「え・・・?」
彼女は顔を赤く染めて、驚いたように僕を見る。
「あ、ごめん・・・」
「謝んないでよ」
顔を赤らめたまま、彼女は少しむっとする。
「うん」
「初めて・・・かも」
彼女はまたさっきのような表情に戻って、少し言いづらそうにそう口にした。
「なにが?」
「可愛いって言われたの」
「何言ってんだか。毎日のようにいろんな人から言われてるんじゃないの?」
僕は苦笑しながら、雨が降りしきる空を見上げた。
空一面は雲。
さっきの雲はこんなに大きかったんだな・・・。
そんなことを思いながら。
・・・ていうか、これやむのかな。
とか考えていた。
けど、次の彼女の言葉で、僕はこっちの世界に戻る。
「・・・玲からだよ。玲からそんなことを言われたのが初めて」
「あ~・・・そっか」
「うん」
彼女の赤く染まった頬を見て。
目の前にいる人は好きな人だって再認識して。
さっきまではなかった緊張感が急に僕を襲う。
ドクン・・・ドクン・・・。
意識したら止まらない。
鼓動は胸を張り裂けるぐらい大きいもので。
耳に入るのその音は雨の降る音とは比較にならないくらいのものだった。
「じゃあ、一つ聞いていいですか?」
「うん?」
ドクン。
意識した僕は冷静さを欠く。
そして・・・。
「可愛いって言葉・・・嬉しかった?」
聞くべくじゃないことを聞いてしまう。
確実に早まった言動。
これの答えなんて聞いちゃいけないものなのに。
『嬉しくなかった』
彼女がそう答えれば言わずもがな。
ただ単純に僕らの関係は悪化すること間違いないしだ。
逆に『嬉しかった』
彼女がそう答えたら・・・それもそれで何とも言えない空気になったしまう。
まぁ・・・奈々が僕のことをどう思っているのか。
それ次第でもあるが。
きっと奈々は僕のことを恋愛対象には見ていない。そう思う。
友達。
幼馴染だからこそなれた関係だって思うんだ。
今では、前にあった放課後のことは夢のようにさえ感じられる。
僕の背中に、額をぶつけた君。
そして「もう少し一緒にいたい」そう言った君の言葉。
それと・・・昔の両想いのような・・・恋人のようなそんな関係。
全てが僕には夢のような・・・幻のような。
そんなものに感じる。
もしも君が・・・モデルなんてそんな世界にいなかったら僕はそんなことを感じることなんてなかっただろうけど。
君が有名になればなるほど、君は遠ざかって行く。
今までの僕らの関係が夢で逢ったんじゃないかって思って強く思ってしまう。
きっとこうやって今。
二人きりでいるのも、いつかは夢のように感じてしまうんだろうな・・・。
「え・・・と・・・嬉しかった」
「そっ・・・か。それはなんで?」
「逆に、私から聞く。なんでだと思う?」
「そんなの分かるはずないじゃん・・・」
「言うと思ったよ」
奈々は、橋の下から出る。
「ちょ・・・奈々?」
彼女の体が濡れていく。
「やっと、奈々って呼んでくれた」
安堵のような・・・喜びのような。
そんな声だった。
「ねぇ、玲。嬉しかった理由、言おうか?」
「え?うん」
すると彼女は一度上を見た。
・・・何をしているんだろうか?
彼女の顔にも雨があたる。
すると彼女はニコッと微笑んで
「その理由はね、・・・・・・・・」
プァーーーン!!
彼女のその続きの言葉は、上を通った電車の音で遮られた。
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あ~・・・もうすぐ学校が始まるなぁ・・・。