片頭痛とボトックス療法 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 片頭痛とボツリヌス毒素といえば、真っ先に思い出されるのは、寺本純先生です。

 寺本先生以外にも、多くの先生方がそれぞれの見解を述べておられます。


 まず、寺本純先生の考え方です。


 各種頭痛に対するボツリヌス毒素(BOTOX)治療について


 片頭痛に対して薬物治療の効果が乏しくなってしまったり、効果があったとしても薬物の使用量が過剰になってしまった場合を、慢性片頭痛と呼びます(今までは慢性連日性頭痛と呼ばれていました)。
 この慢性片頭痛や、ほぼ毎日1~2時間続く片側の激しい痛みが現れる群発頭痛、さらには肩や頸の筋肉の極度のコリから来る慢性緊張型頭痛の患者さんに対する治療として、アメリカやヨーロッパなどでA型ボツリヌス毒素を額や頭皮などに注射する方法がおこなわれるようになり、専門医の間では普及しつつあります。

 日本の健康保険では、両側性眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸の3疾患の限定使用となっていますので、頭痛に対しては使用することが出来ません。
 外国では斜視に使われており、日本では保険外治療として美容外科のシワとりにも使われていることは一般の人たちにもよく知られています。
 さらに、ワキガや多汗症が皮膚への注射で改善すること、脳卒中で麻痺した手足に注射して筋肉の固さを和らげること、歯ぎしりに対して咬筋に注射して改善をもたらすことが知られ、すでに一部の専門医の間では使用されはじめています。
 また最近は鼻粘膜に注射することによって花粉症を改善できることも分かってきています。
 将来は世界的にもかなり普及する治療法として考えられています。

 保険適応疾患やシワとり、歯ぎしりには、ボツリヌス毒素の筋弛緩作用を利用していますが、頭痛に対する効果としては別で、この注射によって痛みに関係する化学物質である"P物質"の分泌を抑制するための効果であると考えられています。
 したがって筋肉に対して注射をすると、平均的には1週間ほどで効果が現れ、3~4ヵ月後に毒素が完全に吸収されるまでの間、効果が続きます。


 その詳細は寺本神経内科クリニックのホームページをご覧下さい。



 日本頭痛学会の「ボツリヌス治療」に対する見解です。


ボツリヌス毒素の注射は顔面痙攣などの治療に用いられている薬剤です.片頭痛に対しても試用されており,有効との報告も多いのですが,まだエビデンスは確立していません.また日本では保険適用がありません.ボツリヌス毒素が片頭痛治療に標準的に用いられるか否かは今後の課題です.


 別の先生の考え方です。「ボトックスというくすりがあります」


 ボツリヌス菌の毒素をお薬として応用したものです。
 毒を薬にと驚かれるかも知れませんが、昔は人を殺す毒薬を扱う仕事と病気を治すお薬を作る人は同じ『薬師(くすし)』という職業の人がおこなっていました。『薬(くすり)人を殺さず薬師(くすし)人を殺す』という言葉もあるとおり、薬はその用い方で毒にも薬にもなります。
 ボツリヌス菌は食中毒の原因菌の一つとして有名です。強力な毒素で多くの方が命を落としています。
 このボツリヌス毒素は筋肉の弛緩作用があることから近年様々な病気治療の薬剤として使われています。
 たとえば頚性斜頚、眼筋痙攣などの筋肉の異常な緊張に使われています。
 本来の治療目的とは異なりますが顔のしわ取り目的でコラーゲン注射やヒアルロン酸注射と同じようにボツリヌス毒素製剤も使われているのをごぞんじでしょうか?

 しわのある部位にボトックスを注射すると筋肉が弛緩してしわができにくくなるのです。ところが、美容目的の治療でボツリヌス毒素製剤を使った患者様で片頭痛が改善したことから、このボツリヌス毒素製剤を頭痛治療に応用している先生もいるのです。
 ボツリヌス毒素製剤の片頭痛への効果は約80%と非常に高いものです。
 残念ながらまだ健康保険の適用はないため自費での治療を行っているのが現状です。
 さらに最近は三叉神経痛、CRPS、筋・筋膜痛症候群などの疼痛性疾患にもこの製剤の効果が確かめられています。
 なぜ痛みの軽減に有効なのかはまだはっきりとわかっていません。
 神経筋接合部での作用で筋弛緩作用がでることはわかっています。
 筋肉の緊張による痛みならこの筋弛緩作用で理解できます。ところが筋肉が弛緩するまでにはある程度の時間がかかるのです。
 ボツリヌス毒素を片頭痛に使用した場合、ごく短時間に効果が発現します。
 筋肉の弛緩だけでは説明が付きません。
 ボツリヌス毒素を用いたボランティアに対する実験でこの毒素は疼痛閾値には変化を来さないことがわかっています。

