REAL ME -15ページ目

黒い衝動が過ぎった。
今目の前にいる生き物を無性に支配したくなった。
生死さえもコントロールすることができる。理性さえ無くせば。

そんな欲求を吐き出すのを必死で抑えて、更にアルコールを流し込んだ。
拍動が激しくなるのを感じる。
刺激伝導系が狂ってしまったのかと思うほど、周りの音を掻き消すほど、心臓は音を出して収縮と拡張
を繰り返している。



腕に表在するあらゆる静脈が努張して、血液が勢い良く流れていることを主張している。
君が誘うように腕を差し出す。

苦しい。
彼の血液がどんな色をしているのか、想像するだけで身体の奥が疼いた。

低くうなり声をあげて、深いところまで届くように噛みついた。
歯に当たる筋肉の感触が心地好くて、更に力を込めた。

君が短くうめき声を上げて、私の首に手をかけた。
ゆっくりと、その手に力が込められていく。
苦しい。
私は今この場で殺されるのかもしれない。
苦しい。
でも不思議と何も未練は感じなかった。驚くほど気持ちは穏やかで、特に抵抗もせずに目を閉じた。


意識が遠退くのを感じながら、ある人の言葉を思い出していた。
私が独りで死にたいと口に出したとき、言われた言葉を。
今ならその人が言いたかったことも理解できる。

苦しい。
私はその時、彼に完全に支配されていた。生きるも死ぬも彼次第だった。
君の荒くなる呼吸が異様に耳元に響いた。
君は私を支配することでそんなに興奮しているの?

後ろからきつく首に腕を回された状態で、君の体の一部が強引に私の身体に侵入してくる。
意識レベルが低下していく中で、早く刺激が欲しくて無意識に腰を沈めた。

「何でこんな濡れてんの、変態」
屈辱的なはずなのに、余計に身体が火照ってまた無意識に君の一部を締め付けた。

私は今死ぬの?
苦しくて、温かくて、切なくて、
泣きながら声にならない声であえいだ。気道はほとんど君に塞がれていて、君が動く度に私は掠れた声をあげた。

もう逆転は不可能。
本能でそう感じた。

私は初めて誰かに支配された。屈した。
でも、それも悪くないって思えた。

癖になったらどうしよう?

てゆうか

飽きた。



もういらない。



Android携帯からの投稿

アカいよ。

ぶちぶちと皮膚が千切れる嫌な音が異様に耳に響いた。


不思議なものでこういう時人間の身体は痛みを感じないような仕組みになっている。

所謂カテコールアミン系?



生温かい液体がごぼごぼと創から溢れ出て、あっという間に毛髪と顔面を濡らしていく。
生臭い独特な臭いが鼻を突いた。

体の奥底から笑いがこみ上げてくるのを感じた。
でも、それは横隔膜が規則的に痙攣していただけなのかもしれない。
自分でも良く分からなかった。


ヒクヒクと声を上げながら立ち上がる。
ふと右手で頭部に触れると、肘まで滴り落ちるほど暗赤色の液体で濡れた。
血液は既に眼中にまで侵入して、眼球表面に薄い膜をはった。


そのせいで、世界はアカく染まっていた。
電灯までがアカい光を発していた。

頭上にはアカい月が。今まさに雲の中に隠れようとしていた。



私は顔を上に向けたまま、眼を閉じた。
そして鳴いた。
涙の機能を活用したくて。きっとすぐに洗い流してくれるはずだった。

アカい液体と一緒に、全て。


次に眼を開けたら、世界は平常に戻っている。
そして私自身も。

そう信じてたのに。



Android携帯からの投稿