片頭痛治療における有酸素運動 2013/09/25 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 これまでOCNのブログ「頭医者のつぶやき」に掲載していたものです。
 アクセス数の多かったものを、ここに再度掲載させて頂きます。


 これまで、片頭痛治療において経験的に有酸素運動の重要性が指摘され、多くの方々がこれを行うことによって、片頭痛を改善させて来ました。それでは、どうして有酸素運動が片頭痛治療上、重要なのでしょうか?
 まず、はじめに、有酸素運動と無酸素運動の違いについて説明します。


有酸素運動とは?


運動には大きく分けて、「有酸素運動」と「無酸素運動」があります。
わずかな違いですが、その効果は全く違います。


■ 有酸素運動(エアロビクス)


 有酸素運動とは、酸素を普段よりも多く取り込みながら行う、それ自体、楽しみながらできる運動です。
充分に取り込んでいる酸素を使って、体内の糖質や脂肪をエネルギー源として燃焼することによって、ゆっくりとエネルギーを生み出します。
乳酸を生じないために疲れが蓄積せず、途中からエネルギー源が徐々に体脂肪に切り替わっていくので、長時間運動を続けることが可能です。
有酸素運動のときの呼吸は普段よりも軽く弾む感じで、深い呼吸なので、より多くの酸素が取り込めます。まさに有酸素運動はこの呼吸がポイントです。呼吸が軽く弾んでいれば、普段よりも多くの酸素を体内に取り入れているということです。
人と楽に会話ができる程度で、やや汗ばみ、爽快感を味わいながら、30分でも1時間でもやろうと思えばできる強度です。
有酸素運動は、目的によってレベルを変える必要があります。年配の方や運動療法として行う場合は軽めの有酸素運動をすべきですし、ダイエット目的の人は有酸素運動のなかでもややレベルを上げると、より多くの脂肪が燃焼されていきます。スポーツの基礎体力養成のためであれば、「激しくはないが、ややきつい」というレベルで行う必要があります。
  代表的なものとしてはウォーキング、ジョギング、水泳、水中ウォーキング、サイクリングなどがあります。器具を使った有酸素運動としては、ステッパーやエアロバイクなどがあります。
 ただ、ウォーキング以外は、激しく運動した場合、無酸素運動にもなります。有酸素運動として行う場合は、上記で述べたように、呼吸に意識を集中して、気をつける必要があります。
 器具を使ったエアロバイクなら、高性能のコンピュータが脈拍を自動測定してくれます。 その脈拍を見ながら、強度を調節できます。
 初めに強度を設定しておきさえすれば、その脈拍を元にペダルの強さを自動的に調節して、それ以上の強度に移行しないようにしてくれるエアロバイクもあります。
 単純でリズミカルな動作を最低10分以上反復することで、効果的な有酸素運動になります。ウォーキングもジョギングもステッパーも、みんなそうです。単純でリズミカルな動作のほうがとくに頭で考えずに運動でき、あなたは何かほかのことに意識を向けながらでも、できるのです。また、心拍数も一定のレベルを保ちやすくなります。
 また小さな筋肉よりも、下肢の大筋群を使った運動のほうが、静脈血の心臓への還流が促されるので、心臓の負担も少なくてすみます。つまり、イスに座った腕だけのダンベル体操よりも、歩いたり、ステップを踏んだり、足を動かした運動ということです。
  有酸素運動は酸素によって脂肪を燃焼でき、足腰の強化に役立ち、血行がよくなることから多くの健康効果が期待できます。実際、医療の現場でも食事療法、薬物療法とならび、運動療法としても利用されています。
有酸素運動は20分あたりから体脂肪をおもなエネルギー源として利用できるため、ダイエットにも適した運動です。
有酸素運動は、誰かと競う必要もなく、自分のペースを維持して行う運動といえます。


■ 無酸素運動(アネロビクス)


