木々のざわめきが聞こえる。
(なにしてんだかな・・・)
悠太はそれらの木々を見つめながら苦笑した。
振るつもりなんてなかった。
振られたあの日から、ずっと引きずってた相手。もう一度やり直せたら。そんなことを何度も思った相手。
「好きだよ」
そう告げて、やり直そうと思っていた。
なのに・・・。わざわざ自分からそれを手放した。
菜穂のことは好きだ。けれど、自分が出した結論に自信が持てない。
もう綾音の笑顔を見ることは絶対にできない。
今、脳裏に浮かぶ綾音の顔は・・・涙を流した悲しそうな顔。
「馬鹿みたいだな・・・」
自分は綾音のそんな表情を見たかったわけじゃない。
その時、ケイタイのバイブ音が鳴る。
『もしもし?』
『もしもーし。今何してた?』
電話の相手は菜穂だった。
『なんにもしてないよ』
『そうなんだ。暇だったら今から会ってくれない?』
『いいけど・・・今夜だよ?』
『夜だからだよ!』
『・・・?分かった』
時間と場所を決めて、電話を切る。
今から・・・何の用だろうか。
待ち合わせの五分前に、約束の駅に着く。
すると、いつからいたのだろうか、そこにはもう菜穂の姿があった。
「ごめん、待った?」
ありふれたセリフを菜穂に投げかける。
「全然。さっき来たところだよ」
菜穂は笑顔で答える。
「そっか。それで・・・どうしたの?」
「むー。やっぱわかってないんだね」
頬を膨らませて、菜穂は悠太を睨む。
「え、ごめん・・・」
「今日でね、半年になるんだよ。私たち」
この場所で待ち合わせをして・・・。菜穂はその言葉を添える。
「あ・・・」
日付を確認して、思い出す。そっか。あの日も待ち合わせは夜だった。
「思い出した?」
「うん。半年ってすごいよな」
悠太は頬に指を滑らせる。
菜穂との数々の思い出が蘇る。そして、綾音との記憶が一つずつ消えていく。
これでいいんだ。
「悠太君。これからもよろしくね」
菜穂はその手を握って言った。
「うん。こちらこそ」
今と半年前と。自分の感情は大きく違う。
代わりでもいいから。その言葉から始まって・・・。
今は、綾音よりも大事な相手になってるんだ。
「菜穂、好きだよ」
今なら、その言葉をまっすぐに伝えることができるんだ。
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悠太編でした。
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明日は綾音編で、午前11時の更新となります。
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