ネガとポジ / Plastic Tree | 夕暮れビジュアル鑑賞会

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ネガとポジ ネガとポジ
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 もう完全にPlastic Treeファンサイトと化してますが(笑)、今回もプラ。デビュー10周年に産み落とされた『ネガとポジ』、リアルタイムで聴いていました。ただ当時はオルタナ系のこの音に全然ハマれなかったです。「真っ赤な糸」はよく聞いてましたけど。

 

 

『ネガとポジ』

 

01.眠れる森 ★★★★☆

 正作曲、プラのアルバム1曲目って感じのミディアム曲。やわらかいギターの音、木琴、僕の大好きな鈴の音、霧がかった幻想的な音世界が作り上げる心の中の森。メロディも美しい。歌、歌詞、演奏が高次元で融合し、プラの表現力をこれでもかと見せつけられる。ライブでよくやっている理由もわかる、ハイレベルな曲。

 

 

02.不純物 ★★★

 前曲からの繋がりがいいですね。こちらもミディアムテンポはあるけど、音は完全にグランジ、作曲者である竜太郎が好むジャンルの音。この曲も1曲目が似合いそう、サビはゆったりとしていながら切迫感を帯びてこちらの心をぎゅっと掴んでくる。

 

 

03.エレジー ★★

 こちらもグランジ的に音割れするほどの歪み、テンポアップするもキャッチ―な疾走感ではなく、ネガ寄りの曲。サビはさらっとしていつつも鬱々としたメロディで聴かせる正曲。パンチはないけどアルバムの雰囲気にはよく合ってる。

 

 

04.スピカ ★★★★★

 出ました神曲、一昨年の僕をプラに完全にハメた曲。穏やかなアコギと優しいバンドサウンド、竜太郎作曲のシングルだけあってサビはキャッチ―でありつつ、半端じゃない切なさを帯びてエモーショナル。離れてしまった人との距離を星座になぞらえて表現する歌詞も美しくて大好き。国歌コレにしよ?

 アルバム版でサビに歪んだギターが追加されてますが、蛇足だったとアキラは後悔しているよう。これはこれでアルバムの音に馴染んでるし、どちらも良いと思いますよ。あとアキラが未だにアコギに苦戦している一曲(笑)。何ならライブで弾いてないしね。

 

 

05.ザザ降り、ザザ鳴り。 ★★★

 哀愁を感じさせつつ疾走感あるシンプルなギターロック、竜太郎作曲でやはりキャッチ―。真新しさはないけどメロディがやっぱりいいし、コーラスが多くて聴いていて楽しい。歌詞は一番詩的な書き方かも。ただ個人的に心鷲掴みにされるような要素はないかなー。

 ネガとポジが歌詞に出てくるあたりリード曲? 当時NHKのMUSIC JAPANという番組の企画でV系バンド(ガゼットとかナイトメアとか00年代ブレイクのバンド)だけの日があって、そこで演奏してたのを覚えています。

 

 

06.無人駅 ★★★★

 歌謡テイストの強いイントロから始まるギターロック、作詞作曲アキラ。切なくもサビはキャッチ―で、喪失感滲む歌詞と相まって泣ける。感想はテンポダウンし穏やかに、そしてラスサビのほんとに最後の一節に感極まる。純粋にいい曲だと思います

 

 

07.オレンジ ★★★★

 過去曲でいうと「うわのそら」のようなフワフワとしたシンセに、躍動感あふれるリズムが乗った可愛らしい曲。メロディもポップでまさにオレンジみたいな瑞々しさが感じられる。こってりシンセではない分、歌詞と相まってどこか思春期の初心な恋愛も思い起こさせる。正作詞アキラ作曲の珍しい組み合わせ。

 

 

08.Sabbath ★★★

 さらに続くアキラ曲、そしてお得意の7弦を駆使したメタリックな楽曲。スラッシュメタル的な音像と暑苦しさがあるも、ボーカルはいたって無機質。この手の代表曲「Ghost」とはまた違ったテイストの楽曲、メロディも浮遊感あって結構好き。

 

 

