第7話 わすらるる企業年金連合会
★小倉百人一首
「わすらるるー」バーンと大きな音が鳴った。
そして静けさ、ゆっくりと立ち上がり取り札を拾いに行く、長い髪の美少女を瀬奈は見ていた。
何かと思えば、テレビで放映している「ちはやぶる」のアニメであった。
瀬奈はこのアニメが大のお気に入りだ。
瀬奈所有のAI搭載スマートフォンである私も動画再生サイトで何度も繰り返して見ているうちに私もこのアニメが好きになってしまった。
瀬奈が壁紙をこれにしてくれた時は嬉しかった。
私は機械なので、青春というものがどういうものかわからなかったが、このアニメを見ていると、なんとなく理解したような気になれる。
いつものとおり、デジタル大辞泉を覗いてみる。青春=夢や希望に満ち活力のみなぎる若い時代を人生の春に例えたもの。青年時代。
と書いてある。なるほど、このアニメは夢や希望に満ち活力のあるストーリーだ。
しかし、今、目の前にいる46歳の瀬奈に夢や希望はあるのだろうか?
濁った目をして、無精髭でおしゃれでもない。
離婚経験があり。ろくに働きもせず、適当に生きている。
私は離婚してからの瀬奈しか見ていないが、誰か瀬奈に夢や希望をもたせる、うるわしき人はいないのだろうか?
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