おばけのブログだってね、

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The 26th Anniversary of Formation

妖怪プロジェクト名義 通算7thアルバム


『恐怖 ! 猫かぼちゃ』


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2024年12月1日発売 全12曲


¥2000(税込)  送料別途 ¥200


16年振りの新作かつ最高傑作が完成しました。


ぜひお聴きください。



■イベント情報

※決まり次第お知らせします※


■キノコソング新曲『炎のカエンタケ』

炎のカエンタケ(YouTubeで観る)

■お風呂ぴかぴか『垢なめさんにご用心』

垢なめさんにご用心(YouTubeで観る)

■あの世へひとっ飛び♪『浮かれ小町がお連れします』

浮かれ小町がお連れします(YouTubeで観る)

■アマビコ、アマビエに続く第三の予言獣『アリエ』

アリエ(YouTubeで観る)

■キノコソング『食べられません』

食べられません(YouTubeで観る)

■ステイ・ホームの曲『ざしきわらしのお願い』

ざしきわらしのお願い(YouTubeで観る)

■『かっぱもやってるくねくね体操』

かっぱもやってるくねくね体操(YouTubeで観る)

■キノコソング『小さな宇宙人』

小さな宇宙人(YouTubeで観る)

■キノコソング『胞子を飛ばせ』

胞子を飛ばせ(YouTubeで観る)

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※214~257話までオリジナル妖怪たちが登場します※

 

夏の風物詩化け「ちりんどろん」の話

空き家が増えてきた。

主を失ったその軒先から、チリンチリンと風鈴の音が路地裏まで聞こえてくる。

涼しげで少し哀しげな美しい響きに、空き家の裏に住む高田さんはその音を聞くともなしに朝夕と耳で追いかけていた。

ある日、いよいよ空き家が取り壊されることを聞き、高田さんはあの風鈴を譲ってもらおうと思い立つ。

解体屋さんの重機が入る前日、錆び付いた門をそっと開き、夏草が生い茂る庭に回った。きっと縁側に風鈴があるはずだ。

小さな空き家の周囲をぐるりと歩いてみたが、それらしきものは見つからなかった。

秋風吹く頃、高田さんは再びあの風鈴の音を聞いた。すっかり更地となったあの空き家跡でのことだった。夕暮れの中をチリンチリンと、まるで誰かを呼ぶように響くかすかな音色に、高田さんは少し背筋が寒くなったと言う。

 

風鈴の化け『ちりんどろん』は、他でも目撃されている。

タカオくんは都内に中古住宅を購入した。それは築60年の平屋で、DIYの心得のある若いタカオくんは傷んだ箇所を自分で修理し、やがて平屋はこざっばりとしたオシャレな家に生まれ変わった。

夏の夜、タカオくんがダイニング兼リビングでくつろいでいると、チリンチリンと涼やかな風鈴の音が聞こえてきた。お隣かしら?とも思ったがどうも室内で鳴っているようだ。

平家の以前の持ち主であるお婆さんにそんな話をしたところ、夏だけのことだから、と笑った。

その後、夏が来るたびに姿のない風鈴の音は、小さな平屋に季節の訪れを告げている。

 

よしこさんは、江戸時代からこの場所に住む海苔問屋の跡継ぎ娘だ。

今でこそ家族経営だが、昔はたくさんの人を雇って景気も良く、手広く商売をしていたんだと、よしこさんのおじいちゃんは事或るごとに話して聞かせてくれた。

まだガラスが珍しかった頃、納戸の奥の木箱から年代物の風鈴を出してきて軒下に吊るすのは、いつもおじいちゃんの仕事だった。

小さい頃のよしこさんには触らせてもくれなかったそうだ。

その夏はおじいちゃんの初盆だった。

お盆の最後の日、夕暮れの日差しのなかをチリンチリンと聞き覚えのある音が家のなかに響き、家族みんながそれを聞いた。

その後、あらためて確認したが、風鈴は納戸にしまわれたままだったと言う。

 

この夏、あなたもどこかで『ちりんどろん』を聴いたかもね。

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※214~257話までオリジナル妖怪たちが登場します※

 

幻の青い「タラレバ蟹」の話

北海道の友達から冷凍のカニが届いた。

かっぱは、青いカニが紛れ込んでいないかと箱をひっくり返して調べたが、出てきたのはよく太った赤いのばかりだった。

 

