HEART / L'Arc-en-Ciel | 夕暮れビジュアル鑑賞会

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どうもー。書いてる今(7/18)はがっつり雨…テンションが下がる。でも自転車で濡れながら自然と「Singin'in the Rain」を口ずさんで帰りました。

 

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 ということで今回はラルクの『HEART』、yukihiro加入後初のアルバムで、ミリオンヒットを記録した作品。正直ラルク全盛期を通ってきてないので、98年以前の曲で元々知っている曲はなかったです。でも中学生の時かな、『SMILE』の頃に一気にハマって、この『HEART』もがむしゃらに聴きまくってました。

 

 このアルバムが1番好きって人も多いですよね。音はsakura時代よりラフなんですけど、とにかく「濃い」な、という印象があります。ぜひ最近ファンになった人にも聴いてほしい作品。

 

 

HEART』

 

 

01.LORELEY ★★★★☆

 ドイツのライン川にある名所ローレライの名を冠したミディアム曲。情緒あるピアノとアコギの絡みから、雄大で重厚なイントロへ。サックス演奏はhyde。物悲しいメロディが美しく、優雅に漂いながらも力強い。幻想的なラルクと、図太いロックバンドとしてのラルク、どちらの魅力も持ち合わせた名曲。

 モノトーンなアートワークとの親和性も高く、歌詞カードを手に聴けばローレライ伝説よろしくこのアルバムの魅力にどっぷり惹き込まれるはず。

 

 

02.winter fall ★★★★☆

 初のオリコン1位を獲得したkenによるシングル曲。コーラスアンサンブル、粉雪のようにきらめくアルペジオまで、真っ白な景色を想起させるアレンジが見事。この上なくキャッチ―で華やかなんだけど、冬の情景に恋人であった人への想いを重ねる歌詞が切なくも美しい。

 先日の「L'ArcChristmas」の1曲目、予想はしていたけど、ラルクのライブそのものを13年ぶりに見たし、生でこの曲を聴いたのは初。猛烈に感動しましたね…。tetsuyaのコーラスはとても綺麗だった。hydeは可愛かった。

 

 

03.Singin'in the Rain ★★★★★★

 穏やかなジャズテイストの楽曲、hyde作曲の中でもNo.1、ラルクの中でも1,2を争うほど好きすぎる曲。

 軽快なピアノとドラム、淡い音色で曲に溶け合うギターとベースが味わい深い。間違いなく主役はピアノなんだけど、ベースラインも聴き逃せない。この曲も失った恋を、今度は雨に包まれ歌う。Aメロではやるせなく力の抜けたhydeのボーカルも、サビでは高らかに感情的に。メロディから演奏から歌詞からすべてが良い。ラストではピアノがこれでもかとアドリブで盛り上げる、最高。ただ全体的に地味ではあると思う。

 この曲が演奏されたのは「ハートに火をつけろ!」ツアーの地方公演1回のみだったと思います(ポスター集に全公演のMCと曲目が載ってました)。その後も恐らく全く演奏されてないはず、調べる限り。15周年ライブの人気投票でも入っていなかったし、今後やる可能性は限りなく0でしょうが、いつか…

 

 

04.Shout at the Devil ★★★☆

 これまでの流れとは一転してラルクの中でもかなり暴れた1曲。楽器陣はほぼ一発録りで非常に生々しい。

 感情の赴くまま弦をかきむしるギター、縦横無尽にドライブするベース、タイトながら手数多く体温を上げるドラム、熱量全開に吠えるボーカル。とにかく熱く、スピード感がたまらないハードロック。

 今もライブの定番曲として君臨、ライブだと何倍もかっこいいですね。CDだとテンポも遅くて物足りなさが残ってしますけど、これはこれで好き。

 

 

05.虹 ★★★★★

 バンド名を冠した、復活第1弾のシングル。唯一の3人名義で、今作唯一岡野ハジメ以外のプロデューサーが編曲を担当。これはもうファンはみんな大好きなんじゃないかな。

 この上なく憂いに満ちたアコギから、高らかに歌うサビへ。切なすぎるメロディが胸を締め付ける。ブレイクで荒々しく感情を爆発させれば、hydeの語りと燃え尽きていくようなギターが寂し気に響き、脆く繊細なメロディへと戻る。重厚で退廃的な空気を帯びながら、展開すべてがドラマチック。パッと聴いてV系だなあと思うけど、なんというか、不気味なほど底知れぬパワーの宿った曲。

 sakuraの一件から休止を余儀なくされた彼ら。「虹」という鮮やかなイメージとは真逆のナイーブな歌詞は、自身とファンへの誓い。いまだライブで聴けていないけど、歌われたらたぶん泣いてしまうんだろうなあ。

 

 

