人の迷惑顧みずお邪魔し続けております、
『深川お化け縁日2025 秋の陣』
来月11/16(日)に開催となります。
妖怪プロジェクト名義 通算7thアルバム
『恐怖 ! 猫かぼちゃ』
2024年12月1日発売 全12曲
¥2000(税込) 送料別途 ¥200
16年振りの新作かつ最高傑作が完成しました。
ぜひお聴きください。
■イベント情報
『深川お化け縁日2025 秋の陣』
11/16(日) 資料館通り商店街にて 11:00~16:00(小雨決行)
妖怪プロジェクト ストリートライブ
デイリーヤマザキ白河店さん前にて
① 13:00~ ② 14:00~ ③ 15:00~
人の迷惑顧みずお邪魔し続けております、
『深川お化け縁日2025 秋の陣』
来月11/16(日)に開催となります。
2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※214~257話までオリジナル妖怪たちが登場します※
じっとりと取り憑く「生皮鬼」の話
あなたの周りにいませんか。
雨の季節になると体調が悪いからと湿った部屋に閉じこもり、風呂にも入らず、ずっと生臭い。
それこそ、今日、紹介する妖怪に取り憑かれた気の毒なひとです。
ひとの体表面に張り付く『生皮鬼』は、隙あらばからだを乗っ取ろうと企む不気味な妖怪だ。湿気を好み、非常に生臭い。
元々は生きたまま剥がされた動物、もしくはにんげんの皮だったらしく、いつも骨や肉のあるからだを探し求めている。
普段は暗く湿った場所に身を潜め、暗躍の機会を虎視眈々と待つ。
と、そのように紹介するとなんとも奇々怪々だが、その実は名前の通り、薄皮1枚のたいそう貧弱な妖怪なのだ。
まず、皮だけに乾燥に弱い。
太陽を浴びればしなび果て、真冬のカラカラ空気のもとでは干したミカンのスジみたいに縮んでしまう。
大雨なら流されて、強風では真っ先に吹き飛ぶ。
ジトジトした静かな雨だけが『生皮鬼』が唯一、本領発揮できる空模様なのだ。
その時期になると、ちょうど良い感じに潤いをたくわえた『生皮鬼』は、おのれの皮を緩やかに伸び縮みさせる。
そして湿ったひとに取り憑き、そのひとの形に自分の皮を伸縮させ、ぴたりと一体化してしまう。
取り憑かれると自分でも生臭いし、周囲も気がつく。
しかしなかには風呂嫌いだとか、クサいのがまったく気にならない人もいて、そうなるといつまでも『生皮鬼』をかぶったまま歩き回ることになる。
すると次第に『生皮鬼』に侵食されて、他人との接触もなくなり、自分が実体のない存在になったように薄暗い湿った部屋でぼんやりと毎日を生きることになる。
そのまま何年も小さな部屋に閉じこもって暮らす場合もあり、かっぱもその家族が困っている様子を見ると、少し気の毒になる。
『生皮鬼』を退散させるには、屋外で活発に遊ぶか、毎日きちんとお風呂に入ってさっぱりするのが手っ取り早い方法だ。
周囲に取り憑かれている様子のひとがいたら、ぜひ太陽のもとに引っ張り出してあげてください。
2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※214~257話までオリジナル妖怪たちが登場します※
朗々と読み上げる「読経布団」の話
東京は品川の、とあるお寺での話。
ずっと昔のこと、当時の住職が夜中に廊下を歩いていると、明かりの消えた本堂から読経が聞こえてきた。どこか聞き覚えのある声に、住職はしばらくたたずんで耳を傾けた。
あれは亡くなった先代の声だ。
檀家さんからも評判だった朗々としたお経、間違いない。
最後まで読み終えたのを合図に本堂に入ってみたが、もちろん人影はなかった。
夜中のお経は翌晩も、その次の晩も続いた。
住職は声の主を突き止めようと、その晩は本堂に座って声を待った。
深夜も回り、少しうとうとした時のこと、あの読経が始まった。
なんと、その声は自分が座っている座布団から聞こえてくる。
懐かしい先代の声か、また少し自分にも似ているような気がする。
代々、本堂で住職のお尻に敷かれていたその座布団は年代もので、すっかり色褪せ、端から綿がのぞいていたが、住職はそれを『読経布団』と呼び、これ以上傷まないよう現役を引退させ、大切に保管した。
本堂から引き上げたとたんに座布団の読経は止んだが、話を聞きつけた檀家が面白がって見物に押し掛けた。
年月が経ち、やがてもうあの座布団を思い出す者はいなくなった。
人の真似を得意とする化けは多い。
この『読経布団』もそうだ。
かっぱは、かっぱのじいちゃんからこの話を聞いた。
まだ子供だったじいちゃんも、座布団の見物に出かけたそうだ。
じいちゃんは化けのくせによくお寺に行き、住職には可愛がられたらしい。
それから何代も住職が代わり、令和の世の中になる。
今の住職は、二言目にはお布施お布施の、いまどきの坊さんだ。
かっぱもよく知っているが、趣味はお酒にパチンコ、お経は噛み噛みで檀家もため息。
ところが先日の大施餓鬼では、びっくりするほど朗々とした声で立派にお経を読み上げて、集まった檀家衆がざわつくほど見事だった。
ひょっとして『読経布団』を敷いていたのか。
それとも、精進してお経の練習をしたのか。
まあ、座布団をすり替えてみればすぐに判ることだ。