ボルはあまりにも無力であった。洞窟の中で静かに暮らす者が、日々魔物や同族と血肉を争っている者達に敵うはずがない。巨人達は本能の赴くままにボルの手足をもぎ、肉を食らった。白い大地が途端に紅く染まる。やがて巨人達はただの肉片と成り果てたボルを捨て、ベストラ達のいる洞窟の方向へと向かって歩き出した。
まだ意識はある。命の水を糧としてきた者はそう簡単に魂を解き放つことができない。それは呪いであった。しかし、その呪いによってもたらされた時間の中で、ボルは自らの家族――オーディン、ヴィリ、ヴェー、そしてベストラを想った。
つづく
