六時間目が始まったころ辺りだろうか、ぽつぽつと雨が降り始めた。
すぐ止むといいんだけど・・・。
そんな由紀の願いとは裏腹に弱くなるどころか雨は勢いを増していた。
帰りのホームルームが終わる。
走って駅までいけば何とかなるかな。由紀は下駄箱でローファーに履き替えて、外に出ようとする。
「・・・」
思わず足が止まった。外はまるでシャワーのような雨量。走ってどうこうなるものじゃなかった。
ずぶ濡れの状態で電車に乗るのは避けたい。周りからの目が気になるし、今日はワイシャツの中は下着だ。
間違いなく透ける。
自意識感情と言われればそれまでだが、仮にも由紀は女の子だ。
少しはそういったことも気にしてしまう。
どうしようか。対策を練っていた時、1人の男子生徒が由紀の横を通り過ぎていく。
右手には傘。用意周到な生徒だ。
自分とはえらい違いだと自嘲する。
すると、その男子生徒はふいに立ち止まり、由紀の方を振り返った。
彼の顔を見た途端、あ・・・と思わず声が漏れた。
その生徒はさっき保健室で会ったイケメンだった。右手にの人差し指には絆創膏が巻かれている。
「傘ないの?」
第一声で彼はそう言った。ずいぶん唐突な話で思わず、え?と聞き返してしまう。
「いや、だから・・・傘ないの?」
彼は同じ言葉をもう一度続ける。
「あ、うん」
由紀は頷いた。あれ?もしかしたら、一緒に入れてくれるってやつだろうか。
淡い期待をするが・・・。そんな由紀の期待は瞬時に裏切られる。
「そうなんだ。じゃあ、これ貸してやるよ」
「え・・・?」
意外なセリフに由紀は戸惑った。
「はい」
彼は由紀にごく自然に、当たり前のように傘を手渡す。
「はいって・・・。あなたはどうするの?」
受け取りながら由紀は聞く。
「俺?俺は折り畳み傘持ってるから」
彼はそう言って、自分のカバンを二回叩いた。
「そっか」
それなら、借りても大丈夫かな。そう思い、ありがとう。その言葉を添えた。
「どういたしまして」
彼はニコッと由紀に微笑む。
「ねぇ、アドレス教えてくれない?」
由紀は笑顔の彼に聞いた。
それは深い意味でも何でもなく、傘を返すために、彼の名前を知りたかったから。一応同じ学年。もしかしたら、自分の名前を知っているかもしれない相手に、名前はなに?と聞くのは失礼かもしれない。そう思ったから出た言葉。
「ん、いいよ」
意図を知っているのか否か、彼は何事もなく頷いて、ケイタイを取り出す。由紀もそれにならって、ケイタイを取り出して、赤外線で彼にアドレスを送った。少し経って、彼から今度はアドレスが送られる。
(佐藤直樹・・・か)
「何組だっけ?」
「2組だよ。傘、明日持ってくれると有難い。貸したままにすると、忘れちゃいそうだから。でも、明日傘が似合わないくらい晴れてたら今度でいいけどね」
「わかった」
「じゃあ、また明日!」
彼は、一度履いたローファーを脱いで、上履きに履き替える。
「え、帰んないの?」
「忘れ物したんだよ。明日の課題のプリントだから忘れたらシャレにならない」
そうなんだ。首をすくめ、由紀はそう言って、またね。軽く手を振って踵を返した。
傘を開いて歩き出す。
思ったより大きな傘は由紀をすっぽり覆って、腕やカバンや、由紀のすべてを守る。
(ありがと)
由紀は心の中でもう一度彼への感謝の言葉を呟いて、帰路についた。
これが2人が出会った一日目のこと・・・。
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これからも、拙い小説ではありますが・・・。
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