2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※131~174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※
ワイルドなバンド仲間「ロックンロール首」その後の話
河童仲間で結成したロックバンド"ザ・ディッシュ"でかっぱが歌っていた頃、女の子に騒がれていたのが『ロックンロール首』が集まったバンド"ハイネックス"だった。
にんげんにとっておかしな様子であるほど化けの世界ではモテモテ。ロックのリズムで頭を振っているうちに際限なく首が伸びてしまった妖怪『ロックンロール首』たちのカッコ良さに、ライブ会場では化け女子の黄色い声が飛びまくる。
かっぱもなんとかモテたくて、歌いながら腕を伸ばして見せたが反応はいまいちだった。
そんな"ハイネックス"だが、その人気とは裏腹にライブハウスからは問題視されていた。なにしろ、首を振り回してステージライトは割るし、天井に穴を開けるし、興奮したボーカルの伸之介くんが頭突きでお客さんをなぎ倒し、挙げ句にはメンバー同士の首が絡まって窒息、救急車騒ぎになったからだ。
でも、かっぱはそんなワイルドさがうらやましかった。
かっぱなんてせいぜい、頭の皿の水をステージにこぼして叱られるくらいだったからね。
だからライブハウスのスタッフさんが"ハイネックス"を悪く言うのを聞いて黙っていられなかった。
"ハイネックス"だけを悪者に出来ない、そう思ったかっぱは、ライブ中にメンバーと相撲をとって会場に投げ飛ばし、投げ込まれたメンバーは手当たり次第にお客さんの尻こだまを抜き、かっぱも音響、照明スタッフさんの尻こだまを頂戴して、会場は大混乱の末、河童類以外は全員失神という前代未聞の珍事件を巻き起こした。
当然、"ザ・ディッシュ"も大目玉を食らうが、この一件で"ハイネックス"とは認め合う仲になったんだ。
数年前、ボーカルの伸之介くんが餅をつまらせて喉を痛めてから"ハイネックス"は今日まで活動中止状態。
かっぱを含め、当時のファンもみんな、"ハイネックス"が復活するのを首を長くして待っているところだ。