 交感神経の神経節前ニューロンではアセチルコリン、神経節後ニューロンではアドレナリンが神経伝達物質です。副交感神経は節前、節後ともにアセチルコリンが神経伝達物質です。
 ボツリヌス毒素はこのアセチルコリンの放出を抑制することで痛みの軽減を起こすのかもしれません。
 まだ臨床に応用されてから日が浅く、どのような病気にどの程度有効なのかは
 これからの研究により解明されるものと思いますが
ボツリヌス毒素は副作用が少なく、使い方さえマスターすれば安全な治療法といえます。


平沼整形外科クリニック


ボトックス療法


■ボツリヌス毒素による治療


頭痛にボツリヌス毒を使う事は、最近アメリカやヨーロッパなどで急速に普及してきた新しい治療法です。毒素と聞いて驚かれる方も多いと思いますが、ボツリヌス毒素は美容整形のシワ取りにも使われている極めて安全性の高い薬です。頭皮に数箇所ボツリヌス毒素を注射することで、頑固な片頭痛、緊張型頭痛、薬物乱用頭痛などに非常に優れた効果を示します。
 しかし現状では保険適応外である事などいくつかの制約があるため、通常の治療が上手くいかなかった場合の最終的な治療として行う事が望ましいと考えています。
 頭痛の治療方法は経口薬、生活習慣の改善、理学療法などですが、中にはこのような治療を行っても頭痛がなかなか改善しないとか、多量の薬が必要でいろいろな副作用が出てしまっている場合などがあります。このような方にボツリヌス毒素の治療は適していると思われます。つまりボツリヌス毒素による治療は唯一の治療法ではなく、その他にもさまざまな治療の選択枝があると言う事をご理解頂いた上で、それでも治療が困難な場合に行う事が望ましいと思います。


■治療方法の実際


頭部・顔面に少量ずつ数カ所に分けて皮下へ注射します。所要時間は数分ですみます。一度注射をすると、平均的には1週間ほどで効果が現れ、3~4ヶ月後に毒素が完全に吸収されるまでの間、効果が続きます。痛みの程度が大幅に減弱したり、強い痛みが消失し、内服薬の量が少なくなるなど総じて8割程度の方に何らかの改善が期待できます。
一方、ボツリヌス毒素による治療の問題点としては高価である事、保険がきかない事などが挙げられます。また治療の前にあらかじめ効くか効かないかを判別する事もできません。


■Botoxの安全性


ボトックスは、1989年にアメリカで最初に医薬品として承認され、以来、眼瞼痙攣・片側顔面痙攣・痙性斜頸をはじめとする主に筋肉の緊張を伴う病気に対して広く用いられています。世界では、アメリカやイギリスを含め75ヵ国以上で承認されており、これまでに世界で数百万人の方がこの薬の投与を受けています。

日本においてこの薬は、1997年4月に眼瞼痙攣の治療薬として発売され、2000年1月に片側顔面痙攣、2001年6月に痙性斜頸に対する使用が追加承認され、4万人以上の方がこの薬の投与を受けています。


■Botoxの成分


 この薬は、ボツリヌス菌がつくり出すA型ボツリヌス毒素(天然のタンパク質)を有効成分とするお薬です。ボツリヌス菌を注射するわけではありませんので、ボツリヌス菌に感染するといった危険性はありません。様々な研究の結果、このタンパク質のごく少量を緊張している筋肉に直接注射すると、その筋肉がゆるみ、緊張や痙攣がおさまることがわかり、医薬品として利用されるようになりました。
 
■Botoxの効果


 この薬の効果は、2、3日~2週間で現れ、通常3~4ヶ月持続します。その後、時間が経つにつれて徐々に効果が消失し神経の動きが回復してくるため、注射前の状態が再び現れてきます。この場合、ボトックスを再投与することによって同様の効果が現れます。
この薬は、タンパク質が主成分であるため、治療を続けていくうちに、体内にごく稀に抗体がつくられ、効果が減弱する可能性があります。


