電動ガンのブレークスルー技術となるブラシレスモーター。
RC界ではブラシモーターをほぼ完全に駆逐しエントリーモデルまでもがブラシレスシステムとなっていますが、その技術がついに電動ガンにも降りてきました。
その実力やいかに!
その前に、まずはブラシレスモーターの基本解説。
https://www.orientalmotor.co.jp/om/knowledge/uroko_bl/bl02.html
ということで、詳細は省きますが今や自動車でもハイブリッド、EVなどで搭載されているモーターがまさにブラシレスモーターで、これだけ普及した時代になると当然、熾烈な開発競争によって高性能化がどんどん進んでいる状態なのです。
ただし、ブラシレスモーターはそのまま配線をつなぎかえて動くというような互換性はありません。
ブラシモーターはバッテリーからモーターに2本の配線(+-)を直接つなげればモーター内で機械的にスイッチを切り替え、そのまま回転するのでその間にスイッチや回転数などを調整する制御装置が入るくらいで、常に2本の動力線で駆動します。
それに対してブラシレスモーターは回転させるためには3本の動力配線とセンサーケーブルで出力電圧を制御するコントローラー(ドライバー回路)で切り替えて回転させます。
※最近のラジコンではセンサレスという、3本の動力線からの逆起電力で位置検出するセンサーケーブル無しのブラシレスモーターが主流です。
そして今回、オプションNO.1はモーター交換のみで使える「プラグインブラシレスモーター」なるものを発売してきました。
この構造は、モーターにドライバー回路を内蔵しているので単純に+-を入力するだけで回ってくれるのです。
(センサーケーブルや3線の動力ケーブルなどややこしいところが見えなくなっています)
形状はエンドベル部が違ったり端子部の高さが違うなどでポン組みとはいきませんが、組めてしまえはこちらのもの!です(笑
ピニオンギアは歯面が薄めでノイズも少なそうで、作りが悪くないです。
モータータワーはベアリング1個のみ内蔵でした。
電動ガン用でケースが異形平型なのでその分、ステータコイルをサイズダウンして設計しています。
ローターも外から見ると外径φ10無さそうです。
スペックはリポ7.4V印加時で以下の通り。
ハイトルクタイプ→31000rpm
ハイスピードタイプ→35000rpm
このまま負荷の差を考えないざっくり計算で行きます。
マルイ電動ガンでEG1000モーター25000rpm、箱出し適正負荷(ギア比18:1)、秒間15発、これを基本のフルオートサイクルとします。
ハイトルクモーター(4189kv、7.4V、31000rpm)投入→秒間18.6発(1.24倍)
→+ハイスピードギア(15:1)→秒間22.32発(1.2倍)
→+11.1Vリポ仕様(46000rpm)→秒間27.528発(1.48倍)
→+ハイトルクギア(ヘリカル23:1)→秒間14.568発(0.78倍)
→+11.1Vリポ仕様(46000rpm)→秒間21.47発(1.48倍)
ハイスピードタイプ(4730kv、7.4V、35000rpm)投入→秒間21発(1.4倍)
→+ハイスピードギア(15:1)→秒間25.2発(1.2倍)
→+11.1Vリポ仕様(53000rpm)→秒間38.052発(1.51倍)
→+ハイトルクギア(ヘリカル23:1)→秒間16.38発(0.78倍)
→+11.1Vリポ仕様(53000rpm)→秒間24.7338発(1.51倍)
このあたりがざっくりのフルオートサイクル設定レシピとなります。
(必ず誤差はあるので信用はしないでください)
ちなみにハイトルク4189kv、ハイスピード4730kvとは、1Vあたりの回転数の表示で、劣化による性能低下の少ないブラシレスモーターとなってから使われ始めた数値で、どのくらい回るかというモーター選定の基準として使われています。
RCの世界では京商ルマンブラシレス3.5Tで10100kv(7.4V時の回転数74740rpm!)なんてバケモノの様なモーターもあります。
kv値が高ければ良いと言う訳ではなく、kv値が高いと高回転型でトルクが細くなり、低いと低回転型でトルクは太いというイメージです。
実際は回転数×トルクが馬力となるのでトルク数値も知りたいところですが、総合的な性能はESC(ドライバー)との相性に依存するので今回の様なモーター内蔵の小型基板のドライバーではそこまで高出力ではないと思われます。
