パンドラの匣 / Pierrot | 夕暮れビジュアル鑑賞会

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 復活したブログ2発目は、最近もってなかったDVD買い漁ってるPierrotです。書き溜めたけど投稿忘れそうなんで連発で(笑)。

 一応『気狂いピエロ』という作品がインディーズの最初のCDですが、当時キリトはギター、TAKEOとアイジは未加入。今作より不動の現メンバーになり、産み落とされた最初の作品。

 

 

 

『パンドラの匣』

 

01.自殺の理由 ★★★

 キリト作曲。神秘的なシンセと語りが重なる、いかにもな90年代V系スタイルのSEで幕開け。実際の曲に入るとアップテンポの3拍子、疾走感とクラシカルなフレーズが混在する奇妙なイントロ。タイトルも歌詞も重いですが、メロは意外にも流れるようで聴きやすく、サビではワルツに戻り哀愁ある旋律。既に違和感なくPIERROT

 

02.青い空の下 ★★★

 キリト作曲。潤とKOHTAによるヘヴィなバッキングと、変則的でリズミカルなドラムが印象的。選民思想を思わせる風刺的な歌詞と鬼気迫るメロディも良い。アイジは今と変わらぬエフェクトマスターっぷり。不気味な重厚感と疾走感にパンチも効いた曲調がたまらない。

 

03.利己的な遺伝子 ★★

 アイジ作曲。これまた変則的なリズムにクリアトーンのカッティングが妖しく絡む。今度は潤がお得意のギターシンセ、滴る水のような音色に耳を奪われる。結構明るめとはいえ、キャッチーではない独特のキリトメロディ。穏やかな空気から切迫感へ、最後は少しを狂気を混ぜる展開力は見事。後の「不謹慎な恋」を思わせるけど、あちらほどの洗礼さはない。

 

04.KEY WORD ★★★☆

 アイジ作曲。こちらも変則リズム+カッティングながら、バグパイプを思わせるギターシンセで歌モノ要素強め。シアトリカルな曲調に色気のある歌詞がハマり、サビのメロディは派手では無いけれど中毒性満点。中期まではライブ定番曲で、キリトとアイジの絡みが印象的。

 

05.ドラキュラ ★★☆

 キリト作曲。なかなかのタイトルですが、曲はシリアス。長めのSEからシャウトを炸裂させ、複雑なリズムが耳を惹く。重苦しい展開からBメロで疾走感を増し、サビでは王道ながら強烈な哀愁疾走!転調具合も気持ちが良く、彼らの優れたアレンジセンスが垣間見れる。サビ意外が好きではないのであまり聴かないですが、解散までライブでやり続けていたほど人気があるのも頷ける。

 

06.満月に照らされた最後の言葉 ★★★★

 アイジ・潤の共作。こちらは頭から哀愁感あるコードカッティングで疾走する王道V系。大人気曲でライブ定番。王道ながらしつこさのない、良質なメロディの宝庫。シンプルにカッコいい。歌詞も切ない。現メンバーで最初に作った曲だとか。

 

07.Far East~大陸に向かって~ ★☆

 キリト作曲。まるで映画音楽のような荘厳なシンセに、琴の音色が重なるバラード。リズムの類はなく、キリトも大仰に歌い上げる。ただしあまりハッキリとしたメロディでもなく冗長で、印象には抜群に残りづらい(笑)。金管系の可愛らしい音色もポイント、雰囲気は良い。

 

08.メギドの丘 ★★★

 キリト作曲。そう、あの丘です。V系の中でも数々登場する丘の中でも一、二を争う有名な丘です。前曲から雰囲気を残しつつバンドサウンドが寂寞感を強めるミディアム曲。聖書における聖戦の舞台となった丘で待つ「君」に、辿り着けず朽ちる「僕」のストーリー。詳細なことは分かりませんが、胸を打つ言葉選びに切なくなる。曲もこれまた冗長ながら悪くないメロディ。

 

09.SEPIA ★★★★☆

 アイジ作曲。またまた王道の哀愁疾走V系に戻り救われた気分。幾分ポップで瑞々しさもあるけれど、とにかく歌詞からメロディから切ない。リズム隊の躍動感が堪らない。ラストの畳み掛ける哀愁メロディ素晴らしいし、エンディングのSEも良い。

 「積み重ねた思いがたとえ偽りだったとしても」「いつの日かこれで良かったと何気無く想うのだろう」…アルバムの流れとして聴いても切ないけれど、結果的に解散前演奏された最後の楽曲となったことで、皮肉にも壮大なドラマが生み出された曲。

 

10.「天と地」と「0と1」と ★★★☆

 キリト作曲。ちょっと「HUMAN GATE」を思わせるドラムから(笑)、大陸的なリズムとアコギが織りなす哀愁のメロディ。哀愁メロディで展開するも、サビでは開放的に光が差し込む。わりとこのサビが好きなのです。歌詞の物語性も高く、ハッピーエンドではないけれど、ドラマティックに美しくアルバムを締めくくる。

 

総評 [お気に入り度★★★/おすすめ度★★★☆

 PIERROTの原点にして、既にPIERROTとしての音楽が形作られている。壮大なストーリーと難解なバンドアレンジの妙。これはハマるわ…。聴きやすいのはメジャー以降だけど、最初にこれを選んでも全く問題ない。むしろここから遡っていって欲しい。

  解散前、復活後に至るまでのライブ定番曲が多く収録、それだけ楽曲完成度は高い。

 

 輪廻転生と神話的な終末感はメジャー1st『FINALE』を思わせる。普通に小節感覚で読んでも切ない。「自殺の理由」も超常的な力を持ち忌み子として生まれた主人公ゆえに、周りから虐待に耐えきれず、生まれ変わったら君に逢えることを願い自殺する…みたいな物語を想像すると、楽しいしより歌詞の切なさが染みますね。

 詳しいストーリーを知りたいなあ。

 

 インディーズということで音質は良くないですが、それでも同年代の他のCDよりは全然良くて。ギターサウンドのチープは時代なりにあるものの、物足りなさはない。曲の纏め方やテクニックという意味ではやはり洗礼されていない頃だけど、あまりあるバンド力。

 王道の聴きやすいメロディに、彼らしか作り得ない不協和音フレーズが重なり合う奇跡のバランス。これは売れるのは納得…。

 

ベストソング / SEPIA