります。
変化したミトコンドリアDNA が細胞内で増える理由というのがまだわかっていません。
いろいろな要因があると推定されていますが、おそらく変化したミトコンドリアDNAを
増やしてしまうような核DNA 上の遺伝子の要因があるという考え方があります。ミトコ
ンドリアDNA の変化で起きる病気といいながら、実は核DNA 上の遺伝子が重要な役割を
担っている可能性があるのです。
この病気ではどのような症状が?
ほぼすべての細胞にミトコンドリアが存在します。細胞は同じ種類のものが集まって組
織というものを作ります。神経組織、心筋組織などと呼ばれますが、それらの組織が血管
や結合組織などの他の組織といっしょになって、身体のために効率よくきちんと働くよう
になっている構造体を臓器といいます。これが脳とか心臓とかになりますが、症状という
のはこのような臓器のはたらきが低下した場合に現れます。
ミトコンドリアのはたらきが低下して起きるミトコンドリア病の場合は、ひとつひとつの細胞のはたらきが低下したり、そのような細胞が消滅したりします。それがどの細胞にも起きる可能性があるので、いろいろな症状が現れることになります。けいれん、脳卒中、
精神症状、発達の遅れなどの脳の症状、物が見えにくい、音が聞こえないなどの感覚器の
症状、運動ができない、疲れやすいななどの筋の症状など、挙げればきりがありません。
その中でも、比較的エネルギーを多く必要とする神経、筋、心臓などの臓器の症状が現れ
やすいと考えられています。
ミトコンドリア病の症状の特徴は、あらゆる年齢の方に、あらゆる症状が、あらゆる組み合わせで現れることと言えます。
ミトコンドリア病の症状として、中枢神経系では、けいれん、ミオクローヌス、失調、
脳卒中様症状、知能低下、片頭痛、精神症状、ジストニア、ミエロパチーが起きます。
例えば代表的な”主なミトコンドリア脳筋症”では
(1)カーンズ・セイヤー症候群(慢性進行性外眼筋麻痺:KSS)
この病気は眼球運動麻痺、心伝導障害に網膜色素変性症を伴った病気です。3つの症状
が常にそろうわけではありません。ミトコンドリアDNAの一部が欠けています。
(2)脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(メラス:MELAS)
脳卒中のような症状と高乳酸血症を示し、若年で発症します。低身長で筋力低下がみら
れます。ミトコンドリアDNA内のロイシンtRNAの点変異(DNAの1塩基の欠失、
置換、挿入のこと)が、日本の研究者によって明らかにされました。また最近、日本でL-
アルギニン療法が提唱されて注目されています。
(3)ミオクローヌスを伴うミトコンドリア脳筋症(福原病:MERRF)
このタイプは小脳症状、ミオクローヌス(不随意運動の一種)、筋症状、てんかんが主な
症状です。この病気もミトコンドリアDNAのリジンtRNA内の点変異で起こります。
1998 年にShoenen らによって発表された論文によれば、ミトコンドリア病の患者さん
に1日1回400mg のビタミンB2を服用させた所、ミトコンドリアが元気になりミトコン
ドリア病が改善しました。このミトコンドリア病の主症状が片頭痛です。この事にヒント
を得て、ミトコンドリア病に限らず片頭痛の患者さん55人に1日1回400mg のリボフラ
ビン(ビタミンB2)を3ヶ月服用させた所、片頭痛の起す割合が半分に減った患者さん
が37 名だったと言う事です。
この理由は、ビタミンB2がミトコンドリアの電子のやりとり(電子伝達によりエネル
ギーを産生する)を円滑にしたことにより、ミトコンドリアの代謝機能を向上させたから
だと推測されます。
この論文によれば、半数以上の患者さんの片頭痛に効果が有ると考えられますから(頻
度が半分に減る程度だとしても)、片頭痛を目的にビタミンB2を服用して良いと思います。
そしてこのビタミンB2は水溶性ビタミンと呼ばれていて過剰量服用した場合、体外に尿
より排泄されてしまって副作用は起こり難いですから安心感も高いと思います。
次に、片頭痛の患者のおよそ半分が「マグネシウム不足」が存在します。以前までは片
頭痛とマグネシスムの関連性が明らかになっていませんでしたが、最近の調査では片頭痛
を抱えている半分の患者がマグネシウム不足であることが判明しております。
それでは片頭痛発症に、なぜマグネシウムが関係しているのでしょうか?
