ルシファーです。
ライブやらなさすぎて病みオブ病みです。
そんなとき、MOTHER EPを聴いて元気を出してほしいの。
そう、解説シリーズの最後を飾ります。
5曲目「Face」をご紹介いたします。
◼️Face
仮タイトルは「恋のうた」でした。
もちろんコレが念頭にあります。
ぼくが中高生の時分、青春パンクブームなるムーブメントが起こり、この曲はその中でも象徴的なうただったと思います。
ぼくは当時めっちゃ嫌いでした。
嫌いというか、嫌いだというポーズを取っていたに近い。
セックスピストルズ、クラッシュ、ダムド、ディスチャージ、GBH、エクスプロイテッド、カオスUK、DOOM、エクストリームノイズテラーと順当に聴きながら、セクダイやジムズインや666で服を買い、制服は安全ピンと缶バッヂだらけ、ローファーではなくジョージコックスのラバーソールで高校に通っていたぼくは、周囲がモンゴル800やゴーイングステディやガガガSPを指して「パンク」と形容しているのが、超ゆるせなかった。
いつしか、おい!ねもとの前でピストルズのTシャツを着るとうるせーからやめな??なんて言われている他校生や後輩がいたりすることを知り、とても反省しました。
みんな優しくてくれて、気を遣ってくれてありがとうございました。
文化祭やイベントでは、周りのみんなはそれらのコピーが多かったし、カラオケでも誰かしらが歌うような状況だったので、聴けば当時を思い出すのです。
気づけば、大人になればなるほど歌詞にも共感をするところ、というか、振り返ればぼくも周囲と変わらぬ、青春パンク少年だったのだな、と思うようになりました。
当時は自分の内面が人一倍青春パンクそのもの過ぎて、恥ずかしかったんだと思います。
今では、とても好きだし、大切な歌です。
とはいえ、楽曲自体はこれまたスタジオで、なんか新しいのやろう、と言い出しつつ、「Tokyo」と「オモイデ」のコード進行を繋げたものを弾きながら歌ったら、勝手にできました。
青春パンクっぽいなと思いながら、最後はそのままモンパチを歌いました。
それを基に、みんなで構成とアレンジを付けてって、たぶんスタジオ二回くらいでほぼほぼ完成してた気がします。
その段階でなんとなくイメージしてたのはコレです。
たぶんあんま全然似てないけど。
マイケミも、高校の頃知り合った仲間たちとのイベントでコピーしたりしていたので、聴くと青春って感じがします。
歌詞は、これぞという感じにしたくて、「ひみつ」や「P!P!P!」に続く猟奇殺人ものにしようと思いました。
モチーフは二つ。
ひとつめは、とある友人に起きた出来事です。
もうお年頃なので結婚とかどうしようって話が周囲に出がちじゃないですか。
でも友人は同棲中の彼女から出て行けと言われ、どうひよう!!うわゃー!!となっていました。
ぼくはその場に居なかったんだけど、相談に乗った共通の知人が酔っ払ったアタマで一生懸命考え、コンビニに走り、ゼクシィを買ってきて、付録のティファニーの婚姻届でブッ込め作戦を提案。
なぜか友人はそれを承諾し、マジでティファニーの婚姻届に記名捺印をし、彼女に渡しました。
それをきっかけに、友人は同棲中の家から追い出され、路頭に迷うことになりました。
記念に、作戦提案者の酔っ払いの家のトイレの壁には、ティファニーのケースに入った婚姻届が飾られています。
事件当初は、ガチめに額縁をちゃんと買ってこようという話になっていました。
この話を下敷きに、猟奇殺人犯が何を額縁に飾るかを考えたとき、やっぱり顔だろうなと思いました。
そこからがふたつめのモチーフなのですが、
子供の頃に見た怖い夢を連想しました。
ぼくは小学校2年生のとき、公文式に通っていました。
まだ転校してばかりで学校でも馴染めない状況だったので、公文に行っても話す友達はおらず、やだなあと思ってました。
で、あそこにはマルつけとかしてくれるババアが複数人いるのだけど、そのうちの1人のことが、もう、すっごい、だいっ嫌いだった。
薄くなった髪を茶色に脱色して、ソバージュにして膨らませて、ヘアバンドに薄い色のレンズのサングラスに、濃い化粧に派手な色柄モノを着て、だらしない体型の感じの方で。
公文式では英語と算数をやっていた気がするんだけど、ババアはやたらと「リピーター」なる、磁気テープを付けたカードをスリットに入れると、ネイティブな発音が聴けるという機械を買わせようとしてきました。
なんでぼくがそんな妙な機械をかわなければならんだ、と、子供心に思いました。
そうでなくとも、いつもなんかイライラしてる様子だったし、ぶっきらぼうな態度でマルつけしたり直されたりしたし、そんな人から、そんな表情と態度でハナマルをもらっても、ちっとも嬉しくなかったよ。