■副作用について


この薬を使用した患者さま2932人中、14.19%(416人)に副作用が報告されました。その主なものは、お薬の効きすぎによりまぶたが閉まりにくくなる、物が飲み込みにくくなる、などです。これらの副作用のほとんどは、薬の作用が予想以上に強くあらわれた結果と考えられるもので、薬の効果が弱まるとともに回復しています。

■保険外治療について


 現在の日本の健康保険では両側性眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸の3疾患に対してしかボツリヌス毒素の使用が認められていません。このような理由から、頭痛に対してボツリヌス毒素を用いる場合には(自費診療・自由診療)として行わなければなりません。ちなみに美容外科のシワとりにも使われていますが、これも日本では保険外治療となっています。


■薬剤


 使用する薬剤は、アメリカ合衆国で販売されているものを輸入する必要があります。もちろん必要な手続きは当院で行いますが、輸入に関する患者さんの同意書が必要となります。なお国内販売のボトックスと輸入したボトックスは成分や内容量はまったく同一です。また最近多く出回っている中国製等のコピー製品は当院では、一切使用しておりません。


■自由診療の留意点


 前述のとおり頭痛に対するボトックス治療は自由診療です。健康保険法上は、保険診療と自由診療を同時に実施することは混合診療として禁じられており、それをすると当院が懲罰を受けることになります。従って同時に一般的な保険診療を行うことはお断りしております。


 にし脳神経外科


A型ボツリヌス毒素注射が奏効しやすい片頭痛のタイプとは

 片頭痛患者に対するA型ボツリヌス毒素(BTX)注射が明らかに奏効するタイプとそうでないものがあるようだ。米ダートマス医科大学のJefferey S. Dover氏らが,来院者に対する予備的検討の結果を2月15日発行のArch Dermatol(2010; 146: 159-163)に報告した。それによると,BTX治療で明白な効果が認められるのは,頭がつぶれそうなタイプ(crushing),万力で締め上げられるようなタイプ(vicelike),あるいは眼球が飛び出しそうなタイプ(eye-popping:ocular)の片頭痛だという。


片頭痛への有効性に期待も,至適治療は模索段階


 米国で片頭痛を患う人の数は2,800万人にのぼるほか,全世界では2~15%が罹患していると言われる。

 2000年にBinderらが,顔面上部のしわ取りを目的にBTX治療を受けた人の片頭痛が軽くなることを発見し,カルテベースのオープンラベルによる後ろ向き検討を実施したが,プラセボに対する優位性は証明できなかった(Otolaryingol Head Neck Surg 2000; 123: 669-676)。

 Dover氏らは用いられていたBTXの用量が25~300単位とまちまちであったこと,注射部位,片頭痛予防薬の服用の有無などの違いから解釈が困難であったと述べている。その後,2006年にはJakubowskiらが実施した前向き試験から,BTX治療に反応があった片頭痛患者ではノンレスポンダーの人に比べ,神経マーカーの変化だけでなく,効果の見られる症状のタイプにも明らかな特徴があることが示された(Pain 2006; 125: 286-295)。

 同試験では,BTXの総投与量や注射方法・部位に統一性が見られたことから,Dover氏らは,大学病院,開業医らと協力し,再現性を検討することにした。

効果に明らかな差,奏効例では発作期間が約1週間から1日以下に

 参加施設で美容目的による顔面上部のBTX注射を受ける予定のある,片頭痛が確認された18例が解析対象となった。片頭痛に関する問診は,検討に参加した皮膚科医らがあらかじめトレーニングしたうえで実施した。患者の年齢は50.9歳(中央値26~80歳),片頭痛の罹患期間は28.9年(中央値2~72年)であった。

 10例が「頭がつぶれそうな」,「万力で締め上げられるような」,あるいは「眼球が飛び出しそう,など眼球周囲の症状がある」片頭痛のタイプで,9例が「頭が割れそう」(explode or split),「頭蓋内部の圧力が高まる感じ」(the pressure is building up),前者と後者の両方を合併する人もいた。