片頭痛は、これまで”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネ
シウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であるとされていま
す。
片頭痛は代謝偏倚metabolic shifts による疾患である。
片頭痛は脳および他の体組織でのエネルギー代謝障害、マグネシウムの欠乏が存在する。
脳代謝異常はミトコンドリア酸化リン酸化の異常が一義的に存在するか、マグネシウム
(細胞内自由マグネシウム)の低下のいずれかあるいは両方が存在する。
その結果、神経の過興奮性が生じ、神経機能の不安定が生じ、拡延性抑制が発生する。
これが片頭痛の前兆である。
その根拠とする”文献”は以下のものです。
Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol
Sciences 134 (1995) 9-14 2000.04.02
マグネシウム欠乏で片頭痛の起こるメカニズムとして
更年期以前の女性では、月経前に血中マグネシウムを骨や筋肉へと移行させるため、脳
内のマグネシウムレベルが低下します。
マグネシウム量が少ないと、カルシウムによる血液凝固作用を阻止するために働くマグ
ネシウム本来の働きが出来ないため、小さい血栓を作りやすくする。この小さな血栓が脳
の細い血管に詰まり、片頭痛を起こすとされています。
脳内マグネシウムが減少する事で、神経伝達物質の過剰な活動や神経興奮などを起こし
やすくして片頭痛を誘発します。
マグネシウムの働きとして、血管を弛緩・拡張させる作用がありますので、片頭痛の原因となるけいれんや収縮を軽減がされる。また、脳の神経伝達物質と炎症性物質を制御し、乳酸の蓄積も防ぎ蓄積を減らすことで筋肉緊張を減らし、頭痛を起こしにくくしています。
またマグネシウムが片頭痛の予防に効果的である、という研究結果が発表されています。
アメリカではマグネシウムが片頭痛の予防にどれだけ有効かを調べる治験が行われまし
た。その結果、1 日600mg のマグネシウムを毎日摂取すると、片頭痛の頻度が減り片頭痛
の予防に繋がることが分かったのです。
片頭痛の発作が約4 割減少するという治験結果で、片頭痛予防としてマグネシウムの有
効性が注目されました。
厚生労働省での1 日のマグネシウム所要量は、成人男子280 ~ 320mg、成人女子240 ~
260mg です。
しかし日本では、ほとんどの人が一日の必要量を満たしていません。
片頭痛予防として注目されているマグネシウムは食品から摂れる栄養素ですが、なぜ不足
しているのでしょうか。
マグネシウムは海藻類や乾物、豆腐、ゴマなどに多く含まれています。
しかし戦後、日本人の食生活は肉中心の欧米型へ変わりました。
昔ながらの和食を食べなくなったことが、日本人のマグネシウム不足につながっているの
です。さらに白米、白砂糖、精製塩などの精製食品も、マグネシウム不足の原因と言われ
ています。
また添加物、土・水・大気汚染などが、マグネシウムの働きを阻害しているとも言われ
ています。現代の食生活ではマグネシウムが不足しやすくなっています。
片頭痛の予防にはストレスをためない以上に、栄養面での見直しがもっと必要です。
マグネシウムはサプリメントでも補えますから、片頭痛の予防法として一度ためしてみる
といいかもしれません。
また片頭痛のきっかけになってしまうほかの要因は、妊娠・月経・アルコール・ストレ
ス・ある種の利尿剤(この他の薬剤も可能性があります)。
これらすべて体内や筋肉内・脳内などのマグネシウム量を減らしてしまう原因となります。
マグネシウムは現代人にとって実に欠乏しやすいミネラルで、よほど気を付けていないと
食事から摂るべきマグネシウムも減ってしまうから注意が必要です。
このように片頭痛発症には、ミトコンドリアが第一義的な側面を有していると考えられ、
症候論の上でも、片頭痛とてんかんという2点がこれを裏付けているようです。
ミトコンドリアの元気の素はコエンザイムQ 1 0
ミトコンドリアに元気がなければやる気も起きず、体自体も弱ってしまいます。ミト
コンドリアが元気でいることは、健康であるための大事な条件のひとつです。
ミトコンドリアが元気でいるためには、
①ミトコンドリアを死なせない。一つひとつのミトコンドリアを弱らせない
②ミトコンドリアの数を増やす。一つひとつのミトコンドリアを元気にする
これを満たすことが必要です。そこで鍵となるのが、美容に関する素材として皆さん
もよくご存知の「コエンザイムQ10」です。
コエンザイムQ10 はミトコンドリアに多く含まれ、次のような働きがあります。
○ミトコンドリアのエネルギー産生反応をつかさどる(補酵素としての作用)
