慢性頭痛の解明はなぜ難しいのか | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 慢性頭痛とは、一次性頭痛ともいわれますように「脳のなかに異常のない」頭痛で、このなかには、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛があります。これに対して、二次性頭痛とは「脳のなかに異常のある頭痛」で、その代表的なものはクモ膜下出血や脳腫瘍があります。こうした頭痛は、放置しておきますと死んでしまうことになります。
 しかし、慢性頭痛の場合は、いかに痛みが酷かろうが死ぬことはありません。こういったことから、死ぬ病気ではないからといって軽く考えられていました。
 慢性頭痛でなく、一般の病気では、放置すれば死に至ります。こうしたことから、このような場合、死後病理解剖を行って、その原因となる場所を特定して原因が解明されてきました。
 このようなことが明らかになることによって、その治療法も確立されてきました。
 しかし、片頭痛を代表とする慢性頭痛では死なないため、解剖をしても、病巣が明らかにされることができず、このために根本的に治す方法が解明されないままになっています。


  これまでも述べましたように、現在、頭痛を診療する場合、医師は世界的に認められた「国際頭痛分類 第3β版」に基づいて診断し、治療を行っております。このなかで慢性頭痛である片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛も、これこれの症状があれば、片頭痛とか緊張型頭痛とか群発頭痛に分類しましょうと細かく定められています。ということは、あくまでも”症状”から診断されます。大雑把な考え方として、頭痛のために日常生活をおこなう際に、支障を来すかどうかで分ければ理解されやすいように思っています。日常生活に支障がなければ緊張型頭痛であり、日常生活に支障を来せば、片頭痛か群発頭痛ということになり、ある一定期間毎日、ほぼ同じような時間帯に頭痛が出現するようであれば群発頭痛ということになります。
 しかし、これまで明らかにしましたように、個々の患者さんを詳しく観察しますと、緊張型頭痛と片頭痛の区別は、そんなに明確なものではありません。頭痛の起こり初めは緊張型頭痛のようでありながら、しばらく経過をみておれば明らかに片頭痛としかいいようのない頭痛に移行していくこともあります。また片頭痛の場合でもいつも同じ程度の頭痛とは限らず、激しいことも軽い場合もあり、また前兆を伴ったり伴わなかったりすることもあります。さらにある時期は片頭痛の形式であり、またある期間は群発頭痛のパターンをとるといったように両方の頭痛を行ったり来たりする場合もあります。

 このような点から、慢性頭痛の発症要因には、何か”共通したもの”が存在するのではないかと推測されます。現在、頭痛の専門家は、頭痛と首は関係ないとの見解を示されておりますが、私の過去24年間の臨床経験からは、慢性頭痛と首(ストレートネック)は何らかの因果関係を推測させるような結果が得られております。すなわち、慢性頭痛には共通して、ストレートネックを認めることです。この点は、東京脳神経センターの松井孝嘉先生も同様に指摘されます。(群発頭痛に関しては言及されていませんが・・)
このように「国際頭痛分類 第3β版」は頭痛診療・研究にある一定の役割は果たしてはきましたが、あくまでも”症状”のみに終始していることから、頭痛の本質が何かということの原因を追及するには、甚だ問題があるように思えてなりません。

 治療方法が解明されない病気の病態・治療を考えていく場合、その病気の”疾患モデル”を想定して検討する方法(手法)があります。

 例えば、私が急性期脳梗塞の臨床研究を行っていた際の方法があります。それは、脳梗塞という病気は、脳血管が閉塞して起きる病気です。当時は、閉塞性脳血管障害患者に一律に、血栓溶解剤であるウロキナーゼが、ありとあらゆる時期(段階)で投与されていたために、この血行再開療法の適否・いついかなる時期に投与すべきが検討されました。
 これを行うための”疾患モデル”として脳塞栓が使われました。閉塞性脳血管障害は、血栓による閉塞は脳血栓症であり、栓子による閉塞は脳塞栓です。脳塞栓の場合、閉塞した脳血管は、時間の経過とともに栓子が融解し自然に開通してきます。そして、開通する時期によって、劇的に改善する場合があるかと思えば、時期によっては急激に悪化し、最悪の場合、脳ヘルニアを来して死ぬこともあります。こうしたことから、この境目がどこにあるのかを、1例、1例確認していきました。この結果、血行再開療法のゴールデンタイムは発症後3,4時間以内であろうとの推測に至り、現在の血栓溶解剤のアルテプラーゼの開発につながっていきました。


 それでは、片頭痛の場合の疾患モデルはあるのでしょうか?

 これまで、片頭痛の疾患モデルとしては「ミトコンドリア病」が挙げられています。しかし、このミトコンドリア病は、脳塞栓のように、日常茶飯事にみられる病気でないため、頭痛専門家からも余り注目されていません。ミトコンドリア病には殆どの患者さんで片頭痛が主症状となっています。このことから、このミトコンドリア病に対して、マグネシウムやビタミンB2を投与することによって片頭痛が改善するとされるとされています。


 これとは別に、慢性頭痛の疾患モデルとして”ムチウチによる頭痛”が挙げられます。

 ムチウチによる頭痛のパターンは、緊張型頭痛が多いのですが、人によっては片頭痛であったり群発頭痛のこともあります。また、ムチウチによる症状は、天気に左右され、とくに低気圧との関与により症状が増悪することが特徴とされ、この点は片頭痛と共通しており、まさに片頭痛の”疾患モデル”と考えるべき頭痛のように思っております。
 しかし、問題は、ムチウチによる頭痛は「国際頭痛分類 第3β版」では、”むち打ち損傷後、7日以内に出現し、3ヵ月以上持続する”と規定されています。ところが、ムチウチによる症状は、必ずしも追突事故後7日以内に出現するとは限らず、受傷後かなり経過してから出現するものがザラにあります。こうしたものは、ムチウチとの関連なしとされます。
 さらなる悲劇は、ムチウチによりストレートネックが形成されてくるという事実を東京脳神経センターの松井孝嘉先生が昔から指摘されておられるにも関わらず、頭痛専門家は、問答無用で「頭痛とストレートネック」は関係なしと否定されます。
 こういったことから、頭痛専門家は、自ら”片頭痛解明の糸口”を閉ざしています。


 こうしてみますと、「国際頭痛分類 第3β版」が足枷となって、片頭痛解明への”みちすじ”を閉ざしているとしか思えてなりません。これが、「頭痛専門医」の基本的な考え方のようです。このため、いまだに堂々巡りをしているようです。