2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※214~257話まで創作妖怪たちが登場します※
あの世までそっと寄り添う「アイカタ」の話
かっぱの仲間を紹介するこのコラムも6周目に突入、またレアで旬な妖怪をあいうえお順で紹介していこう。
ただ今回の主人公は妖怪じゃなくて妖精だ。
かっぱが仲良くしている『アイカタ』ちゃんはその名前の通り、必要なときに、そっと側に寄り添ってくれる妖精。余計なことをしゃべらず、静かに微笑んでいるキュートな存在だ。
かっぱは何かと『アイカタ』ちゃんを呼び出す。
先日は、友達から「大きいケーキと小さいケーキ、好きなほうをあげるよ」と言われて、欲張ったかっぱは大きい箱を抱えて帰って来たのだけれど、半分も食べないうちにギブアップ。
『アイカタ』ちゃんを呼び出して、残りのケーキを食べてもらった。
ついでに、ゲームの相手もお願いし、眠るまで側にいてもらった。
優しくて頼りがいのある『アイカタ』ちゃんだが、来てくれるのは1対1のときだけ。
墓場の肝試し大会には小僧妖怪たちと『アイカタ』ちゃんに声を掛けたんだけれど決局、彼女は姿を見せなかった。
ところがその帰り道、みんなと別れてひとりになったかっぱは急に怖くなってぶるぶる震えてしまった。そこにスッと現れたのが『アイカタ』ちゃん。かっぱの手を取って家まで一緒に歩いてくれたんだ。
でも、『アイカタ』ちゃんの本当のお相手は、死期の近づいたひと。
ひとりであの世に旅立つひとの側に寄り添い、手を握ったり、話をじっと聞いてあげるのが『アイカタ』ちゃんのお役目で、お年寄りのなかにはその存在を知っているひともいる。
あの世への道を一緒に歩いてくれる『アイカタ』ちゃん、寄り添われたひとはみんな心静かに旅立っていくよ。
同じような存在なのに俺はなぜか嫌われ者だって、ぼやいているのが『死神』だ。
だから『アイカタ』ちゃんを見習って、まずその黒い衣装をピンク色に変えてみたらってかっぱは言うんだけど。