驚くほど
君を表すはずの顔や声はずっと空白のままだった
私は君の顔や声を精一杯記憶しようと努力したけれど、それは変わらなかった
変わらないはずだった
それなのに、真っ白だった空間に急に様々な色やカタチが飛び込んできた
君は何の屈託もなく笑っていたから
その表情は純真無垢という言葉以外何一つ似合わないようなものだった
君は確かにこの世界に嫌というほど存在する異常な状態の象徴を数多く目にしたり、耳にしたり、直接的に感じたりすることがあったのかもしれない
でも君はそれを遠くから傍観するだけで決して足を踏み入れることをしなかったのだろう
君は様々な事実を知ったけれど、君にとってそれらは現実味のないただの物語だった
だから君はあんな顔で笑える
君はただの傍観者だから
私は君の顔や声を精一杯記憶しようと努力したけれど、それは変わらなかった
変わらないはずだった
それなのに、真っ白だった空間に急に様々な色やカタチが飛び込んできた
君は何の屈託もなく笑っていたから
その表情は純真無垢という言葉以外何一つ似合わないようなものだった
君は確かにこの世界に嫌というほど存在する異常な状態の象徴を数多く目にしたり、耳にしたり、直接的に感じたりすることがあったのかもしれない
でも君はそれを遠くから傍観するだけで決して足を踏み入れることをしなかったのだろう
君は様々な事実を知ったけれど、君にとってそれらは現実味のないただの物語だった
だから君はあんな顔で笑える
君はただの傍観者だから
倒壊
私は気付くのが遅かった。
気付いたときには、私が表面上あるいは他人の中に長い時間をかけて築き上げてきた自己と理想の自己・本質的な自己には大きな差が出来ていた。
差どころか全くの別物だと言えるくらいに違っていた。
気付いたときにはその二つの自己の間の隔たりに苦しんでいた。
本質的な部分は勿論変えることは出来ない。もし変えることが出来たとしても相当な時間や気力などを費やすことになる。
そして他人の中に存在する自己は打ち砕くことは簡単なはずなのに相当な勇気と決心が必要になる。
私は今他人の中にいつの間にか築き上げてきた自己を破壊しようとしている。
その行為なしでは完全ではなくても自己を一致させるという欲求が満たされることはなく、私はこれから先も二つの自己の間で藻掻き苦しむのが目に見えているから。
早く壊してしまおう。
そして本当の自分を解放してあげよう。
恐る恐るでもいい。
本当の私ではない私なんて早く消えてしまえばいい。
気付いたときには、私が表面上あるいは他人の中に長い時間をかけて築き上げてきた自己と理想の自己・本質的な自己には大きな差が出来ていた。
差どころか全くの別物だと言えるくらいに違っていた。
気付いたときにはその二つの自己の間の隔たりに苦しんでいた。
本質的な部分は勿論変えることは出来ない。もし変えることが出来たとしても相当な時間や気力などを費やすことになる。
そして他人の中に存在する自己は打ち砕くことは簡単なはずなのに相当な勇気と決心が必要になる。
私は今他人の中にいつの間にか築き上げてきた自己を破壊しようとしている。
その行為なしでは完全ではなくても自己を一致させるという欲求が満たされることはなく、私はこれから先も二つの自己の間で藻掻き苦しむのが目に見えているから。
早く壊してしまおう。
そして本当の自分を解放してあげよう。
恐る恐るでもいい。
本当の私ではない私なんて早く消えてしまえばいい。
彼女の話
ある日電話が来た。
彼女の友人なのか恋人なのか、よく分からない男からだった。
「彼女が病院に運ばれた」と。
正直理由は聞かなくても分かっていた。
彼女はまた自殺未遂をしたんだろう。
「またですか?」
思わず呆れ口調になってしまう。
でも彼はひどく動揺していて、いつものアレとは何かが違った。
「それが…重体なんだ。あいつ、今日は薬の後に煙草を何本か水に溶いて飲んだみたいなんだ。」
彼女の自殺未遂はもう既に7回目だった。
いつもは手首を死なない程度に切ってみたり、薬を死なない程度に服用するくらいだった。
でも今回は違った。
彼は震える声で言った。
「俺、一昨日あいつと初めて避妊しないでセックスしたんだ。もう死ぬからどうでもいいって。俺何も考えてなくて…。」
私は何も言えなかった。
彼女は可哀想な女の子だったから。
彼女が急に気絶したり、意味の分からない発言を繰り返したりすることも、死にたいと口癖のように呟くことも当たり前の事だった。
彼女が世界で一番大好きな人とどうやって接すればいいのか、不器用すぎて分からないでいたことも当たり前の事だった。
彼女はとても可哀想な女の子だった。
彼女が死ぬ前に、避妊しないで世界一大好きな人とセックスしたことをとても彼女らしいと思った。
だから私は何も言えなかった。
そして彼女が昏睡状態から抜け出して、そのまま死ねたらいいなと願った。
それが一番彼女にとって幸せだと思えたから。
彼女はこの世界で生きていくには少しだけ不器用で、きれいすぎた。
でも彼女は死ねなかった。
目覚めると精神病院のベッドの上で、手足を縛られた状態だった。
そんな彼女が今では結婚して一児の母になった。
すっかり立ち直って、経験したことがない為に昔の彼女が理解出来なかった幸せな家庭を築いている。
あの時一瞬でも彼女が死ねたらいいなんて考えた自分を馬鹿だと思った。
「あの時死ななくて良かった。」
たまにふと思い出したように彼女は言う。
私はただ頷く。
彼女の友人なのか恋人なのか、よく分からない男からだった。
「彼女が病院に運ばれた」と。
正直理由は聞かなくても分かっていた。
彼女はまた自殺未遂をしたんだろう。
「またですか?」
思わず呆れ口調になってしまう。
でも彼はひどく動揺していて、いつものアレとは何かが違った。
「それが…重体なんだ。あいつ、今日は薬の後に煙草を何本か水に溶いて飲んだみたいなんだ。」
彼女の自殺未遂はもう既に7回目だった。
いつもは手首を死なない程度に切ってみたり、薬を死なない程度に服用するくらいだった。
でも今回は違った。
彼は震える声で言った。
「俺、一昨日あいつと初めて避妊しないでセックスしたんだ。もう死ぬからどうでもいいって。俺何も考えてなくて…。」
私は何も言えなかった。
彼女は可哀想な女の子だったから。
彼女が急に気絶したり、意味の分からない発言を繰り返したりすることも、死にたいと口癖のように呟くことも当たり前の事だった。
彼女が世界で一番大好きな人とどうやって接すればいいのか、不器用すぎて分からないでいたことも当たり前の事だった。
彼女はとても可哀想な女の子だった。
彼女が死ぬ前に、避妊しないで世界一大好きな人とセックスしたことをとても彼女らしいと思った。
だから私は何も言えなかった。
そして彼女が昏睡状態から抜け出して、そのまま死ねたらいいなと願った。
それが一番彼女にとって幸せだと思えたから。
彼女はこの世界で生きていくには少しだけ不器用で、きれいすぎた。
でも彼女は死ねなかった。
目覚めると精神病院のベッドの上で、手足を縛られた状態だった。
そんな彼女が今では結婚して一児の母になった。
すっかり立ち直って、経験したことがない為に昔の彼女が理解出来なかった幸せな家庭を築いている。
あの時一瞬でも彼女が死ねたらいいなんて考えた自分を馬鹿だと思った。
「あの時死ななくて良かった。」
たまにふと思い出したように彼女は言う。
私はただ頷く。