相手とする恋の証。
これの順番が普通とは違う由紀と直樹は未だに手もつなげずにいた。
キスをした後、2人は何度かデートをした。
そのデートの中で、キスどころか手も繋がない。
そんな2人はまるで友達というより、血縁関係を想像させるような関係になっていた。
奥手な二人の恋は今思えば、微笑ましく、可愛らしかったのだけれど、あの時の自分からしたら、いつになったら先に進めるんだろう?と不安に思っていた。
バイトの一件やペースの遅さ。好きじゃなくなったのかな?そんな不安が微かに募っていく。
「玲奈はどう思う?」
買い物の途中で、ふと、玲奈に相談をしてみる。
たくさんの店が並んでいる。どこが安くていい店なのかわからない。
ただただ、歩いてその場所を探す2人は散歩をしているのとさして変わらなく思えた。
「え、別にペースは人それぞれだと思うけど」
まぁ、私だったらあり得ないけどね。玲奈はそう付け加える。
綺麗に晴れ渡った空とは対照的に、どんよりと雲が浮かぶ、由紀の心。
確かに、ペースは人それぞれだ。でも、進まないと・・・。
「由紀は、そんな先に進みたいの?」
「うん・・・そりゃあね」
「なんで?」
「なんでって・・・」
由紀は言葉に詰まる。そう言われると、特別理由は思い浮かばない。
強いて言うとしたら・・・
「不安だからかな。何もしてこないと、好きじゃないのかなって思っちゃう」
「・・・そんな相手を信用してないの?」
「そういう訳じゃないけど・・・」
ネガティブなんだよ。苦笑しながら由紀はそう続けた。
「大丈夫だよ。相手も奥手なだけ。私からしたら、そう言うのは逆に羨ましい」
「なんで?」
「私の場合、手を繋いだり、キスをしたりするのってすぐだから。由紀だったらできる?」
「う~ん・・・」
「キスをしただけでドキッとする由紀にはゆっくりのペースがあってるんだよ」
この店、良さそうだよ。玲奈が店の中に入っていく。
由紀もそれに続いて中に入っていく。
店内はオレンジの電気だけを使っていて、なんだかおしゃれに感じた。
普通に置かれている服の他にも、壁一面に様々な服が吊るされていて、見ているだけで楽しめる空間になっていた。
白のTシャツが目にとまった。
服の真ん中に猫が描かれている。
猫の目は澄んでいて、なんでも見透かされているような・・・そんな錯覚に陥る。
「玲奈はドキッとしないの?」
猫から目を逸らして、玲奈を見た。
「しないかな。男の子でよくいるけど、キスってあいさつ程度。好きな人じゃなくても私はできるから」
好きな人じゃなくても。それは由紀には考えられない言葉。
直樹以外の人とのキス。それを想像しただけで吐き気がする。
キスという行為は尊いもの。
唇を触れ合うことで、言葉以上での「愛してる」を伝えあうものだ。
それを、誰とでも・・・。
「すごいね」
「そうかなぁ?いちいちドキドキするような恋愛を私はしてみたいけどね。まあ、由紀は焦る必要なんてないって。まず、手を繋ぐとこから初めて見たら?それか、もう一度キスしてみるとか」
「う~ん・・・」
「それか・・・あ、そういえば」
何かを思い出すように、服に視線を向けていた玲奈が由紀の方を見る。
「由紀、もうすぐ誕生日でしょ?」
「あ、うん」
由紀の誕生日は7月20日。今日は7月15日であと、一週間を切っていた。
「その時に、キスして。とか言ってみたら?それか抱きしめて。とか」
小悪魔な笑みを浮かべて玲奈は言った。
「そんなの言えるわけないじゃん」
由紀は言葉ではそう返しながら、先に進むためにはいいかもな。そんなことを考えていた。
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