『かっぱの妖怪べりまっち』212話「夜の楽屋」 | おばけのブログだってね、

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

人形は夜戦う「夜の楽屋」の話

今から170年ほど前に妖怪カタログ『絵本百物語』が発刊された。

カラー版で、小豆あらいや寝肥、豆狸といったおなじみの妖怪が登場するなか、『夜の楽屋』というページがある。

これは人形浄瑠璃の楽屋で、かたき同士の人形たちが一晩中、喧嘩をしていたという話だ。

人形は魂が宿りやすいというのは本当で、髪の毛が伸びた、表情が変わった、移動していたなんて話は皆さんも耳にしたことがあるはず。

 

いつもライブに来てくれる器用な子が作ってくれたかっぱの人形。

かっぱはとても気に入っていつも持ち歩いていた。

ある時、同じ会場で数日間、続けてライブをすることになった。

その楽屋には元々、テディベアの可愛いぬいぐるみが飾られていて、初日の晩、かっぱは自分の人形をその横にそっと並べて帰った。

翌日、楽屋に入ると、棚の上に置いたはずのかっぱ人形はテーブルの上に、そしてテディベアは床に落ちていた。腕はぶらぶらで首も少し曲がっている。こんなだったかな?

テディベアとかっぱ人形をまた棚に仲良く並べて、かっぱはステージに出た。

その晩の帰宅途中、かっぱ人形を置いてきたことが気になって楽屋に引き返した。すると部屋の中から、どたんばたん、と音がする。

ドアの隙間からのぞいてびっくり。

かっぱ人形とテディベアが相撲を取っていた。

クマのほうが、参った降参だと言っているのに、かっぱ人形は、まだまだもう一番、としつこい。

これはおもしろい。

翌日は、大小取り混ぜたテディベアを持ち込んで並べて帰り、またしても夜中にのぞきに戻ると、果たして一番大きなクマのぬいぐるみに、かっぱ人形が吊り上げられている。このまま寄り切りか、と思った瞬間、テディベアは後ろに投げ飛ばされた。さすが相撲の強さは人形であっても変わらない。

次の日は五月人形を持ち込んだ。兜付きの金太郎は小さいながら筋骨隆々で鋭い目つきだ。

『夜の楽屋』の取り組み、金太郎はさすがに強く、ついにかっぱ人形はテーブルの土俵から転落した。

扉の隙間から最後の取り組みを見守って、かっぱはそっと『夜の楽屋』を後にした。

翌朝、楽屋に戻ってまたびっくり。

お尻に大きな穴の開いた金太郎人形が床に転がり、かっぱ人形がその上にまたがっていたのだ。