07.birth! ★★★☆

 からの「誕生」の演出がニクい。歌詞を見るにまさに復活を意識したシンプルな展開のロック。後半戦の導入として、流れで聴いたときの解放感たるや。勢いある演奏と「Realize!」と繰り返すサビのライブ感が心地よい。

 エスニックなシンセや浮遊感あるギターソロなどに名残がありますが、kenと岡野ハジメ氏がインド寄りにもっていこうとしたところ、作曲者のhydeが「行かんといて」と必死に止めたそう(笑)

 

 

07.Promised land ★★★

 重厚なバンドサウンドとエフェクトがかったhydeの英詩演説?で始まるも、ドラムはリズミカルで全体的に軽快な印象。歌メロもわりあいポップで可愛らしさすらある。サビでは疾走感を強め退廃的な世界へいざなう。ぐちゃぐちゃな歪みと甘いクリーントーンを絡ませる斬新なギターソロや、その後のシンガロングなど、音の遊びは今作で一番多いかも。

 これもライブの印象が強いですね。「ハートに~」の演出がかっこよすぎてこれもCDじゃ物足りない…!

 

08.fate ★★★☆

 引き続きken作曲。こちらもまた退廃的な雰囲気を纏って進行、シンバルが淡々とした印象を持たせるも、鬼気迫るほどエモーショナルなサビが文句なしにかっこいい。幻想的で切ないメロディは初期ラルクを匂わせるも、ズ太いバンドサウンドとの融合は今作から生まれた魅力の一つ。

 ファンの中では超人気で、ライブの定番曲。「fate」といえば緑のレーザー。聴きすぎて飽きた現象が(笑)だったのですが、最近また再燃中。歌メロをなぞるギターフレーズは、目を閉じたkenが渋く弾きこなす光景が目に浮かぶ。アメトーークで狩野英孝がこのフレーズを紹介。唯一映像許可が下りず笑いをさそっていました(笑)。交友あるはずなのに…(笑)

 

 

09.milky way ★★★☆

 音の重心が低くなり色味が抑えられた印象のある今作において、唯一のキラキラとしたポップロック。アコギが全編登場し、透明感のある軽やかなバンドサウンドに自然と体が動いちゃう。tetsuyaお得意の聴けば忘れないキャッチーさは、自分で曲を作る人間からするとマジで尊敬します。

 初のtetsuya作詞作曲でもあり、どうしても他と毛色が違ってしまうのですが、爽やかで可愛らしくて、雲を晴らしてくれるような楽曲がちゃんと入っているのは嬉しいポイント。

 

 

10.あなた ★★★★

 荘厳なオーケストラをメインにした、tetsuya作曲のしっとりとした極上のバラード。何気にギターが全編通して名演だと思ってます。アルペジオは満天の星を思わせるようで、ギターソロは羽ばたく鳥のようで。

 知らなくても一発で覚えられるほどキャッチーで美しいメロディは、ベタといえばベタ。でもこんな甘くロマンチックな曲なかなかない。ロック的魅力は薄くても有り余るメロディの良さが、長く愛されてる理由の一つだろうなあと

 そしてやはりライブの大合唱ですよね。生で聴いたことはないんだけど、いつか聴きたいな。「ハートに~」のラストではオーケストラが実際に登場したり、白い羽が舞ったり、美しい演出で大好きな映像。

 

 

 

総評 [お気に入り度★★★★☆ おすすめ度 ★★★★★

 思い出補正ありつつも、素晴らしいアルバムだと断言できる作品。これでラルクに入ったわけでもないですけど、青春時代を共にしたアルバムの一つ。

 

 休止前の『True』でラルク流のポップセンスが完全に花開いたわけですが、今作は全体的に無彩色な印象。とはいえコンセプトがあるわけでもなく、曲調は実に様々で捨て曲もないです。

 

 ポップな曲もあるけど、『True』のもつ華やかさとはまた違うんですよね。今作は音を重ねてきれいに構築していく方向性ではなく、リハーサルの雰囲気のまま思いつくままを曲に収めたいというような発言をしており、ラフで力強いバンドサウンドが前面に出ています。今まで通りキャッチ―でありつつも、質感は全く違ってます。

 まあ曲調云々よりかは、合宿形式のレコーディング、yukihiroの加入、完全に岡野ハジメのプロデュース体制となったこと等が多分に影響してるのだと思います。

 

 今作からは「Shout~」「fate」「あなた」など定番となったアルバム曲も多い。「winter~」も「虹」も含めたら実に半分が長く演奏され続けているあたり、メンバーもファンにも愛されてる作品ですね。

 「Singin'in the Rain」を除いて(笑)

 

 ラルクの外せないマスターピースともいえる作品、「虹」や「winter fall」が気に入ったらぜひこのアルバムも。

 

ベストソング / Singin'in the Rain