カウントダウンが始まった。10、9、8、7、6と数字が読み上げられていく。
あと5秒もすれば、事が始まる。もう後戻りができない。
抗うことができない流れに身を任せるように、淡々と数を数えていく。4、3、2、1。
いざ、出航とでも言いたいような、汽笛のような号砲の中、人々が走り始めた。小雨が心地よく降っていた。未明の暗い夜道、静まり返った町並みの中、足音が響き渡る。
闇夜にうごめく何やら得体のしれない生き物の群れの中に身を置くような独特の空気を纏う、始まりの瞬間。ここでも淡々と、自分の身体の反応を一つずつ点検していく。まだまだ、大丈夫だ。
これから起こる何かに、未知の不安も感じつつ、やはり、淡々と自分の力を出力していく。水道の蛇口を一気に捻るのではなく、一定の水量を保つようなそんな感覚だ。
まだまだ道は長い。焦りにからめとられてしまうことは、ここでは禁物だ。