一方、無酸素運動とは一言で言うと”激しい運動”であり、運動中は息をとめたり、息を強く吐いたりするために、楽に呼吸することもできず、そのため酸素の取り込みが少ない運動です。(そのかわり運動後は、不足した酸素を取り込もうとして、呼吸が激しくなる) 無酸素状態、あるいは酸素が少ないために、息苦しさを感じることの多い運動です。
こういった状況下で運動をするために、、無酸素運動のときは、酸素がなくてもエネルギーを生み出せる仕組みを利用しています。
無酸素運動は筋肉内のグリコーゲン(糖質)を使いますが、蓄えが少ないので、長時間続けることはできません。まず、筋肉内に乳酸がたまってきて筋肉が動かなくなってきます。腕立て伏せも、ずっとやっていると腕が言うことをきかなくなって、しだいに動かなくなります。これによって、蓄えが少ない糖質を使い切る前に筋肉にセーブをかけて、体を危機から守っているわけです。
無酸素運動には筋力トレーニング、短距離ダッシュなどがあり、筋肉を鍛え、基礎代謝を高めることができるという長所があります。一般的に有酸素運動といわれる水泳やジョギングも激しく行えば、無酸素運動になります。
 しかし、気をつけないと、あなたの健康を害する危険があります。とくに高齢者や高血圧などの疾患がある人は控えなければなりません。運動中の心臓発作などの危険も伴います。
また、有酸素運動は活性酸素を減らしていくのに対して、無酸素運動は活性酸素を生じる危険があります。
 よく誤解されがちですが、無酸素運動とはいっても有酸素的なエネルギーも利用しており、無酸素的なエネルギー産生(酸素を利用しないで、糖質だけからエネルギーを生み出す産生)の割合のほうが多いということなのです。
まったく息をとめて力むような運動以外なら、わずかでも酸素を取り入れているからです。
100メートルの全力疾走という無酸素運動であっても、全体の17%が有酸素的エネルギーといわれています。
運動の強度が低くなるにつれて、酸素の体内への取り込み量が増えるにつれて、また時間が長くなるにつれて、有酸素的エネルギーにたよる割合が多くなっていきます。


 日本医科大学教授の太田成男先生は「ミトコンドリアを効果的に増やす方法」として、

  
<背筋を1分間伸ばす>
<毎日1分片足立ちをする>
<寒中稽古、サウナ後の水風呂>
<古来伝わる不自然な動き>


 などを挙げておられますが、これ以外にも


<短時間で効果的な有酸素運動> の重要性を指摘されます。


 有酸素運動の前に汗が出る強めの運動をプラスすることでミトコンドリアを増やし、ダイエット効果も上げることが出来ます。有酸素運動とは、ウオーキング、ジョギング、エアロビクスなど、「酸素を使って脂肪を燃やす」運動すべてを指します。しかし、通常の有酸素運動では体が脂肪燃焼を始める「有酸素」状態になるまでに30分かかるとされ、30分以上続けないと効果が無く、効率が悪いのも事実です。また、ウオーキング程度ではミトコンドリアを増やす効果はありません。そこで、初めに汗がどっと出るような強めの運動を行い、「エネルギーの枯渇状態」を作り出すことですぐに有酸素運動の状態に入るようにします。具体的には、


  ①.30秒ほど小走りする
  ②.1分ほど脈が整うまで歩く
  ③.また30秒ほど小走りする


 これを最初に繰り返すだけでミトコンドリアを増やす効果が劇的に高まります。ダンベルで少し汗ばむくらいの準備運動をしてからウオーキングやジョギングを行うのも同じような効果があります。

普段、ゆっくりと気持ちよく走るだけではなかなかミトコンドリアは増加してくれないのです。ミトコンドリアを増加させるには、たまに60秒程度でも「このまま走り続けるのは難しいかな」くらいのペースに走る速度を上げてみましょう。60秒もすれば脚が重くなって段々スピードが出なくなってくるはずです。そうすれば、蓄積された乳酸を全身に散らすようにまたゆったりペースに戻しましょう。一回のランニングのうち3-5度も繰り返せばみるみる成果が上がってくるでしょう!

 このトレーニングを繰り返すことによって、酸素をエネルギーに使用する能力だけでなく、口や鼻から吸い込んだ空気中の酸素をミトコンドリアまで運んでくれる、「ヘモグロビン」や「ミオグロビン」などの量も増加されます。工場にものを運ぶトラックが増えることによってどんどん工場が効率よく動けるわけです。

