『かっぱの妖怪べりまっち』81話「らく餓鬼」 | おばけのブログだってね、

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The 26th Anniversary of Formation

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

今後、随時こちらに引っ越して参りますので、ご愛読のほどよろしくお願いします。

しばらくの間、オリジナル妖怪たちが登場します。

 

今夜も会いたい『らく餓鬼』の話

東京・葛飾には多くの工場や中小企業が軒を並べるが、そのなかに妖怪と縁の深い工場があった。

 

『らく餓鬼』という妖怪がいる。名前の通り、壁やアスファルト道路に描かれたチョーク絵から抜け出た妖怪だ。

日暮れになるとふわりと出てきて、家に帰らない子供と一緒に遊ぶ。子供が帰ったあとはひとりで遊び、朝日とともに消えてなくなる、一夜限りの化けだ。

この『らく餓鬼』、葛飾のとある工場で製造されたチョークで描かれたときにのみ出現する。

かっぱもここのチョークを手に入れて、鬼ごっこの人数合わせや、スイカ畑の泥棒警備に『らく餓鬼』を駆り出した。

誰とでも仲良くなって文句も言わずに付き合ってくれる最高にフレンドリーな妖怪だから、『らく餓鬼』と遊んでいた子供のなかには、大人になってからも呼び出して、朝まで付き合わせているひともいるけれど、こうなるともう親友みたいなものだ。

ところが、そのチョーク工場が突然、葛飾から姿を消した。

チョークの残りがないと切羽詰まった様子で問い合わせも来るが、残念ながら現在、チョークの入手先はかっぱにもわからない。