「いたっ!」
「少し染みるって言ったじゃない」
消毒液を由紀の膝に優しく塗せながら保健の先生は言った。
膝からは微量の血が流れていたのだが、少しずつ流れは弱まっていく。
「どう考えても、けがした時より消毒の方が痛いですよ」
「そうかもね。でも、消毒しなかったら、バイ菌入って余計に痛くなるからね」
保健の先生は慣れた手つきでガーゼを貼っていく。
「まあ、マラソンでこけるってなかなかないけどね」
「・・・ばかにしてます?」
「少し」
由紀は先生を大袈裟に睨みつけた。こけたくてこけたわけじゃない。
最後の一周でスパートをかけたら、足がついてこなかっただけの話だ。
反論の言葉を探していた時、ふいに、保健室のドアが開いた。
先生が、ドアの方を向くのにつられて、由紀も思わずドアの方を見る。
そこには、見覚えのない一人の男子生徒がいた。
それが後の由紀の彼氏である直樹だった。
「どうしたの?」
先生が声をかける。
「手、切っちゃったんです。絆創膏もらえますか?」
そう言って、直樹は由紀の横に座った。
当然、彼の座った場所には少し由紀とは離れていたのだけれど、なかなかこんなに近くに異性がいたことはない。
ドクン。変に意識をしてしまった。
横目で相手の顔を見る。
ワックスを使っているのか、少し不自然に立った髪。
大きな二重瞼で、整って細い鼻や顎。
確実にイケメンと呼ばれるような顔だ。
(こういう人は近くに女子がいてもなんとも思わないんだろうな)
少しだけ不愉快な思いになって彼を横目で睨んだ。
傷口、見せて。先生のその言葉に、彼は右手を出す。出した右手の人差指から赤いものが見えた。
「なにしたの?」
絆創膏を机の中から取り出しながら先生は尋ねる。
「割れた花瓶の破片を拾ってたら、こうなったんです」
「割っちゃったんだ?」
「隣の女の子が」
危ないから僕が拾ったってだけです。彼はそう続ける。
「へぇ。優しいのね。気があるの?」
先生が悪戯っぽい笑みを浮かべてそう聞くと、彼は顔を赤らめて、そういう訳じゃないです。そう答えた。
そして、絆創膏を受け取り、失礼しました。足早に保健室を出て行った。
「なに、生徒からかってるんですか」
「意味はないわよ。イケメンの反応を見てみたかっただけ。彼、意外にピュアなのね」
先生のその言葉に由紀は呆れ気味に苦笑して、じゃあ、私も戻りますね。そう言って立ち上がる。
「無理しないようにね」
「今日はもう走りませんよ」
「走れるわよ。それくらいなら」
「たまには、サボらせてください」
冗談交じりにそう言って由紀は保健室のドアを閉めて、グラウンドへと向かった。
校舎を出ると、登校時よりも、雲は厚くなっていて、いつ雨が降り出してもおかしくない。そんな天気になっていた。
降るなら、体育の時間前に降ってくれればいいのに。そうすれば、走ることなく、怪我をすることもなかったのにな。
グラウンドでは、同じグラスの男子が女子とは比べ物にはならないペースで走っていた。
走り終わって、見学している女子たちの群れに加わる。彼女たちは、由紀に気づいて、話を中断して
「あ、由紀。足大丈夫なの?」
そう声をかけてきた。
「うん。大丈夫だよ。何の話してたの?」
「さっき?さっきはね、今先頭で走ってる金原君ってやっぱカッコいいよねって話」
玲奈がそう答えた。
「そうなんだ」
由紀は話題の中心の金原を大勢いる男子の中から探す。
(あ、いた)
視界に金原をとらえる。彼のペースは他の男子より遥かに早く、遅い生徒と一周もの差をつけていた。
顔は・・・うん。まあ、かっこいい。
けど・・・。保健室にいた彼の顔が浮かぶ。
あの人の方がかっこいいな。
由紀はそんなことを思った。
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水曜日なので小説更新です。
4話ですね。いかがだったでしょうか?
序盤すぎますが・・・ww
色々やることが多いのに最近は上手く出来ていません。
時間を上手く使っていきたいですw
では、また金曜日。7時です。