『かっぱの妖怪べりまっち』165話「もんどり下駄」その後の話 | おばけのブログだってね、

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※131~174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※

 

誰でもヒーローになれる「もんどり下駄」その後の話

大雄山の天狗から急ぎの連絡が入った。修行中の小天狗が山から逃げ出したという。

にんげんで言えば小学生くらいだろうか、なまけてばかりいるので叱ったら膨れ面をして姿をくらましたらしい。最近は叱り方が難しいと嘆く大天狗。

逃げた小天狗がふもとの街でにんげんの子供たちと遊んでいるのは判っているが、大天狗が乗り出すと大ごとになるのでここはかっぱに頼むと言う。

小天狗はすばしこい。そこで『もんどり下駄』が手渡された。

『もんどり下駄』はずっと昔、天狗の手元から盗まれたのだが、下駄が盗人を地面に叩き付けて一件落着。以来、この名前で呼ばれるようになった。

かっぱは心のなかで小躍りして下駄を受け取った。しめしめ、実は一度履いてみたかったんだ。

小天狗の捜索は後回しにして、まずはバレエの稽古に行こう。

最初は稽古場で下駄を履くかっぱに先生も渋い顔だったが、天井を突き破るほどのジャンプを見せたところクラスのみんなは大絶賛。

レッスンの帰り道、今度はタップダンサーの友達から連絡が入った。これから大事な舞台のオーディションがあると言う。かっぱは『もんどり下駄』を持って友達の元に駆けつけた。

案の定、下駄タップで友達は断トツの合格。なんて役に立つ下駄だ!

夕方になり、かっぱは『もんどり下駄』と共にディスコに直行。羽が生えたようにジャンプをキメるかっぱに会場は大騒ぎ。

ところがそこへ大天狗が乗り込んできた。真っ赤な顔で頭から湯気を出して怒る天狗の恐ろしい形相に、フロアのみんなは全員、失神してしまった。

結局、『もんどり下駄』は取り上げられて、かっぱは大目玉を喰らい、逃走した小天狗はと言うと、お腹をすかせてとぼとぼ帰ってきたらしい。終わり良ければ全て良しだね。

そしてかっぱは今、どうしたらあの下駄をまた借りられるか策を練っているところです。