真帆を幼稚園に迎えに行って、家に戻ってきて。
夕飯の準備を進めている途中、外を見る。朝から降っていた雨はやむことなく、依然として勢い変わらず降っていた。
「雨強いねー」
窓越しに空を見上げながら真帆は言った。
外は暗く、人工的な光に頼らないと外は見ない。来月になると、暗くなるのはもっと遅くなるのだろうか。
もっとも、天候が悪ければ、時間など関係なく光は見えないのだけれど。
「そうね。明日は止むといいんだけど」
「ねー。じゃないと、お外で遊べない」
「今日はなにしてたの?」
「幼稚園の中で積木をしたり、お絵かきしたり」
砂場で遊びたかったなー。恨めしそうに真帆は外を見る。
「ママ、なんで雨って降るの?」
なんでと言われても。まだ四歳の子供に、気候の話しをしても分からないだろうし・・・何て答えようか。
「天の上で神様が泣いてるのよ」
・・・なんて。
「えー嘘ー」
真帆は不満そうな表情を浮かべた。真帆もさすがにそこまで子供という訳ではなかったようだ。
「中学生ぐらいになったらわかるようになるわよ」
真帆の疑問を流そうとした直後、玄関のドアが開く音が聞こえた。どうやら浩平が帰ってきたらしい。
廊下を歩く音がして、リビングにつながるドアが開かれる。
「ただいま」
浩平は由紀と真帆の顔を交互に見た。
「おかえり」
2人の声がかぶさる。
「今日の夕飯何?」
ネクタイを緩めながら浩平は聞く。
「卵かけごはん」
「え!?」
浩平は驚いた表情を浮かべる。その顔を見て由紀はくすくすと笑う。
「冗談。ゴーヤチャンプルよ」
「そうか。びっくりしたよ」
さすがに夕飯に卵かけごはんだけは辛いからな。浩平はそう続けた。
「あはは。もうすぐできるから座ってて」
由紀がそう言うと、分かった。彼はスーツから部屋着に着替えて、真帆の相手をする。
楽しそうな二人。そんな2人を見ると、微笑ましくなるし、家族としていい状態になっているんだな。そう思う。
浩平は、仕事だけに固執するのではなく、家に帰ってきたら家事も手伝ってくれるし、真帆の相手もする。
それに、優しく誠実で・・・。
非の打ちどころがない。
それなのに、今の生活に疑問を持っている自分は贅沢なのだろうか?
過去への想いが断ち切れない。ただそれだけ。
それだけで今の生活に疑問を、不満を持っている。
(私は、どうしたいのだろう?)
「なにかあったの?すごく怖い顔してるけど」
いつの間にかとなりに浩平がいた。
「なんでもないよ。考え事してただけ」
「そっか、ならいいんだけど」
浩平はすぐに引き下がる。彼は人の心にずかずかと足を踏み入れることはしない。
相談をされれば、親身に聞くし、アドバイスもする。
けれど、なんでもない。そう言った一言で、やせ我慢で言った言葉でさえ引き下がる。
深く追求しようとはしない。
それが彼の優しさ。言ってくれるまで待つという優しさ。
それに不快感を抱いてしまうのは自分の我儘としか言いようがない。
もう一度、熱く、刺激的で、甘い恋がしたい。
苦しくなるくらい、切ない感情が駆け巡る。
純粋で、一途で、相手のことばかり考えるような・・・そんな日々を過ごしたい。
雨の音が由紀の思いを増幅させていき、胸を締め付けた。
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