秋吉理香子著「婚活中毒」を読んで | ひさしのブログ

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秋吉さんの小説といえば、映画化された「暗黒女子」や「絶対正義」、「自殺予定日」などの様に割とグロイストーリーの小説が注目されるが、女性パイロットが事件を解決する「機長、事件です!」の様な推理モノやバレー劇団の内部の犯罪を赤裸々に描いた「ジゼル」などの小説もある

この著者に特徴的なのは、人間の内部に潜む醜い悪の部分の描写とラストシーンにおける読者の意表をついてあっと驚かせる大どんでん返しである

今回取り上げる「婚活中毒」は五話からなる短編ストーリーであるが、秋吉さんが得意とする大どんでん返しも十分盛り込まれている

でもまあ、秋吉さんの作品を多々読み込んでおられる読者からすると、今回の作品は多少物足りないかもしれない

まず第一話の「理想の男」は四十路間近でもはや結婚適齢期を大幅に超えた崖っぷちの女が母の紹介で多少胡散臭い結婚相談所を訪れる

そこで、思いもよらない理想的な相手を紹介されるが、男の様子が何か怪しい、そして愈々女に男の恐怖が迫る

車でひき殺されそうになったりと命の危険にさらされる

やがて男の事で結婚相談所を訪れるが、取り越し苦労だと判り安心する

だが恐怖は思いも由らないところから迫ってくる

実は真犯人こそは意外な人物であった、これはもう秋吉さんに遣られた感がある

第二話の「婚活マニュアル」では婚活合コンに参加した奥手の理系男子がそこで理想的な女性に会う

その女性は合コンでもすごく人気だったが、ライバルをけをとしてなんとかこの美女をゲットする

だがこの美女は凄く傲慢で高価なものを強請る悪女であったのだ

男はそこでこの美女と一緒にいた不細工な女子の優しさに引かれ、美女を捨てて醜女に告白しようとするが、実はこの美女と醜女は男が予想もできないような関係であったのだ

個人的には二人の女性がナースということで女性的なお淑やかな面を想像したが、やっぱ女性は容姿に関係なく怖い存在に思えた

第三話の「リケジョ女子」は都会育ちの理系女子が「田舎で暮らそう」とかいったような合コンに参加する

そういえば、田舎で合コンとかテレビ番組でもあったなあ

その合コンに参加した理系女子は理系らしく自らの綿密な計算とマニュアルによってライバルを蹴落として好みの男性にアタックする

男の両親にゴマを吸ったり子供をあやしたりとデキル女性を演ずるが、ラストはやはり思いも由らない結末が待っていた

やっぱ男女の関係は計算通りにはいかないものだなあ

ラストの「代理結婚」は結婚にまったく興味がない息子に代わって夫婦がお見合い代理合コンに参加する

そこで凄く人気の一見裕福で容姿端麗の娘を持つ夫婦にアタックする

凄く人気なので諦めていたがなんとその裕福そうな夫婦からお見合い承諾のつてが来る

そしてやがてお見合いが始まるが息子がその美女にまったく興味なしで辞退しようとしたものの父親が相手方の美貌な母方に惹かれてしまう

息子の父親は美貌の母方にと懇意になりたくてお見合いを承諾するが、一方で息子に辞退したと告げる

お見合いの日に現れない息子に妻は動揺し止む無く事実を話す

相手方に詫びを入れようとすると、突然代理婚活パーティーの主催者から思いも由らぬ事を言われる

実はこの一見裕福な家庭に見える相手方の家族の正体は、これまた秋吉さんの策にまんまとはまった気がする

今回の小説、一話こそグロイものの全体を通してみれば、ブラックユーモアな感じで面白いストーリーの連続であった