一方、うつ病に対する運動の効果には様々な研究で実証されています。
 例えば、1985年に発表されたノルウェーの精神科医エギル・マーチンセン氏の臨床試験があります。
 この試験は日常生活を送るのもままならないほどのうつ病と診断された49人を半分に分け、一方は1週間に3日、1時間程度ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動を残りの半分はその時間に作業療法を行うものでした。すると9週間後、有酸素運動のグループの男女は作業療法のグループよりもうつ病に大幅な改善が見られたのです。
 また、デューク大学医学部ジャームズ・ブルメンサル教授は、有酸素運動のみを行ったグループ、抗うつ薬を服用したグループ、抗うつ薬と有酸素運動を併用したグループに分け、4ヶ月間の治療効果を比較しました。すると、有酸素運動のみを行ったグループの回復率が最も高いことがわかりました。さらに6ヶ月後の再発率は、有酸素運動のみを行ったグループが最も低いこともわかっています。


▽有酸素運動は脳にいい


 ではなぜ、有酸素運動などのエクササイズがうつ病を改善するのでしょうか。まずひとつが、脳に対する効果です。
 運動をすると、脳内のセロトニンが増えると考えられています。セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸からつくられているといいますが、通常トリプトファンがアルブミンというたんぱく質とくっついて存在しているため「血液脳関門」という脳に入るための関所を通ることができません。
 しかし、運動をすることによって、体内での脂肪の分解がすすみ、血液中に遊離脂肪酸が増えると、アルプミンはトリプトファンを手放し、遊離脂肪酸とくっつきます。
 すると、トリプトファンは「血液脳関門」をスムーズに通過して、脳内に入ることができ、セロトニンに変換されます。現在あるセロトニンを有効活用しようとする抗うつ薬と違い、運動には脳内のセロトニンを増やす効果があるというわけです。


▽有酸素運動にはその他の効果も


 また、運動にはセロトニンだけでなく、ドーパミンやノルアドレナリンといった気分を高揚させたり、やる気を起こさせたりする神経伝達物質があるという説もあります。
 いずれも、脳を元気にする精神伝達物質ですから、うつ状態に陥った心も、徐々に回復してくでしょう。


運動の効果


・ストレスに強い体になる


 先ほど紹介したセロトニンですが、運動することにより、セロトニンに変わる前のアミノ酸(セロトニンの前駆体であるトリプトファン)が脳へスムーズに届くようになります。セロトニンの材料がうまく脳に運ばれることは大事です。セロトニンが少ないことはうつ病の原因といわれています。その逆にセロトニンが脳にしっかり届けばストレスに強い体となり、元気に働いたり余暇を楽しんだりできるでしょう。


・快感物質エンドルフィンが分泌される

 「ランニング・ハイ」という言葉を聞いたことがありますか? 走っていると気持ちがよくなってどこまででも走れてしまう感覚。陸上競技をやった人だったら経験があるでしょう。脳内麻薬のエンドルフィンが出ている状態、とも言われています。
 何十キロも走らなくても、15分程度の有酸素運動でもセロトニン、ドーパミン、さらに脳内麻薬のエンドルフィンが出て、プチランニングハイが味わえます。運動を続けることによって、エンドルフィンが出やすくなるので、ぜひ継続して、気持ちよさを味わってストレスを発散させてください。

 以上、頭痛がきた時に運動するのはいけませんが、普段なんでもない時に軽い有酸素運動でリフレッシュすることは非常に大切です。 ダイエットにも効果があり、健康にもいいと実践する人が増えているウォーキングは、片頭痛の人にもおすすめの運動です。 加えて「スッスッハー」と、腹式呼吸をしながら歩くことで、片頭痛頭痛と関係が深いセロトニン神経をきたえることができると 考えられています。緊張型頭痛の人にも、有酸素運動でからだをほぐすのは有効です。

 このように有酸素運動は、ミトコンドリアを増やす、セロトニン神経を鍛えるといった意味合いがあり、この点から片頭痛治療上重要と考えられます。

 こういったことは従来から「片頭痛のセルフケア」の一項目として挙げられていました。


 最近のネット上では、「片頭痛の症状と治し方.com」サイト管理人のSHOGOさんは有酸素運動の重要性を指摘され、週3日 30分間の有酸素運動を習慣化され、ストレス耐性の体質を作り上げることによって、自らの片頭痛を克服されたようです。
 是非とも、「片頭痛の症状と治し方.com」をご覧下さい。


 ここで注意して頂きたいことは、あくまでも頭痛発作のない日に行うべきであり、決して発作時にはしないようにして下さい。


 このような有酸素運動に加えて、睡眠を十分にとって生活習慣を規則正しくし、食生活を見直すことで、片頭痛が改善されることが期待されます。