 注射後3か月時点で,18例中13例で片頭痛による痛みの減少が見られた。このレスポンダー群には,「頭がつぶれそう」,「万力で締め上げられる」,「眼球周囲の症状がある」10例全員が含まれており,ノンレスポンダーの6例すべてに「頭が割れそう」,「頭蓋内圧の高まる感じ」の症状が含まれていた。前者では後者に比べ頭痛の症状が有意に軽減していた(P=0.003)。

 また,レスポンダー群の1か月における片頭痛の頻度の変化は,治療前の平均6.8日から治療後には0.7日と有意に減少(P=0.002),ノンレスポンダー群では14.1日から13.7日(いずれも平均値,P=0.30)であった。

 片頭痛のタイプ別の頻度では「頭がつぶれそう」などの10例で7.1日から0.6日(P=0.005)に,「頭が割れそう」などの9例で11.4日から9.4日(P=0.07)となっていた。

 Dover氏らは,Jakubowskiらの検討結果が同試験でも追認されたとし,頭蓋内部あるいは眼球周囲に関する症状の強い片頭痛患者で,BTXによる治療効果が高く,美容目的の注射方法で片頭痛予防の効果が得られるのではないかと結論付けた。

 現在,片頭痛治療におけるBTX治療の至適投与法は確立していないが,Dover氏らはこれらの結果に基づき,詳細な検討が行われるべきとコメント。片頭痛の予防投与に用いられる薬剤と違い,BTXは副作用も少ないうえ,美容上のベネフィットも得られると述べている。


 以上は、MT pro からの抜粋です。


BTX-Aの片頭痛に対する治療作用及びそのメカニズム


 片頭痛(Migraine)の発病は「三叉神経脈管系(Trigeminal vascular system)」の有痛物質例えば、Substance P (SP)、Calcitonin gene-related peptide (CGRP)などの放出と関係がある。当該神経ペプチドの放出増により血管透過率の増加、血漿浸出などの神経原性炎症を生じさせると同時に、SPとCGRPは痛みの調節と伝導(痛みのシグナル)にも関与する。

1.1 BTX-Aは片頭痛ラットの頸静脈血液、脳幹と三叉神経節のCGRPとSPの含量を低減

 我々はニトログリセリン(Nitroglycerin)の前頭側頭ゾーン皮下注射或いは電気刺激によってラットの片頭痛モデルを作製する。症状が発生した2時間後、それぞれ前頭側頭ゾーン皮下に生理食塩水或いは5、10 U/kgのBTX-Aを注射する。毎日1回、6日間連続して注射する。結果:BTX-Aの局部注射は片頭痛ラットの症状を緩和でき、片頭痛によるラットの頸静脈血液、脳幹と三叉神経節に含まれるCGRPとSPの含量を低減できる。BTX-Aが「三叉神経脈管系」のCGRP、SPの放出と無菌炎症の反応を抑えることにより、片頭痛の症状を軽減することができると示された[20, 21]。


ツボにBTX-Aを注射することにより片頭痛を治療する臨床研究


 甘粛省人民病院で診療を受ける片頭痛患者(国際頭痛学会(HIS)頭痛・顔痛分類委員会2004片頭痛の診断基準に従って診断確定)を選定し、open-label studyを利用してそれぞれBTX-A(25 U)を固定箇所[22]群(30名)と針灸ツボ群(30名)に1回注射した。注射前後の痛み発作の強さについては視覚連続尺度(Visual Analogue Scale、VAS)を採用し、注射後4ヶ月間フォローアップした。結果によって、2群の患者はBTX-Aを注射後、片頭痛の発作頻度、強さ及び継続時間は皆治療前より軽減したが、針灸ツボ注射の治療効果は固定箇所注射[22]より効果が高かったことが示された。但し、この効果のメカニズムが不明で、更に研究する必要がある。


 以上、ボツリヌス毒素は、私は使ったことはありませんが、寺本先生はかなり積極的に使用されておられるようですが、私の知りたかったのは、ボツリヌス毒素が、なぜ片頭痛に有効なのかということです。寺本先生の著書にも、この点が十分に触れられてはいないようです。ただ、このような事実は、片頭痛の病態の解明の一助となるものと考えて、現段階での考え方を、お示し致しました。


 「体の歪み(ストレートネック)」による体幹筋の異常な筋緊張を緩和させる効果でもあるのでしょうか? こういった意味合いで私は注目しております。