10月1日 | やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

ヤングパーソンクラブ a.k.a. ヤンパクラ

街路樹の根元、道路脇のけちな植え込みから虫の声が聞こえる。

ランニングシャツだけでは少し肌寒くなった10月の町を、チビスケと歩く。どこからともなく漂うキンモクセイの香りが鼻腔をつき、ありもしない青春の面影を思い返される。
この町に越してきて2年、以前と変わらず私の唯一の楽しみは、土曜日の放課後を無邪気に過ごす女子高生達を眺めることである。
大通りにかけられた陸橋の上にモンベルの折り畳みベンチを置き、カップ酒を片手に通学路を眺める。チビスケは一心不乱にササミジャーキーを貪っている。
深夜三時。もちろん、こんな時間に学生など通るはずはない。まれに、彼氏(大学生であろう)の家から髪を濡らして帰る者などがいるが、真っ白な、朝日に照らされた、朝日そのもののような学生達を見ることは叶わない。それでも私は二年間欠かさず、朝焼けが町を染めるまでの六時間、ここでこうして、ずっと通学路を眺めている。過度の飲酒により震える手で6本目のワンカップの蓋を開ける。カポッと小気味よい音とともに清酒の香りが鼻をつく。キンモクセイの香りと混じったそれは、いくぶんか酔いの覚めつつある私を、ゆっくりと酔いへと押し戻す。
チビスケは足元で穏やかに眠っている。
五時。夜が終わる前に、一日が始まる前に、私はアパートへ戻る。
ベッドに横たわり、七本目のワンカップを開ける。
窓の外、朝日に照らされた通学路から、学生達の声が聞こえる。
通学路、学ぶことのない私にとって何と蠱惑的で、甘美なフレーズ、おお、おお、通学路、白い妖精達が、無邪気に羽を広げ舞う、永遠へと続く道!!