今思えば、ババアも色々大変だったりしたのだろうけど、子供達にそれは関係ないはずで。
少なくともぼくは本当に会いたくなくて熱出して寝込むくらい嫌いでした。
そんなある日、ババアの顔をナイフで切り取って殺してしまう夢を見ました。
大きな白い皿の上に、大きなピザかお好み焼きのように、ババアの顔を乗せて、ぼくは、どうしよう、殺してしまった、どうしよう、とオロオロ歩き回る夢。
ババアは、顔だけなのに目をあちこちにギョロギョロさせながら、「あははははははははははははははははははははははははははははははひははははひはははひはははははははははひはははははひははははははははははははは」と笑っていて、すごくそれが耳障りで。
そうかと思えば今度はオイオイ泣きだしたりして、しばらくするとまた笑い出す、みたいな動きをしていました。
きもちがわるいですね。
あんな、虫しか殺さないような純粋な子供がそんな夢を見るなんて、そこそこ尋常じゃないストレスだったんだろうなあと思います。
そんな身近に起きた二つのエピソードから、ぼくは大好きな人の美しい顔を切り取って、額縁に飾る話を書こう!と思ったのです。
主人公は、手先がそこそこ器用で、経済的には余裕のある生活をしている男性です。
でも少し変わった人。
パッと見生活感がなくてお洒落で、紳士的に振る舞う割には、しかし端々の所作が雑だったり、些細なことでも激昂することがある感じ。
男性は、とある美しい青年の笑顔に恋をします。
青年は、色白で中性的な雰囲気で、いつも凛とした出で立ちで、恐ろしく端正でシャープな顔立ちをしています。
でも、笑うとその端正さが奇跡のようなバランスを保ったまま崩壊する感じが、すっごい可愛いと男性は思っています。
青年はあまりお金があるほうではないのですが、男性は食事に誘ったり、経済的に援助したりして、ふたりは交際をするようになります。
男性は、ただただ青年の笑顔が見たくて、彼が喜びそうなことなら何でもしました。
でも、見れば見るほど足りなくなってしまい。
じゃあ、どうにかこうにか笑わせるより、笑顔を切り取って保存しておくほうが効率いいじゃん!
と思い立ちます。
そうすれば、青年のつまらない話に相槌を打たなくてもいいし、忙しい合間に時間を合わせる必要もない。
そして男性は、青年を丁寧に殺しました。
ちょうど笑ったように引き攣った顔をした死体の顔を、男性は嬉々として、ケーキにナイフを入れて切り分けるかのごとく、このために用意したメスで、サーっと顔を切り取ります。
色白な男性の顔は血抜きの工程を経て、さらに手術室用の照明の下、ほんとうにメレンゲのように真っ白で、そこに、皮下脂肪に残った血がメスの跡をなぞるストロベリーソースのように、彩りを添えていきます。
設備や器具はキッチリと本格的なものを用意しているのに、工程は行き当たりばったり。
でも、うまくいって男性はとても嬉しそう。
そして切り取った顔を、ホルムアルデヒド水溶液で組織を固定しました。
固定が終わったら、特注の厚みの薄い水槽に、ピッタリと額縁を取り付けたものに、エタノールと顔を入れました。
うまく入って正面から見ると、とても美しい絵画のようで、生きているときよりいっそうかわいいと男性は思いました。
壁に飾ったそれを、毎日毎日眺めてはうっとりして、胸がいっぱいになりました。
でも、だんだん飽きてきました。
それに、やっぱり素人の作品なので、ホルムアルデヒドでは脂肪はうまく固定できていなくて、色も変色してしまい、大好きだった笑顔とは違うモノになっていきました。
水槽からも、溶液がどこからか滴って嫌な匂いを放つようになり、男性のストレスはピークに。
仕方がないので、酸化分解をして生ゴミの日に顔を捨てることにしました。
美しかった顔も、もうただの邪魔なもの。
雑にジョキジョキとハサミである程度細かくして、ゴミ袋にいれて、普通にゴミ捨て場に棄てました。
回収の日、のどかなメロディーを流しながらごみ収集車が近づいてきて、男性は、少しだけあの笑顔を思い出しながら、楽しませてくれた青年に感謝して、ごみ収集車と一緒にメロディーをなぞって鼻歌を歌いながら、あたたかいレモンティーを飲んで、仕事にむかう時間までの間、雑誌の占いコーナーを眺めていました。
みたいなイメージなんですが、似たような事件がほんとに起こったことがあるので世の中おそろしい!
こうしてMOTHER EPは、やっぱりノストラちゃんでした!ダメだこゃ!ズコーッ!
みたいに幕を閉じます。
全部同じ人が歌詞書いてるんだから不思議。
ああ、眠い、おやすみなさい。
