場所変えよう。
菜穂の言葉で、2人は店から出た。
店とは違う光が2人の体に降り注ぐ。
会話はなかった。少し重苦しい空気の中で歩く2人は、喧嘩をして今にも別れそうな・・・。
そんなカップルのようだ。
前を歩く彼女は終始下を向いていた。
勇気を振り絞り、言葉を紡ごうとしている彼女。
そんな彼女に、欠ける言葉は見当たらない。
悠太はただただ、前を歩く菜穂を見るだけ。
ふいに、菜穂が立ち止まり、悠太の方を振り返った。
「言うね?」
菜穂は、悠太の目を見て、地面を見て。
そして一拍置いた後に、もう一度悠太を見た。
「私と付き合ってほしい」
意を決して言ったその言葉は震えていた。
「えと・・・」
予想していた言葉。
なのに言葉に詰まる。もちろん、彼女の言葉が嫌いなわけじゃない。
好きか嫌いかで言えば、好きだ。しかし、だから付き合っていい訳じゃない。
きっと、今日の約束を了承する時の自分は間違いなく、彼女と付き合う気でいたのだろう。
傷を癒すために。忘れるために。
けれど、それは間違いなんだ。
失ったピースの形は今手に入れようとしているピースと形が違う。その場所には当てはまらないものなんだ。
それを自覚した今、出す結論は決まっている。
自分の想いを、気持ちを。再確認した後で、紡ぐ言葉を決めた。
「俺・・・好きな人がいるんだ。もう、会えないのは分かってるんだけど」
前に振られたからさ。苦笑しながら悠太は言った。
「そっか」
じゃあ、何で今日会ってくれたの?菜穂はそう続ける。
「それは・・・」
「私・・・別にその人の代わりでもいいんだよ?」
口ごもる悠太に、すべてを見抜いているかのように菜穂は言った。
「何言ってんだよ・・・」
到底理解できるはずのない言葉だった。
相手が勝手にそう思っているカップルはいるかもしれない。
けど、菜穂はそれを受け入れて尚、それでもいいといってきているのだ。
「私、佐野君のこと好きだからさ」
菜穂の笑顔は大人しい。
大人のような寛容のある笑顔で、さっきまでの無邪気さはなかった。
「ただ、私のことをその子の名前で呼ぶのだけはやめてほしいけどね」
そうじゃなかったら・・・・全然大丈夫だから。
「でも・・・」
「私のこと、嫌い?」
「そんなことない・・・けど」
ここで嫌いと嘘をつけたら、どれほどいいだろう。
半端な優しさは、どれほど残酷で、虚しいものなのか。
自分は知っているはずなのに。
「なら、いいじゃん。ね?」
菜穂は小首をかしげながら、悠太の手を握った。
初めて触れた彼女の手は温かかった。
そして、嫌な気持ちには一切ならない。
「うん」
だから頷いてしまった。
作り上げてきたパズル。
そのうちの一つのピースが欠けてしまった今、全く形の違うピースを手に入れた。
そのピースを強引にそのパズルにはめ込むのか、それとも・・・。
また新しいパズルを作り上げていくのか。
どうするのかまだ決めてないうちから、彼女と付き合うことを決めてしまったんだ。
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やっべ。
タイトル画面の変え方がわからなくなった!!
・・・早めに直します。
「記憶の中に」
まだ第三話ですが、これからも読んでいただけると有難いです!