また、ブラシレスモーターというと進角や立ち上がり、ブースト設定などの調整で性格が豹変しますがこのプラグインブラシレスモーターはそのあたりの設定も皆無ですので本当にまだまだ出始めの一歩目、といったところでしょう。
それでは実際、動画で確認をしてみます。
まずはモーター自体を無負荷で回転させた状態です。
EG1000(ブラシ)モーターが25000rpmに対してプラグインブラシレスモーターは31000rpm。
回転数が1.24倍回っているのにモーターノイズは圧倒的に少なく、モータータワーのベアリング軸受けのほうがよほど鳴いてしまってます。
ブラシモーターはブラシ、コミュテータの接触とメタル軸受けというのもありますが回り始めた時の反転トルク(回転の遠心力で持っている手が引っ張られる感覚)も大きく、直径の太いローターだけに回転時のノイズやジャイロ効果も大きくなっています。
それに対してプラグインブラシレスモーターは2か所のベアリングで支持された細いローターが高速回転しているだけなのでそりゃあ静かですよね。
回転音も高音域に変化していてまるでダイソンの掃除機みたいです。
(ダイソンの掃除機も小型、高kv値のブラシレスモーターで高音域のモーターノイズが特徴的です)
ブラシモーターが出足でもたつく「ウイーーーーン」と回るのに対してブラシレス特有の一気にピーク回転数までと到達するイメージで「ピーーーーーン」という回転音です。
反転トルクも非常に少なく惰性で空転することも少ないので、まるでステッピングモーターの様な回り方です。
これだとオーバーランもしにくいかもしれません。
そして次はEFCSメカボが搭載されたCAR-15で、ロネックスA2モーター+シルバーブラシ仕様の中古品との比較です。
EFCSは電磁ブレーキは使用されないFCUメカボックスなので使用しているロネA2モーターもそこまで傷んでいないものです。
(2022年1月追記:EFCSメカボはフルのみ電磁ブレーキ内蔵でしたが、現在までこのEFCSで使用して問題が出ない事から、電磁ブレーキはギリギリOKのようです。保証はしませんのであしからず)
バッテリーは7.4V2200mAリポ、ストレージを使用
ロネックスA2モーターも頑張りますがトルク、回転数全てにおいてプラグインブラシレスモーター が圧倒!
細ローターに高いエネルギー変換効率と、神速で最高回転まで上がる様はまるでビームのよう!
それにしてもこんな細系ローターでもこのトルク感、、、
細系なので遠心力が弱く反転トルクも低く停止もピッと止まります
まるでステッピングモーターのようですね(笑
トルクはステータ側コイルの巻数ですが、コギング(手で回した時の抵抗)でもある程度は分かります。
プラグインブラシレスはそれなりのコギングですのでそこそこトルクは出ていると思われます。
ただ、ローター直径が細いので=モーターが小型になってしまっています。
(ブラシレスモーターは設計上、平型ケースの一番薄いところがステータ直径になってしまうという問題があり、何とも言えない問題です)
それにしても現在のプラグインブラシレスモーター、「ブラシモーター最強」ともいわれるロネックスA2モーターを軽く上回ってくるあたり、すごい時代です。
トルクが無いという話もありますが、流速や最近の2丁分のスプリングレートで引くような極端なリコイルカスタムなどに使用しなければそこまでトラブルは発生しないと思われます。
という事で、あとは耐久性。
ブラシレスは理論上、軸受け以外の接点がないのでベアリングだけしか劣化しないと言われていた夢のようなモーターですが実際はローターマグネットがネオジ系だと熱に弱いので長期使用でどうなのか、、、
発熱は少なめですが熱源のモーターに基板を搭載しているのも気になります。
なので発熱の状況を見ながら最適な負荷を探り長期使用した時のテストを行いたいと思います。
耐久テストとしたら、、、やはりLMGかな(笑
※高いエネルギー変換効率で熱が出にくいブラシレスモーターですが、逆に熱に弱いのも特徴です。
温度的には70~80度程度で消磁が始まると思われ、かなりまずいので温度管理はしっかりしないとダメです。
これ以上のオーバーヒートでは間違いなくモーター、基板ともにブローする可能性が高いので熱には注意が必要です。
おまけ
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/design-support/e-learning/brushless_motor/chap2/1274498.html