溶接職人JINの「ものづくり」放浪記 -311ページ目

溶接のお仕事③~溶接職人のプライド編~

僕たち、溶接に携わっている職人にとってのプライドってなんだろう?
ってふっと思ったので、書いてみました。



職人の世界だけでなく、仕事をしている人であれば、
自分の仕事に「誇り」をもってやっている方が
ほとんどだと思うのですが、



僕たち溶接職人の「プライド」って考えた時に、
一番最初に思いつくのが、
「溶接のビート」の奇麗さだと思います。




「溶接のビート」とは、
溶接技術の分野において術語として用いられる溶接用語で、
アーク溶接の溶接現象に定義される用語の一つです。
ビードは、1回のパスによって作られた溶接金属
(溶接部の一部で、溶接中に溶融凝固した金属)のことです。
なお、パスとは、各種の溶接継手に沿って行う一回の溶接操作のことです。
(JIS溶接用語 2639)





例えば、ある工場内でこんな会話があったとしましょう。



弟子A「溶接出来ました」
師匠「どれどれ見せてごらん」
弟子A「よろしくお願いします」
師匠「う~ん、まだまだだな!君はまだ職人になって2年くらいだろ。
   引き続き努力しろよ」
弟子A「はい・・・わかりました・・・(シュン)」


弟子B「師匠、溶接できました」
師匠「よし、見せてみろ」
弟子B「しやす!」      
師匠「君は確か10年目だよな。
   ふむ、お~なかなか綺麗に出来でるじゃないか!!」
弟子B「ありがとうございます(ニヤリ)」



てな具合に「溶接が上手に出来る」と言う事は、
「ビードが奇麗に出来る」という事なのです。
上手い溶接、下手な溶接の判断は
この溶接の「ビード」の綺麗さの事を指しているので、
見た目で上手・下手が分かってしまうんですよ。



溶接の技能試験でも、
必ず外観の綺麗さ(ビードの綺麗さ)が評価対象となるくらい、
重要な点で、
僕たち「溶接職人」は、長い年月をかけて
このビードの綺麗さを追求して行っているのです。
ビードが奇麗に出来てたら、それだけ溶接の精度も良い事に
繋がるからです。



僕たちの溶接は、機械が自動でやってくれているわけではなく、
すべて職人の手加工によって行われているので、
ビードが奇麗に出来るようになるまで、個人差はありますが
10年くらいかかると言われているんです。



「10年っすか~」って声が聞こえましたよ。今。



確かに、溶接の技術は
毎日毎日溶接を経験していくしか、上手くなる方法は無いのですが



でもね、そのかわり経験を積めば積む程、
上手くなって行くのが手に取るように分かるんですよ。
自分が成長して行ってる事が、はっきり分かる仕事なんです。


ですから、
見た目で上手いか下手かが一瞬で分かってしまう技術ですので、
お客様から「おたくの溶接は上手いね~」って言われるのが、
この仕事をやってて一番嬉しい事なんです。



だって、身内から「あんたはイイオトコだね~」って
言われるより、説得力があるでしょ(笑)!!




ちなみに、これが噂の「溶接のビード」です。

F1000073.jpg
材料:SUS304(ステンレス)
板圧:2.0t
溶接方法:すみ肉溶接(角継手)



どうです?(分かりづらいかもしれませんが)
なかなか綺麗でしょ?





自分で言っちゃいけないですよね・・・(笑)





そんな僕は、今年で職人11年目になりました!!