少し昔の話。

北海道の海沿いにあるその村はカニ漁で生計を立てていた。

網元の息子である源太郎さんは若いときに医学を志し、村でただひとり東京の大学まで行った人で、誰もが源太郎さんには一目置いていた。

何か判らないことや悩み事があると、源太郎さんに訊きに行く。

源太郎さんもあれやこれやと思いつくことをせっせと答えていた。

しかし、相談が一段落すると、今度は相談に出向いた村人が、源太郎さんの愚痴を聞く番となる。

都会で体を壊して帰ってきた源太郎さんは医者になる夢も果たせず、網元の息子ながら船に乗ることも出来ず、青白い顔で海を眺めながら不本意な日々を過ごしていた。

東京に残っていたら、、今頃は世の中のお役に立てたのですが…

せめて体の調子が良ければ、、オヤジの船を継げるのですがね…

ため息と一緒に出て来るのは、たられば話。

みんな、源太郎さんを気の毒に思ったが、あまりに後ろ向きなことばかり口にするで、タラレバ先生、と揶揄する者もいた。

 

源太郎さんが亡くなってからしばらくしてのこと。

ひとりの村の子供が風邪をひいたのだが、いつまでたっても咳が止まらず、そのうち食事も喉を通らなくなり寝込んでしまった。

遠くからお医者さんに来てもらったが、薬も効かない。

そんなある日のこと、漁港では荷揚げのなかに見たことのないカニがいると、ちょっとした騒ぎになる。

そのカニは青白く光り、腹のあたりの模様はまるで人の顔のようだ。

これは市場には出せないと漁師のひとりが家に持ち帰った。

その晩のこと、その漁師の夢枕に青いカニが現れた。

青いカニには人間の顔が付いていて、自分はひとの役に立ちたかったと語り、きっと治るから自分を病気の子供に食べさせてやってくれと言う。

その顔はまさに、源太郎、あのタラレバ先生のものだった。

飛び起きた漁師は夜が明けるのを待たず、生け簀にいる青いカニをつかんで寝込んでいた子供の家に走った。

 

その村では、時々、荷揚げに紛れ込む青いカニを『タラレバ蟹』と呼んで、食卓にあげている。これが不思議と病気に効くと言うのだが、現地の人以外、口にしたことはないので確かなことは判らない。

かっぱも一度でいいから、そのカニを拝んでみたいと思っている。

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※214~257話までオリジナル妖怪たちが登場します※

 

あの世への水先案内「空死人合唱隊(そらしどがっしょうたい)」の話

友達のA子ちゃんはいつも夢見がちだった。

「私はいつか天使に会えると思うの」そう小声で言う。

へーすごいね、と適当に相づちを打ちつつ、かっぱはA子ちゃんの尻こだまを狙ったりしていた。

ある日のこと、A子ちゃんは目をまん丸にしてかっぱに言った。

「昨日、天使がたくさんやってきて、歌を聴かせてくれたのよ」

ただ、その天使の歌がおかしくて、♪ソー、とひとつの音を全員で出していたそうだ。

それじゃ発声練習じゃん、とかっぱはからかったが、A子ちゃんはふっくらしたほっぺを紅潮させ、ニコニコしていた。

それから数ヶ月して、A子ちゃんからまた報告があった。

天使たちが再び訪れて、全員で声を合わせて♪ラー、と歌ったと言う。

その声が高くて笑っちゃうと嬉しそうだったが、そのときのA子ちゃんは顔色も悪く、手首も折れそうなほど痩せていた。

かっぱもそんなA子ちゃんの尻こだまはさすがに遠慮した。

次に連絡が来たのはすっかり季節が変わった頃だったと思う。

体調を崩し入院していたA子ちゃんから、またあの天使たちが現れたと連絡がきた。

ベッドの枕元を漂いながら、♪シー、と声を合わせて歌うのだが、

「その声はアタマが割れそうなくらい高くて、嬉しいけれど少し怖かった」と話すA子ちゃん。その弱々しい声に、かっぱは予感がした。

翌日、かっぱはA子ちゃんの病院に向かった。

廊下を歩いていると、向こうから、この世のものとは思えない声が聞こえてきた。

♪ドー、というその声はたぶん、にんげんの耳では判別できない高さだろう。かっぱは耳を押さえながらA子ちゃんの病室に走ったが、すでに事切れたA子ちゃんを囲んで、小さな天使たちが叫び声をあげていた。

 

『空死人合唱隊(そらしどがっしょうたい)』という呼び名があることを知ったのはその後だ。

ソラシド、と音階を踏みながら死期を告げ、空から死人を迎えに来る天使たち。

『空死人合唱隊』に手をとられ、からだからそっと離れていく魂は、可愛いらしい天使と一緒で幸せそうだ。

にんげんは生まれる前に自分でだいたいの寿命を設定するが、その際、オプションであの世への水先案内人も選べるらしい。

定番の死神を選ぶ人もいれば、先に亡くなった親戚に頼む場合も多い。

この『空死人合唱隊』も選択肢のひとつ。

さて、妖怪が消えるときは誰が迎えにくるのか。

かっぱはまだ知らない。その時が来たら詳細にレポートしよう。