片頭痛と遺伝 その2 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 以前にも述べましたが、一般に母親が片頭痛の場合約70%、父親が片頭痛の場合約30%の確率で、子供が片頭痛を発症するとの統計があります。両親が片頭痛の場合はなんと約90%の確率です。また親子だけの遺伝ではなく、祖父、祖母からの遺伝(隔世遺伝)のケースもあるようです。
 このように、片頭痛に遺伝的素因が関係することは確実です。


 これまで頭痛研究者は「遺伝的疾患」のため治らないというのが一般的な考え方でした。

 果たして、本当なのでしょうか?


しかし、双生児に必ず、片頭痛が発生するわけではありません。すなわち、一卵性双生児で、”遺伝的素因が全く同一である”はずのものが、必ずしも2人とも片頭痛を発症する訳ではないという事実があります。
 これは、何を意味しているのでしょうか? その後の後天的な要素、環境因子等々が関係している証拠ではないでしょうか?
一卵双生児の「片頭痛を発症」していない方に、もう片方の片頭痛を発症している人の「片頭痛の誘発因子」を多数負荷すれば、恐らく、頭痛は誘発されるでしょう。
ただ、このような「実験」は人道上、許されることではないため、されていないだけの話です。


大部分の片頭痛では糖尿病を始めとする生活習慣病と同様に、「多因子遺伝」であろうと推測されています.即ち,遺伝的に規定された片頭痛発症閾値がそれぞれの患者にあり,”環境要因”が加わって発症すると考えられています。


 多因子遺伝病の概念(Frants RR,1999)とは、以下のように考えられています。

1) 正常では,保護的遺伝子と有害遺伝子のバランスが保たれており疾病が発症しない.
2) 優性遺伝疾患では単一の有害遺伝子により疾患が発症する.
3-5)多因子遺伝疾患では3 種類以上の遺伝子において異常があれば発症するが,ひとつの
遺伝子異常では発症しない.二つの遺伝子異常があるときには軽症であるか,あるいは無
症状である.環境要因がこの表現型を修飾するものと考えられています。


 このように、最低3つの遺伝子異常があって、これに環境因子が加わって、初めて片頭痛が発症するとされ、その可能性のある遺伝子として、これまでセロトニン受容体及びドパミン受容体の遺伝子多型のほか,メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR),アンギオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子多型などが検討されています.

 この、3つの関連遺伝子として、私は「てんかんに関連したもの」「セロトニンに関連したもの」「ミトコンドリアに関連したもの」の3つを推測致しています。
 てんかんに関連したものは、確かに「多因子遺伝」ですが、「ミトコンドリアに関連したもの」は多因子遺伝でなく、細胞核の外の遺伝情報の伝達によって発症する細胞質遺伝です。そして、「セロトニンに関連したもの」は現在、検討中の段階です。この点は、また後に触れることにする予定です。


 分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、「単一遺伝子」については遺伝的要因と捉えていますが、こういった「多因子遺伝」については遺伝的要因としてではなく、代謝異常の一要因として捉え、以下のように述べておられます。


片頭痛の遺伝的因子としては、核遺伝子(DNA)のミトコンドリアへの影響も否定できませんが、ミトコンドリア活性が主と考えています。
、 ミトコンドリアの遺伝子は母親の遺伝子だけが引き継がれ、女性は男性に比べセロトニンの合成能力が低いため、母と娘の間で遺伝しやすい、これが「単一遺伝子異常」を除く、唯一の遺伝的な要因だと考えています。
 それも、ミトコンドリアのどの部分のDNAがどうだから、どうなるといった類のものではなく、人にも背が高い人、低い人、肥えた人、痩せた人があるように、ミトコンドリアにも元気なもの、元気の無いものがいて、元気のいい母ミトコンドリアからは元気のいいミトコンドリアが生まれやすく、元気の無い母ミトコンドリアからは元気の無いミトコンドリアが生まれやすい程度のことです。ミトコンドリアは今の環境に満足してしまえば数を増やすことも元気に働くこともしない怠け者ですので、何らかの刺激で慌てさせるとその数や活性を増す生き物と考えています。
ということは、少々元気の無いミトコンドリアであっても鍛えればそこそこ強くなるし、殺してしまえば(アスピリンなど)どうしようもなくなってしまうということだと思っています。
 片頭痛の方はもともと活性の低いミトコンドリアを引き継いでいるわけですので、直ぐに活性を高めるということは困難だと思いますが、少なくとも殺すことを止め、元気を取り戻す刺激を与えれば、片頭痛の原因とならない程度には回復できるものと考えています。
 先述の可能性のある遺伝子としての、ドーパミン受容体、セロトニン受容体の遺伝子多型、メチレンテトラヒドロ葉酸酵素、アンギオテンシン変換酵素遺伝子多型などについては、私は代謝異常として捉えています。


 以上のように、片頭痛では、遺伝的な要因は存在しますが、これだけで片頭痛が発症することはなく、これに”生後の「環境因子」が加わることなしには発症しないということです。