『かっぱの妖怪べりまっち』114話「震々(ぶるぶる)」 | おばけのブログだってね、

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

背中をゾクッとさせて喜ばれる「震々(ぶるぶる)」の話

『震々(ぶるぶる)』は、人の襟足から入り込んで背中をゾクッとさせる妖怪。取り憑かれると震えが止まらなくなる。

 

妖怪は真夏が旬だなんてとんだ誤解だ。

夏場の屋外ライブは命懸け。雪おんなはドロドロ、かっぱはカラカラになり、いつ溶けるかいつ干涸びるかと思いながら歌っている。

かっぱたちが命を落とさずに毎年夏を乗り切っているのもひとえに『ぶるぶる』のおかげだ。

妖怪ライブの時にはステージ袖に待機してもらい、暑くてもうダメってときに背中に飛びついてもらう。すると気味が悪いほど背筋が冷たくなり、体温がグッと下がる。

だから真夏のライブでは、かっぱの歌もやたらとビブラートが掛かる。

 

『ぶるぶる』は元々、雪おんなの幼なじみで、震え上がらせたり凍らせたりと共にさんざん悪さを働いてきたそうだ。そんな『ぶるぶる』も、最近は自分の特技を活かせるよう取り憑く相手を選んでいる。

急な発熱に苦しむ子供たちのパジャマに滑り込んで、若いママ達に喜ばれていると自慢していたし、先日は火事場で逃げ遅れた人の襟首に飛び込んで体を冷やし、救出に一役買ったらしい。この話は前回紹介した『火消し婆』が教えてくれた。

妖怪も最近は、ひとに喜ばれると嬉しいことがわかってきたようだ。

もちろん昔ながらの素朴な化けもまだまだ健在。来週はそんな妖怪を紹介します。