おばけのブログだってね、

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The 25th Anniversary of Formation


■イベント情報

「深川お化け縁日2024秋の陣」


10/6(日) 資料館通り商店街(白河三好3丁目付近にて)


11:00~16:00 小雨決行


妖怪プロジェクト ストリートライブ


デイリーヤマザキ 白河店前にて


① 13:00 ② 14:00 ③ 15:00


14:00の回に、KADOKAWA「怪と幽」から生まれた怪しいヒーロー、「カイトユウマン」が遊びに来ます(歌のゲスト: さたなき五郎さん)。


 


 


■キノコソング新曲『炎のカエンタケ』

炎のカエンタケ(YouTubeで観る)

■お風呂ぴかぴか『垢なめさんにご用心』

垢なめさんにご用心(YouTubeで観る)

■あの世へひとっ飛び♪『浮かれ小町がお連れします』

浮かれ小町がお連れします(YouTubeで観る)

■アマビコ、アマビエに続く第三の予言獣『アリエ』

アリエ(YouTubeで観る)

■キノコソング『食べられません』

食べられません(YouTubeで観る)

■ステイ・ホームの曲『ざしきわらしのお願い』

ざしきわらしのお願い(YouTubeで観る)

■『かっぱもやってるくねくね体操』

かっぱもやってるくねくね体操(YouTubeで観る)

■キノコソング『小さな宇宙人』

小さな宇宙人(YouTubeで観る)

■キノコソング『胞子を飛ばせ』

胞子を飛ばせ(YouTubeで観る)

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

山の守り神「狗賓(ぐひん)」の話

『木の子』と過ごした吉野の森を後にして、かっぱは帰路に着いた。

途中、長野県飯田の山中でたくさんのキノコを発見し、夢中になって採取していると後ろから「採っちゃだめですよ!」という声がする。

振り向くと、天狗のような犬がいた。

 

かっぱは初めて見たのだが、これは天狗の一種で『狗賓(ぐひん)』と言うらしい。天狗の中でも下っ端で、大天狗の手伝いや、山の保全と管理を担当している。

「山を荒らさないで!」とワンワン鼻息も荒い。

少しうるさいので、拾った木の棒を遠くに投げてみる。案の定、『狗賓(ぐひん)』は棒を追いかけて猛烈な勢いで走って行った。

かっぱがたき火を起こして採取したキノコを焼いていると、棒をくわえて戻ってきた『狗賓(ぐひん)』は、香ばしい匂いにダラダラよだれを垂らしている。

キノコパーティの始まりだ。

美味しいキノコだけでなく、笑いタケ、踊りタケも焼いて食べさせると、『狗賓(ぐひん)』は笑いながら山肌を転がりふざけ始めた。

あちこちに穴を掘り、そこらへんの木々におしっこを掛け回る様子に、ちょっとやりすぎだなと思ったがかっぱは笑って見ていた。

すると突然、空が真っ暗になり、かっぱと『狗賓(ぐひん)』はつむじ風にすっ飛ばされた。

大天狗のお出ましだ。

「山を荒らしてどうする!お前の好きな五平餅もしばらくお預けだ」

山が揺れるほどの声で大天狗が怒鳴ると、しっぽをお腹に隠してぶるぶる震えていた『狗賓(ぐひん)』は、ヒーンと哀しそうに啼いた。

かっぱはうなだれる『狗賓(ぐひん)』の肩をポンと叩き、そっとその場を去った。

 

きっと今頃は大天狗の許しをもらい、好物の五平餅を頬張っているだろう。そう思いたい。

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

吉野の森を走り回る妖精「木の子」の話

かっぱはキノコが好きだ。

キノコに心を奪われだした頃、『木の子』という妖怪の話を聞いた。

きっとキノコの形をしているに違いない。

 