◎ミトコンドリアのエネルギー産生時に発生する活性酸素を除去する(抗酸化物質として
の作用)ミトコンドリアがエネルギーを産生するときにコエンザイムQ10 の作用が強まると、エネルギーの生産活動が活性化します。逆の場合にはエネルギーの産生は抑制されます。
これが補酵素としての働きです。
また、コエンザイムQ10 には活性酸素を除去する作用(抗酸化作用)がありますので、
ミトコンドリアが活性酸素によって傷つけられるのを防いでくれます。
このように、コエンザイムQ10はミトコンドリアの活性を上手に制御してくれます。
ミトコンドリアはすべての細胞内に存在するわけですから、生命の活性や死滅、あるいは
老化に深く関与していることになるわけです。
まだメカニズムはわかっていないのですが、ミトコンドリアの活性にはコエンザイム
Q10 以上に、甲状腺ホルモンが強くかかわっています。
ご存知の方もいると思いますが、甲状腺ホルモンが出過ぎるとバセドウ病を発症し、
少ないと橋本病になります。ミトコンドリアに元気がなくなる橋本病では、わずかな体
調の変化であっても活性酸素を発生しやすく、片頭痛の原因となることがあります。
「片頭痛を治すために今日からすぐ始めたいこと」を実践してみたものの、1ヵ月経っ
ても改善効果を実感できない場合には、甲状腺ホルモンの分泌異常を疑った
ほうがいいかもしれません。
そして、これに関連して、片頭痛には「脳内セロトニン」が大きく関わっております。
その論点は、どのようなものなのでしょうか?
・「セロトニン神経のみ何故ミトコンドリアの影響を受けるのでしようか?」
以下は、分子化学療法研究所の後藤 日出夫先生の見解です。
150億個の脳細胞の中でセロトニン神経はわずか数万程度しかありません。又、セロ
トニンの伝達もネガティブフィードバックを受けながら伝達されます(80%は回収され
るとされています)。この仕組みはドーパミンやノルアドレナリンなどが分泌指示に対し充
分な生成能力を備えているのに対し、他のホルモンには全く影響を受けずに、マイペース
で少量ずつリズミカルにパルス分泌され、且つ、量的にも充分な生産能力がないために、
溜めを作っておき短期的な必要量を確保するために備わったものと考えられます。
いわゆる、ドーパミンやノルアドレナリンに比較してきわめて小さな生産能力であるた
め、セロトニン神経だけが実質的にミトコンドリア活性の影響を受けると思っています。
このように、ミトコンドリア働きが悪いと、脳の神経細胞の場合、「セロトニン神経」が選択的に「ミトコンドリアの働き」の影響を受けやすく、セロトニンを産生しにくく、セロトニンの合成やその合成のための酵素も充分な量を生成できなくなってしまいます。その結果、「脳内セロトニン不足」が引き起こされてきます。)
脳内セロトニンの低下は、「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあらわれ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずかな刺激にも敏感に反応してしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになります。)
この「脳内セロトニン低下」も「脳過敏」を引き起こす要因となっています。
“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれば益々「脳内セロトニンが低下」することになります。さらに生活習慣の不規則・ストレス・生理周期により「脳内セロトニンの低下」の要因が追加されて、「脳過敏」を増強させてきます。
こうした論点は、鳥取大学神経内科教室の時代の下村登規夫先生が、片頭痛の発症要因として、「ミトコンドリア」と「脳内セロトニン」の関与を指摘されておられました。
そして、昨年には、先程の分子化学療法研究所の後藤 日出夫先生にも、まったく同じような見解を医師の立場でなく、分子化学の立場から指摘されました。
このように概観すれば、現在の頭痛専門医が「国際頭痛分類 第3版 β版」の観点から、片頭痛を論ずることは、あくまでも”症状”の上からしか論じておらず、「本質論」には至っておりません。こうした事実を直視した上で、判断すべきです。
この点は、「慢性頭痛」さらに片頭痛の発症様式を考える際に極めて重要と思っております。
このように考える限り、片頭痛発症の”環境因子”としては、「ミトコンドリア」と「脳内セロトニン」のこの2つが重要なものと思われます。
そして、この2つの関連から、さらに「体の歪み(ストレートネック)」を招来することによって、この3つが、片頭痛の”環境因子”としての重要な鍵を握っているものと思っております。
こうした点は、明日、改めて、解説致します。