次の日。
雲たちは僕達のもとを去っていって、太陽が僕らを照らした。
五月とは思えないぐらいの暑さ。
学ランなんてきていられないほどだ。
だからといって、脱ぐわけにもいかないのだが。
「なんなんだろうな、この気温は・・・」
手で顔を扇ぐ良一はだるそうな表情を浮かべる。
「だなぁ・・・」
「これは異常だな」
「近年は毎年、夏も冬も異常だけどな」
僕は上から二つぐらいボタンを開けて、かすかに風が通る隙間を作る。
が・・・。
風すらほとんど吹いていない今には到底意味がない。
「あーつーいー」
「五月蠅い良一。よりいっそう暑く感じるわ」
「じゃあ、寒いとか言ってみるか?」
「子供か」
「じゃあ、なんならいいんだよ。あーもう。暑すぎ!」
良一は恨めしそうに太陽を睨んだ。
「とりあえず・・・・明日からはうちわが必須かもしれないな」
僕がそう言うと「同感だな」
良一は頷いた。
今日の学校までの道のりは地獄だった。
猛暑との闘い。
それを乗り切って、学校について。
教室に入ると、みんながざわついていた。
おかしい。
普段はもう少し静かなのに。
「なんだ?みんな暑さでやられたか?」
「良一。それはなかなか笑えないぞ?」
「あ、ごめん」
僕らは席に座り、荷物を机の中に移す。
それが終わり、僕は気になったことを、となりの席の関口理沙に聞いた。
「今日何かあんの?」
「え、急に何?」
「いや・・・みんなざわついてるから」
「ああ。今日は転校生がうちのクラスに入ってくるんだって」
さらっとした長い黒髪を束ねながら理沙は言った。
「転校生かぁ。男?女?」
「女の子だよ」
「そうなんだ」
「なに?ナンパでもする気?」
「何言ってんだよ」
「私の雨宮君に対するイメージなもんで」
笑いながら彼女は言った。
「なんでそんなイメージがあるんだよ」
「だって・・・あ、なんでもないや」
「そんな途中で止められると一番困るんだけど?」
「気にしない気にしない」
彼女は鏡を取り出して、髪の毛がちゃんと束ねられたかチェックする。
「なんか嫌だなぁ。あ、そうそう。関口は髪束ねるよりそのままの方が似合ってると思うよ?」
「ふぇ!?」
彼女は顔を赤くして、手に持っていた小さな鏡を落とす。
ガシャン。
小さな音がざわついたクラスの音に少しだけ抵抗するように、甲高い音を上げた。
「どうした?」
僕はそれを拾って彼女に手渡す。
「別に・・・。ありがと」
彼女はそれを受け取ってため息をひとつついた。
「よくわからん」
「こっちのセリフだよ」
そんな会話をしていて、転校生のことなんて気にも止めなかった僕。
けど・・・。
みんなのざわついた音をかき消すように、教室のドアが開いて。
先生が入ってくる。
そして、その後ろに転校生がいた。
「あ・・・」
そこにいたのは、一華だった。
彼女の顔を見た瞬間、僕の頭の中から理沙との会話は一瞬で飛んで行った。
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