09.egg ★★★★

 こちらも激しい、ハードコアパンク調の楽曲。今度はアキラ作詞、正作曲の珍しい組み合わせ。ローテンションでアキラの独特な歌詞を歌うメロディが結構癖になる。この手の楽曲も多くなってきて新鮮さには欠けますけどね。

 

 

10.涙腺回路 ★★★★

 疾走感と哀愁を帯びたギターロック、竜太郎らしい透明感あるサビのキャッチ―さが光る。これも人気ですね。実はずっとBメロがサビだと思っててつまらない曲だな思ってました(笑)。ギターのフレーズがなかなか乙なプレイが多くて聴きどころも多い、「ザザ降り~」よりも雨感強くて切ない。

 

 

11.黒い傘 ★★★

 この上なく物悲しいアコギとシンセ(メロトロン?)、囁くような歌が少し怖いスローなロックバラード。音飛びの演出もなかなかホラー。サビではバンドサウンドが顔を出し、更に息が詰まるような重苦しさに。メロディは好みではないけど、雰囲気はかなり好き。アウトロは2分以上もあり、歌が終わっても狂気を増していきます。

 

 

12.アンドロメタモルフォーゼ ★★★☆

 淡々としているけど、穏やかで浮遊感ある竜太郎曲、実質的なラスト曲。サビのメロディは切なくも包み込まれるような温かさがあって、心のいつの間にか空いてしまった穴を埋めてくれるような心地にさせる。壮大な音世界、8分と長いけど、いつまでも聴いていたくなるような。プラの中ではさほど好き!ってわけじゃないんだけど、じっくり聴いた時の充足感が強い一曲。

 「いずれ命 燃えてきます 灰になり 砂になり それならば 最初で最後 僕らが出逢えた事」この一節の美しさは言葉に出来ません。

 

 

13.真っ赤な糸 ★★★★★

 ここから通常版のボーナストラック。もう昔から大好きな曲です。アレンジから、別れを描いた歌詞から、ファルセットを活かした儚げなボーカルから…すべてが好き。メロディの美しさもさることながら、歌詞がまた最高なんです。くだけた文体で果てしない喪失感を表現。これはもう国歌(2)ですよ。ついついアキラ曲ばかり気になっちゃうけど、正さんはやっぱり最強やった…。

 

 

14.hate red, dip it(loudest sound edition) ★★★

 「ヘイト・レッド、ディップ・イット」の録り直しバージョン。アレンジはあんまり変わりないですが、こもり気味だった音質がクリアに、さらにメタリックに変貌。これは断然こっちのほうがかっこいいです。原曲のざらついた荒々しさも魅力的だったけど。

 

 

総評 [お気に入り度★★★★  おすすめ度★★★★

 前作「シャンデリア」がわりと現代的な要素が強かったのに対し、今作はギターロック中心で全体的に湿度が高い。メロディアスさは健在ですが、ポップ要素はほぼないですね。「トロイメライ」に近い感じでしょうか、UKロック的、オルタナ的な作風に戻ったような。

 喪失感、閉鎖感に包まれた音。ネガティブの中から少しのポジティブを探してもがいているというか。

 

 アルバムの流れはとても良く、10年の間培ってきたものが如何なく発揮されていると思います。ただ空気感が近い楽曲が結構多いので、統一感を良しとするかバラエティさを良しとするかは人によるところかな。

 それでも、1曲1曲の持つパワーは強い、どれもメロディが光ってる。特にシングルの「スピカ」「真っ赤な糸」の叙情的なメロディは本当に美しくて…それだけでも聴いてほしい。ベストで事足りちゃうけど!

 

 いやちゃんと聴くとほんとにいい曲が多いですね。高校生の時からちゃんと聴いておけば良かった。今急激に全部の音源集めたんで中々聴き込めてなくて、かなり勿体ないですねー。

 ほんとは全体的にもうちょっとキャッチ―であって欲しかったから、作品としては普通に好きってぐらい。そこはただの好みなんでしょうがないです。

 

 

ベストソング / スピカ 、 真っ赤な糸