かっぱは『木の子』が棲むという奈良県吉野の山を訪ねた。

ヒノキの森は心地よい香りに満ちて、かっぱはうっとりしながら登って行く。

途中でお昼にしようと腰をおろしたところ、後ろでカサカサと何者かの気配がする。食べかけのお弁当を足下に置いて、音のする方に行ってみたが何も見つからない。

ところが戻ると、お弁当がない。

お手製のカッパ巻きはまだ半分以上あったのに。

どこからか、クスクスと笑い声が聴こえる。『木の子』だろうか。

歩き疲れたかっぱはその場所で横になり、少し昼寝をすることにした。

うとうとすると、すぐ近くで笑い声や歩き回る音がする。

かっぱの皿を軽く叩いたり、引っ張ったりしている。

気がつくと、かっぱはたくさんの『木の子』に囲まれていた。

残念ながらキノコ型ではなく、森の妖精といった格好の小さな子供たちだった。代わるがわる、かっぱの顔をのぞきこんでは笑っている。

かっぱがびょんと飛び起きると、『木の子』たちは笑い声を上げながら周囲に逃げて行く。かっぱが走ると『木の子』も後ろから走る。

あっという間に仲良しになった。

かっぱがキノコの話をすると、『木の子』たちはキノコがたくさん生えている場所に連れて行ってくれた。

これは美味しいキノコ、これは笑いたくなるキノコ、これは踊りが止まらないキノコ、これは死んじゃうキノコ、と、さすがによく知っている。

かっぱと『木の子』たちはそれから、踊ったり歌ったりして遊んだ。夜や昼が何回来たかも覚えていない。

かっぱもここに棲めばいいのにと『木の子』たちは言う。都会育ちだからコンビニが近くにないとダメなんだよね、とかっぱが笑うと『木の子』たちは寂しそうな顔をした。

するとひとりの『木の子』が、これを食べてごらんと小さなキノコを差し出した。口にしたとたん、かっぱは気を失った。

 

気がつくと、かっぱはヒノキの森のなかで横たわっていた。それはここを訪ねたときに昼寝をした場所だった。

傍らには空っぽのお弁当箱と、そしてかっぱの片手にはかじりかけのキノコがあった。

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

絵に宿る心を伝えたい「画霊」の話

「かっぱちゃん、昨日の夜はどこに行ったの?」

近所のお姉さんにそう訊かれて驚いた。

昨晩はずっと家にいたよ、と答えると、

「ウソだ、通りすがったのに無視したでしょ」とちょっと怒っている。

さらに角の酒屋のおばさんまでも、

昨晩はどうしたの?と声を掛けてきた。

同じ質問を何度も受け、町中の人から、

「まるで夢遊病者みたいだったけれど大丈夫?」と心配された。

おかしい、これは誰かいる。

 

町が寝静まる頃、酒屋の物陰から自分にそっくりな誰かを待った。

やがて全身緑色の生き物が街灯に照らされてフラフラ登場。

確かにそっくりだ、少し漫画っぽいけれど自分自身に間違いない。

気づくと向こうからこちらから続々と偽かっぱが出現し、目の前で同じ多数の緑色がうろつくという異常事態となった。

さすがのかっぱも軽い恐怖を覚えて立ちすくむ。

そんな本家には目もくれず、緑色達はただ歩き回りやがてどこかへ消えて行った。

 

今夜は話しかけて事情を聞き出そう、そう決意して再び夜中の街角にたたずんでいると、自分に似た緑色が一匹二匹と姿を見せ始めた。

と、そのとき、ぽつり。

あ、雨だと天を見上げたその向こうで、偽かっぱが一匹すっと消えた。

それに続き、集まりだした偽物があれよあれよと雨に溶けていった。

 

この謎が解けたのは数年後のことだった。

このコラムのイラストを描いている天狗さんから、古いスケッチブックを整理していたら、かっぱのイラストだけが消えていたという話を聞いたのだ。

そうか、あの偽かっぱは『画霊』だったか。

『画霊』とは、絵から抜け出た人物画がフラフラ歩き回る妖怪で、絵を大切に扱っていないと抗議の意味で抜け出てくるそうだ。

水性の画材で描いたから雨で消えちゃったんだなと天狗画伯は残念そうだったが、いや水性だから大ごとにならずに済んだと本家かっぱは胸をなでおろした。